-
スウェーデン1991 エホバの証人の年鑑
-
-
背丈は小さくても霊的には巨人のアクセル・リチャードソン兄弟は,こう述べています。「1936年のこと,私は細身で小柄な妻のアスタと共に,エームトランド県の西部にある広大な山岳地域で奉仕するよう割り当てられました。当時私たちが所有していた持ち物と言えば,2台の自転車とテント,マットレス・ケース,それに1個のスーツケースだけでした。それでも,孤立したラップ人の宿営地や山あいの農場を一つ残らず訪問して自分たちの区域を網羅する決意を固めました。ブーツを履いて山道を歩くことが多く,足がむくんで痛みを伴いました。日用品と文書は背負ったり腕に抱えたりして運びました。起伏が激しく,条件の厳しい山地を1日に何十キロも進む必要があったのです。アクセルは妻が同行しなかった時のある経験を思い起こして,こう言いました。「ある親切な見知らぬ男性がモーターボートで私を湖の向こうまで運んでくれました。岸辺に降ろされた私は,その人が対岸に戻って行くのを眺めました。辺りを見渡しましたが,そこにいたのは私一人で,あとは自転車と重い書籍かばんがあるだけでした。全く人けのない所だったのです。私は見捨てられた気がしてなりませんでした。その区域には全部で3軒の家しかありません。それらの家を訪問してから,私は何としても移動せねばと思いました。それにしても,どうやって移動するのでしょうか。片側は湖で,その反対には険しい山が立ちはだかっていました。選択の余地はありません。一方の肩に自転車を担ぎ,もう一方には書籍かばんを掛けて,その山を登り始めました。骨の折れる坂道を何時間もあえぐようにして上り詰めると,私は安堵のため息をついて,反対側を下り始めました。その山のふもとに住んでいたある男性が,『一体どこからやって来たのか』と尋ねました。私が今しがた下りて来た高い山を指差すと,その人はびっくりした様子で私をまじまじと見つめて,『あの方角から,しかも自転車に乗って来たのはあんたが初めてだよ』と言いました。私は良いたよりのためにそのような努力を払えたことを幸せに思いました」。
-
-
スウェーデン1991 エホバの証人の年鑑
-
-
[145ページの図版]
アスタ・リチャードソンとアクセル・リチャードソンは1936年中,エームトランド県で奉仕した
-