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船で行くケララのデルタ目ざめよ! 2008 | 4月
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デルタでのボートレース
スネークボートは,細長いカヌーです。船尾がコブラの頭巾のような形をしているので,その名が付きました。このボートは,昔,デルタ地帯の王たちが収穫後の戦争を行なう際に使ったものですが,戦争が行なわれなくなり,その必要性も減少しました。この立派な船は,寺院の祭りの期間だけ,川を行き来しました。華々しいファンファーレと共に,人々が乗り組み,飾り付けられ,その土地の文化を紹介するものとして用いられました。祭りの時は,出席している高官たちに敬意を表してボートレースが行なわれました。約1,000年前に始まったこの伝統は,今でも人気を博しています。
このレースは普通,100人ないし150人の男たちの乗り込んだボート約20隻で争われます。短いオールを持った100人以上の漕ぎ手が,ボートの両側に並んで座ります。4人が長目のオールを持って船尾に立ち,舵を取ります。別の二人が船の中央部に立ち,木の棒で反響板を叩き,漕ぎ手たちはその音に合わせてオールを漕ぎます。それに加えて,少なくとも6人がそのそばで,手をたたいたり,口笛を吹いたり,叫んだり,独特の舟歌を歌ったりして,ペースを緩めないよう漕ぎ手を激励します。若者たちは最初,そのリズムに合わせて漕いでいますが,最後は力を振り絞って,この一大レースのゴールを目指します。
1952年,インドの最初の首相であるジャワーハルラール・ネルーは,デルタの主要な町アレッピーを訪れた際,そこで見物したボートレースにいたく感銘を受けました。興奮のあまり,警護の取り決めを無視して,勝利者のボートに飛び乗り,手をたたき,漕ぎ手たちと一緒に歌を歌ったほどです。デリーに戻ったネルーは,スネークボートをかたどった銀細工を贈りました。それにはネルーのサインと,「この地域特有のボートレースの勝者に捧ぐ」という銘が刻まれていました。この銀のボートは,年に一度行なわれるネルー杯ボートレースのトロフィーとして使われています。毎年,レースを見るために,10万もの人がこの地にやって来ます。そのような時には,普段はゆっくりと時が流れるデルタ地帯も活気にあふれます。
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船で行くケララのデルタ目ざめよ! 2008 | 4月
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[24ページの図版]
スネークボートレース
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