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4色刷り印刷を詳しく調べる目ざめよ! 1987 | 1月8日
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絵や写真は,スキャナーと呼ばれる大きな機械によって,一定の規格に基づいた小点の集まりに作り直されます。スキャナーはコンピューターを備えていて,濃淡を電子的に読み取り,種々の大きさの点に変換します。そして,それらの網点はレーザー光線で写真のフィルムに撮られます。こうして,網点の大きさの変化により,網点に付いたインキが刷版から紙へ転写されることによって灰色の濃淡が得られます。
白い紙に印刷する場合,灰色が薄ければ薄いほど網点は小さく,網点が大きめになれば灰色は濃くなります。ですから,それらの網点に目が“ごまかされて”,黒や様々な灰色の,濃淡の連続した元の写真や絵と同じように見えるのです。
いっそう複雑な,色の複製
4色刷りの複製は,白黒よりもさらに複雑です。これには,3原色と黒が用いられます。すなわち,(1)シアン(緑がかった青),(2)マゼンタ(紫がかった赤),(3)黄,それに(4)黒です。これら4色の各インキの付いた網点が印刷機によって紙の上に刷り重ねられ,様々な色が紙面に複製されます。
しかしまず,元の絵や写真の色を3原色と黒に分解し,それぞれの色をその明度に合った大きさの網点に変換することが必要です。それにしても,これら四つの色で,紙面に見られる他のあらゆる色をどのようにして出すのでしょうか。
では,この雑誌に載せたいと思う緑草の写真があるとしましょう。印刷の工程で紙は印刷機の四つの部分を通過し,各部分でそれぞれの色が一つずつ加えられます。一組の刷版の網点はシアン色のインキを付けて,網点でかたどられた模様を紙に転写します。紙は印刷機の中を高速で移動してゆき,網点の模様を有する別の組の刷版が今度は黄色のインキをシアン色の網点と並ぶように転写します。シアン色と黄色のインキおよび白い紙の反射する光が目に入ると緑色に見えます。印刷機の四つの部分で4色の網点の組み合わせを定めることによって,虹に見られる他の色をすべて出すことができます。
一連の作業工程
完成品が印刷機から出てくるまでには多くの仕事があります。印刷される写真やさし絵のフィルム(ネガあるいはポジ)を作らなければなりません。このフィルムが印刷機用の刷版を作るための基礎になります。
雑誌の色付きのページを印刷するには,三つの主要な色のフィルムがそれぞれ1枚と黒のが1枚,最低4枚のフィルムが要ります。このフィルムは協会のレーザー・スキャナーで作製されます。スキャナーは複製する写真や文字を走査してその映像を記憶装置に蓄えます。
スキャナーは長さ3㍍の旋盤のような格好をしています。その機械には,集中度の高い光線を発する装置があって,その光線が,円筒に巻き付けられて回転するカラーの絵を精査します。その光線は走査しながら反射し,光学装置によって主要な色別に三つに分けられます。各々の光の進路にはフィルターがあり,一つの原色以外の色をすべて遮断します。原画の黒く見える部分については,3原色の信号を一緒にすることによって出せます。
スキャナーは,コンピューターの助けによって各々の色の明度を読み取って電子信号に変え,電子の“ふるい”にかけてから対応する網点に変換します。そしてそれはコンピューターの記憶装置に蓄えられます。
写真や絵が大きすぎたり固すぎたりしてスキャナーの円筒に巻き付けることができない場合にはどうするのでしょうか。その場合はカラー写真かスライド(35㍉以上)にして円筒に取り付けます。スキャナーはその映像を望みの大きさに拡大したり縮小したりできます。
ページ割り付け室
次に,コンピューターに蓄えられた情報はページ割り付け室で映し出されます。このページ割り付け室にはキーボードと大きなテレビ画面に似た監視装置があります。オペレーターは特定のキーを操作して挿絵を画面上に呼び出し,電子的な方法によって色合いに必要な調整を加えます。細かい点を鮮明にしたり削除したりすることができます。
このページ割り付け室では,幾つかの異なった挿絵の要所要所を取り混ぜて一つの挿絵にすることもできます。例えば,1枚の絵から夕日の沈む情景,別の絵からは一人の男の人,さらに別の絵から一軒の家の部分を取って組み合わせ,日の沈むころ家の前に人がいるという情景の絵を作ることができます。
その絵を表わす電子信号は,調整が加えられた後,別の機械へコンピューターによって送られ,校正刷りかまたはフィルムが作製されます。
校正用色刷りの作製
校正用色刷り装置では,赤,緑,青の光線が用いられて色の校正刷りが作製されます。この校正刷りは,カメラ屋さんに現像を頼んだときに戻ってくる写真と同種の印画紙で作られます。
幾人かの責任者がその校正刷りを分析します。写真の中の空が十分に青くなくて,緑っぽいと感じる人がいるかもしれません。「黄色をもう少し取り除いたほうがよいのでは」と言う人もいれば,「いや,果物かごの中のバナナの黄色はそのままでなければならない」と言う人もいます。それで,空から少し黄色を除き,バナナからは除かないよう色合いを調整する必要があります。これを行なうために割り付け室に戻し,そこでオペレーターが変更を加えます。
これで,印刷しようとする挿絵の実物大のコピーが出来上がりました。この挿絵でよいということになれば今度は,フィルムの作製に備えてページを順番に並べるようコンピューターに命じます。
完成品
フィルム記録装置にはレーザーが備わっています。そのレーザー光線は,信号に反応し,次いでネガフィルム上に電子の網点を写します。色ごとに別々のフィルムが作製されます。元の絵からマゼンタ色を抽出して撮ったフィルム,さらにシアン色,黄色,および黒をそれぞれ抽出したフィルムが必要です。これらのフィルムに撮られた絵は雑誌に載る挿絵と同じ大きさです。
挿絵の入った雑誌の最終的な組み立てがライト・テーブル上で行なわれます。こうして初めて,挿絵を表わす網点を全部含んだ所定の数のフィルムができ,それらは印刷される順序通りになっています。これらフィルムのフラットはイメージ・アセンブラーと呼ばれる人に渡されます。その人はフィルムのでき具合いを見,別の一枚のプラスチック・シートにネガ・フィルムになった文字すなわち説明文をはり付けます。この仕事をする人たちは拡大レンズを使って,それぞれの色のフィルムが正確に重なり合うかどうかを確かめます。そうしないと,ぴったり合わない場合には,印刷する際に絵に色ずれが生じます。
これで,雑誌の正しい場所に挿絵と文字が入ったことになります。この雑誌のすべてのページが所定の位置に置かれるともう一度校正刷りを作ります。これがよしとされたなら,それらの物をブルックリンの工場とニューヨーク州ウォールキルにある工場の製版室へ届けます。
一そろいの複製フィルムは世界中のものみの塔協会の4色刷りを行なう支部へ送られます。こうして各支部はそのフィルムからオフセット刷版を作ります。
製版の工程において,フィルムに高集中度の紫外線を透過させると,挿絵と文字がオフセット刷版に焼き付けられます。刷版はアルミニウムの合金でできており,化学的なコーティングが施されています。これらの刷版は印刷機のシリンダーに取り付けるために曲げられるのですが,どれくらいの厚さなのでしょうか。印刷機の型によって異なりますが,ここブルックリンの工場ではその刷版の厚さはわずか1,000分の8インチ(約0.2㍉)です。ニューヨーク市郊外にあるものみの塔農場内の工場の印刷機はもっと大きいので,その刷版はもう少し厚いものになっています。
刷版が印刷機に所定の色の順序で取り付けられ,こうして雑誌を印刷する準備が整います。印刷機のシリンダーが回転すると,各刷版には特別の容器に入っているそれぞれ1種類の色のインキが付きます。インキはその金属版からゴムあるいはブランケット胴へ転写され,それが次にインキを紙へ転写します。1色ずつ重ねて4色全部が紙に押し付けられると,ほぼ天然色になります。
しかし,まだ終わったわけではありません。4種類のインキを刷り重ねると粘つくので,すぐに乾かさなければなりません。それで,紙は印刷が終わるまでに急速高温乾燥機の中を通ります。高温のためインキはすぐに乾きます。熱くなった紙は次に水で冷やされたローラーの上を通過して温度が下がり,インキは固まります。
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4色刷り印刷を詳しく調べる目ざめよ! 1987 | 1月8日
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[24ページの図版]
スキャナーをセットするオペレーター
差し込み図: 挿絵の一部を引き伸ばすとこのように見える
[25ページの図版]
割り付け室のオペレーター
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