1685年にベデル聖書が出版されてからほぼ300年間,その聖書以外にアイルランド語の完訳聖書は出版されませんでした。その後,1981年に,カトリックの学者たちが,現代アイルランド語で翻訳した「メイヌース聖書」を発行しました。その聖書は,前書きの中で,「17世紀に自分たちの翻訳聖書を出版した,アイルランド教会の偉大な業績」をたたえています。言うまでもなく,それはベデル聖書のことです。しかし,実のところカトリック教会は,ごく最近までカトリック教徒にベデル聖書を読むことを禁じていました。
「メイヌース聖書」を発行した学者たちは,1971年に自分たちの予備翻訳を幾つか出版しました。ペンタチューク(聖書の最初の5つの書)はその一部で,それらカトリックの学者たちはベデルの先駆的翻訳をたたえて,本の扉の前のページに「ウィリアム・ベデルをしのんで」という言葉を記しました。
そのペンタチュークの翻訳者たちは,ヘブライ語聖書中に神聖四字<テトラグラマトン>すなわちYHWHで表わされている神のお名前が出てくる多くの箇所で,アイルランド語の“Iávé<ヤベイ>”という語を用いました。その例は出エジプト記 6章2-13節などに見られます。しかし残念なことに,編集者たちは,「メイヌース聖書」全巻を出版する際,ベデルとは異なり,その翻訳から神のお名前をすべて除き去って,代わりに“an Tiarna<ア ティールナ>”(主)を使うことにしました。