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ルイ・パスツール ― その研究により明らかにされた事柄目ざめよ! 1996 | 12月8日
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生物は自然に発生するのでしょうか。19世紀の一部の科学者はそう考えていました。生物は創造者の介入がなくても,生命のない物質から自然に発生できると考えていたのです。
しかし1864年4月のある春の夜,パリのソルボンヌ大学の講堂に集まった聴衆は,それとは違うことを聞かされました。科学者から成る委員会で優れた話をしたルイ・パスツールは,自然発生説の誤りを一つ一つ見事に証明したのです。
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ルイ・パスツール ― その研究により明らかにされた事柄目ざめよ! 1996 | 12月8日
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生物は生物から生じる
古来,昆虫や虫その他の生き物が腐敗した物質の中で生じることを説明するため,種々のたいへん奇抜な考えが提唱されていました。例えば,17世紀のベルギーのある化学者は,何と,小麦を入れたつぼに汚れたブラウスを詰め込んでネズミを生じさせたと豪語しました。
パスツールの時代には,この問題が科学者の世界で激しい論争を招きました。自然発生説の支持者と対決するのは大変な難題でした。しかしパスツールは,発酵について研究して学んだ事柄のゆえに自信を持っていました。そこで,自然発生説の問題に最終的な決着をつけたいと考え,種々の実験に取り組みました。
パスツールの行なったたいへん有名な実験のひとつは,首を白鳥のように細長く伸ばしたフラスコを使った実験です。養分を含む液を上部の口の開いたフラスコに入れて,液が空気に触れるままにしておくと,その液はたちまち細菌で汚染されます。ところが,首を白鳥のように細長く伸ばしたフラスコに入れた同様の養分を含む液は,いつまでも汚染されません。それはどうしてでしょうか。
パスツールの説明は簡単です。つまり,空気中のバクテリアは白鳥の首のような管を通過する際にガラスの表面に付着し,空気は液に到達するまでに滅菌されるのです。口を開けたままにしておいたフラスコの中で発生する細菌は,養分を含む液から自然に発生するのではなく,空気によって運ばれるのです。
空気が微生物を運ぶ媒体として重要なものであることを示すため,パスツールはフランスのアルプスの氷河の一つであるメール・ド・グラースへ行きました。そして標高1,830㍍の地点で,密閉されたフラスコの口を開けて空気にさらしました。20個のフラスコのうち,中身が汚染されたのは一つだけでした。その後,ジュラ山脈のふもとに行って同じ実験を繰り返したところ,標高がもっと低いその山ろくでは八つのフラスコの中身が汚染されました。こうして,標高が高くなると空気はより清浄になるため汚染の危険は少なくなることが証明されました。
パスツールはこうした実験を行なうことにより,生物は以前に存在した生物からしか生じないことを説得力のある仕方で実証しました。生物は決して自然に,つまりひとりでに生じるものではありません。
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ルイ・パスツール ― その研究により明らかにされた事柄目ざめよ! 1996 | 12月8日
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パスツールが関係して勝利を収めた,生物の自然発生説に関する論争は,単なる科学上の議論などではありませんでした。少数の科学者や知識人が論じ合った興味深い問題以上のものでした。それよりもずっと重大な意味を持つ問題,つまり神の存在にかかわる証拠が関係する問題でした。
科学を専門分野とするフランス人の哲学者フランソワ・ダゴニエは,パスツールの「反対者は,唯物論者であれ無神論者であれ,単細胞生物が腐敗した微粒子から生じ得ることを証明できると考えていた。したがって彼らは,創造という問題から神を排除することができた。しかしパスツールに関しては,死から生命が生ずる過程などあり得なかったのである」と述べています。
今日に至るまで,実験,歴史,生物学,考古学,および人類学による証拠はすべて,パスツールの実証したこと,つまり生物は無生物からではなく,以前に存在した生物からしか生じないことを引き続き示しています。その証拠はまた,聖書の創世記の記述にある通り,生物は「その種類にしたがって」繁殖することをもはっきりと示しています。子孫は常に親と同じ「種類」,つまり同型なのです。―創世記 1:11,12,20-25。
そういうわけで,ルイ・パスツールはその研究を通して,それと知ってか知らずか,生物が地上に出現するには創造者が絶対に必要であるという考えに有利で進化論には不利な強力な証拠や証言を提供しました。パスツールの研究は謙遜な詩編作者が認めたこと,すなわち,「エホバが神であることを知れ。わたしたちを造ったのは神であって,わたしたち自身ではない」ということを反映していました。―詩編 100:3。
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