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どんな映画を見てもかまわないのだろうか目ざめよ! 1990 | 7月22日
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映画 ― 最近の傾向
「快楽主義,性,暴力,貪欲,利己主義」。児童心理学者ロバート・コールズによると,これらは最近のほとんどの映画が売り物にしている価値観です。ビンス・ハモンド博士を中心に行なわれた調査も同じような結論を出しています。「工業国で上映される映画の大半は,少なくとも幾らかの暴力シーンを含んでおり,暴力的な映画,あるいは極めて暴力的な映画という評価を得ているものも少なくない」。ハモンド博士の調査班は,様々な国で作られた1,000本の映画を調べました。その結論はどのようなものでしょうか。「暴力的な映画の製作は,世界的な問題である」。
若者の間で特に人気が高いのは,悪魔に取りつかれることや,強姦,残虐極まりない流血などを描いたホラー映画です。セブンティーン誌(英文)に引用されたニール・シニア博士の言葉どおり,この種の映画は,「だれもが自分の家族には絶対に起きてほしくないと思う事柄ばかりを描いている」のです。それでも,多くの若者がそのような映画をこぞって見に来ます。
また,性を売り物にした映画も激増しています。ある大学教授によると,「カナダでは,性を売り物にしたビデオを最もよく見ているのは12歳から17歳までの若者で,結果として性行動に対する若者の見方がゆがめられる場合もある」とのことです。
しかし,映画業界はあまり気にしていない様子です。バラエティー誌が伝えるところでは,露骨な暴力や性を売り物にした映画が増えている一方,健全な家族向けの映画はほとんど作られていません。では,劣悪な映画を見て悪影響を受けるということがあるのでしょうか。
目と耳に対する攻撃
映画は人間の感覚に鋭い攻撃を仕掛けます。イエスは,「体のともしびは目です」と言われました。(マタイ 6:22)また,見るものは人に強い影響を及ぼし得ます。ある百科事典が述べるとおり,「思いは目に従う」のです。普通,思いは目が何に焦点を合わせるか,何を見るかを制御します。しかし,大きなスクリーン上を動く,実物よりも大きな映像を見つめるときは,事実上,思いを映画製作者の意志にゆだねることになりかねません。中には,映画の世界に浸りきってしまい,横からひじで強くつついてやらないと,映画の魔力に取りつかれたままになる人もいます。
「聞く耳」も,考えと行ないに強い影響を与えます。(箴言 20:12)うっとりするような映像やせりふに加え,バックに流れる音楽が感情を揺さぶり,恐怖心や興奮や怒りや情熱をかきたてます。その結果,映画の世界が現実味を帯びるようになり,現実と虚構の区別がつかないような観客も出てくるのです。
思いと道徳観念に対する攻撃
映画の視点あるいは観点も,見る人の反応に大きな影響を及ぼします。ですから映画製作者は,たとえ主人公が犯罪者や残虐極まりない権力の亡者であったとしても,見る人がその登場人物に共感を覚えるような工夫を凝らします。b 注意しないと,犯罪者を応援することにもなりかねません。
最近のパロディー物のホラー映画が上映された映画館で,観客がどんな反応を見せたか考えてください。かみそりの指を持った狂人が手当たりしだいに切りつけるシーンが続出する中,観客はその血まみれの殺人者に声援を送ったのです。思考をあやつるカメラに誘われるまま,観客は価値観を失い,犠牲者に対する一切の同情心を無くしてしまったように見受けられました。
こういう態度は,他人の災難を喜んではいけないという聖書の訓戒に著しく反しています。(箴言 17:5)また,『自分にして欲しいと思うことはみな人にもする』というイエスの黄金律とも真っ向から対立します。(マタイ 7:12)さらには,殺人者に声援を送ることは,「優しい同情心」を示すようにという聖書の勧めと調和するでしょうか。(エフェソス 4:32)「悪を行なう者たちの会衆」に同調することにならないでしょうか。―詩編 26:4,5。
巧妙な影響
しかし,映画の影響は一時的で長続きしないと感じる人もいるかもしれません。また言うまでもなく,映画にそういうシーンが出てきたからといって,だれかに手当たりしだいに切りかかるような人もいないでしょう。しかしニュージーランドのある新聞が伝えているとおり,「暴力的な映画やビデオと,それを見る人の暴力行為との間には関連があるという証拠が増えて」います。同様に「青年期」という本の中でも,「テレビの暴力シーンと攻撃的な態度」との相関関係を調べた数多くの研究が取り上げられており,その二つの関連性を示す「山のような証拠」があると指摘されています。
また,だれかが映画のシーンに刺激されて,ぞっとするような行動や無茶な行為に走ったというニュースを耳にすることもあります。例えばある若者は,高速で走る小型トラックのボンネットの上で逆立ちしようとして負傷し,命を失う結果になりました。その少し前に,人気映画の中でその離れ業のシーンを見たのです。ですから,映画が人の行動に影響を及ぼすと言っても,それは決して不当なことではないのです。
とはいえ,どちらかというと,映画はもっと巧妙な影響を与える場合が少なくありません。例えば,あなたの周りにも,映画スターの話し方や服装やスタイルをまねようとしている人が大勢いるのではありませんか。これは映画に強い影響力がある証拠ではないでしょうか。それに,悪い映画を見ると若者の道徳観念がむしばまれるようです。そのため研究者のトマス・ラデキ博士は,バイオレンス映画を長く見ていると,「暴力に対してだんだん鈍感になってゆく」と言っています。
聖書は,「エホバは義なる者をも邪悪な者をも自ら調べ,その魂は暴虐を愛する者を必ず憎む」と述べています。(詩編 11:5)バイオレンス映画をいつも見ていると,暴力に対する態度が影響を受ける恐れはないでしょうか。暴力がおもしろくなったり,楽しくなったりさえしないでしょうか。気がついたときには,問題やいさかいを力ずくで解決する傾向が以前よりも強くなっているということはあり得ないでしょうか。まさに箴言 10章23節が述べるとおり,「犯罪は愚かな者の娯楽」なのです。―新アメリカ聖書。
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どんな映画を見てもかまわないのだろうか目ざめよ! 1990 | 7月22日
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a 米国では,アメリカ映画協会によって準成人映画に指定された映画については,17歳以下の若者が(親か保護者の同伴なしに)入場してはいけないことになっています。この種の映画は大抵,露骨な暴力シーンや汚い言葉,あるいは濃厚なラブシーンやヌードを含んでいます。ところが,この制限には強制力がないため,ほとんどの場合,若者も入場を許されています。
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