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歯痛 ― その苦痛の歴史目ざめよ! 2007 | 9月
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笑気とも呼ばれる亜酸化窒素に麻酔作用があることは,1772年に英国の化学者ジョセフ・プリーストリーが初めてそれを作り出してから間もなく知られるようになりました。しかし,1844年まで,だれもそれを麻酔に用いることはしませんでした。その年の12月10日,米国コネティカット州ハートフォードの歯科医ホレス・ウェルズは,ある講演会に出席しましたが,その際に余興として笑気が使われました。ウェルズは,笑気を吸った人が重いベンチに足のすねをぶつけても全く痛みを感じていないことに注目しました。ウェルズは思いやり深い人だったため,自分が患者に痛みを与えていることをひどく気に病んでいました。それですぐに,笑気を麻酔に用いることを思いつきました。しかし,他の人に使う前に,まず自分で試してみることにしました。翌日,ウェルズは自分の治療用のいすに座り,意識がなくなるまで笑気を吸い込みました。それから同業者が,ウェルズのうずいていた親知らずを抜きました。これは歴史的な出来事でした。ついに痛みのない歯科治療が可能になったのです。a
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歯痛 ― その苦痛の歴史目ざめよ! 2007 | 9月
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[29ページの図版]
亜酸化窒素を麻酔に用いた最初の歯科治療の様子を描いた絵,1844年
[クレジット]
Courtesy of the National Library of Medicine
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