世界展望
資格のある僧職者の不足
「プロテスタントやローマ・カトリックやユダヤ教の指導者たちはいずれも,僧職者の数と質を維持するという難題を抱えている。教会の必要と,僧職志望者の背景や目標との間にずれがあるかもしれないとみる宗教指導者は少なくないが,そのずれが問題をこじらせている」と,ニューヨーク・タイムズ紙は伝えている。今の神学生には,25年ほど前の神学生に比べて「明確な違い」があると言われる。プロテスタントの神学校では,牧師志望者の中で女性の占める割合が以前よりもずっと大きくなっている。それに志願者が減っているため,学力のレベルを下げて,すれすれの生徒をもっと多く受け入れざるを得ない状況である。カトリック当局者は,神学生の性に関する態度や,「今までになく大勢の同性愛者が[司祭に]なりたがっているらしいこと」を憂慮している。そして同記事はこう付け加えている。「信仰や宗派,性別や年齢のいかんを問わず,今の神学生とその先輩たちの間に一つの違いがあることは確かなようだ。今の神学生は,自分自身の宗教の伝統を,以前ほどしっかりと教え込まれていない」。
イタリアのカトリック教徒はエホバの証人の増加を憂慮
「ローマの幾つかの教区では,エホバの証人に関する警告が説教の中に度々出てくる。教会が憂慮しているのは,エホバの証人の増加率と,新しい信者を獲得するための精力的で成功しているかに見える方法である」と,カトリック・スタンダード・アンド・タイムズ紙は述べている。今年の初めに,神学校の教授であるモンシニョール・ロレンツォ・ミヌティは,法王ヨハネ・パウロ2世に,「エホバの証人は教会の土台の下に穴を掘る“モグラ”である」と語り,「証人たちを“疫病”になぞらえた」。そして,あたかも伝染病を食い止めるかのように,予防措置を講じるよう教会に求めた。ミヌティによれば,1982年にはローマに10の王国会館があったが,1989年には66にまで増加した。一方,市内にあるカトリック以外の他の寺院や教会は全部合わせても44にしかならない。同紙は,「法王と教会の地における証人たちの成功の秘けつは,福音伝道に対する熱意である」と述べ,「イタリアにおけるカトリックの新しい福音伝道」の必要性を訴えた。
消えゆく巨人
シロナガスクジラはまだ危機を脱してはいない。残っているのは,科学者たちの期待よりもはるかに少数である。シロナガスクジラの捕獲は1966年に全面的に禁止されたが,絶滅寸前の状態から立ち直ってはいない。商業捕鯨が行なわれる前は,22万5,000頭もいた。科学者たちは,1万1,000頭から1万4,000頭は残っているものと思っていたが,直接数える方法による予備調査の結果からすると,多くて1,200頭から1,500頭といったところらしい。体長が30㍍に達し,体重は150㌧にもなる ― 象約30頭分に当たる ― この巨大なクジラは,地球に住んだ最大の生物と言えよう。1年間授乳し,成獣になるのに6年を要し,2年に1度しか子を生まないため,絶滅の危機からの回復はゆっくりである。しかし数が少ないもう一つの理由は密漁かもしれない。
聖書に対する需要
ソ連では聖書に対する需要が高まっている。1年半の間に200万冊の聖書が輸入されたにもかかわらず,聖書に対する需要は依然衰えていない。ロンドンのチャーチ・タイムズ紙が伝えているように,「1988年中にソ連に輸入された聖書のほうが,1917年の革命以降の全期間に輸入された聖書よりも多い」。以前とは打って変わり,すでに聖書協会世界連盟からさらに輸入する許可が出ている。
もっと楽な出産
しゃがんだ姿勢をとれば妊婦はもっと楽に出産できる,と述べているのは英国の産科医たちである。400例ほどの出産に関する調査によって,ほとんどの場合,背筋を伸ばした姿勢をとったほうが,何かに寄りかかった姿勢よりも分娩が円滑にいくことが分かった。さらに,何かの支えを得てしゃがむなら,より強く効果的にいきむことができ,結果として分娩の第二期がかなり短くなり,鉗子を使う必要も相当減少することが判明した。現在は,2種類の支えが用いられている。分娩いすとクッションである。この研究を指導した,英国バッキンガムシャーのミルトン・ケインズ総合病院のジェイスン・ガードシ博士は,クッションの使用を勧めている。ベッドの上にじかに置けることに加え,それを使えば骨盤が大きく広がるため楽に出産できるからである。このクッションを使った女性の95%は,次の子を産む時も,しゃがむ姿勢にすると述べた。興味深いことに,聖書の出エジプト記 1章16節は,この姿勢に言及している。
新しい電話サービス
記憶装置やデジタル・ディスプレーのついた電話,自動ダイアル式の電話や手を使わないで操作できる電話など,様々な機能を持つ電話が普及してきた。それでもまだ電話はつながった時しか鳴らない。ところがこれも今や変わりつつある。米国の電話会社は,新しい信号装置を取り付け,幾つかのボタンを押すだけで電話が機能するという新しいサービスを色々と行なっている。例えば,コール・トレース。これは通話が非常に短くても,相手が電話を切った後でも,電話会社に相手の電話番号が記録されるというもの。コール・ブロック。これは電話器に入力しておいた番号からかけてきた人が,今は当人が電話に出られないというメッセージを聞くというもの。リピート・コール。これは,話し中の番号を電話器自体が30分間かけ続けることができるというもの。その間も,ほかに電話をかけたり,ほかからの電話を受けたりできる。リターン・コール。電話をとろうとしたら切れてしまった時でも,この機能があれば,こちらにかけてきた最後の人の番号をかけることができる。プライオリティー・コール。これはある特定の番号からかかってきたら,電話器の音でそれを知らせるというもの。通話者身分証明。これは,電話をかけてきた相手の番号がスクリーンに表示されるというもの。
悪い手本
子供はままごとやお医者さんごっこをして大人の世界をまねるが,米国ペンシルバニア州レバノンの警察が,ある運動場の売り場を発見した時には衝撃が走った。子供たちが,砂糖の入った袋やむしった草を入れた袋を使って麻薬組織のまねをしていたのである。そこには,7歳の男の子と9歳の女の子が持ってきたという偽物の麻薬のほかに,作り物の麻薬の取り引きを記入した元帳や仮の借用証書などがあった。あるメモには,「コカイン,小袋半分で55㌣(約77円),小袋一杯で1㌦(約140円)」と書かれていた。子供たちは親の手本をまねている,と刑事のロバート・ボーマン2世は述べた。「お金はもうけたいが働きたくないのだ」。
反抗的なヘアスタイル
ニューヨークとロサンゼルスで,またしても奇抜なヘアスタイルが登場した。髪を短く刈って,様々な模様をそり込む。デザインには,ニューヨーク市のシルエット,金門橋,格式高い企業のロゴなどがある。ウォールストリート・ジャーナル紙によると,ある映画がそのスタイルの人気を高めるのに一役買った。主人公が稲妻の模様に髪を刈っていたからである。そのヘアスタイルが選ばれた理由について,同紙は,「反抗の精神を表わすものを見つけたかった」という当の映画監督の言葉を引用している。
原油流出事故を避ける
原油流出事故を減らすための一つの案は,船体を二重にしたタンカーを造ることである。しかし,そうすると積み荷のスペースは減るし,船体が破損すれば原油の流出は防げない。スウェーデン政府は,タンカー設計の「真空法」という,もっとましな方法を提案している。エコノミスト誌(英文)に説明されているように,これは原油を逃がさないようにするため静水圧の原理を利用する。簡単な例で考えてみよう。ストローで中程まで液体を吸い上げ,それからストローの一番上をつまむと,それを放さない限り液体は逃げない。スウェーデンの技師たちは,貯蔵部の上方の空間を密閉できれば,下に穴があいても原油は漏れないのではないかと考えた。それで,貯蔵部を封じ,幾つかのバルブを開けておくことを提案した。そうすれば,事故が起きた時には,それらのバルブを通してポンプで空気を抜き,圧力を下げてから,貯蔵部を密閉すればよい。これまでのところ,この案は無視されており,実験も行なわれていない,と同誌は述べている。
写真の快挙
海王星は現在のところ太陽から最も遠い惑星であるが,宇宙探査機ボイジャー2号が,細部まではっきりと写っている海王星の写真を送ってきた時,関係者たちは感激に浸った。この1㌧の小さな宇宙探査機は,12年に及ぶ約70億㌔の旅において,惑星がほぼ一直線に並ぶという,176年に1度しか巡ってこない好機をとらえた。木星を皮切りに土星,天王星へと接近し,搭載している2台のテレビカメラを含め11台の科学装置から情報を送ってきた。約45億㌔のかなたから,海王星とその衛星の質の高い写真を地球に送るのは,容易な業ではない。そこでは,太陽からの光は地球に届く光の1,000分の1程度しかなく,長時間の露光と,ぶれないようにカメラを動かすことが必要になる。ボイジャーの20ワットの送信機から出された信号は,地球の追跡ステーションに届く時には1ワットの10億分の1程度にまで弱まり,宇宙の電磁波による雑音も混じっていた。