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歯痛 ― その苦痛の歴史目ざめよ! 2007 | 9月
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当時の入れ歯は,歯型から作られるのではなく,象牙でできていたので,落ちないようにするのが大変でした。英国の紳士たちも,ワシントンと同じ苦労を経験しました。イギリス人のさりげないユーモアのセンスは,大笑いして義歯が見えるのを避ける必要があったことに端を発しているとも言われています。
ワシントンが木の入れ歯をしていたという言い伝えもありますが,それは真実ではないようです。人間の歯,象牙,鉛でできた入れ歯は持っていましたが,木製のものはありませんでした。ワシントンを治療した歯科医たちは,おそらく墓泥棒から歯を入手したのでしょう。歯の商人は,軍隊のあとに付いて行き,戦闘が終わってから,死者や瀕死の人の歯を抜くことさえしました。そのため,入れ歯はお金持ちのぜいたく品でした。1850年代に加硫ゴムが発見され,義歯床(入れ歯の歯ぐきに当たる部分)を作るのに使われるようになるまで,入れ歯は一般の人には手の届かないものでした。
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歯痛 ― その苦痛の歴史目ざめよ! 2007 | 9月
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[28ページの図版]
米国の初代大統領ジョージ・ワシントンが使っていた象牙の入れ歯
[クレジット]
Courtesy of The National Museum of Dentistry, Baltimore, MD
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