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染料,染色聖書に対する洞察,第2巻
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紫の染料はMurex trunculusやMurex brandarisといった貝もしくは軟体動物から採れました。これらの生き物の首に,フラワーと呼ばれる液体をほんの1滴ほど含んだ小さな腺があります。その液体は最初のうちは外観や粘度がクリームに似ていますが,空気と光にさらされると,次第に濃いスミレ色または赤紫色に変わります。これらの貝は地中海沿岸で見られ,それらから採れる色の色調は採取した場所によって異なります。大きめの貝は一つ一つ壊して開け,それから貴重な液体を注意深く取り出しましたが,小さなものはつき臼で砕きました。一個一個の貝から採れる液体の量はごく微量だったので,まとまった量を集める工程には費用がかかりました。したがって,この染料は高価であり,紫に染めた衣は裕福な人や地位の高い人を特徴づけるものとなりました。(エス 8:15; ルカ 16:19)青の染料は別の貝(青イガイ)から採られたのではないかと言われています。
ムレクス(Murex)属の巻き貝の貝殻。中の生き物は,非常に高く評価された紫の染料の原料となりました
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例え聖書に対する洞察,第2巻
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(19)富んだ人とラザロ(ルカ 16:19-31)。 ルカ 16章14,15節に記されている背景からすると,金を愛するパリサイ人は話を聴いて,冷笑していたことが分かります。しかしイエスは彼らにこう言われました。「あなた方は人の前で自分を義とする者たちですが,神はあなた方の心を知っておられます。人の間で高大なものは,神から見て嫌悪すべきものだからです」。
富んだ人の身を飾っていた「紫と亜麻布」は,君や高貴な者や祭司だけが着用した衣装に匹敵しました。(エス 8:15; 創 41:42; 出 28:4,5)それは非常に高価なものでした。この富んだ人が行ったとされているハデスは,死んだ人間の共通の墓のことです。このたとえ話からハデスそのものが火の燃える場所であると結論できないことは,死とハデスが「火の湖」の中に投げ込まれたと描写されている啓示 20章14節で明らかにされています。ですから,富んだ人の死,またその者がハデスにいることは比喩的なものであるに違いありません。比喩的な死については聖書の他の箇所でも言及されています。(ルカ 9:60; コロ 2:13; テモ一 5:6)ですから富んだ人は,比喩的には死んだものの,実際には人間として生きている時に火による責め苦を経験したことになります。神の言葉の中で火は,神の火のような裁きの音信を指して用いられています。(エレ 5:14; 23:29)また,神の裁きを宣明する際に神の預言者たちが行なう業は,神とその僕たちに反対する者たちを『責め苦に遭わせる』と言われています。―啓 11:7,10。
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