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精神病のなぞを解く目ざめよ! 1986 | 9月8日
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「精神分裂病が実際に優性的な遺伝子によって生じるとすれば,子供たちの75%が精神分裂病にかかるはずである」と,「精神分裂病:後成のなぞ」と題する本は述べています。
ですから,遺伝子以上のものが関係しているに違いありません。「思い・気分・薬」という書物の著者たちは,このように推測しています。「戦争に関係したストレスのような心理的な経験が,身体の化学的・生理学的な機能やホルモンの働きに多大の影響を与えることは十分に知られている。精神的な病気の場合,心理的な経験が,傷つきやすい人の病気を高進させる要素と判断されることも珍しくない」。では,遺伝子はどのように関係してくるのでしょうか。ベンダーとクライン両博士は言葉を続け,「遺伝子的な要素は,人を,特定の心理的な経験によって傷つきやすくさせるのかもしれない,というのが我々の全般的な見解である」と述べています。したがって,精神分裂病自体は遺伝するものではないにしても,その素因が遺伝することは十分に考えられます。
脳の異常
「精神分裂病会報」は,また別のなぞを提出しています。「提出された証拠は,精神分裂病患者の脳に異常がある場合の多いことを示唆している」のです。
アーノルド・シャイベル博士の意見によれば,正常な患者の場合,脳の一部である海馬と呼ばれる領域には神経細胞が「あたかも小さな兵士のように」一直線に並んでいます。ところが,ある精神分裂病患者の脳を見ると,「神経細胞とその並び方がひどくゆがんで」います。これが精神分裂病患者の幻覚と妄想の原因ではないか,と同博士は考えているのです。脳の空洞の広がっているのが発見された精神分裂病患者もいます。とりわけ興味をそそられるのは,精神的な病気を抱えている人の脳には生化学的な欠陥のある場合があるという発見でした。(次の記事をご覧ください。)
しかし,これまで,脳の中の一つの異常や生化学的な欠陥が一様にどの精神分裂病患者からも発見されたというわけではありません。そのために医師たちは,精神分裂病とは「数々の異なった原因によって引き起こされた,多くの障害」のことであろう,と考えています。(「精神分裂病:解決策はあるか」)潜伏期の長い病気のウイルス,ビタミンの不足,新陳代謝の障害,食物アレルギー ― これらはみな精神分裂病に関連があるとされている要因のほんの数例にすぎません。
しかし,この病気の真の原因と仕組みが医学の手に負えないものではあっても,E・フラ・トリ博士は,「精神分裂病は脳の疾患であり,現在ではそのようなものとして明確に認められている。糖尿病,多発性硬化症,ガンなどが疑問の余地なく本質的に科学的かつ生物学的なものであるのと同じく,精神分裂病もまさしく本質的に科学的かつ生物学的なものである」と述べています。うつ病も同じように生物学と関連しているということを示す証拠もあります。
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精神病のなぞを解く目ざめよ! 1986 | 9月8日
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[5ページの図版]
精神病に冒されることには,幾つかの要素が関係しているかもしれない
遺伝子?
環境?
脳の異常?
化学的な欠陥?
食事?
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