世界展望
災害に対する備えが必要
「『世界災害報告 1999』によると,昨年の自然災害シーズンは史上最悪で,未曾有の被害をもたらした」と,国際赤十字・赤新月社連盟の声明は述べている。干ばつ,土壌の生産力低下,洪水,森林伐採などのために,2,500万人がやむなく自分の土地を後にして,都市部の不法居住地域に身を寄せざるを得なくなり,「戦争その他の紛争以上に多くの『難民』」が生まれている。最も大きな打撃を受けたのは,自然災害による犠牲者の96%を出している発展途上の国々である。過去5年間に救援機関の資金は40%減少した。災害への備えに対する見方の変化が必要なことを強調して,同連盟の災害対策部長ピーター・ウォーカーはこう述べている。「災害時の条件反射的な対応がうまくいっていない。……家に火がついてから消防署を作る資金を集めるようなことはしていられない」。
竹が花を咲かせるときは危ない
インド北東部の広大な地域は竹林で覆われている。マニプル州とミゾラム州では,竹が花を咲かせ始めたために懸念が生じた。なぜだろうか。それらの地域に生育する,マウトング種の竹は約50年に一度だけ花を咲かせるが,それがネズミを引き寄せる。ネズミはその花を食べてどんどん殖え,作物を荒らすようになり,やがて飢饉のような状態をもたらす。タイムズ・オブ・インディア紙によると,1954年から1955年にかけて竹が花を咲かせた後,1957年に飢饉が起きた。飢饉の再発を未然に防ごうとして,ミゾラム州政府はネズミ駆除キャンペーンを行なった。ネズミの尾を1本1ルピーで買い上げたのである。4月の時点では,約9万本の尾が集まり,この対ネズミ・キャンペーンを継続するための資金が募られていた。
トマト 対 がん
米国がん研究協会が最近発表した研究によると,トマトには前立腺がんの増殖を抑制する物質が含まれているのかもしれない。トマトを赤い色にしている物質リコピンは,前立腺の悪性腫瘍を小さくし,体の他の組織への転移を抑制する可能性がある。米国国立がん研究所が発表したある研究論文も,「トマトとその生成物すべてが,前立腺がんのみならず,膵臓や肺や結腸のがんにも有効であったことを明らかにした」。
子どもが抱える心の問題
英国のメンタルヘルス財団の報告によると,同国の20歳未満の若者の5分の1は心の問題を抱えている。「政府,専門家,マスコミなどは子どもたちの身体面での福祉と学業成績にばかり気を取られているようだ」が,子どもたちとしては「情緒面で成長できないでいる」と,同財団の役員であるジューン・マッケローは述べている。同報告によれば,それには様々な要因が考えられる。子どもたちは「ますます幼いときから試験や評価によって自分を同年齢の子どもたちと比較するよう促され」,ほとんどの子どもは自分を不出来な人間だと思いつつ学校を卒業する。戸外での遊びは,子どもたちが「よく考えた上で決定を下し,自信をつけ,より快活になる」のに役立つが,コンピューターやテレビがそれに取って代わってしまった。各種の宣伝は,「自分の持っていないものが欲しい,他の人のようになりたいという欲望をかき立てる」。その上,離婚率は50%に達しようとしており,多くの親は仕事に出ているため,子どもたちのストレスは「高まっている。それは家族から感情的な安定を得られないからだ」と,デーリー・テレグラフ紙は述べている。
上がったものは必ず落ちる
米国の一部の地域や中南米の幾つかの国では,人々が新しい年の始まりをお祭り騒ぎで祝い,空に向けて銃を撃つことが珍しくない。しかし,警察はそうしないようにと勧めている。「空に向けて発砲すると,その弾丸は必ずどこかに落ちる」と,ロサンゼルス警察署長ウィリー・ウィリアムズは言う。そして,そのどこかがだれかの頭の上ということもあり得る。米国では,ここ二,三年にそうした理由で命を落とした人が10人を下らない。さらに,怪我や物損は何百件も報告されている。何キロも離れたところで撃った銃弾でそれが起きた例もあった。多くの場合,空に向かって発砲する人は,弾丸の威力が空中で衰え,落下するときはだれも傷つけない,と思い違いをしている。しかし,ヒューストン警察のスポークスマンであるフレッド・キングによると,まっすぐ上に向かって撃った銃弾が落ちてきた場合,「皮膚を突き破り,目をつぶし,赤ちゃんの柔らかい頭蓋骨を貫通するほど」大きな衝撃がある。
宗教に対する不寛容の高まり
人権擁護団体である国際ヘルシンキ連盟によると,ヨーロッパでは,いわゆる新宗教に対する「さまざまな形の事実上の迫害」が生じていると,カトリック・インターナショナル誌は伝えている。少数派の宗教の影響を弱めるために,良心と信教の自由を促進する責務に反する法的措置を取ろうとしている政府が幾つかある。物議をかもしているのは,ベルギー,フランス,ドイツでの「危険なセクト」に関する議会報告と要注意リストで,それらは不寛容と差別を助長してきた。しかし,「国境なき人権」の代表者ウィリー・フォートレは,これらの宗教運動のうち,社会の脅威となるものは「ほんの一握り」にすぎないこと,恐れが誇張されてきたことを指摘している。同氏によれば,主流派教会はこの論争において「論議の一方の側と裁く側の二役」を演じ,「話し合いよりも対立」を支持して,問題を大きくしてきた。
十分な睡眠を取っているか
「いつもきまって昼寝がしたくなる,会議中に居眠りをする,どうしても集中できない」という人は,夜間に十分な睡眠が取れていない,とトロント・スター紙は述べている。日中に十分働くには,たいていの場合,毎晩7時間から9時間の睡眠を着実に取る必要がある。その方法として,専門家は次のような提案をしている。寝ることを重要事項とする。寝る前はリラックスできる時間を取る。のんびりと散歩することは役立つかもしれないが,寝る前の3時間は激しい運動を避ける。毎日同じ時刻に就寝し,同じ時刻に起床する。夜中に目が覚めた場合は,いらいらしたり問題を解決しようとしたりするのではなく,楽しいことを考える。30分たってもまだ眠れないときは,起き上がって何かくつろいだ気分になるようなこと,例えば楽しみのための読書などをする。就寝前に食べ過ぎたり飲み過ぎたりしないようにする。しかし,空腹のまま就寝するのもよくない。
増加する子どもの非行
ドイツでは昨年,少年犯罪の発生件数が増加した,とヘシッシェ-ニーデルゼックシッシェ・アルゲマイネ紙は伝えている。他の人に対する「傷害の容疑を受けた子どもの数」は,14.1%増加した。特に目立っているのは,14歳未満の子どもの容疑者数が15万2,774人に達し,5.9%増加したことである。ドイツ連邦政府の内務大臣オットー・シリーは,この事態を「たいへん憂慮すべきこと」と呼び,より強力な予防策が必要なことを強調した。特に教育や労働の分野では政府も援助できるが,犯罪防止にとりわけ重要な役割を果たすのは家族である,と同大臣は指摘している。
カナダの最も新しい準州
1999年4月1日,カナダ北部に最も新しい準州ヌナブットが誕生した。カナダの地図に変更が加えられるのは,1949年にニューファンドランド島が同連邦に加えられて以来のことである。トロント・スター紙のある記事によると,ヌナブットはカナダ全土の陸地の約5分の1を占め,同国最大の州であるケベック州よりも大きいことになる。また,住民がカナダで最も少なく,最も若いという点でも際立っている。この準州には約2万7,000人の住民がおり,その56%は25歳未満である。このヌナブット準州は,イヌクティトット語で「わたしたちの土地」を意味し,イヌイットと連邦政府の間で結ばれた,土地所有権と先住民の諸権利に関する合意によって実現した。