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    目ざめよ! 1993 | 3月8日
    • レイプの実態

      あなたがこのページを読み終えるまでに,米国のどこかで女性が一人レイプされます。被害者の女性はたった一人で,屈辱的なこの暴力行為におびえます。しかも,加害者が女性の知り合いである場合が多いのです。殴られることもあります。女性は抵抗するかもしれません。被害者は命の危険を感じるに違いありません。

      レイプは米国で最も急速に増大している暴力犯罪です。米国はすでに,レイプ発生率が世界で最も高い国の一つになっています。警察の報告によれば,1時間ごとに16人の女性が襲われ,そのうち10人が実際にレイプされます。しかも実際の発生件数は,報告される数の10倍とも言われています。

      この恐るべき数字は米国だけに限られてはいません。フランスの場合,報告されたレイプ被害者数は1985年から1990年の間に62%増加しました。カナダでは,1990年までのわずか6年間に,報告された性的暴行事件は2倍に増加して,2万7,000件になりました。ドイツでは7分ごとに1件の性的暴行事件が発生していると伝えられています。

      罪のない男性もレイプに苦しめられます。a 男性は,「人口の半分が,腹立たしさや疑いや恐れを感じてもおかしくない社会に住むという苦しみを味わっている」と,心理学者のエリザベス・パウエルは述べています。さらに男性は,妻や母親,姉や妹,娘や友人のことをいつも心配しながらの生活を余儀なくされるという被害を受けるかもしれません。もしも愛する人がレイプの犠牲になれば,男性は罪悪感と心痛に耐えなければなりません。

      なぜ増加しているのか

      レイプは,暴力や女性に対する不当な支配が大目に見られている社会で増えています。多くの国では,男性も女性も子供の時から,メディアや家族や同年代の友達をとおして性に関する破壊的なメッセージや間違った情報に攻めたてられます。そして,セックスに暴力は付きものであり,女性は本人の意思とは無関係に男性の性を満足させるために存在するといった有害な考えを学びます。

      ファイル整理の仕事をしている23歳のジェイの見方に注目してください。「世間では,いろんな女性と何度もセックスをしなければ一人前の男にはなれないと言われている。だから,もしそうしなかったら,一人前の男になれないじゃないか」とジェイは言います。このような圧力を受けているため,ジェイは女性から腹の立つようなことやいらいらするようなことをされると,その女性をレイプするかもしれません。

      研究者のリンダ・レドレーは,レイプ事件の多い社会では女性に対するそのような暴力的で攻撃的な見方が一般的になっていると考えています。「たいていの場合,レイピストは社会という脚本家が書き下ろした脚本どおりに演じているにすぎない」とレドレーは言います。映画やテレビは,社会がその有害な脚本を書くのに一役買っています。レイプはポルノ映画の題材としてよく用いられますが,悪いのはポルノ映画だけではありません。性描写の全くない暴力映画が,露骨な性描写があって暴力シーンの全くない映画よりも,女性に対して攻撃的な見方を生み出すことを,様々な調査結果は示しています。テレビも「ほかでは見られないほど甚だしい,女性に対する不当な支配を描写する」場合にはこの部類に入る,とパウエルは言います。メディアが伝えるのは,「腹が立ったら,だれかを傷つけよ」というメッセージです。

      そのようなメッセージは日常の人間関係に入り込み,悲惨な結果を招いています。自由放任の傾向がますます強くなっている世の中では多くの場合,男性は女性が自分とセックスをするのは当然だと考えます。男性が女性のためにお金を払ったり,言い寄った時に最初女性が受け入れるようなそぶりを見せた場合には特にそうです。

      「性関係について言えば,女性が『ノー』と言っても,その言葉はたいてい意味をなさない」とジャーナリストのロビン・ウォーショーは言います。そしてレイプが起きるという例が非常に多いのです。

      “セカンド・レイプ”

      キャシーは15歳の時に高校のホッケーチームの部員3人にレイプされました。家族がその事件を裁判に持ち込むと,キャシーは友達や近所の人たちや見ず知らずの人々から,のけ者にされたり嫌がらせをされたりしました。周囲の人は家族に向かって,「男の子は男の子,いたずらは仕方がない」と言いました。学校に行くとキャシーは卑わいな言葉でののしられました。ロッカーに脅迫状が張り付けられていたこともありました。キャシーを犯した3人は保護観察に付され,社会奉仕に服するよう言い渡されましたが,その後も学校ではスポーツマンとしてもてはやされました。キャシーは何か月間も嫌がらせを受けてひどい目に合い,ついに自殺しました。

      キャシーの身に起きた出来事は,レイプの被害者の多くがどのようにまずレイピストによって身体的暴行を受け,その後他の人々によって感情的暴行を受けるかを示す悲劇的な例です。レイプに対する人々の見方や誤った考え方が原因で被害者のほうが事件の責任を問われることに気づいている女性は少なくありません。友達や家族,警察官,医師,裁判官,陪審員など,被害者を助けるべき人々がそのような誤った考えを持っていて,レイピストに劣らないほど深く被害者を傷つけることがあります。あまりに厳しく非難されるため,これを“二次的<セカンド>レイプ”と呼ぶ人もいます。

      様々なレイプ神話が間違った安心感を生み出します。言い換えると,体の線がくっきりと出るような服を着ていた,一人で夜出歩いていた,女性のほうが実際に性関係を望んでいたなどという,犠牲者の振る舞いの面での落ち度に気づけば,そのような行為を避けることによって本人も家族も身を守ることができ,レイプに遭うことは決してない,という考え方です。それとは対照的な,レイプはどんな服装をしているかに関係なく,だれの身にも降りかかりかねない非常識な暴力行為であるという考え方は,あまりに恐ろしすぎて受け入れがたいのです。

      「すてきで,尊敬できる」と思っていた人にレイプされたある女性はこう語ります。「最悪のパターンは,自分の身には起きないと考えることです」。

      レイプ神話と真実

      次に挙げるのは,昔からあるレイプに関する誤った考え方です。こうした考え方があるため,被害者は非難され,加害者の肩を持つような見方はいつまでたってもなくなりません。

      神話: レイプは女性が見知らぬ人に襲われたときにだけ起きる。

      事実: 知人や信頼していた人にレイプされる女性が大多数を占めています。ある調査では,被害者の84%は知人に襲われ,57%はデートの最中にレイプされたという結果が出ています。既婚の女性の7人に一人は夫にレイプされます。b レイプは暴力であり,加害者が見知らぬ人であれ,配偶者であれ,デートの相手であれ,感情的に大きな痛手を残します。

      神話: レイプされた女性には必ず,抵抗したことを示す証拠 ― 打ち傷など ― が残っている。

      事実: 力で抵抗してもしなくても,打ち傷や切り傷など,目に見える証拠が女性に残っている場合は非常に少ないのです。

      神話: 体を激しく動かして抵抗しなければ,レイプの被害者にも責任がある。

      事実: 定義からすればレイプは,暴力や脅迫によって相手の意思に反した性交を行なう,またはそれに類する行為をする時に成立します。嫌がる相手に暴力を振るえば,その人はレイピストです。したがって,レイプの被害者は淫行の罪には問われません。近親相姦の犠牲者と同様に,相手が振りかざした力に圧倒されて望まない行為を無理やりさせられることもあります。恐怖におののいたり,気持ちが混乱したりしたためにレイピストの思いどおりになったとしても,女性がその行為に同意していることにはなりません。同意とは,脅されずに行なった選択に基づく能動的なものであって,受動的なものではありません。

      神話: レイプは恋愛行為である。

      事実: レイプは暴力行為です。男性はセックスだけを目的としてではなく,相手を意のままにする力を持っていることを実感するためにレイプします。c

      神話: 女性のほうから男性にしつこく求めたり男性を誘惑したりする結果,男性は性衝動を抑えきれなくなることがある。

      事実: レイピストの性衝動が他の男性の性衝動より強いわけではありません。それどころか,性行為を遂げることができなかったレイピストは全体の3分の1を占めます。ほとんどの場合,レイプは計画的な行動であり,突発的な衝動の結果ではありません。加害者は,見知らぬ人の場合でも知り合いの場合でも,通常は相手を危険な状況に追い込みます。見知らぬ人の場合は,相手が一人きりになるまでひそかに跡を付けます。知り合いの場合は,女性が一人だけになるように仕組みます。

      神話: 女性は男性に復しゅうするため,あるいは性関係を持ったことに罪悪感を抱いているため,レイプ事件をでっち上げる。

      事実: 報告されたレイプ事件がうそだった割合は他の犯罪の場合と同様2%です。他方,報告されていないレイプ事件は極めて多いというのが研究者たちの一致した意見です。

      神話: 女性は性欲を刺激するような服を着たり,アルコールを飲んだり,デートの相手に勘定を払わせたり,男性の家に行ったりして,レイプを“誘う”場合がある。

      事実: 判断を誤ったり,軽率だったり,無知だったりするからといって,その女性がレイプされるのは自業自得ということにはなりません。レイプの責任はすべてレイピストにあります。

      [脚注]

      a レイプの犠牲者10人のうち約一人は男性です。

      b 夫が力ずくで無理やり妻と性関係を持つなら,夫婦間レイプになります。夫たちの中には,使徒パウロが述べている,妻の体に対する夫の「権限」を絶対的なものと考えている人がいるかもしれません。しかしパウロは,「夫は自分の体のように妻を愛すべきです」とも述べています。さらに使徒ペテロは,夫たちは「弱い器である女性として」妻に誉れを配すべきであると述べています。暴力や性の強要が入り込む余地はありません。―コリント第一 7:3-5。エフェソス 5:25,28,29。ペテロ第一 3:7。コロサイ 3:5,6。テサロニケ第一 4:3-7。

      c 「この犯罪の目的は『セックスをする』という行為ではない。むしろ性行為は,加害者が暴力犯罪を犯すために用いる手段である」― 米国メリーランド州ボルティモア市性犯罪対策部支部長ワンダ・キースロビンソン。

      [3ページの拡大文]

      米国では,レイプまたはレイプ未遂事件の被害者になる女性が4人に一人とも言われている

      [4ページの拡大文]

      レイプは,暴力や女性に対する不当な支配が大目に見られている社会で増えている

  • レイプを防ぐ方法
    目ざめよ! 1993 | 3月8日
    • レイプを防ぐ方法

      エリックは背が高く,ハンサムで,裕福な家の息子です。19歳のロリーは,エリックや彼のルームメートと一緒にダブルデートをすることになっていました。ロリーはエリックの家のバーベキューパーティーにやって来ます。ロリーは知らなかったのですが,もう一組のカップルは来ないことになったのです。しばらくすると,ほかの客が帰り始めます。

      「『何か変だわ。何だかおかしいわ』と思ったのですが,気にしないことにしました」とロリーは言います。

      エリックはロリーと二人だけになるとすぐに彼女をレイプしました。ロリーは起きた事件を警察には届けませんでした。その後,エリックの顔を見ないですむように,240㌔ほど離れた場所に引っ越しました。1年たった後でも,まだ怖くてデートをすることができません。

      レイプの脅威は増大する一方です。女性にとって最善の防衛手段は,油断なく気を配ることと備えをしていることです。レイプが起きる状況をすべて事前に予測することはできませんが,レイピストがどのように考え,また攻撃を計画するかを知っていれば,危険な兆候に気づく助けになるかもしれません。a このような昔の格言があります。「分別のある者は困難が迫るとそれを避けるが,あさはかな者は困難にまともに陥り,後になって悔やむ」― 箴言 27:12,今日の英語訳。

      レイプされそうな状況を避ける最も良い方法は,レイピストを避けることです。潜在的レイピストであることを示す行動パターンを表わす男性 ― よく知っている男性も例外ではない ― がいる場合,油断すべきではありません。(7ページの囲み記事をご覧ください。)男性の中には,女性の服装や,女性のほうに二人だけになりたいという気持ちがあったということなどをレイプの口実にする人がいます。男性がそのようなゆがんだ考えを持っていても女性に責任はありませんが,そのような見方があることを知っておくのは賢明なことです。

      よく知らない男性と二人きりになることがないようにしてください。(よく知っている男性に対しても用心深くあってください。)見知らぬ人が修理屋を装って家に来て,レイプしようとするかもしれません。ですから,資格認定書を確認してください。レイピストが知り合いの場合によく用いられるのは,用事を作って相手を自分の家に立ち寄らせたり,落ち合う場所にはほかにも人がいるとうそを言ったりして,二人だけになるようにするという方法です。そのような手にだまされないようにしてください。

      問題を避けるため,デートはグループでするか,だれかに付き添ってもらいましょう。デートの相手を十分に知っておくことです。親密さの表現として身体的な接触を許す場合には限度をはっきりと定めておきます。どんなアルコール飲料にも気をつけましょう。思考力が鈍ると,危険に対して敏感に反応できなくなります。(箴言 23:29-35と比較してください。)直観に頼ってください。そばにいると気持ちが悪いような人なら,悪意はないなどと解釈せずに,逃げ出すことです。

      特に,十代の子供を持つ親は,どうすればレイプを防げるかを子供と話し合う必要があります。その際,危険な状況を具体的に取り上げます。レイプの加害者も被害者も大多数は若者だからです。

      素早く行動する

      レイプされそうな状況をすべて事前に予測できるわけではありません。ふと気づいてみると自分の周りにはだれもいなくなって,自分よりも力の強い,そして性関係を強要しようとしている男性と向き合っているという状況が生じるかもしれません。そのような時,どうしたらよいでしょうか。

      素早く行動することです。逃げるという目標を忘れてはなりません。レイピストは襲うかどうかを決める前に,相手を試すことが多いので,レイピストが十分の自信をもって行動を起こす前に,できるだけ早く計画を狂わせることが大切です。レイプ専門家たちは,受動抵抗と能動抵抗という二つの方法を挙げます。まず受動抵抗を試み,それでもだめなら能動抵抗に移行できるでしょう。

      受動抵抗には,レイピストに話しかけて時間をかせぐことから,性行為感染症にかかっているふりをしたり,相手に吐きかけたりすることまで,様々な方法があるかもしれません。(サムエル第一 21:12,13と比較してください。)「取れる方法が限られているというのは思い違いにすぎない」とジェラード・ホイットモアは自著「路上で示す女性の知恵:都会で生き抜くためのハンドブック」の中で書いています。

      受動抵抗法 ― 体を使ってレイピストと闘う方法以外はすべてこれに含まれる ― には明晰な思考力が必要であり,この方法は相手の注意をそらしたり,相手の気持ちを落ち着かせたりするものでなければなりません。抵抗しても,相手がさらに腹を立てて暴力的になるようであれば,別の方法を試みます。しかし,考えている間にさらに人気のない場所に追い込まれることがないようにしてください。そして,叫び声を上げることが受動抵抗の中でも極めて効果的な方法であることを忘れないでください。―申命記 22:23-27と比較してください。

      激しく拒否するという方法もあります。相手の望みに屈するつもりはないことをあいまいな言葉を用いずに告げます。デートレイプされそうになった場合は,その行為が何に相当するかを率直に口にして相手を驚かせるという方法を試してみることができます。「わたしをレイプする気? 警察を呼ぶわよ!」と大声で叫べば,レイプしようとしていた相手はそれ以上の行動を考え直すかもしれません。

      反撃する

      話しかけてもうまくゆかない場合は,恐れずに能動抵抗に移行します。能動的に抵抗したからといって傷つけられたり殺されたりする可能性が大きくなるわけではなく,言うとおりにしたからといって身の安全が保障されるわけでもありません。そのため,レイプ専門家はたいてい,懸命に抵抗することを勧めます。

      女性は暴力で脅されても礼儀正しく,抵抗せず,おとなしく従うようにと幼い時からずっと教えられているため,反撃するのは難しいことかもしれません。ですから,襲われて躊躇しているうちに貴重な時間を失わないよう,前もって決意しておく必要があります。

      相手がたとえだれであっても,脅されたり圧力をかけられたりすることに対して怒りを感じる必要があります。レイプが計画的犯行であること,またレイピストはあなたが言いなりになるのを期待しているということを覚えておく必要があります。腹を立てることです。怖がってはいけません。「犯人の最大の武器は,あなたが抱く恐怖心である」と,研究者のリンダ・レドレーは述べています。オーバーに行動しているのではないか,ばかみたいに見えるのではないかという心配はいりません。「レイプされるよりは無作法なほうがまし」と,ある専門家は述べています。レイピストの撃退に成功した女性はたいてい,激しく抵抗し,噛みついたり蹴ったり叫んだりして,複数の方法を試みた人々です。

      レイプを防ぎきれなかった場合は,犯人を後で割り出すことに注意を集中します。相手の顔をひっかいたり服を破いたりすることができれば,血液や布切れなどの証拠が残ります。それでも,この時点まで来ると,あなたには抵抗する力が残っていないかもしれません。そのような場合,「犯人にレイプ“させた”と考えて自分を責めるのは禁物。レイプされたことを“証明する”ためにけがをしたり死んだりする必要はない」と,ロビン・ウォーショーは自著「レイプとは思わなかった」の中で述べています。

      [脚注]

      a 全く同じ状況というものは二つとないため,レイプを防ぐためのアドバイスも絶対確実と言えるものはありません。襲われた時に犠牲者がどの程度,またどのように抵抗すべきかについては,レイプの専門家の間でさえ意見が分かれています。

      [7ページの囲み記事]

      潜在的レイピストの特徴

      □ あなたを侮辱したり,あなたの見解を無視したり,何かを提案すると腹を立てたり迷惑がったりして,あなたの感情に虐待を加える。

      □ あなたの生活のいろいろな要素 ― 服装や友達など ― を自分の思い通りにしようとする。デートの時には,どこで食事するか,どの映画を見るかなど,何でも自分で決定したがる。

      □ 理由もなく嫉妬する。

      □ 女性全体を見下すようなことを口にする。

      □ 酒に酔ったり麻薬で“ハイ”な気分になったりすると,あなたにも同じことをさせようとする。

      □ 無理やり二人きりになろうとしたり,セックスをしようとしたりする。

      □ デートの時にはあなたにお金を払わせようとしない。払おうとすると腹を立てる。

      □ ぎゅっとつかんだり押したりといった,陰険な暴力さえ振るう。

      □ 寄り添って座ったり,あなたの行く手をさえぎったり,いやと言っても体に触ったり,実際よりもあなたのことを知っているかのような話し方をしたりしてあなたを威圧する。

      □ 欲求不満を感じるといつも腹を立てる。

      □ あなたを対等とはみなさない。

      □ 武器が好きで,動物や子供や自分より弱い人をいじめるのを楽しんでいる。

      ロビン・ウォーショー著「レイプとは思わなかった」より。

      [7ページの図版]

      レイピストの撃退に成功した女性はたいてい,複数の方法を試みた人々です

  • レイプに対処する方法
    目ざめよ! 1993 | 3月8日
    • レイプに対処する方法

      33年前,メアリーはナイフで脅されてレイプされました。その時の様子を話そうとすると,今でも心臓がドキドキし,手が汗ばみます。「女性にとってあれほど屈辱的なものはありません」とメアリーは泣きそうな顔をして言います。「本当に不快で恐ろしい出来事です」。

      レイプほど人の生涯の中で感情に破壊的な影響を与えるものはないかもしれません。その影響は一生消えないこともあります。レイプを生き延びた人々を対象に行なわれたある調査によると,ほぼ3分の1は自殺を考えたことがあり,大多数の人は自分という人間が変わってしまったと述べました。

      知り合いに襲われた場合には特に大きな精神的ショックを受ける結果になります。知り合いからレイプされる場合,被害者は他の人々からの支えをあまり期待できません。被害者が事件をだれにも話さないため,あるいは話したとしてもだれもレイプだと信じてくれないためです。また,被害者は自分が信頼していた人から傷つけられたため,自分を責め,自分には人を見る目がないのではないかと考えることが多いのです。

      援助を受け入れる

      レイプを生き延びた人々の最初の反応は,精神的打撃と否認です。ある女性は大学の大事な試験の直前にレイプされました。この女性は試験が終わるまでレイプのことは考えないようにしました。レイプを生き延びた別の女性はこう言いました。「信頼していた知人が目の前でレイピストに変わったのですから,その時のことは全部覚えていたくありません。知り合いにレイプされることがあるなんて知らなかったのです。ばかばかしく聞こえるかもしれませんが,それが分かってからは失望し,とても寂しい思いをしました」。

      レイプのことをだれにも話さないようにして否認を続ける女性もいます。襲われたことを何年間も抑圧するため,回復が進まず,他の感情障害を引き起こします。しかし本人はその根本原因がレイプにあることに気づいていないかもしれません。

      たいていの場合,他の人に話さなければ回復は始まりません。信頼できる友人は,起きた事柄が確かにレイプであり,本人の責任ではないことが理解できるよう助けてくれます。昔の格言が述べるとおり,「真の友はどんな時にも愛しつづけるものであり,苦難のときのために生まれた兄弟」なのです。(箴言 17:17)また,霊的な羊飼いは,「風からの隠れ場,雨あらしからの隠れ場所……のようになる」のです。(イザヤ 32:2。テサロニケ第一 5:14)被害者によっては,気持ちを整理するために強姦救援センターや専門のカウンセラーと連絡を取る必要があるかもしれません。

      多くの場合,生き延びた人々は罪悪感を抱いているため,レイプされたことについて話すのを恐れます。襲われた時に自分が性的に興奮した場合には特にそうです。自分は汚れた無益な人間だと考え,レイプされたことで自分を責めることがあります。しかし,実際にはレイピスト以外のだれにも責任はないのです。

      仲間のクリスチャンに打ち明けたメアリーはこう言いました。「話を聞いてくれる良い友達がいると気が楽になります。その友達には,自分は汚れていると感じたり,レイプされた恥辱を感じたりすることなく話すことができます」と言いました。

      被害者を支える

      他方,友人が被害者に対して結果論を述べたり,“本当にレイプされた”のかどうかを自分で判断したりするのは不適切な行為であり,愛情の欠けた行為でもあります。レイプされるのを楽しんだとか,ふしだらな行為だなどという意味のことを決して口にしてはいけません。助けを求められた時に友人にできる最も重要なことは,被害者の言うことを信じることです。安心させることです。被害者が話したいと思っている時には,そばにいて聞いてあげることです。それでも,細かい事柄を無理に話させようとするのは禁物です。

      レイプされてまだ時間が経過していない場合に友人にできることは,被害者が医師の診察を受けられるようにすることと,安全な場所にいられるようにしてあげることです。事件を警察に届けるよう勧めましょう。それでも,届けるかどうかは本人の決定にまかせます。被害者は自分を自分で操る力をすべて奪われるという経験をしたばかりです。次に何をするか本人に選ばせることによって,幾らかでもその力を回復させてください。

      被害者の家族は,起きた事柄に対して感情的に反応しようとする衝動に抵抗しなければなりません。レイプした者を捜し出そうとしたり,復しゅうを試みたりするかもしれませんが,どちらも被害者を助けることにはなりません。(ローマ 12:19)起きた事柄についてレイピスト以外の人をとがめても無駄であり,復しゅうを試みるのは危険です。犠牲者は回復に注意を集中する代わりに,家族の身の安全を心配するようになります。

      被害者の多くはレイプされたあと,性関係を違った目で見るようになるということも家族は知っておくべきです。被害者にとってセックスは凶器のように思えてしまい,自分が信頼している愛する人との間でさえ,しばらくは性関係を持つことに困難を覚えることがあります。それで夫は,妻が進んで応じるまでは強いて性行為を再開すべきではありません。(ペテロ第一 3:7)家族は,年若い被害者の自尊心を高め,何が身に降りかかっても愛し,敬意をもって見られていることを示すなら助けになれます。感情面で立ち直るには,非常に長い様々な段階を通過することもあるため,たゆまぬ支えが必要とされます。

      恐怖心と憂うつに対処する

      レイプされた女性は,最も強烈な反応は恐怖であると言います。レイプの被害者のほとんどは,襲われた時に自分はもう助からないと思います。後になっても,またレイプされるのではないか,加害者に偶然会うのではないかという恐怖心を抱くかもしれません。

      似たような音を聞いたり,臭いをかいだり,似たような場所に来たりすると,レイプされた時の恐怖心がよみがえることがあります。狭い裏通りでレイプされた女性は,そのような通りに入るのを怖がるかもしれません。家でレイプされた女性は,安心して家にいることができなくなり,仕方なく引っ越すかもしれません。加害者が付けていたコロンと同じような臭いがするだけで,不快な記憶がよみがえります。

      レイプされて妊娠することは非常に少ないとはいえ,妊娠するかもしれないという恐怖に震える被害者は少なくありません。また,被害者の多くは,当然のことながら,性行為感染症をうつされていないか心配します。被害者の約半数は憂うつ感や絶望感を経験したり,自分はつまらない人間だと感じたりします。そうした感情は数週間から数か月続きます。心配や恐怖症,発作的なパニック状態などと闘うこともあります。

      女性はレイプを防ぐことができない場合があるかもしれませんが,時がたてば自分の考えや感情,襲われたことに対する反応をコントロールできるようになります。自分自身に対する後ろ向きな考え方を前向きな考え方に置き換えることができるようになります。

      「自分がどれほど弱くて役に立たない無力な人間であるかを自分に言い聞かせる代わりに,自分がどれほどよくやっているか,暴行を受けた直後の動揺からどれほど立ち直ったかを自分に語りかけるようにしなさい」と,リンダ・レドレーは「レイプからの回復」の中で述べています。「毎日,後ろ向きな考え方が少し減るごとに,『自分を制する力が徐々に回復している』と語りかけなさい」。

      恐怖心は,原因を正確に見極めることによっても対処することができます。何が恐怖心を引き起こすかを被害者が見極めれば,その恐怖心がどれほど現実的なものであるか自問できます。例えば,加害者に似た人物を見かけた場合,その人は加害者ではない,自分に危害を加えたりはしないと,自分に言い聞かせます。

      恐怖心に対処する別の方法として勧められているのは,系統的脱感作療法です。被害者は自分が恐怖を感じる行動または状況を,程度の弱いものから強いものへと並べたリストを作ります。それから,緊張の一番少ない状況に自分がいるところを想像し,その状況を怖く感じなくなるまで想像し続けます。リストの順に一つずつ想像してゆき,最後にはリストの中のすべての状況を考えても落ち着いていられるようにします。

      それから友達の助けを借りて,実生活の中でそれを実行する段階に進むことができます。例えば,夜間外に出たり,独りになったりします。そうすると,ついには恐怖心をコントロールできるようになり,毎日の生活に影響が表われなくなります。もちろん,夜暗い裏通りを歩くといったある種の行動に恐怖を抱くのは正常なことですから,そのような状況のもとでの不安感を克服しようとするのは無意味です。

      怒りを向ける方向を修正する

      レイプを生き延びた人々は怒りも経験します。その怒りはまず男性すべてに向けられるかもしれませんが,時がたつうちに,加害者に焦点が合ってくるのが普通です。人は怒りを抱くと,しばしば相手構わずその怒りをぶつけます。また,感情を埋没させるという反応を示す人もいるかもしれません。しかし,怒りを建設的な方向に向けることは可能であり,対処の仕方によっては被害者の回復に役立ちます。聖書は,「憤っても[怒っても],罪を犯してはなりません」と述べています。―エフェソス 4:26。

      まず,生き延びた人は怒りを表わすことを恐れる必要はありません。他の人に話すことができます。訴訟手続きをしたり,記録を付けたりすることも怒りのはけ口になります。また,テニスやラケットボール,ハンドボール,ウォーキング,ジョギング,サイクリング,水泳などで体を動かすと怒りが取り除かれるだけでなく,憂うつな気分と闘うのに役立つという益もあります。

      あなたは自分の生活を自分でコントロールする力を取り戻すことができます。

      どうすればレイプはなくなるか

      女性がレイピストから身を隠したり,レイピストを撃退したりするだけでレイプがなくなるわけではありません。著述家ティモシー・ベイネケは「レイプ・男からの発言」(鈴木晶・幾島幸子訳)の中で,「レイプするのはほかでもない男であり,力を合わせてレイプを根絶できるのも,男なのである」と述べています。

      男性が女性を単なる性の対象として扱うのをやめ,暴力で相手を抑制しなくても良い関係を持てることを学ばなければ,レイプはなくならないでしょう。円熟した男性は個人的なレベルで声を大にして語り,他の男性たちを感化することができます。男性も女性も,性を差別するような冗談に同調したり,性的侵害を売り物にした映画を見たり,性を用いて品物を売り込む広告を支持したりすることを拒むことができます。聖書はこう助言しています。「聖なる民にふさわしく,あなた方の間では,淫行やあらゆる汚れまた貪欲が口に上ることさえあってはなりません。また,恥ずべき行ない,愚かな話,卑わいな冗談など,ふさわしくない事柄があってもなりません。むしろ感謝をささげなさい」― エフェソス 5:3,4。

      親は模範を示して女性に対する敬意を教えることができます。息子には,女性に対してエホバ神と同じ見方を持つよう教えます。神は不公平な方ではありません。(使徒 10:34)親は息子に,イエスと同じように女性たちと友達になることや,女性が周りにいても堅くならないよう教えることができます。親はまた,性交は配偶者だけを対象にした優しい愛情の行為であることを息子に教えることができます。暴力は大目に見るべきでないこと,他の人を支配するのは望ましくないことなどを親ははっきり示すことができます。(詩編 11:5)親は子供に,性の問題を親と率直に話し合うよう,そして性の圧力に立ち向かうよう勧めます。

      レイプは間もなくなくなる

      とはいえ,世界が革命的な変化を遂げなければレイプはなくならないでしょう。「レイプは個人の問題であるばかりか,家族の問題,社会の問題,国家の問題でもある」と研究者のリンダ・レドレーは述べています。

      聖書は世界中が暴力のない社会になることを約束しています。そこでは,人が『人を支配してこれに害を及ぼす』ことはもうありません。(伝道の書 8:9。イザヤ 60:18)エホバ神がレイプを含めどのような権力の乱用ももはや容認されない時代が,間もなく訪れようとしています。―詩編 37:9,20。

      その新しい世の社会では,すべての人が平和を好む人となるよう教育され,性や人種や国籍に関係なく互いに愛し合うようになります。(イザヤ 54:13)そしてそのとき,柔和な人々は友人や見知らぬ人を恐れることなく生活し,「豊かな平和にまさに無上の喜びを見いだす」ことでしょう。―詩編 37:11。

      [9ページの囲み記事]

      もしもレイプされたら

      □ 医師に診てもらう。

      □ レイプ被害者カウンセリングが利用できる場合,医療や法的手続きをする際にカウンセラーに同伴を要請することもできる。

      □ できるだけ早く警察に通報する。カウンセラーは,あなたの安全と他の女性たちの安全のためにも,届け出ることを勧めている。届け出ても起訴したことにはならないが,後で起訴することにした場合,届け出が遅れた分だけ裁判は不利になる。

      □ 証拠を残しておく。入浴したり,着替えたり,髪の毛を洗ったりくしを当てたり,指紋や足跡を消したりしない。

      □ 医療関係者は証拠を収集し,性行為感染症をうつされていないか,また妊娠していないかを検査します。妊娠予防の薬 ― あとから飲む避妊薬とも呼ばれている ― を勧められる場合,クリスチャンはその種の薬が受精卵を流産させるよう体に作用する可能性があることを知っておくべきである。

      □ 安心感を得るためには,たとえオーバーな反応と思われても,ドアロックを取り替えたり,友達のところに泊まったり,ドアの後ろに物を置いて封鎖するなど,できる限りのことをする。

      □ とりわけ,聖書に注意を向けて慰めを得る。暴行を受けている間,またその後エホバに祈る。み名を声に出して祈ることもできる。会衆の長老たちや他の親密な仲間たちに支えを求めて頼る。可能であれば集会に出席し,宣教の際に仲間のクリスチャンと一緒に働くようにする。

日本語出版物(1954-2026)
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