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悪名高い娼婦を裁く啓示の書 ― その壮大な最高潮は近い!
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33章
悪名高い娼婦を裁く
第11の幻 ― 啓示 17:1-18
主題: 大いなるバビロンは緋色の野獣に乗るものの,その獣は最後に彼女を襲って荒廃させます
成就する期間: 1919年から大患難の時まで
1 七人のみ使いの一人はヨハネに何を明らかにしますか。
エホバの義にかなった怒りは完全に,つまりその怒りの七つの鉢の中身は皆,注ぎ出されなければなりません! 第六のみ使いがその鉢を古代バビロンの所在地で空にした時,それは適切にも,種々の出来事がハルマゲドンの最後の戦争に向かって急速に進展するにつれ,大いなるバビロンが災厄で苦しめられることを象徴しました。(啓示 16:1,12,16)エホバがなぜ,またどのようにご自分の義にかなった裁きを執行されるのかを今や明らかにするのは,多分この同じみ使いでしょう。ヨハネは次に聞いたり,見たりする事柄により驚嘆の念に打たれます。「また,七つの鉢を持つ七人のみ使いの一人が来て,わたしと話してこう言った。『さあ,多くの水の上に座る大娼婦に対する裁きをあなたに見せよう。地の王たちは彼女と淫行を犯し,地に住む者たちは彼女の淫行のぶどう酒に酔わされた』」― 啓示 17:1,2。
2 「大娼婦」が,(イ)古代ローマではないこと,(ロ)大企業でもないこと,(ハ)宗教的な実在物であることを示す,どんな証拠がありますか。
2 「大娼婦」! どうしてこんな衝撃的な名称が使われているのでしょう。この女はだれのことですか。中には,この象徴的な娼婦の正体は古代ローマだと考えた人々もいます。しかし,ローマは政治強国でした。この娼婦は地の王たちと淫行を犯しますが,その王たちには明らかにローマの王たちも含まれます。その上,この女が滅ぼされた後,「地の王たち」は彼女が滅びたことを嘆き悲しむと言われています。ですから,この娼婦は政治強国ではあり得ません。(啓示 18:9,10)さらに,世の商人たちも彼女のために嘆くのですから,この娼婦は大企業を表わすこともできないでしょう。(啓示 18:15,16)しかし,『彼女の心霊術的な行ないによってあらゆる国民が惑わされた』と記されています。(啓示 18:23)このことから分かるように,大娼婦は全世界にまたがる宗教的な実在物であるに違いありません。
3 (イ)その大娼婦はどうしてローマ・カトリック教会以上の,もしくはキリスト教世界全体以上のものをさえ象徴しているに違いありませんか。(ロ)バビロン的などんな教理が,キリスト教世界の諸宗派はもとより,東洋の大抵の宗教にも見られますか。(ハ)ローマ・カトリックの枢機卿ジョン・ヘンリー・ニューマンは,キリスト教世界の教理や儀式や慣行について何を認めましたか。(脚注をご覧ください。)
3 どの宗教的な実在物でしょうか。ある人々が主張してきたように,この娼婦はローマ・カトリック教会ですか。それとも,キリスト教世界全体ですか。そうではありません。この女は,あらゆる国民を惑わすというのであれば,それらのものよりもさらに大きな存在でなければなりません。この娼婦は事実,偽りの宗教の世界帝国全体なのです。この女の起源はバビロンの秘教にありますが,それは多くのバビロン的な教理や慣行が地上の至る所にある種々の宗教に共通に見られることから分かります。例えば,人間の魂には本来不滅性が備わっているという信仰や,地獄の責め苦,三位一体の神などの信仰は,キリスト教世界の諸宗派はもとより,東洋の大抵の宗教にも見られます。4,000年以上の昔,古代バビロンの都で生まれた偽りの宗教が発展して,現代の怪物のような巨大なもの,すなわち適切にも大いなるバビロンと呼ばれるものになりました。a しかし,この女はどうして「大娼婦」という不快な言葉で描写されているのでしょうか。
4 (イ)古代のイスラエルはどのような仕方で淫行を犯しましたか。(ロ)大いなるバビロンはどんな著しい仕方で淫行を犯してきましたか。
4 バビロン(あるいはバベル,「混乱」の意)はネブカドネザルの時代に偉大さの面で頂点に達しました。バビロンは一千以上の神殿や礼拝堂を有する,宗教と政治の結びついた国家で,その祭司団が大きな力を行使しました。世界強国としてのバビロンが存在しなくなってから久しくなりますが,宗教上の大いなるバビロンは生き続けており,その古代の型にしたがって依然として影響を及ぼし,政治上の物事を形作ろうとしています。しかし,神は宗教が政治に関与することを是認されるでしょうか。ヘブライ語聖書の中で,イスラエルは偽りの宗教に関係した時,またエホバを信頼する代わりに,諸国家と同盟を結んだ時,売春を行なったと言われています。(エレミヤ 3:6,8,9。エゼキエル 16:28-30)大いなるバビロンもまた,淫行を犯しています。特筆すべきこととして,この女は統治する地上の王たちに及ぼす影響力や彼らを支配する力を得るのに好都合と思えることなら何でもしてきました。―テモテ第一 4:1。
5 (イ)教会の僧職者は何をして人目を引くことを楽しみにしていますか。(ロ)この世で著名な者になりたいと考えるのは,どうしてイエス・キリストの言葉とは正反対なことなのでしょうか。
5 今日,宗教指導者たちはしばしば政府の要職に就こうとして運動を起こしており,ある国々では閣僚の地位をさえ得て,政治に参与しています。1988年に,米国のプロテスタント教会の著名な二人の牧師は大統領に立候補しました。大いなるバビロンの指導者たちは人目を引くことが大好きで,著名な政治家と付き合っては,しばしばその写真が新聞に載せられます。これとは対照的に,イエスは政治に関係することを避けて,ご自分の弟子たちに関し,「わたしが世のものではないのと同じように,彼らも世のものではありません」と言われました。―ヨハネ 6:15; 17:16。マタイ 4:8-10。ヤコブ 4:4もご覧ください。
“売春行為”の現代版
6,7 (イ)ヒトラーのナチ党はどのようにしてドイツで政権を握るようになりましたか。(ロ)バチカンがナチ・ドイツと結んだ政教条約は,世界支配を目指すヒトラーの大攻勢にどのように役立ちましたか。
6 大娼婦は政治に介入して,人類に大変な悲しみをもたらしました。例えば,ヒトラーがドイツで政権を得た当時の背後の事実 ― 一部の人々が歴史の本から削除したいと思うような醜悪な事実 ― を考えてみてください。1924年5月当時,ナチ党はドイツ帝国で32の議席を持っていましたが,1928年5月までにその数は12議席に減りました。ところが,1930年に世界が大恐慌に見舞われると,その後の状況をうまく切り抜けたナチ党は,目覚ましい回復を遂げ,1932年7月のドイツの選挙で608議席中230議席を獲得しました。その後まもなく,教皇の勲爵士,前首相フランツ・フォン・パーペンはナチス党を助けるようになりました。歴史家によれば,フォン・パーペンは新しい神聖ローマ帝国をもくろんでいました。パーペンは首相として短期間在職したものの失敗したため,今度はナチス党を通して権力を得たいと考えました。1933年1月までに,彼はヒトラーに対する企業家の男爵たちの支持勢力を集めて陰険な策略を弄し,1933年1月30日,ヒトラーが確実にドイツの首相となれるようにしました。彼自身は副首相にされ,ドイツのカトリック階層の支持を得ようとするヒトラーに用いられました。ヒトラーは政権を獲得した後,2か月足らずの間に議会を廃止し,反対派の何千人もの指導者たちを強制収容所に送り込み,ユダヤ人を虐げる公然たる運動を開始しました。
7 1933年7月20日,パーチェリ枢機卿(後の法王ピウス12世)がローマでナチ・ドイツとバチカンの政教条約に署名した時,台頭するナチ強国に対するバチカンの関心が明らかに示されました。フォン・パーペンはヒトラーの代表として同文書に署名し,パーチェリはその場でピウス最上級十字勲功章という教皇の上級勲章をフォン・パーペンに授与しました。b タイバ・ケイベスはこのことについて,自著,「シルクハットをかぶったサタン」(英文)の中で次のように述べています。「この政教条約はヒトラーにとって大きな勝利であった。それはヒトラーに外の世界から初めて精神的援助を与えるものとなり,しかもそれは極めて高い源からの援助であった」。その政教条約により,バチカンはドイツのカトリック中央党を支持することをやめるよう要求され,こうしてヒトラーの一党“全体主義国家”が認められることになりました。c さらに,その第14条には,「大司教,司教その他の任命は,ドイツ帝国により任ぜられた総督が,政治上考慮すべき全般的な事柄に関して何ら疑問がないことを正式に確認した上で初めて出されるものとする」とありました。(法王ピウス11世により“聖年”と宣言された)1933年の暮れまでには,バチカンの支持はヒトラーが世界支配を目指す大攻勢に出る主要な要素となりました。
8,9 (イ)カトリック教会やその僧職者はもとより,バチカン当局は,ナチの圧制に対してどのように反応しましたか。(ロ)第二次世界大戦が始まった時,ドイツのカトリック司教団はどんな声明を出しましたか。(ハ)宗教と政治の結合した関係は,どんな結果をもたらしましたか。
8 少数の司祭や修道女がヒトラーの残虐行為に抗議し,そのために苦しんだとはいえ,カトリック教会やその僧職者の大群はもとより,バチカン当局はナチの圧制を積極的に,もしくは暗黙のうちに支持し,その圧制を世界共産主義運動の進展を食い止める防壁とみなしました。バチカンの有利な立場にあった法王ピウス12世は,ユダヤ人の大虐殺およびエホバの証人や他の人々に対する残忍な迫害が批判されずに続くままにさせました。1987年5月に西ドイツを訪問した法王ヨハネ・パウロ2世が,ナチに抵抗した誠実な一司祭に栄誉を与えたのは,皮肉な話です。他の何千人ものドイツの僧職者は,ヒトラーが恐怖政治を行なっていた間,何をしていましたか。第二次世界大戦が勃発した1939年9月にドイツのカトリック司教団が出した司牧書簡はこのことに関して,ある事柄を明らかにしています。その書簡は一部こう述べています。「この極めて重大な時に臨んで,我々はわがカトリック将兵に対し,総統に従順に従って本分を尽くし,各々進んで自分自身をことごとく犠牲にするよう勧めたい。我々は,神慮によってこの戦いが祝福された結果になるように願う熱烈な祈りに加わるよう,忠信な信者に訴える」。
9 このようなカトリック教会の駆け引きは,宗教が権力と利益を得るために政治国家に求愛して,過去4,000年余り営んできた売春行為の性格を例証しています。このように宗教と政治が結合した関係は,戦争や迫害や人間の苦悩を途方もない規模で助長してきました。大娼婦に対するエホバの裁きは近づいているので,人類は何と幸いなのでしょう。その裁きが早く執行されますように!
多くの水の上に座る
10 大いなるバビロンは「多くの水」に保護してもらうことを当てにしていますが,その「多くの水」とは何ですか。その「水」はどうなっていますか。
10 古代バビロンは多くの水の上,つまりユーフラテス川と数多くの運河の上にいわば座っていました。それらの流れは,一夜にしてかれてしまうまでは,富をもたらす商業のよりどころであると共に,都を保護するものでした。(エレミヤ 50:38; 51:9,12,13)大いなるバビロンもまた,「多くの水」に保護され,富ませてもらうことを当てにしています。この象徴的な水は「もろもろの民と群衆と国民と国語」,つまり大いなるバビロンが支配してきた何十億もの人間すべてのことで,同バビロンは彼らから物質上の支持を得てきました。しかし,その水もやはりかれかかっています。つまり,支持を取りやめようとしています。―啓示 17:15。詩編 18:4; イザヤ 8:7と比較してください。
11 (イ)古代バビロンはどのようにして,「全地を酔わせ」ましたか。(ロ)大いなるバビロンはどのようにして「全地を酔わせ」ましたか。
11 さらに,昔のバビロンは,「エホバのみ手にある黄金の杯で……彼女は全地を酔わせるのであった」と描写されています。(エレミヤ 51:7)古代バビロンは近隣の諸国民を軍事的に征服した時,エホバの怒りの表現をそれら諸国民に強制的に呑み込ませ,諸国民を酔った人のように弱らせました。その点で,彼女はエホバの器でした。大いなるバビロンもまた,世界的な帝国になるほどにまで征服を行なってきました。しかし,彼女は確かに神の器ではありません。むしろ,彼女は「地の王たち」と宗教的な淫行を犯して,それら王たちに仕えてきました。彼女は「地に住む者たち」である人々の大半を酔った人のように弱くならせて,支配者たちに屈従させるため,うその教理を用いたり,人を隷従させる習慣を用いたりして,それらの王たちを喜ばせてきました。
12 (イ)大いなるバビロンの一部である日本の宗教は,第二次世界大戦中の大変な流血行為にどのように責任を負うようになりましたか。(ロ)日本で大いなるバビロンを支えていた「水」は,どのように引きましたか。その結果,どうなりましたか。
12 神道を奉じた日本は,そのことを示す,注目すべき実例となりました。教化された日本の将兵は,天皇,つまり神道の最高の神のために自分の命をささげることを最高の栄誉とみなしました。第二次世界大戦中,およそ150万人の日本の将兵が戦場で死にました。彼らはほとんど最後の一人に至るまで,投降を恥ずべきことと考えていました。しかし,日本が敗れた結果,天皇裕仁は現人神であるとの主張を放棄せざるを得なくなりました。その結果,大いなるバビロンの一部である神道を支持していた「水」は著しく引きました。悲しいことに,それは神道が,太平洋戦争の舞台における大量の流血を容認した後のことでした! また,神道の影響力がこうして弱くなったために,20万人以上の日本人が大半は以前,神道や仏教を信じていましたが,近年,主権者なる主エホバの献身してバプテスマを受けた奉仕者となる道が開かれたのです。
娼婦は獣に乗る
13 ヨハネはみ使いにより霊の力で荒野に運ばれて行き,どんな驚くべき光景を見ますか。
13 大娼婦とその運命に関して,預言はさらにどんなことを明らかにしていますか。今や,ヨハネが話すにつれて,生き生きとした情景がさらに見えてきます。「そして彼[み使い]は,霊の力のうちにわたしを荒野に運んで行った。そこでわたしは,冒とく的な名で満ちた,七つの頭と十本の角を持つ緋色の野獣の上に,ひとりの女が座っているのを目にした」― 啓示 17:3。
14 ヨハネが荒野に運ばれて行くのは,どうしてふさわしいことですか。
14 ヨハネはなぜ荒野に運ばれて行くのでしょうか。以前,古代バビロンに下された滅びの宣告は,「海の荒野に対する」宣告と称されました。(イザヤ 21:1,9)その宣告により,古代バビロンは水の流れを利用した防衛手段をすべて持っていたにもかかわらず,生き物のいない廃虚になる相応の警告を受けました。ですから,ヨハネが幻の中で荒野に運ばれて,大いなるバビロンの運命を見るのは,ふさわしいことです。(啓示 18:19,22,23)それでも,ヨハネはそこに連れて行かれて見る事柄に驚嘆します。大娼婦は一人だけでいるのではありません! 彼女は奇怪な野獣の上に座っているのです!
15 啓示 13章1節の野獣と啓示 17章3節のそれとの間には,どんな相違点がありますか。
15 この野獣には七つの頭と十本の角があります。では,この野獣は,ヨハネが以前に見た,やはり七つの頭と十本の角のある野獣と同じですか。(啓示 13:1)いいえ,相違点があります。この野獣は緋色の野獣で,以前の野獣とは異なり,王冠があるとは言われていません。この野獣は,その七つの頭にだけ冒とく的な名があるのではなく,『冒とく的な名で満ちて』いるのです。それにしても,この新しい野獣と以前のものとは関係があるに違いありません。この両者には偶然の一致とは言えないほどの類似点があります。
16 緋色の野獣の実体は何ですか。その目的については何と述べられていますか。
16 では,この新しい緋色の野獣とは何ですか。それは,子羊のような二本の角のある英米の野獣に促されて産み出された,野獣の像であるに違いありません。その像が作られた後,二本の角のある,あの野獣は,その野獣の像に息を与えることを許されました。(啓示 13:14,15)ヨハネは今や,呼吸する,生きた像を見ます。それは,1920年に二本の角のある野獣によって命を与えられた国際連盟機構を表わしています。米国のウィルソン大統領は,連盟は「すべての人のために公正を図り,戦争の脅威を永遠にぬぐい去るための討論の場となるであろう」と考えていました。第二次世界大戦後,同連盟が国際連合として復活した際,その憲章に示された目的は,「国際の平和と安全を維持すること」でした。
17 (イ)象徴的な緋色の野獣は,どんな点で冒とく的な名で満ちていますか。(ロ)だれが緋色の野獣に乗っていますか。(ハ)バビロン的な宗教は,どのように最初から国際連盟,およびその後身と結合してきましたか。
17 この象徴的な野獣はどんな点で冒とく的な名で満ちていますか。神の王国だけが成し遂げられると神の言われる事柄を成し遂げるために,人間が多国籍から成るこの偶像を神の王国に代わるものとして立てたという点で,そう言えます。(ダニエル 2:44。マタイ 12:18,21)けれども,ヨハネの幻に関して注目に値するのは,大いなるバビロンが緋色の野獣に乗っていることです。預言にたがわず,特にキリスト教世界のバビロン的な宗教は国際連盟,およびその後身と結合してきました。早くも,1918年12月18日,今日アメリカ・キリスト教会全国協議会として知られる団体は,一部次のように述べる宣言を採択しました。「このような連盟は単なる政治的方便ではなく,むしろ地上における神の王国の政治的表現である。……教会は善意の精神を付与することができ,それなくしてはいかなる国際連盟も存続し得ない。……国際連盟は福音に根ざしており,福音と同じく,『地に平和,人々に善意』を目的としている」。
18 キリスト教世界の僧職者は国際連盟を支持する態度をどのように示しましたか。
18 1919年1月2日,サンフランシスコ・クロニクル紙は,「法王はウィルソンの提唱する国際連盟を採択するよう嘆願する」という見出しを第一面に掲げました。1919年10月16日,主要な教派の僧職者1万4,450人の署名を付した嘆願書が米上院に提出され,同上院は「国際連盟規約を具体化したパリ平和条約を批准するよう」促されました。米上院はその条約を批准しませんでしたが,キリスト教世界の僧職者は連盟を支持する運動を続けました。さて,連盟はどのようにして発足しましたか。1920年11月15日付,スイス至急報はこう伝えています。「今朝,11時,ジュネーブのすべての教会の鐘が鳴り響く中で,国際連盟の第1回会議の開会が宣せられた」。
19 緋色の野獣が現われた時,ヨハネ級の人たちはどんな行動を取りましたか。
19 来たるべきメシアの王国を熱意を抱いて受け入れた,地上の唯一のグループであるヨハネ級の人たちは,キリスト教世界と一緒になって,「緋色の野獣」に敬意を表しましたか。とんでもありません! 1919年9月7日,日曜日,米国オハイオ州シーダー・ポイントで開かれたエホバの民の大会で,「苦悩する人類のための希望」と題する特筆すべき公開講演が行なわれました。翌日,サンダスキーのスター・ジャーナル紙は,7,000人ほどの聴衆に対する講演の中で,J・F・ラザフォードが,「主の不興は必ずや連盟に臨む。……なぜなら,神の代表者であると主張するカトリックおよびプロテスタントの僧職者たちは,神の計画を捨てて国際連盟を是認し,それを地上におけるキリストの王国の政治的表現として歓迎したからである,と断言した」と報じました。
20 国際連盟を「地上における神の王国の政治的表現」として歓呼して迎えた僧職者は,どうして神を冒とくすることになりましたか。
20 国際連盟が惨めにも失敗に終わったので,人間の作った機構は決して地上における神の王国の一部などではないことを僧職者は思い知らされたはずです。そのような主張は何と神を冒とくするものでしょう。それでは,神があたかも,とてつもない出来損ないに終わった連盟に対して責任のある一当事者にされてしまいそうですが,神について言えば,「そのみ業は完全」です。多くは無神論者である,口論し合う政治家たちの連合体ではなく,キリストの治めるエホバの王国こそ,神が平和をもたらし,ご自分の意志を天のように地上でも行なわせるための手段なのです。―申命記 32:4。マタイ 6:10。
21 大娼婦は連盟の後身である国際連合を支持し,賞賛していますが,何がこのことを示していますか。
21 連盟の後身である国際連合についてはどうですか。この機構もまた,最初からその背に大娼婦を乗せており,その娼婦は明らかに同機構と交渉を持ち,その運命を左右しようとしています。例えば,1965年6月の国連20周年記念日に,ローマ・カトリック教会,東方正教会,ならびにプロテスタント,ユダヤ教徒,ヒンズー教徒,仏教徒,およびイスラム教徒の ― 地上の人口のうち20億人を代表すると言われる ― 代表者たちが,国連を支持し,賞賛してきたことを祝うためサンフランシスコに集まりました。1965年10月に国連を訪れた法王パウロ6世は,国連のことを「すべての国際組織の中で最も偉大なもの」と評し,「世界の人々は友好と平和の最後の希望として国連を頼みにしている」と付け加えました。もう一人の訪問者である法王ヨハネ・パウロ2世は,1979年10月,国連で演説し,「私は国際連合が常に平和と正義のための最高の討論の場……であることを希望する」と語りました。同法王が1987年9月に米国を訪問した際,ニューヨーク・タイムズ紙は「法王ヨハネ・パウロが“新たな世界的団結”を……促進する点での国際連合の積極的な役割について詳しく語った」と伝えました。
名,秘義
22 (イ)大娼婦はどんな獣に乗ることにしましたか。(ロ)ヨハネは,象徴的な娼婦である大いなるバビロンをどのように描写していますか。
22 使徒ヨハネは,大娼婦が危険な獣を乗り物として選んだことにすぐ気づくようになりますが,まず最初に大いなるバビロンそのものに注意を向けます。この女は豪華に身を装っていますが,ああ,何と不快な存在なのでしょう。「また,その女は紫と緋で装い,金と宝石と真珠で身を飾り,手には,嫌悪すべきものと彼女の淫行の汚れたものとで満ちた黄金の杯を持っていた。そして,額にはひとつの名が書いてあった。それは秘義であって,『大いなるバビロン,娼婦たちと地の嫌悪すべきものとの母』というものであった。またわたしは,その女が聖なる者たちの血とイエスの証人たちの血に酔っているのを見た」― 啓示 17:4-6(前半)。
23 大いなるバビロンの正式な名とは何ですか。それにはどんな重要な意味がありますか。
23 古代ローマの習慣がそうであったように,この売春婦は額にある名によって正体が明らかにされています。d それは,「大いなるバビロン,娼婦たちと地の嫌悪すべきものとの母」という長い名です。その名は「秘義」です。つまり,隠された意味があります。しかし,その秘義は神のご予定の時に解明されることになっています。実際,み使いは,エホバの僕たちが今日,この記述的な名の重要な意味をことごとく認識できるようにする十分の情報をヨハネに与えます。わたしたちは大いなるバビロンが偽りの宗教すべてを指していることを認識しています。この女は,『娼婦たちの母』です。なぜなら,キリスト教世界の数多くの分派を含め,世界のそれぞれの偽りの宗教は皆,その娘のようなもので,彼女に見倣って霊的な売春行為を犯しているからです。彼女はまた,偶像崇拝,心霊術,占い,占星術,手相術,人身御供,神殿売春,偽りの神々のために酩酊すること,その他の卑わいな習慣などの不快な“子孫”を生み出してきたので,「嫌悪すべきもの」の母です。
24 大いなるバビロンが「紫と緋」で身を装い,『金と宝石と真珠で身を飾って』いるところが見られるのは,どうしてふさわしいことですか。
24 大いなるバビロンが,王の身分を表わす色である「紫と緋」で身を装い,『金と宝石と真珠で身を飾って』いるのは何とふさわしいことなのでしょう。壮麗な建造物,珍しい彫像や絵画,貴重な聖像,その他の宗教上の備品,ならびにこの世の諸宗教が蓄積してきた,天文学的な金額に達する財産や現金などのすべてについて,ちょっと考えてみてください。大いなるバビロンはバチカンや,米国を中心とする福音伝道のテレビ帝国でも,あるいは東洋の異国風な僧院や寺院でも驚くべき富を ― 時には失いましたが ― 蓄積してきました。
25 (イ)『嫌悪すべきもので満ちた黄金の杯』の中身は何を象徴していますか。(ロ)象徴的な娼婦はどのような意味で酔っていますか。
25 今度は,娼婦が手に持っているものを見てください。ヨハネはそれを,つまり「嫌悪すべきものと彼女の淫行の汚れたものとで満ちた黄金の杯」を見て,息が止まりそうになったに違いありません! それは,その女があらゆる国民に飲ませてきた『彼女の淫行の怒りのぶどう酒』の入っている杯なのです。(啓示 14:8; 17:4)その杯は外側は貴重なものに見えますが,中身は嫌悪すべき汚れたものです。(マタイ 23:25,26と比較してください。)その中には,大娼婦が諸国民をそそのかして彼女の勢力下に引き入れるのに用いてきた汚れた慣行やうそなどがすべて入っています。さらに吐き気を催させるものとして,ヨハネは,娼婦自身が酔い,神の僕たちの血で酔いしれているのを見ます! 実際,後の箇所では,「彼女の中には,預言者と聖なる者たちの血,そして地上でほふられたすべての者の血が見いだされた」と書かれています。(啓示 18:24)何という重い血の罪でしょう。
26 大いなるバビロンが血の罪を負っていることを示す,どんな証拠がありますか。
26 偽りの宗教の世界帝国は何世紀にもわたって,おびただしい量の血を流してきました。例えば,中世の日本の京都の寺院はとりでと化し,僧兵が「仏陀の聖なる名」を唱えて戦い合い,ついに街路は血で赤く染められました。20世紀には,キリスト教世界の僧職者がそれぞれ自国の軍隊と共に進軍し,軍隊は互いに殺し合い,少なくとも1億人もの人々が命を失いました。1987年10月,米国のニクソン元大統領は,「20世紀は歴史上最も血生臭い世紀となった。今世紀が始まる前までに行なわれたすべての戦争による死者よりも多くの人々が今世紀の戦争で殺された」と述べました。そのすべてにあずかってきたゆえに,世界の諸宗教は神により不利な裁きを受けています。エホバは,「罪のない血を流している手」を憎まれます。(箴言 6:16,17)ヨハネは以前に,祭壇から出る次のような叫び声を聞きました。「聖にして真実な,主権者なる主よ,あなたはいつまで裁きを控え,地に住む者たちに対するわたしたちの血の復しゅうを控えておられるのでしょうか」。(啓示 6:10)この質問に答える時が来ると,娼婦たちと地の嫌悪すべきものとの母である大いなるバビロンは,非常な窮境に陥るでしょう。
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畏敬の念を起こさせる秘義が解かれる啓示の書 ― その壮大な最高潮は近い!
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34章
畏敬の念を起こさせる秘義が解かれる
1 (イ)大娼婦と彼女が獣に乗っている恐るべき様子を見ると,ヨハネはどのように反応しますか。それはなぜですか。(ロ)預言的な幻を成就する種々の出来事が現われるにつれて,ヨハネ級の人たちは今日,どのように反応しますか。
大娼婦と彼女が獣に乗っている恐るべき様子を見たヨハネは,どんな反応を示しますか。ヨハネ自身こう答えています。「さて,彼女を目にした時,わたしは非常に不思議に思った」。(啓示 17:6[後半])単なる人間の想像力だけでは,このような光景はとても思い浮かぶものではありません。ところが,それが見えるのです。しかも,遠い荒野の中で,身を持ちくずした娼婦が身の毛のよだつような緋色の野獣の上に乗っかっています!(啓示 17:3)預言的な幻を成就する種々の出来事が現われるにつれて,ヨハネ級の人たちも今日,非常に不思議に思っています。もしも,世の人々がそれを見ることができたなら,“信じられないことだ!”と叫ぶでしょうし,世の支配者たちなら同様に,“考えられないことだ!”と言うでしょう。しかし,その幻は現代の驚くべき事実となっているのです。神の民はその幻の成就にすでに著しい仕方であずかってきました。これは,預言がまさしくその驚嘆すべき最高潮に向かって進んで行くことを神の民に保証しています。
2 (イ)驚嘆するヨハネにこたえ応じて,み使いは彼に何を告げますか。(ロ)ヨハネ級の人たちはその級に対して何を明らかにしてきましたか。このことはどのように行なわれてきましたか。
2 み使いはヨハネが驚嘆していることに気づきます。それで,ヨハネはさらにこう続けます。「すると,み使いがわたしに言った,『なぜ不思議に思ったのか。わたしは,女と,その女を運んでいる,七つの頭と十本の角を持つ野獣の秘義をあなたに告げよう』」。(啓示 17:7)ああ,み使いは今や,その秘義を解明します! み使いは,目を大きく見開いたヨハネに,その幻の様々な面と今や起ころうとしている劇的な出来事を説明します。同様に,注意深いヨハネ級の人たちは今日,み使いの指導のもとに奉仕して,その級に対して預言に関する理解を明らかにしてきました。「解き明かしは神によるのではありませんか」。忠実なヨセフ同様,わたしたちも,その通りだと思います。(創世記 40:8。ダニエル 2:29,30と比較してください。)エホバが幻の意味とその幻が神の民の生活に及ぼす影響について彼らに解き明かしてくださる時,神の民はあたかも舞台の中央に置かれているかのようになります。(詩編 25:14)神はまさしく時をたがえず,女と野獣に関する秘義を解いて,ご自分の民に理解させてくださいました。―詩編 32:8。
3,4 (イ)1942年にN・H・ノアはどんな公開講演を行ないましたか。その講演の中で,緋色の野獣の実体はどのように明らかにされましたか。(ロ)N・H・ノアは,み使いがヨハネに語ったどんな言葉について論じましたか。
3 第二次世界大戦がたけなわだった,1942年9月18日から20日まで,米国のエホバの証人は「新しい世神権大会」を開きました。主要な大会開催都市となったオハイオ州クリーブランド市は,50余りの他の都市と電話回線で結ばれ,出席者最高数は12万9,699人に達しました。世界の各地で戦時下でも事情の許すところでは,同じプログラムの大会が行なわれました。当時,エホバの民の多くは,その戦争が神のハルマゲドンの戦争に発展するものと考えていました。ですから,「平和 ― それは永続するか」と題する公開講演は,かなりの好奇心を呼び起こしました。平和とは正反対の情勢が諸国民を待ち受けているように思えた当時,ものみの塔協会のN・H・ノア新会長は,どうして平和について大胆に語ることができたのでしょうか。a それは,ヨハネ級の人たちが神の預言的なみ言葉に「普通以上の注意」を払っていたからです。―ヘブライ 2:1。ペテロ第二 1:19。
4 「平和 ― それは永続するか」と題する講演により,預言にどんな光が当てられましたか。N・H・ノアは啓示 17章3節の緋色の野獣の実体が国際連盟であることをはっきりと述べてから,ヨハネに対するみ使いの次のような言葉に基づいて,連盟の波乱に富んだ経過についてさらに論じました。こう記されています。「あなたの見た野獣はかつていたが,今はいない。しかし底知れぬ深みからまさに上ろうとしており,そして去って滅びに至ることになっている」― 啓示 17:8(前半)。
5 (イ)「野獣はかつていた」のに,どうして「今はいない」と言えましたか。(ロ)N・H・ノアは,「連盟はその坑の中にとどまるでしょうか」という問いに,どう答えましたか。
5 「野獣はかつていた」。そうです,それは国際連盟として1920年1月10日以降存在し,63か国がそれぞれの時期に連盟に加わっていました。しかし,日本,ドイツ,およびイタリアが順に脱退し,旧ソ連は連盟から除名されました。1939年9月にはドイツのナチ独裁者が第二次世界大戦を引き起こしました。b 国際連盟は世界の平和を保つことに失敗したため,事実上,無活動の底知れぬ深みに陥り,1942年には過去のものとなっていました。この年以前でも,それ以後のある年でもなく ― まさしく危機的なその時期に ― エホバは確かにご自分の民に幻の深い意味を十分解き明かされました! その「新しい世神権大会」で,N・H・ノアは預言と調和して,「野獣は……今はいない」と言明することができました。次いで,「連盟はその坑の中にとどまるでしょうか」と問い,啓示 17章8節を引用して,「世の諸国家のその共同体は再び起き上がります」と答えました。確かにその通りになり,エホバの預言的なみ言葉の正しさは立証されました!
底知れぬ深みから上る
6 (イ)緋色の野獣はいつ底知れぬ深みからはい上がって来ましたか。どんな名称が付けられていますか。(ロ)国際連合は実際,生き返った緋色の野獣と言えますが,それはどうしてですか。
6 緋色の野獣は確かに底知れぬ深みからはい上がって来ました。1945年6月26日,米国のサンフランシスコ市で騒々しいファンファーレの響く中,50か国が国際連合機構の憲章を受け入れる賛成投票を行ないました。この機構は「国際の平和及び安全を維持する」はずでした。連盟と国連との間には多くの類似点がありました。ワールドブック百科事典(英文)はこう述べています。「国連は幾つかの点で,第一次世界大戦後に組織された国際連盟と類似している。……国連の設立に加わった国々の多くは,やはり連盟の設立にも加わっていた。連盟と同様,国連は諸国家間の平和維持を助けるために樹立された。国連の主要機関は連盟のそれと大体同様である」。ですから,国連は実際,生き返った緋色の野獣にほかなりません。190か国ほどで成る国連の加盟国数は,63か国を有した連盟のそれをはるかにしのいでいます。国連はまた,その前身よりも一層広範な分野で責任を担ってきました。
7 (イ)地に住む人々は,生き返った緋色の野獣を見て,どのように驚いて感心しましたか。(ロ)国連はどんな目標を達成しかねていますか。国連の事務総長はこのことについて何と言いましたか。
7 当初,国連に対して大きな希望が表明されました。それはみ使いの次のような言葉を成就するものでした。「こうして,その野獣がかつてはいたが,今はおらず,後に現われるようになるのを見る時,地に住む者たちは驚いて感心するであろう。しかし彼らの名は世の基が置かれて以来命の巻き物に書かれていない」。(啓示 17:8[後半])地に住む人々は,ニューヨーク市のイースト川の河畔にある堂々たる本部により運営される,この新しい巨像に感心しました。しかし,国連は真の平和と安全をもたらしかねています。20世紀のかなりの期間,世界の平和は,“MAD<マッド>”と略して書かれる“相互確実破壊”(英語,“mutual assured destruction”)の脅威によって維持されたにすぎず,軍備競争は激化の一途をたどり,その支出は天文学的な数字に達しています。ほとんど40年間にわたって国際連合による努力が払われた後,当時のペレス・デクエヤル国連事務総長は1985年に,「我々は別の狂信的な時代に生活しているのに,この時代に関して何をすべきかが分からない」と言って嘆きました。
8,9 (イ)国連はどうして世界の諸問題に対する打開策を持っていませんか。神の布告によれば,国連は間もなくどうなりますか。(ロ)国連の設立者たちや国連に感心する者たちの名は,どうして神の「命の巻き物」に記されませんか。(ハ)エホバの王国は何を首尾よく成し遂げますか。
8 国連もその答えを持っていません。それはなぜでしょうか。なぜなら,全人類の命の授与者は,国連に命を与えた者ではないからです。国連は短命です。というのは,神の布告によれば,国連は「去って滅びに至ることになっている」からです。国連の設立者たちや国連に感心する者たちの名は,神の命の巻き物に記されることはありません。エホバ神が,人間の方法ではなく,ご自分のキリストの王国を通して間もなく成し遂げようとしていると言明された事柄を,一体どうして罪深い死すべき人間がやり遂げられるでしょうか。しかも,そのような人間の多くは神のみ名を侮っているのです。―ダニエル 7:27。啓示 11:15。
9 国連は実際,神の平和の君であるイエス・キリストによるメシアの王国の不敬な偽物です。このキリストの君としての支配こそ,終わりのないものなのです。(イザヤ 9:6,7)たとえ国連がある程度の一時的な平和を間に合わせに作ろうとも,やがて再び戦争が勃発するでしょう。それは罪深い人間の性質上避けられません。「彼らの名は世の基が置かれて以来命の巻き物に書かれて(いません)」。キリストによるエホバの王国は,地上にとこしえの平和を確立するだけでなく,イエスの贖いの犠牲に基づいて,死者を,つまり神の記憶にとどめられている義者と不義者をよみがえらせます。(ヨハネ 5:28,29。使徒 24:15)その中には,サタンとその胤からの攻撃にもかかわらず,確固とした立場を保った人々すべてと,これから従順であることを示すべき他の人たちが含まれます。だれであれ,大いなるバビロンの頑固な信奉者や,野獣を崇拝しつづけている者の名は明らかに,神の命の巻き物には決して記されません。―出エジプト記 32:33。詩編 86:8-10。ヨハネ 17:3。啓示 16:2; 17:5。
平和と安全 ― むなしい希望
10,11 (イ)1986年に国連は何を宣言しましたか。どんな反応がありましたか。(ロ)平和を祈り求めるため,幾つの“宗教上の家族”がイタリアのアッシジに集まりましたか。神はそのような祈りにお答えになりますか。説明してください。
10 国際連合は人類の希望を強化する努力の一環として,「平和と人類の将来を守る」という主題のもとに1986年を「国際平和年」と宣言し,交戦中の国々に少なくとも1年間武器を捨てるよう要請しました。それらの国々はどのようにこたえ応じましたか。国際平和研究協会の一報告によれば,1986年だけで何と500万人もの人々が戦争で殺されました。同年中,特別の硬貨や記念切手が発行されたものの,大抵の国は平和の理想を追求する点でほとんど何もしませんでした。それにしても,国連と親密な関係を持つことにいつも腐心している世界の諸宗教は,その年について様々な方法で宣伝することに取りかかりました。1986年1月1日,法王ヨハネ・パウロ2世は国連の働きをたたえ,元日を平和のためにささげました。そして,10月27日,同法王は平和を求める祈りをささげるため,世界の多くの宗教の指導者たちをイタリアのアッシジに召集しました。
11 神は平和を求めるそのような祈りにお答えになりますか。では,それら宗教指導者たちはどの神に祈ったのでしょうか。もし彼らに尋ねるとしたら,それぞれのグループが違った答えを述べたことでしょう。多くの異なった仕方で行なわれる請願を聞いて,答えられる何百万もの神々のいる万神殿でもあるのでしょうか。参加者の多くはキリスト教世界の三位一体の神を崇拝しました。c 仏教徒,ヒンズー教徒,その他の人々は無数の神々に向かって祈りを唱えました。英国国教会のカンタベリー大主教,仏教のダライラマ,ロシア正教会の府主教,東京の神道神社協会の会長,アフリカの精霊崇拝者たち,および羽毛を付けた頭飾りで着飾った二人のアメリカ・インディアンなどの著名人で代表される,全部で12の“宗教上の家族”が集まりました。それは,少なくとも,見事なテレビ報道をするのには多彩なグループでした。あるグループは一度に12時間も休まずに祈り続けました。(ルカ 20:45-47と比較してください。)しかし,そのような祈りのどれかが,その集まりの場所の上空にかかった雨雲のさらに上方に達したでしょうか。いいえ,達しませんでした。その理由は次の通りです。
12 神はどんな理由で,世界の宗教指導者たちの,平和を求める祈りにお答えになりませんでしたか。
12 「エホバの名によって歩む」人たちとは対照的に,それらの宗教家はだれ一人,生ける神エホバに祈っていませんでした。この方のみ名は聖書の元の本文に7,000回ほど出ています。(ミカ 4:5。イザヤ 42:8,12)d 彼らは集団としてはイエスの名によって神に近づきませんでしたし,その大多数はイエス・キリストをさえ信じていませんでした。(ヨハネ 14:13; 15:16)彼らはだれ一人として現代に対する神のご意志を行なっていません。そのご意志とは,国連ではなく,来たるべき神の王国を人類のための真の希望として全世界でふれ告げることです。(マタイ 7:21-23; 24:14。マルコ 13:10)彼らの宗教組織は大抵,20世紀の二度の世界大戦を含め,歴史上の数々の血生臭い戦争に関係してきました。神はそのような宗教組織に対して,こう言われます。「たとえあなた方が多くの祈りをしようとも,わたしは聴いてはいない。あなた方のその手は流血で満ちている」― イザヤ 1:15; 59:1-3。
13 (イ)世界の宗教指導者たちが国連と提携して平和を叫び求めるのは,なぜ重大な事柄ですか。(ロ)平和を求める叫びはついに,神により予告されたどんな最高潮に達しますか。
13 その上,この時期に世界の宗教指導者たちが国際連合と提携して平和を叫び求めるのは,極めて重大な事柄です。宗教指導者たちは自分たちの益のために国連に影響を及ぼしたいと考えているようですが,彼らの教区民が余りにも多く宗教を放棄している現代では特にそうです。古代イスラエルの不忠実な指導者たちと同様,彼らは「平和がないのに,『平和だ! 平和だ!』」と叫びます。(エレミヤ 6:14)平和を求める彼らの叫び声は続き,使徒パウロが次のように預言した最高潮を支えるものとして高まってゆきます。「エホバの日がまさに夜の盗人のように来ることを,あなた方自身がよく知っているからです。人々が,『平和だ,安全だ』と言っているその時,突然の滅びが,ちょうど妊娠している女に苦しみの劇痛が臨むように,彼らに突如として臨みます。彼らは決して逃れられません」― テサロニケ第一 5:2,3。
14 「平和だ,安全だ」という叫び声は,どんな形を取るかもしれませんか。どうすれば,その叫び声に惑わされずにすみますか。
14 近年,政治家たちは人間の様々な企てを描写するのに,『平和と安全』という表現を用いています。世界の指導者たちによるそうした努力が,テサロニケ第一 5章3節の成就の始まりとなるのでしょうか。それともパウロが言及していたのは,世界の注目を集めるほど劇的な特定の出来事だけでしょうか。聖書の預言は多くの場合,成就してからか,成就の途上でなければ完全には理解できないので,わたしたちは事態の進展を見守らなければなりません。またクリスチャンは,諸国家がいかなる平和や安全を達成したように見えるとしても基本的には何も変わらない,ということを知っています。利己心,憎しみ,犯罪,家族の崩壊,不道徳,病気,悲しみ,および死は依然として存続します。ですからあなたは,世界の出来事の意味に目覚め,神のみ言葉の預言的な警告に留意しているなら,「平和だ,安全だ」というどんな叫びにも惑わされることはないでしょう。―マルコ 13:32-37。ルカ 21:34-36。
[脚注]
a J・F・ラザフォードは1942年1月8日に亡くなり,N・H・ノアがその跡を継いでものみの塔協会の会長になりました。
b 1940年11月20日,ドイツ,イタリア,日本,およびハンガリーは“新国際連盟”設立のための文書に署名し,その4日後,バチカン当局はミサを行ない,そのミサと,宗教的な平和と物事の新しい秩序を求める祈りとを放送しました。その“新連盟”はついに実現しませんでした。
c 三位一体の概念は,太陽神シャマシュ,月の神シン,星の神イシュタルが三つ組の神として崇拝されていた古代バビロンに源を発しています。エジプトも同じ型に倣い,オシリス,イシス,およびホルスを崇拝しました。アッシリアの主神アッシュールは三つの頭のある神として描かれています。同じ型に従うものとして,カトリック教会には神を三つの頭のある者として表わした像があります。
d 1993年版,ウェブスター新国際辞典第三版は,エホバ神のことを「エホバの証人により認められ,崇拝されている唯一最高の神」と定義しています。
[250ページの囲み記事]
「平和」という逆説
国連は1986年を国際平和年と宣言したにもかかわらず,自殺的な軍備競争は激化しました。「世界の軍事および社会支出 1986年版」と題する報告書は,酔いを覚まさせるような下記の詳細な事柄を挙げています:
1986年の全世界の軍事支出は9,000億㌦(約117兆円)に達した。
全世界の1時間の軍事支出は,予防可能な病気で1年間に死亡した350万もの人々に予防ワクチンを投与する費用をまかなうに足るものであった。
世界の人々のうち,5人につき一人が貧困にあえいでいた。世界が軍備に二日間費やすお金で,それら飢えている人々すべてを1年間養うことも可能であった。
世界が保有する核兵器の爆発力は,チェルノブイリでの爆発力の1億6,000万倍に達した。
運搬できる1発の核爆弾の爆発力は,1945年に広島に投下された原爆の500倍以上の威力があった。
核保有量は広島型原爆の100万個以上に相当し,その爆発力は3,800万もの人々を死に追いやった第二次世界大戦で使用された爆発力の2,700倍に当たるものだった。
戦争は一層頻度を増し,一層凶悪になった。戦争による死者の合計は18世紀には440万人,19世紀には830万人,20世紀の最初の86年間では9,880万人であった。18世紀以来,戦争による死者の数は世界人口の6倍以上の速さで増加してきた。20世紀では1回の戦争の度に生ずる死者の数は,19世紀の場合より10倍も多かった。
[247ページの図版]
緋色の野獣について預言されているように,国際連盟は第二次世界大戦中,底知れぬ深みに陥りましたが,国際連合として生き返りました
[249ページの図版]
世界の諸宗教の代表者たちは国連の「平和年」を支持し,イタリアのアッシジで訳の分からない祈りをささげましたが,それらの代表者はだれ一人として生ける神エホバに祈りませんでした
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大いなるバビロンを処刑する啓示の書 ― その壮大な最高潮は近い!
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35章
大いなるバビロンを処刑する
1 み使いは緋色の野獣をどのように描写しますか。啓示の書の象徴的な言葉を理解するには,どんな知恵が必要ですか。
み使いは啓示 17章3節の緋色の野獣についてさらに描写し,ヨハネにこう告げます。「ここが知恵の伴うそう明さの関係してくるところである。七つの頭は七つの山を表わしており,その上にこの女が座っている。そして七人の王がいる。五人はすでに倒れ,一人は今おり,他の一人はまだ到来していない。しかし到来したなら,少しの間とどまらなければならない」。(啓示 17:9,10)み使いはここで上からの知恵,つまり啓示の書の象徴的な言葉に関する理解を与え得る唯一の知恵を伝えます。(ヤコブ 3:17)その知恵が,わたしたちの生きているこの時代の重大さについてヨハネ級の人たちとその仲間を啓発します。それは,今やまさに執行されようとしているエホバの裁きに対する認識を専心の念の厚い心の内に築き,エホバに対する健全な恐れを教え込みます。箴言 9章10節が,「エホバへの恐れは知恵の始めであり,最も聖なる方についての知識が理解なのである」と述べている通りです。神からの知恵は野獣に関するどんなことをわたしたちに明らかにしますか。
2 緋色の野獣の七つの頭は何を意味していますか。どうして,「五人はすでに倒れ,一人は今おり」と言えますか。
2 あのどう猛な獣の七つの頭は七つの「山」,つまり七人の「王」を表わしています。聖書では,これらの言葉はいずれも政治権力を指して使われています。(エレミヤ 51:24,25。ダニエル 2:34,35,44,45)聖書は神の民の事柄に影響を及ぼす次のような六つの世界強国に言及しています。それはエジプト,アッシリア,バビロン,メディア-ペルシャ,ギリシャ,およびローマです。そのうち,ヨハネが啓示の書の内容を与えられた時までに,五つはすでに来て,去って行きましたが,ローマがなお世界強国として栄えていました。この状況は,「五人はすでに倒れ,一人は今おり」という言葉とよく合致します。しかし,到来することになっている「他の一人」についてはどうですか。
3 (イ)ローマ帝国はどのように分裂しましたか。(ロ)西ローマ帝国ではどんな出来事が起きましたか。(ハ)神聖ローマ帝国はどのようにみなされるべきですか。
3 ローマ帝国はヨハネの時代以後,何百年間も持ちこたえ,拡張さえしました。西暦330年,コンスタンティヌス皇帝は首都をローマからビザンティウムに移し,その名称をコンスタンティノープルと改めました。西暦395年,ローマ帝国は東ローマ帝国と西ローマ帝国に分裂しました。西暦410年,ローマそれ自体は西ゴート族(アリウス派の“キリスト教”に改宗していたゲルマンの一族)の王アラリックの手に落ちました。(これまた“クリスチャン”であった)ゲルマン民族は,スペインや北アフリカのローマ領の大半を征服しました。ヨーロッパでは何世紀にもわたって動乱や不穏な状態や再調整が続きました。西ローマ帝国では,9世紀に教皇レオ3世と同盟を結んだシャルルマーニュや13世紀に君臨したフリードリヒ2世などの著名な皇帝が現われました。しかし,彼らの領土は神聖ローマ帝国と呼ばれたものの,以前の最盛期当時のローマ帝国の領土よりもずっと小さなものでした。それは新しい帝国というよりも,その昔の強国を復興した,もしくは存続させたものでした。
4 東ローマ帝国はどんな成功を収めましたか。しかし,北アフリカ,スペイン,およびシリアにあった古代ローマの以前の領土の大半はどうなりましたか。
4 コンスタンティノープルを中心にした東ローマ帝国は,西ローマ帝国と多少不穏な関係にありましたが,持ちこたえました。6世紀には,東の皇帝ユスティニアヌス1世が再び北アフリカの大半を征服することができ,またスペインやイタリアにも干渉しました。7世紀には,ユスティニアヌス2世が,スラブ民族によって征服されていたマケドニア地方を東ローマ帝国のために取り戻しました。しかし,8世紀までには,北アフリカ,スペイン,およびシリアにあった古代ローマの以前の領土の大半は,新しいイスラム教帝国の勢力下に入り,コンスタンティノープルとローマの両方の支配下から離れました。
5 ローマの都は西暦410年に陥落しましたが,世界の舞台から政治上のローマ帝国のこん跡がすべて過ぎ去るまでには,どうしてさらに何世紀もかかりましたか。
5 コンスタンティノープルの都そのものは幾らか長く持ちこたえ,ペルシャ人,アラブ人,ブルガリア人,およびロシア人からしばしば攻撃されたにもかかわらず生き残りましたが,ついに1203年にイスラム教徒ではなく,西方からの十字軍の手に落ちました。しかし1453年には,イスラム教徒オスマントルコ族の支配者メフメト2世の支配下に入り,間もなくオスマン,もしくはトルコ帝国の首都となりました。こうして,ローマの都は西暦410年に陥落しましたが,世界の舞台から政治上のローマ帝国のこん跡がすべて過ぎ去るまでには,さらに何世紀もかかりました。しかも,そうなってからでさえ,同帝国の影響は,ローマの教皇制度や東方正教会に基づく宗教帝国の中になおも認められました。
6 どんな真新しい帝国が現われましたか。最大の成功を収めたのはどの帝国でしたか。
6 しかし15世紀までには,幾つかの国々が真新しい帝国を築いていました。それら新たな帝国の幾つかはローマのかつての植民地の領土にありましたが,それらの帝国は単にローマ帝国を存続させたものではありませんでした。ポルトガル,スペイン,フランス,およびオランダなどは皆,広範囲にわたる領土の中心地になりました。しかし,最大の成功を収めた英国は,“太陽の没することのない”巨大な帝国を支配するようになりました。この帝国は様々な時期に,南太平洋の広大な地域はもとより,北アメリカ,アフリカ,インド,および東南アジアの大半に勢力を広げました。
7 どのようにして一種の二重世界強国が存在するようになりましたか。ヨハネは,第七の「頭」,つまり第七世界強国がどれほどの期間存続すると言いましたか。
7 19世紀までには,北アメリカの幾つかの植民地がすでに英国から分離して,独立したアメリカ合衆国が創設されました。政治的には,この新しい国とかつての母国との間に多少の不和が生じました。とはいえ,第一次世界大戦が始まると,両国は共通の権益を認めざるを得なくなり,特別の関係で固く結ばれるようになりました。こうして,今や世界で最も裕福な国家であるアメリカ合衆国と世界最大の帝国の中心地である英国とで成る,一種の二重世界強国が存在するようになりました。ですから,第七の「頭」,つまり第七世界強国が現に存在しています。この世界強国は終わりの時に入ってなお存続しており,現代のエホバの証人はこの世界強国の中で最初に地歩を固めました。第六の頭の長い統治期間に比べれば,第七の頭は,神の王国が実在する国家すべてを滅ぼす時まで,ほんの「少しの間」とどまるにすぎません。
八人目の王と呼ばれたのはなぜか
8,9 み使いは象徴的な緋色の野獣のことを何と呼んでいますか。それはどのようにして,その七つから出ますか。
8 み使いはヨハネにさらにこう説明します。「そして,かつていたが今はいない野獣,それ自身は八人目の王でもあるが,その七つから出,去って滅びに至る」。(啓示 17:11)象徴的な緋色の野獣は七つの頭「から出」ます。すなわち,最初の『海から上った野獣』のそれらの頭から生まれます。もしくは,その助けで存在するようになります。緋色の野獣はその『海から上った野獣』の像なのです。では,どのようにして生まれますか。1919年当時,英米世界強国が優勢な頭でした。以前の六つの頭はすでに倒れており,最も有力な世界強国の地位はこの二重の頭に移り,今やその頭が中心的な世界強国の地位を占めました。一連の世界強国の現在の代表であるこの第七の頭は,国際連盟を樹立する際の主動勢力でしたし,今なお国際連合の主要な推進者ならびに財政上の支持者です。ですから,象徴的に言って,その緋色の野獣 ― 八人目の王 ― は最初の七つの頭「から出」ます。このように考えると,それがその七つから出たという表現は,子羊のような二本の角のある野獣(あの最初の野獣の第七の頭である英米世界強国)が像を作るように勧め,それに命を与えたことを述べる,以前に啓示された事柄とよく調和しています。―啓示 13:1,11,14,15。
9 その上,国際連盟の最初の加盟国には,英国と共に,以前の幾つかの頭,すなわちギリシャ,イラン(ペルシャ),イタリア(ローマ)が存在していた場所で支配した諸政府が含まれていました。以前の六つの世界強国が支配した領土で統治する諸政府は,やがて野獣の像を支持する加盟国となりました。このような意味でも,この緋色の野獣はやはり七つの世界強国から出たと言うことができました。
10 (イ)その緋色の野獣はどうして,「それ自身は八人目の王でもある」と言えますか。(ロ)旧ソ連の一指導者は国連を支持する態度をどのように表明しましたか。
10 緋色の野獣が「それ自身は八人目の王でもある」と言われていることに注目してください。したがって,今日,国際連合は一つの世界政府として目に映るようにもくろまれています。また,朝鮮半島,シナイ半島,アフリカの幾つかの国,およびレバノンの場合のように,国際紛争を解決するため,時々軍隊を戦場に派遣して,一つの世界政府のように行動することさえしてきました。しかし,それは一人の王の単なる像にすぎません。それを存在させた者たちや,それを崇拝する者たちにより付与されているものを別にすれば,それは宗教的な像のように,現実の影響力あるいは力を何も持っていません。この象徴的な野獣は時々弱そうに見えますが,国際連盟をよろめかせて底知れぬ深みに陥れた,独裁者を重視する加盟国により一斉に見捨てられるような経験はまだ一度もしていません。(啓示 17:8)他の分野では根本的に違った意見を持っている,旧ソ連の著名な一指導者は,1987年に国連を支持する態度を表明して,ローマの法王たちと行動を共にしました。また,国連を土台にした「国際的な安全のための総合的な制度」が必要であるとさえ唱えました。ヨハネが間もなく理解するように,国連が相当の権威を持って行動するようになる時が来ます。それから,今度は,国連が『去って滅んで』しまいます。
一時のあいだ支配する十人の王
11 エホバのみ使いは象徴的な緋色の野獣の十本の角についてどんなことを告げますか。
11 啓示の書の以前の章では,第六と第七のみ使いがそれぞれ神の怒りの鉢の中身を注ぎ出しました。こうして,地の王たちがハルマゲドンでの神の戦いに集められ,『大いなるバビロンが神のみ前で思い出されようとしている』ことをわたしたちは知らされました。(啓示 16:1,14,19)今度は,それらの者たちに対する神の裁きがどのように執行されるかを大変詳しく学べます。ヨハネに次のように語るエホバのみ使いの言葉をお聴きください。「また,あなたが見た十本の角は十人の王を表わしている。彼らはまだ王国を受けていないが,一時のあいだ野獣と共に王としての権威を受けるのである。これらの者は一つの考えを抱き,それゆえに自分たちの力と権威を野獣に与える。これらの者は子羊と戦うであろう。しかし子羊は,主の主,王の王であるので,彼らを征服する。また,召され,選ばれた忠実な者たちも彼と共に征服する」― 啓示 17:12-14。
12 (イ)十本の角は何を表わしていますか。(ロ)象徴的な十本の角は,どうして『まだ王国を受けていませんでした』か。(ハ)象徴的な十本の角は,どうして今,「王国」を持っていると言えますか。それはどれほどの期間ですか。
12 十本の角は,現在,世界の舞台で力を握り,野獣の像を支持している政治強国すべてを表わしています。現存する国々で,ヨハネの時代に知られていた国はごく少数でした。また,エジプトやペルシャ(イラン)などの名称で知られていた国々は,今日,全く異なった政治機構を持っています。したがって,1世紀当時,『十本の角はまだ王国を受けていませんでした』。しかし,主の日の今,「王国」,つまり政治上の権威を持っています。大植民地帝国が崩壊すると共に,とりわけ第二次世界大戦以後,多くの新しい国家が誕生しました。長年にわたって確立された強国はもとより,それらの新しい国々は,野獣と共に短期間,つまりエホバがハルマゲドンでこの世の政治権威すべてを終わらせる前のほんの「一時」のあいだ支配しなければなりません。
13 十本の角はどのような仕方で「一つの考え」を抱いていますか。そのために,子羊に対して確かにどんな態度を取るようになりますか。
13 今日,これらの十本の角を動かしている最も強い力の一つは国家主義です。彼らは神の王国を受け入れるどころか,自分たちの国家主権を保持したいと願う点で「一つの考え」を抱いています。これこそ彼らが国際連盟や国際連合機構に賛同する第一の目的です。つまり,世界平和を維持し,自分自身を保護して存続させることです。それらの角はこのような態度を取っていますから,「主の主,王の王」なる子羊に確かに反対するようになります。なぜなら,エホバはイエス・キリストの治める王国が間もなくそれらすべての王国に取って代わることを意図しておられるからです。―ダニエル 7:13,14。マタイ 24:30; 25:31-33,46。
14 世の支配者たちはどうして子羊と戦うことができるのでしょうか。その結果,どうなりますか。
14 もちろん,この世の支配者たちがイエスご自身に対して行なえるようなことは何もありません。イエスは彼らの手の全然届かない天におられます。しかし,女の胤の残っている者たちである,イエスの兄弟たちはなお地上におり,攻撃を受けやすいように見えます。(啓示 12:17)それらの角の多くはすでに彼らに対して激しい敵意を表わしており,こうして子羊と戦ってきました。(マタイ 25:40,45)しかし,間もなく,神の王国が『これらのすべての王国を打ち砕いて終わらせる』時が来ます。(ダニエル 2:44)わたしたちは間もなく見るのですが,その時,地の王たちは子羊と最後まで戦うことになります。(啓示 19:11-21)しかし,わたしたちはここで,諸国家が成功を収めるのではないことを十分理解するように学べます。それら諸国家や国連の緋色の野獣は「一つの考え」を抱きますが,彼らは偉大な「主の主,王の王」なる方を打ち負かすことはできませんし,なお地上にいる,キリストの油そそがれた追随者たちを含め,『彼と共にいる,召され,選ばれた忠実な者たち』を打ち負かすこともできません。それら忠実な人たちもまた,サタンの卑劣な告発にこたえて忠誠を保つことにより征服してゆきます。―ローマ 8:37-39。啓示 12:10,11。
娼婦を荒れ廃れさせる
15 み使いは娼婦について,また十本の角と野獣が彼女に対して取る態度や行動について何と述べますか。
15 神の民だけが十本の角の敵意の対象となるのではありません。み使いは今や,ヨハネの注意を再び娼婦に向けさせます。「また彼はわたしに言う,『あなたの見た水,娼婦が座っているところは,もろもろの民と群衆と国民と国語を表わしている。そして,あなたの見た十本の角,また野獣,これらは娼婦を憎み,荒れ廃れさせて裸にし,その肉を食いつくし,彼女を火で焼き尽くすであろう』」― 啓示 17:15,16。
16 政治上の諸政府が大いなるバビロンを激しく攻撃する時,彼女は保護と支えを与えるその水に,どうして頼ることができなくなりますか。
16 古代バビロンが水を利用した防御手段に頼ったのと同様,大いなるバビロンは今日,「もろもろの民と群衆と国民と国語」で成る,膨大な人数の会員に頼っています。み使いは,この地の政治上の諸政府が大いなるバビロンを激しく攻撃する衝撃的な出来事について告げる前に,適切にもそれらの人々にわたしたちの注意を引いています。それらの「もろもろの民と群衆と国民と国語」すべてはその時,何をするのでしょうか。神の民はすでに,ユーフラテス川の水がかれることを大いなるバビロンに警告しています。(啓示 16:12)その水はついには完全に引いてしまいます。それは,最悪の危急の時に,嫌悪すべき年取った娼婦に何ら有効な支えを与えることができないでしょう。―イザヤ 44:27。エレミヤ 50:38; 51:36,37。
17 (イ)大いなるバビロンの富はどうして彼女を救うものとはなりませんか。(ロ)大いなるバビロンの終わりはどうして品位のあるものとはとても言えませんか。(ハ)十本の角,つまり個々の国家のほかに,何がこの凶暴な行為に加わりますか。
17 大いなるバビロンの物質上の膨大な富も確かに彼女を救うものとはなりません。それは彼女の滅びを早めさえするでしょう。というのは,幻は,野獣と十本の角が彼女に憎しみをぶちまける時,その王衣や宝石類をすべて奪い取ることを示しているからです。彼女の富を略奪するのです。彼らは彼女を「裸にし」,恥ずべきことに,その実際の性格を暴露します。何という荒廃でしょう。彼女の終わりもまた,品位のあるものとはとても言えません。彼らは彼女を滅ぼし,「その肉を食いつくし」,命のない骸骨にして,最後に『彼女を火で焼き尽くし』ます。彼女は疫病の保菌者のように,まともに埋葬されることもなく焼き尽くされます! この大娼婦を滅ぼすのは,十本の角で表わされている諸国家だけではありません。国連そのものを意味する「野獣」もそれらの国家と共にこの凶暴な行為に加わります。国連は偽りの宗教を滅ぼすことを認めるようになります。国連内の190余りの国々の多くはすでにその投票の傾向で,宗教,特にキリスト教世界の宗教に対する敵意を表わしてきました。
18 (イ)わたしたちは諸国家がバビロン的な宗教に敵対する可能性を示すどんな事柄を見てきましたか。(ロ)大娼婦に対して全面的な攻撃が行なわれる根本的な理由は何ですか。
18 諸国家はどうしてそのようなひどい仕方でかつての情婦を扱うのでしょうか。バビロン的な宗教にそのように敵対する可能性を示す事柄を,わたしたちは近年の歴史の中で見てきました。旧ソ連や中国のような国では,政府による公の反対のために宗教の影響力は驚くほど減少しました。ヨーロッパのプロテスタントの世界では無関心や懐疑の念がはびこって,多くの教会が空っぽになったため,宗教は事実上死んでいます。広大なカトリック帝国は,指導者たちが静められない反抗や不和のために分裂しています。とはいえ,大いなるバビロンに対するこの最後の全面的な攻撃は,大娼婦に対する神の変更できない裁きの表明としてもたらされるということを見失わないようにすべきです。
神の考えを遂行する
19 (イ)西暦前607年に背教したエルサレムに執行された裁きは,エホバが大娼婦に執行される裁きをどのように例証するものとなりますか。(ロ)西暦前607年以後,エルサレムが陥った,荒廃した,人の住まない状態は,今日のどんな事柄を予示しましたか。
19 エホバはこの裁きをどのように執行されますか。エホバが昔,背教したご自分の民に対して取られた処置は,そのことを例証していると言えるでしょう。その民についてこう言われました。「エルサレムの預言者たちの中にわたしは恐るべきことを見た。姦淫をすることと偽りによって歩むこととを。彼らは悪を行なう者たちの手を強め,その者たちがそれぞれ自分の悪から引き返すことのないようにした。わたしにとって,彼らは皆ソドムのようになり,その住民はゴモラのようになった」。(エレミヤ 23:14)西暦前607年にエホバは,霊的な姦淫を犯した,その都市の『衣をはぎ取り,美しい品々を取り去り,裸にし,何も身に着けないままにさせて捨て』させるため,ネブカドネザルをお用いになりました。(エゼキエル 23:4,26,29)当時のエルサレムは今日のキリスト教世界のひな型でしたから,ヨハネが以前の幻で見た通り,エホバはキリスト教世界と他の偽りの宗教に対して同様の処罰を加えられます。西暦前607年以後,エルサレムが陥った,荒廃した,人の住まない状態は,キリスト教世界がその富を奪われ,恥ずべきことに真相が暴露された後,どのように見えるかを示しています。また,大いなるバビロンの残りの部分も同様のひどい目に遭います。
20 (イ)ヨハネは,エホバが裁きを執行する際,もう一度人間の支配者たちをお用いになることをどのように示していますか。(ロ)神の「考え」とは何ですか。(ハ)諸国家はどのように自分たちの「一つの考え」を遂行しようとしますか。しかし,実際にはだれの考えが遂行されますか。
20 エホバは裁きを執行する際,再び人間の支配者たちをお用いになります。こう記されています。「神は,ご自分の考えを遂行することを彼らの心の中に入れたからである。すなわち,彼らの王国を野獣に与えて彼らの一つの考えを遂行し,神の言葉の成し遂げられるに至ることである」。(啓示 17:17)神の「考え」とは何ですか。大いなるバビロンを完全に滅ぼすため,その刑執行者たちを団結するように取り計らうことです。もちろん,彼女を攻撃する支配者たちの動機は,自分たちの「一つの考え」を遂行することです。大娼婦に敵対することは自分たちの国家主義的な益になると思うようになるのです。そして,自分たちの境界内に引き続き存在する組織化された宗教は,自分たちの主権にとって脅威だと考えるようになるかもしれません。しかし,実際にはエホバが物事を動かしておられるので,彼らは姦淫を犯した長年の敵を一撃のもとに滅ぼすことにより,エホバの考えを遂行します!―エレミヤ 7:8-11,34と比較してください。
21 大いなるバビロンを滅ぼすのに緋色の野獣が用いられるのですから,諸国家は明らかに国際連合に関して何をするようになりますか。
21 そうです,諸国家は緋色の野獣,つまり国際連合を用いて,大いなるバビロンを滅ぼしますが,全く自発的に行動する訳ではありません。というのは,エホバが『彼らの王国を野獣に与えて彼らの一つの考えを遂行する』企てを彼らの心に入れられるからです。時が来ると,諸国家は明らかに国際連合を強化する必要を認めるようになります。いわば歯を与えて,つまり何であれ,自分たちの持っている権威や力を国連に貸して,国連が偽りの宗教に敵対して首尾よく戦えるようにし,ついに『神の言葉が成し遂げられる』ようになるのです。こうして,古来の娼婦は完全に終わりを告げます。これでいい厄介払いができます!
22 (イ)啓示 17章18節で,み使いがその証言を結んでいる仕方は何を示していますか。(ロ)エホバの証人は秘義の解明にどのようにこたえ応じますか。
22 み使いは,あたかも偽りの宗教の世界帝国に対するエホバの裁きの執行が確実であることを強調するかのように,自分の証言を次のように結んでいます。「そして,あなたの見た女は,地の王たちの上に王国を持つ大いなる都市を表わしている」。(啓示 17:18)ベルシャザルの時代のバビロンのように,大いなるバビロンは,「天びんで量られて,不足のあることが知られ」ました。(ダニエル 5:27)彼女は速やかに,また最終的に処刑されます。それで,エホバの証人は大娼婦の秘義と緋色の野獣の秘義の解明にどのようにこたえ応じますか。エホバの裁きの日をふれ告げる業で熱意を示し,誠実な真理探究者には「慈しみのある」仕方で答えることによって,こたえ応じます。(コロサイ 4:5,6。啓示 17:3,7)次の章が示すように,大娼婦が処刑される際に生き残りたいと願う人々はすべて,行動しなければ,しかも素早く行動しなければなりません!
[252ページの図版]
一連の七つの世界強国
エジプト
アッシリア
バビロン
メディア-ペルシャ
ギリシャ
ローマ
英米世界強国
[254ページの図版]
『それ自身は八人目の王である』
[255ページの図版]
彼らは子羊に背を向けて,「自分たちの力と権威を野獣に与え」ます
[257ページの図版]
大いなるバビロンの主要な部分であるキリスト教世界は,完全な破滅を被る点で,古代エルサレムに似るものとなります
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荒廃させられる大いなる都市啓示の書 ― その壮大な最高潮は近い!
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36章
荒廃させられる大いなる都市
第12の幻 ― 啓示 18:1–19:10
主題: 大いなるバビロンの倒壊と滅び; 子羊の結婚が発表される
成就する期間: 1919年から大患難の後まで
1 何が大患難の始まりをしるし付けるものとなりますか。
突然の恐ろしい荒廃 ― 大いなるバビロンはこうして消滅します! それは,「世の初めから今に至るまで起きたことがなく,いいえ,二度と起きないような大患難」の始まりをしるし付ける,歴史上極めて破局的な出来事の一つとなるでしょう。―マタイ 24:21。
2 政治上の様々な帝国が興っては滅びましたが,どんな帝国は持ちこたえてきましたか。
2 偽りの宗教は長い時間を経てきました。それは,エホバに反対して人々にバベルの塔を建てさせた,血に飢えたニムロデの時代以来,連綿と存在してきました。エホバがそれら反逆者たちの国語を混乱させ,人々を全地に散らされた時,バビロンの偽りの宗教も人々と共に各地に伝わってゆきました。(創世記 10:8-10; 11:4-9)その時以来,政治上の様々な帝国が興っては滅びましたが,バビロン的な宗教は持ちこたえてきました。それは数多くの形式や形態を取りながら,偽りの宗教の一つの世界帝国,つまり預言された大いなるバビロンとなりました。その最も顕著な部分は,初期のバビロン的な教理と背教した“キリスト教”の教理を融合したものから生じたキリスト教世界です。大いなるバビロンは余りにも長い歴史を持っているため,大いなるバビロンが滅ぼされるなどということは,多くの人々にとって信じ難い事柄です。
3 啓示の書は偽りの宗教の宿命をどのように確証していますか。
3 ですから,啓示の書が,大いなるバビロンの倒壊とその完全な荒廃に至るまでのその後の出来事を二通りの仕方で詳細に描写して,偽りの宗教の宿命を確証しているのは,適切なことです。わたしたちはすでに,「大娼婦」である大いなるバビロンについて調べてきました。彼女は政治上の領域のかつての愛人たちによって最後には荒廃させられます。(啓示 17:1,15,16)今度は,さらにもう一つの幻の中で,古代バビロンの宗教上の対型である,一つの都市としての大いなるバビロンを見ようとしています。
大いなるバビロンは転倒する
4 (イ)ヨハネは次にどんな幻を見ますか。(ロ)そのみ使いがだれであるかはどうして分かりますか。大いなるバビロンが倒れたことをその方が発表するのは,どうしてふさわしいことですか。
4 ヨハネはさらにその記述を続け,わたしたちにこう告げます。「これらのことの後,わたしは,別のみ使いが天から下って来るのを見た。彼は大いなる権威を持っており,地は彼の栄光によって明るく照らされた。そして,彼は強い声で叫んで言った,『彼女は倒れた! 大いなるバビロンは倒れた』」。(啓示 18:1,2[前半])ヨハネがみ使いによるこのような発表を聞くのは,これで二度目です。(啓示 14:8をご覧ください。)しかし,この度は,その発表の重要性は天のみ使いの荘厳さによって強調されています。というのは,そのみ使いの栄光が全地を照らしているからです! このみ使いは果たしてだれでしょうか。何世紀も前に,エゼキエルは天の幻について報告し,「地はその[エホバの]栄光のゆえに輝いた」と述べました。(エゼキエル 43:2)エホバの栄光と比べられるような栄光で輝く唯一のみ使いは,「神の栄光の反映,またその存在そのものの厳密な描出」であられる主イエスでしょう。(ヘブライ 1:3)1914年にイエスは天の王となられ,その時以来,エホバの仲間の王,ならびに裁き主として地を治める権威を行使してこられました。ですから,大いなるバビロンが倒れたことをこの方が発表するのはふさわしいことです。
5 (イ)そのみ使いは,大いなるバビロンが倒れたことをふれ告げるのに,だれを用いますか。(ロ)「神の家」の者であると唱える人々に関する裁きが始まった時,キリスト教世界はどうなりましたか。
5 大いなる権威を持っているそのみ使いは,このような驚くべき知らせを人類の前でふれ告げるのに,だれをお用いになりますか。むろん,それは,大いなるバビロンが倒れた結果解放された人々,つまりヨハネ級の人たちである,地上に残っている油そそがれた者たちです。1914年から1918年にかけて,これらの人たちは大いなるバビロンの手に掛かって大変苦しめられましたが,1918年には主エホバとその「[アブラハム]契約の使者」イエス・キリストが,クリスチャンと称する人々,つまり「神の家」に対して裁きを始められました。こうして,背教したキリスト教世界は裁きを受けました。(マラキ 3:1。ペテロ第一 4:17)キリスト教世界は第一次世界大戦中に恐るべき流血の罪を負い,エホバの忠実な証人たちに対する迫害の共犯者となったので,バビロン的な信条を奉じていても,それは裁きの時に同世界を助けるものとはなりませんでした。また,大いなるバビロンのほかのどんな部分も神の是認を受けるには値しませんでした。―イザヤ 13:1-9と比較してください。
6 大いなるバビロンはどうして1919年までに倒れたと言えますか。
6 それで,大いなるバビロンは1919年までに倒れたので,神の民は解放され,あたかも一日のうちに,霊的な繁栄の見られる彼らの地に回復される道が開かれました。(イザヤ 66:8)その年までに,大いなるダリウスであられるエホバ神と,大いなるキュロスであられるイエス・キリストは,物事を巧みに操られたので,娼婦のような大いなるバビロンはもはやエホバの民を捕らえておくことはできなくなりました。彼らがエホバに仕えるのを妨げたり,また偽りの宗教が滅びに定められていることや,エホバの主権の正しさの立証される時が近いことについて,すべての人々が聞けるように知らせるのを妨げたりすることは,もはやできなくなりました。―イザヤ 45:1-4。ダニエル 5:30,31。
7 (イ)大いなるバビロンは1919年には滅ぼされなかったものの,エホバは彼女をどうみなされましたか。(ロ)大いなるバビロンが1919年に倒れた時,その結果としてエホバの民はどうなりましたか。
7 なるほど,大いなるバビロンは1919年に滅ぼされた訳ではありません。それは,古代の都市バビロンが西暦前539年にペルシャ人キュロスの軍隊の手に落ちた時に滅ぼされなかったのと同様です。しかし,エホバの見地からすれば,大いなるバビロンの組織は倒れてしまいました。同バビロンは司法上有罪の判決を下されて,処刑を待つことになりました。ですから,偽りの宗教はもはや神の民を捕らえておくことはできなくなりました。(ルカ 9:59,60と比較してください。)その民は,時に応じて食物を備える,主人の忠実で思慮深い奴隷として仕えるために解放されました。彼らは「よくやった」というお褒めの裁きを受け,エホバの業に再び忙しく携わる任務を与えられました。―マタイ 24:45-47; 25:21,23。使徒 1:8。
8 イザヤ 21章8節と9節の見張りの者はどんな出来事をふれ告げますか。その見張りの者は今日のだれを予表していますか。
8 何千年も前に,エホバはこの画期的な出来事を予告するため,ほかの預言者たちをもお用いになりました。イザヤは見張りの者について語っていますが,その見張りの者は,「ライオンのように呼ばわりはじめた,『エホバよ,わたしは昼間ずっと物見の塔の上に立っております。わたしは夜ごとに自分の見張り所に就いております』」と記されています。それで,その見張りの者はどんな出来事を察知して,ライオンのように大胆にふれ告げますか。「彼女は倒れた! バビロンは倒れた。その神々の彫像を[エホバ]はことごとく地に砕かれた!」と告げます。(イザヤ 21:8,9)この見張りの者は,いみじくも十分目覚めた今日のヨハネ級の人たちを予表しています。その級の人たちは「ものみの塔」誌その他の神権的な出版物を用いて,バビロンは倒れたという知らせを広く伝えているからです。
大いなるバビロンの衰退
9,10 (イ)バビロン的な宗教の影響力は第一次世界大戦以来,どのように衰退してきましたか。(ロ)その力あるみ使いは,大いなるバビロンの倒れた状態をどのように描写していますか。
9 古代バビロンは西暦前539年に倒れた時,やがて荒廃して終わりを告げる,長い衰退の過程をたどり始めました。同様に,第一次世界大戦以来,バビロン的な宗教の影響力は世界的な規模で著しく衰退してきました。日本では,第二次世界大戦後,神道に基づく天皇崇拝は禁じられました。中国では,共産主義政府が宗教上の任命や活動をすべて支配しています。プロテスタント圏の北欧の人々はほとんど宗教に対して無関心になりました。それに,ローマ・カトリック教会は近年,同教会の世界的な領域に見られる分裂や内部からの反対のために弱体化してきました。―マルコ 3:24-26と比較してください。
10 確かに,このような傾向はすべて,大いなるバビロンに対する来たるべき軍国主義的攻撃の準備として『ユーフラテス川を干上がらせる』処置の一環です。また,1986年10月に法王が述べた,教会は ― 膨大な赤字のゆえに ―「再び托鉢を行なうようになる」に違いないという発表も,その水が『かれる』ことを表わしています。(啓示 16:12)特に1919年以来,大いなるバビロンは霊的な不毛の地として衆目にさらされてきました。それは,力のあるみ使いがここで次のように発表している通りです。「そして,[彼女は]悪霊たちの住みか,あらゆる汚れた呼気のこもる場所,またあらゆる汚れた憎まれる鳥の潜む場所となった!」(啓示 18:2[後半])彼女は間もなく,現代のイラクにあるバビロンの廃虚のように荒れ廃れた,文字通りの不毛の地となるでしょう。―エレミヤ 50:25-28もご覧ください。
11 大いなるバビロンはどのような意味で「悪霊たちの住みか」,ならびに『汚れた呼気のこもる場所,また汚れた鳥の潜む場所』となりましたか。
11 この句の「悪霊たち」という言葉は,倒れたバビロンを次のように描写したイザヤの言葉の中に出てくる,「やぎの形をした悪霊たち」(セイーリーム)という表現を反映しているようです。「そして,水のない地域にせい息するものが必ずそこに伏し,彼らの家々には必ずわしみみずくが満ちる。また,そこには必ずだちょうが住み,やぎの形をした悪霊たちもそこで跳ね回ることであろう」。(イザヤ 13:21)それは文字通りの悪霊ではなく,砂漠にせい息する毛深い動物を指しているようです。その動物の姿を見た人々は,悪霊のことを想像したのかもしれません。大いなるバビロンの廃虚に,比喩的な意味でそのような動物や汚れた鳥がおり,よどんだ有害な空気(「汚れた呼気」)があることは,彼女が霊的に死んだ状態にあることを示唆しています。彼女は人類に対して命を得られる見込みを何も差し伸べていません。―エフェソス 2:1,2と比較してください。
12 大いなるバビロンの状況は,エレミヤ 50章にあるエレミヤの預言とどのように合致しますか。
12 彼女の状況はまた,エレミヤの次のような預言とも合致します。「『カルデア人を攻める剣がある』と,エホバはお告げになる,『それはバビロンの住民と,その君たちと,その賢い者たちとを攻める。……彼女の水の上には荒廃があり,それは必ず干上がる。それは彫像の地であり,彼らは自分たちの怖ろしい幻のために,気違いのような行動をしつづけるからである。それゆえ,水のない地域にせい息するものたちは,泣きわめく動物と共に住み,そこには必ずだちょうが住む。彼女はもはや決して住まわれることも,代々にわたって宿ることもない』」。偶像崇拝も,繰り返し唱えられる祈りも,神がソドムとゴモラを打ち倒された時のような応報を受けないよう,大いなるバビロンを救うものとはなりません。―エレミヤ 50:35-40。
情欲をかき立てるぶどう酒
13 (イ)力のあるみ使いは大いなるバビロンの売春行為の及ぶ範囲の広さに,どのように注意を引いていますか。(ロ)古代バビロンで広まっていた,どんな不道徳な行為が,大いなるバビロンの中でも見られますか。
13 次に,力のあるみ使いは大いなるバビロンの売春行為の及ぶ範囲の広さに注意を引いて,こうふれ告げます。「彼女の淫行の情欲をかき立てるぶどう酒のためにa あらゆる国民がいけにえにされ,地の王たちは彼女と淫行を犯し,地の旅商人たちは彼女の恥知らずのおごりの力で富を得たからである」。(啓示 18:3)彼女は宗教的な汚れた方法で人類の中のあらゆる国民を教化してきました。ギリシャの歴史家ヘロドトスによれば,古代バビロンの乙女は各々神殿での崇拝の際,処女の身を売ることを要求されました。カンボジアのアンコールワット寺院やインドのカジュラーホの神殿にある,戦争で傷つけられた彫刻には,胸が悪くなるような堕落した性行為の描写が今日でも見られます。それらの宗教彫刻のヒンズー教の神ビシュヌは,嫌悪すべき好色的な光景と共に描かれています。米国では1987年に,また1988年にも,テレビ福音伝道師の世界を揺るがす不道徳な行為が発覚すると共に,教会の牧師の間に広まっている同性愛行為が明らかにされた事件は,キリスト教世界さえ,衝撃的なまでに甚だしい文字通りの淫行を容認していることを示す良い例です。ところが,あらゆる国民がそれよりもさらにゆゆしい淫行の犠牲者となってきました。
14-16 (イ)ファシストのイタリアでは,宗教と政治の癒着した,霊的に言ってどんな不倫な関係が発展しましたか。(ロ)イタリアがアビシニアに侵入した時,ローマ・カトリック教会の司教たちはどんな声明を出しましたか。
14 ナチ・ドイツのヒトラーが急速に台頭して政権を獲得するのを可能にした,宗教と政治の癒着した不倫な関係については,すでに回顧しました。宗教が世俗の事柄に干渉したために,ほかの国々もやはり苦しめられました。例えば,1929年2月11日,ファシストのイタリアで,ムッソリーニとガスパリ枢機卿はラテラノ条約に署名し,バチカン市が主権国となりました。法王ピウス11世は,「イタリアを神に返し,神をイタリアに返した」と唱えましたが,それは真実でしたか。6年後に起きたことを考えてみてください。1935年10月3日,イタリアはアビシニア(エチオピア)に侵入し,その国は「依然,奴隷制度を守る野蛮な国」だと主張しました。本当に野蛮な国だったのはどちらの国でしたか。カトリック教会はムッソリーニの野蛮な行為を責めましたか。法王はあいまいな声明を出しましたが,司教たちは自分たちの“祖国”イタリアの軍隊をかなり声高に祝福しました。アンソニー・ロードは,「独裁者たちの時代のバチカン」という本の中で次のように伝えています。
15 「[イタリアの]ウディネの司教は,[1935年]10月19日付の司牧書簡にこう記した。『この事件の正邪について意見を述べるのは,時宜を得たことでも,ふさわしいことでもない。イタリア人としての,またそれ以上にクリスチャンとしての我々の務めは,我が軍の成功に寄与することである』。パドゥアの司教は10月21日,『我々が遭遇している,困難な時期の今,我が国の政治家や軍隊に信仰を抱くよう諸君に要請する』と書いた。10月24日,クレモナの司教は何本かの連隊旗を聖別して,こう述べた。『これら将兵の上に神の祝福がとどまり,彼らがアフリカの地で,イタリアの守護神のために,新たな肥沃な土地を征服し,それらの土地にローマの,そしてキリスト教の文明をもたらせるように。イタリアが全世界に対してクリスチャンの良き指導者として再び立てるように』」。
16 アビシニアはローマ・カトリックの聖職者による祝福をもって略奪されました。果たしてこれら僧職者のうちのだれが,使徒パウロのように,「すべての人の血について潔白である」と言えるでしょうか。―使徒 20:26。
17 スペインは,その僧職者たちが『剣をすきの刃に打ち変える』ことに失敗したため,どのように苦しめられましたか。
17 ドイツ,イタリア,およびアビシニアに加えて,大いなるバビロンの淫行の犠牲になったもう一つの国があります。それはスペインです。1936年から1939年に及んだこの国の内乱を引き起こした一因は,民主主義政府がローマ・カトリック教会の巨大な権力を縮小させる処置を講じたことでした。その内戦が始まると,革命勢力のファシストのカトリックの指導者フランコは,自らを“聖十字軍のクリスチャンの統領”と称しましたが,後にこの称号を放棄しました。その戦いでは数十万のスペイン人が死にました。それとは別に,ある控え目な推定によれば,フランコの国粋主義者たちは人民戦線の団員4万人を殺害しましたし,後者は修道士,司祭,修道女,見習い僧など8,000人の僧職者を殺害していました。内乱のそのような惨事と悲劇は,「あなたの剣を元の所に納めなさい。すべて剣を取る者は剣によって滅びるのです」と言われたイエスの言葉に留意するのが知恵の道であることを良く示す例です。(マタイ 26:52)キリスト教世界がこうした大規模な流血行為に関係してきたのは,何と嫌悪すべきことでしょう。同世界の僧職者たちは『剣をすきの刃に打ち変える』ことに,まさしく完全に失敗しました!―イザヤ 2:4。
旅商人たち
18 「地の旅商人たち」とはだれのことですか。
18 「地の旅商人たち」とはだれのことですか。今日では多分,彼らのことを貿易業者,商業界の要人,大企業の敏腕な事業家などと呼べるでしょう。これは,合法的な事業に携わることが間違っているという意味ではありません。聖書は事業に携わる人々のために賢明な助言を与えており,不正,貪欲その他,同様の悪いことを戒めています。(箴言 11:1。ゼカリヤ 7:9,10。ヤコブ 5:1-5)「自ら足りて敬虔な専心を守ること」は,より大きな利得をもたらす道です。(テモテ第一 6:6,17-19)しかし,サタンの世は義にかなった原則に従わないので,腐敗がはびこっています。それは宗教,政治,そして大企業の世界にも見られます。報道機関は政府の高官による横領や兵器の不正取り引きなどの汚職事件を時々暴露します。
19 世界の経済に関するどんな事実は,啓示の書の中で地の商人たちが好ましくない者として言及されているわけを説明するのに役立ちますか。
19 国際的な兵器貿易総額は毎年,1兆㌦(約130兆円)以上に急騰している一方,何億もの人々が生活の必需品に事欠いています。これは実にひどい話です。ところが,軍備を整えることが,世界の経済を維持する基本的な支柱の一つとなっているようです。ロンドンのスペクテイター紙の1987年4月11日号の記事はこう報じました。「直接関係のある産業だけを数えても,米国ではおよそ40万件,ヨーロッパでは75万件の職種が関係している。ところが,実に奇妙なことに,武器製造の社会的,経済的役割は増大したものの,製作者たちが十分守られているかどうかという現実の問題は,背後に押しやられている」。爆弾その他の武器は世界中で,また潜在的な敵国とさえ取り引きされ,膨大な利益をもたらしています。いつの日か,それらの爆弾は戻って来て,その売買をする者たちを滅ぼす火のような大破壊をもたらすでしょう。何という矛盾でしょう。その上,兵器産業を取り巻く汚職があります。スペクテイター紙によれば,米国だけで,「奇妙なことに,毎年,国防総省は9億㌦(約1,170億円)相当の兵器や装備を失って」います。啓示の書の中で地の商人たちが好ましくない者として言及されているのも,確かに少しも不思議ではありません!
20 宗教が商取り引きの不正な慣行に関係していることを示す,どんな実例がありますか。
20 輝かしいみ使いが予告した通り,宗教は商取り引きのこのような不正な慣行に関係してきました。例えば,1982年に起きたイタリアのアンブロシアノ銀行の倒産にバチカンが関係していた事件があります。この事件は1980年代のこれまでずっと尾を引いており,同銀行のお金はどこへ行ったのかという疑問はまだ解決されていません。1987年2月にイタリア,ミラノ市の治安判事は,米国のある大司教を含め,バチカンの3人の僧職者に対して,不正倒産を起こさせた共犯者としての容疑で逮捕令状を出しましたが,バチカン側は本国送還要請を拒否しました。1987年7月,騒然とした抗議が行なわれたさなかに,その令状はバチカンとイタリア政府との古い条約に基づき,イタリアの最高裁判所により無効とされました。
21 イエスは当時の商取り引きのいかがわしい慣行に少しもかかわりをお持ちになりませんでしたが,それはどうして分かりますか。しかし,今日のバビロン的な宗教に関しては,どんなことが分かりますか。
21 イエスは当時の商取り引きのいかがわしい慣行とかかわりを持たれましたか。いいえ。イエスは地所を持ってさえおられませんでした。というのは,『頭を横たえる所がなかった』からです。イエスは金持ちの若い支配者にこう忠告なさいました。「あなたの持っている物をみな売って,貧しい人々に配りなさい。そうすれば,天に宝を持つようになるでしょう。それから,来て,わたしの追随者になりなさい」。これは優れた訓戒でした。というのは,その訓戒に従えば,商売上の事柄にかかわる心配事をすべて除去することができたはずだからです。(ルカ 9:58; 18:22)それとは対照的に,バビロン的な宗教は多くの場合,大企業との芳しくない結びつきを持っています。例えば,1987年に,オールバニ・タイムズ・ユニオン紙の報告によれば,米国フロリダ州マイアミ市のカトリック大司教管区の財政管理者は,同教会が核兵器を製造する会社,準成人映画の製作会社,たばこ製造会社などの株を所有していることを認めました。
『わたしの民よ,彼女から出なさい』
22 (イ)天から出る声は何と言いますか。(ロ)神の民はどうして西暦前537年と西暦1919年に喜びを得ましたか。
22 ヨハネが次に述べる言葉は,預言的な型の一層の成就を指し示しています。「また,わたしは天から出る別の声がこう言うのを聞いた。『わたしの民よ,彼女の罪にあずかることを望まず,彼女の災厄を共に受けることを望まないなら,彼女から出なさい』」。(啓示 18:4)ヘブライ語聖書中の古代バビロンの倒壊に関する預言にも,やはりご自分の民に対する,『バビロンから逃げ去れ』というエホバの命令が含まれています。(エレミヤ 50:8,13)同様に,大いなるバビロンの来たるべき荒廃を考えて,神の民は逃れるよう,いま促されています。西暦前537年に,忠実なイスラエル人はバビロンから逃れる機会を得たので,大いに喜びました。同様に,1919年,神の民はバビロンへの捕らわれから解放されたので,喜びを得ました。(啓示 11:11,12)そして,その時以来,何百万ものほかの人々が,逃げるようにとの命令に従ってきました。
23 天から出る声は,大いなるバビロンから逃げるのが急を要することをどのように強調していますか。
23 大いなるバビロンから逃げて,世の宗教の会員としての資格を取り消してもらい,完全に離れるのは,実際,それほど急を要することでしょうか。その通りです。というのは,わたしたちは年経たこの宗教上の怪物である大いなるバビロンに関する神の見方を持たなければならないからです。神はこのバビロンを大娼婦と呼んで,本当のことをずばりと言われました。それで今度は,天から出る声はこの売春婦に関してヨハネにさらにこう知らせます。「彼女の罪は重なり加わって天に達し,神は彼女の数々の不正な行為を思い出されたのである。彼女自身が返したとおりに彼女に返し,二倍を,つまり,彼女が行なったことの二倍を彼女に行ないなさい。彼女が混ぜ物を入れた杯に,二倍の混ぜ物を彼女のために入れなさい。彼女が自分に栄光を帰し,恥知らずのおごりのうちに暮らしたその分だけ,彼女に責め苦と嘆きを与えなさい。彼女は心の中で,『わたしは女王として座す。やもめなどではない。嘆きを見ることは決してない』と言いつづけているからである。そのために,彼女の災厄は一日のうちに来る。それは死と嘆きと飢きんであって,彼女は火で焼き尽くされるであろう。彼女を裁いたエホバ神は強い方だからである」― 啓示 18:5-8。
24 (イ)神の民は何を避けるために,大いなるバビロンから逃げなければなりませんか。(ロ)大いなるバビロンから逃げ損なう人々は,彼女と共にどんな罪にあずかることになりますか。
24 確かにこれは強烈な言葉です! ですから,行動が求められています。エレミヤは当時のイスラエル人に行動するよう促して,こう言いました。「バビロンの中から出て逃げよ。……これはエホバの復しゅうの時だからである。神がこれに返す仕打ちがある。わたしの民よ,彼女の中から出て,各々その魂をエホバの燃える怒りから逃れさせよ」。(エレミヤ 51:6,45)同様に,天から出る声は今日,大いなるバビロンから逃げて,彼女の災厄にあずからないようにするよう,神の民に警告しています。大いなるバビロンを含め,この世に対する災厄のようなエホバの裁きは,今やふれ告げられています。(啓示 8:1–9:21; 16:1-21)もし神の民がそのような災厄に遭って,結局,彼女と共に死ぬようなことを望まないなら,偽りの宗教から離れる必要があります。それに,そのような組織の中にとどまっているなら,彼女の罪にあずかることになります。そうなれば,彼女のように,霊的な姦淫の罪と「地上でほふられたすべての者」の血を流した罪を負うことになるでしょう。―啓示 18:24。エフェソス 5:11; テモテ第一 5:22と比較してください。
25 神の民はどんな仕方で古代バビロンから出ましたか。
25 しかし,神の民はどのようにして大いなるバビロンから出るのでしょうか。古代バビロンの場合,ユダヤ人はバビロンの都を物理的に旅立って,はるばる約束の地に戻らなければなりませんでした。ですが,それ以上のことが関係していました。イザヤはイスラエル人に預言的にこう告げました。「立ち去れ。立ち去れ。そこから出よ。汚れたものには何にも触れるな。エホバの器具を運んでいる者たちよ,彼女の中から出て,身を清く保て」。(イザヤ 52:11)そうです,彼らは,自分たちの奉じているエホバの崇拝を汚す恐れのあるバビロン的な宗教の汚れた慣行をすべて捨てなければなりませんでした。
26 コリントのクリスチャンは,『彼らの中から出て,汚れた物に触れるのをやめよ』という言葉に,どのように従いましたか。
26 使徒パウロはコリント人にあてた手紙の中でイザヤの言葉を引用し,こう言っています。「不釣り合いにも不信者とくびきを共にしてはなりません。義と不法に何の交友があるでしょうか。また,光が闇と何を分け合うのでしょうか。……『それゆえ,彼らの中から出て,離れよ』と,エホバは言われ[ます]。『そして汚れた物に触れるのをやめよ』」。コリントのクリスチャンはこの命令に従うため,コリントを去らなければならなかった訳ではありません。しかし,彼らは確かに,偶像崇拝者の汚れた行為から霊的に離れると共に,偽りの宗教の汚れた神殿を物理的にも避けなければなりませんでした。1919年に神の民はそのような仕方で大いなるバビロンから逃げ始め,何であれ残っていた汚れた教えや慣行から自らを清めました。こうして,彼らは神の清められた民として神に仕えることができました。―コリント第二 6:14-17。ヨハネ第一 3:3。
27 古代バビロンに対する裁きと大いなるバビロンに対する裁きとの間には,どんな類似点がありますか。
27 古代バビロンが倒れて,ついに荒廃したことは,彼女の罪に対する罰でした。『その裁きは天にまでも達したから』です。(エレミヤ 51:9)同様に,大いなるバビロンの罪は,「重なり加わって天に達し」て,エホバご自身の注意を引くほどになりました。彼女は不正,偶像崇拝,不道徳,圧制,盗み,および殺人の罪を負っています。古代バビロンが倒れたことは,一つには彼女がエホバの神殿とその真の崇拝者たちに行なった事柄に対する復しゅうでした。(エレミヤ 50:8,14; 51:11,35,36)同様に,大いなるバビロンが倒れて,最後に滅びることは,彼女が何世紀にもわたって真の崇拝者たちに行なってきた事柄に対する復しゅうの表明となります。実際,彼女の最終的な滅びは,「わたしたちの神の側の復しゅうの日」の始まりとなります。―イザヤ 34:8-10; 61:2。エレミヤ 50:28。
28 エホバはどんな公正の規準を大いなるバビロンに適用されますか。それはなぜですか。
28 モーセの律法のもとでは,もしイスラエル人が仲間の同国人から物を盗んだなら,償いとして最後には二倍にして返さなければなりませんでした。(出エジプト記 22:1,4,7,9)大いなるバビロンの来たるべき滅びの際に,エホバはそれに匹敵する公正の規準を適用されます。彼女は自分の発したものの二倍を受けるはずです。憐れみが示されることはありません。なぜなら,大いなるバビロンは彼女の犠牲者たちに憐れみを少しも示さなかったからです。彼女は『恥知らずのおごった』生活を保つため,地の諸民族に寄生して生きてきました。今や彼女は苦しみと嘆きを経験します。古代バビロンは,絶対に安全な位置にあったと感じて,「わたしはやもめとして座ることはない。子供を失うことを知ることもない」と豪語しました。(イザヤ 47:8,9,11)大いなるバビロンもまた,安全だと感じています。しかし,「強い方」であられるエホバの定めた,彼女の滅びは,あたかも「一日のうちに」,素早く起きるでしょう!
[脚注]
a 「参照資料付き 新世界訳聖書」,脚注。
[263ページの囲み記事]
『王たちは彼女と淫行を犯した』
1800年代の初めごろ,ヨーロッパの商人たちは大量のアヘンを中国に密輸していました。1839年3月に中国の役人が英国の商人から送られた大箱2万個分の麻薬を差し押さえて,不法貿易をやめさせようとしました。その結果,英国と中国との関係は緊張しました。この二国の関係が悪化した時,プロテスタントのある宣教師たちは次のような声明を出して,戦争を行なうよう英国を促しました。
「わたしはこの困難な事態を心から喜んでいます。なぜなら,英国政府は憤っているかもしれませんが,キリストの福音が中国に入るのを妨げている障壁を神がみ力をもって打ち砕いてくださるかもしれないと思うからです」― 南部バプテスト派宣教師ヘンリエッタ・シュック。
ついに戦争が勃発しました。それは今日,アヘン戦争として知られています。宣教師たちは次のように述べて,心を込めて英国政府を激励しました。
「わたしは現在の事態をアヘンや英国の問題というよりもむしろ,中国の排他主義の障壁を打ち破るという,この国に対する神の憐れみ深い目的を達成するのに人間の邪悪さを役立たせようとする,神の摂理による偉大な計画として顧みない訳にはいきません」― 組合教会派宣教師ピーター・パーカー。
別の組合教会派の宣教師サミュエル・W・ウィリアムズは,こう付け加えました。「驚くべき仕方で起きた事柄すべてに神のみ手の働きがはっきりと認められるので,地上に剣を投ずるために来たと言われた方がここに来ておられること,またそれはご自分の敵を速やかに滅ぼし,ご自身の王国を樹立なさるためであることをわたしたちは疑うものではありません。この方は平和の君をしっかりと立たせる時まで,覆し,また覆してゆかれます」。
中国人の恐るべき虐殺事件に関して,宣教師J・ルーイス・シュックはこう書きました。「わたしはこのような光景を……神からの真理の促進を妨げるがらくたを一掃するために主が直接お用いになる道具と考えます」。
組合教会派の宣教師エリヤ・C・ブリジマンはこう付け加えました。「神はご自分の王国のための道を備えるために国家権力という強力な武力をしばしば用いてこられました。……この重大な時期における機関は人間的なものですが,それを導く力は神からのものです。すべての国を治める,位の高い統治者は,中国を懲らしめ,辱めるために英国をお用いになりました」。―以上は,「中国と米国における宣教事業」(ジョン・K・フェアバンク編,ハーバード研究論文)に掲載された,スチュアート・クライトン・ミラーの小論文,「目的と手段」(1974年,英文)からの引用文です。
[264ページの囲み記事]
『旅商人たちは……富を得た』
「1929年から第二次世界大戦勃発の時まで,[ベルナディノ]ノガラ[バチカンの財政管理者]はイタリアの経済の様々な分野,特に電力,電話通信,信用取り引きや銀行業,小規模な鉄道,農機具・セメント・織物の製造などの分野に,バチカンの資本とバチカンの代理者たちを投入して働かせた。それら投機的な事業の多くは功を奏した。
「ノガラは,ソキエタ・イタリアナ・デラ・ビスコサ,スペルテシレ,ソキエタ・メリディオナレ・インダストリエ・テシリ,およびキサライオンを含め,幾つかの会社を掌握した。それらを合併して一つの会社とし,キサ(CISA)-ビスコサと命名し,バチカンの極めて信任の厚い信徒の一人であるフランケスコ・マリア・オダッソ男爵の指揮下に置いたノガラは,次いでその新会社をイタリア最大の織物製造会社であるシニア(SNIA)-ビスコサに併合させるよう物事を巧みに操った。結局,バチカンの所有するシニア-ビスコサ社の株はますます増大し,やがてバチカンは同社を支配した。その証拠として,オダッソ男爵が後に副会長になったという事実がある。
「こうして,ノガラはまさしく繊維業界に影響力を浸透させた。彼はほかの方法で他の業界にも影響力を浸透させた。というのは,ノガラは多くの策略をひそかに用意していたからである。この無私の人物は……イタリア経済に命を吹き込むため,恐らくイタリア史上ほかのどんな実業家よりも多くの事を行なったであろう。……ベニト・ムッソリーニは自分の夢見た帝国の建設を成し遂げることは決してできなかったが,バチカンとベルナディノ・ノガラに別の種類の支配力を作り出させることができた」―「バチカン帝国」,ニノ・ロ・ベロ著,71-73ページ(英文)。
これは地の商人たちと大いなるバビロンとの密接な協力関係を示す一つの実例にすぎません。自分たちの事業上の提携者がもはやいなくなる時,それら商人たちが嘆き悲しむのも少しも不思議ではありません!
[259ページの図版]
人間が全地に広がって行った時,バビロン的な宗教をも携えて行きました
[261ページの図版]
ヨハネ級の人たちは見張りの者のように,バビロンが倒れたことをふれ告げています
[266ページの図版]
古代バビロンの廃虚は,大いなるバビロンの来たるべき破滅の前兆となりました
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バビロンの終わりの際の悲嘆と歓び啓示の書 ― その壮大な最高潮は近い!
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37章
バビロンの終わりの際の悲嘆と歓び
1 「地の王たち」は大いなるバビロンの突然の滅びにどのように反応しますか。
バビロンの終わりはエホバの民にとっては良い知らせですが,諸国民はそれをどう見るでしょうか。ヨハネはわたしたちにこう語ります。「そして,彼女の焼かれる煙を見る時,彼女と淫行を犯し,恥知らずのおごりのうちに暮らした地の王たちは,彼女のことで泣き,悲嘆して身を打ちたたくであろう。また,彼女の受ける責め苦を恐れるあまり,遠く離れたところに立って,こう言うであろう。『気の毒だ,気の毒なことだ,大いなる都市よ,強力な都市ともあろうバビロンよ,あなたの裁きが一時のうちに到来したとは!』」― 啓示 18:9,10。
2 (イ)緋色の野獣の象徴的な十本の角が大いなるバビロンを滅ぼすというのに,「地の王たち」はどうして彼女の終わりを嘆き悲しむのでしょうか。(ロ)悲嘆に暮れた王たちは,どうして滅びに定められた都から遠く離れたところに立つのでしょうか。
2 バビロンが十本の角のある緋色の野獣によって滅ぼされたことを考えると,諸国民の反応は驚くべきものと思えるかもしれません。(啓示 17:16)しかし,バビロンがなくなった時,「地の王たち」は,人々をなだめて従わせておくのに,自分たちにとって彼女がいかに有用だったかを,多分悟るでしょう。僧職者たちは戦争を神聖なものと宣言し,徴兵事務代理人を務め,また戦線に赴くよう若者たちに説教しました。宗教によって神聖な装いを施してもらった堕落した支配者たちは,その装いの陰で一般民衆を虐げる行動を取りました。(エレミヤ 5:30,31; マタイ 23:27,28と比較してください。)しかし,悲嘆に暮れたそれらの王たちは今や,滅びに定められたその都から遠く離れたところに立っている点に注目してください。王たちは彼女を助けに行けるほど近づこうとはしません。彼女がなくなるのを見て悲しみはしますが,彼女のために危険を冒すほどに悲しんだりはしません。
商人たちは泣いたり,嘆いたりする
3 大いなるバビロンが消え去るのをほかにだれが残念に思いますか。ヨハネはそのことを示すどんな理由を述べていますか。
3 大いなるバビロンが消え去るのを残念に思うのは,地の王たちだけではありません。「また,地の旅商人たちは彼女のことで泣いたり嘆いたりする。自分たちが十分に仕入れた品を買ってくれる者がもうだれもいないからである。それは,十分に仕入れた金・銀・宝石・真珠・上等の亜麻布・紫布・絹・緋の布などの品,そして,香木類のすべてのもの,あらゆる種類の象牙細工,きわめて高価な木材や銅・鉄・大理石などでできたあらゆる種類の品物,また,肉桂・インド産の香料・香・香油・乳香・ぶどう酒・オリーブ油・上等の麦粉・小麦・牛・羊,そして馬・車・奴隷・人間の魂である。さらに,あなたの魂が欲したりっぱな果物はあなた[大いなるバビロン]から去り,すべての優美なものと華麗なものはあなたから滅び去った。そして人々は二度と再びそれらを見いださないであろう」― 啓示 18:11-14。
4 「旅商人たち」はどうして大いなるバビロンの終わりを悲しんで泣いたり,嘆いたりするのでしょうか。
4 そうです,大いなるバビロンは裕福な商人たちの親しい友,ならびに良い顧客でした。例えば,修道院,女子修道院,およびキリスト教世界の諸教会は何世紀にもわたって大量の金・銀・宝石・貴重な木材その他の種々の物質上の富を取得してきました。さらに,キリストを辱めるクリスマスや他のいわゆる聖日の祝いに付き物の,ふんだんに物を買って楽しんだり,飲んでばか騒ぎをしたりすることが,宗教によって祝福されてきました。キリスト教世界の宣教師たちは遠い国々に入って行き,この世の「旅商人たち」のために新しい市場を開きました。貿易商を伴って17世紀の日本に到来したカトリック主義は,封建時代の戦争にさえ関係しました。ブリタニカ百科事典は大阪城の城壁のもとで行なわれた決戦について報告し,「徳川軍は十字架や,救い主およびスペインの守護聖人である聖ヤコブの像などを描いた旗を持った敵と戦っていた」と述べています。勝利を収めた分子は迫害を加えて,日本のカトリック主義を事実上一掃しました。同様に今日,世の事柄に関係する教会は自らに何ら祝福をもたらしません。
5 (イ)天からの声は,「旅商人たち」が嘆く様をさらにどのように描写していますか。(ロ)商人たちも,なぜ『遠く離れたところに立ち』ますか。
5 天からの声はさらにこう言います。「これらの物の旅商人たちは,彼女によって富を得たのであるが,彼女の受ける責め苦を恐れるあまり遠く離れたところに立って泣き,また嘆きながらこう言うであろう。『気の毒だ,気の毒なことだ ― 上等の亜麻布と紫と緋をまとい,金の装飾と宝石と真珠で着飾った大いなる都市よ,これほど大きな富が一時のうちに荒れ廃れてしまうとは!』」(啓示 18:15-17[前半])大いなるバビロンが滅びると,「商人たち」はあの商業上の提携者を失うので嘆きます。それは彼らにとって本当に「気の毒だ,気の毒なことだ」と言えます。しかし,彼らが嘆くのは,全く利己的な理由からであること,また彼らは王たちのように,『遠く離れたところに立つ』ことに注目してください。彼らは大いなるバビロンを少しでも助けられるほど近づこうとはしません。
6 天からの声は,船長や水夫たちが嘆く様をどのように描写していますか。彼らはなぜ泣くのでしょうか。
6 記述はさらにこう続いています。「そして,すべての船長,またどこであろうと航海をする者は皆,また,水夫たちや海で暮らしを立てる者は皆,遠く離れたところに立って彼女の焼かれる煙を見ながら叫んで言った,『どの都市がこの大いなる都市のようだろうか』。そして,自分の頭に塵を掛け,泣いたり嘆いたりしながら叫んで言った,『気の毒だ,気の毒なことだ ― 大いなる都市よ,海に船を持つすべての者が,彼女のぜいたくのおかげでその中で富を得たのに。それが一時のうちに荒れ廃れてしまうとは!』」(啓示 18:17[後半]-19)古代のバビロンは商業都市で,大船団がありました。同様に,大いなるバビロンは,彼女の民である「多くの水」によって相当の商売をしているので,彼女の臣民の多くが職を得ています。この大いなるバビロンが滅びるのですから,それらの人々は何と大きな経済的打撃を被るのでしょう。生計のもととなる彼女のようなものは,ほかには決してないでしょう。
彼女が滅ぼし絶やされるのを見て歓ぶ
7,8 天からの声は,大いなるバビロンに関するその音信をどのように最高潮にもっていきますか。だれがその言葉にこたえ応じますか。
7 メディア人とペルシャ人によって古代のバビロンが覆された時,エレミヤは預言的にこう述べました。「そして,バビロンのことで,天と地とその中のすべてのものは必ず喜び叫ぶであろう」。(エレミヤ 51:48)大いなるバビロンが滅ぼされる時,天からの声はその音信を最高潮にもっていって,大いなるバビロンについてこう言います。「天よ,また聖なる者と使徒と預言者たちよ,彼女のことで喜べ。神はあなた方のため,彼女に司法上の処罰を科したからである」。(啓示 18:20)今では復活させられて,24人の長老の取り決めのもとで地位を得ている,使徒たちや初期のクリスチャンの預言者たちが,神の古来の敵が滅ぼし絶やされるのを見て喜ぶ時,エホバとみ使いたちもそれを見て喜びます。―詩編 97:8-12と比較してください。
8 確かに,「聖なる者」たちはすべて ― 天で復活させられていようと,なお地上で生き長らえていようと ― 喜びのために叫び,また共に交わっている,ほかの羊の大群衆もそうします。やがて,昔の忠実な人たちもすべて新しい事物の体制のもとで復活させられ,彼らもまた,その歓びに加わります。神の民は偽りの宗教を奉ずる迫害者たちに対してあだを討とうとはしませんでした。神の民は,「復しゅうはわたしのもの,わたしが返報する,とエホバは言われる」というエホバの言葉を思い起こしてきました。(ローマ 12:19。申命記 32:35,41-43)実際,エホバは今や,返報してくださいました。大いなるバビロンによって流された血すべてに対する復しゅうが行なわれてゆきます。
大きな臼石を投げ込む
9,10 (イ)ひとりの強いみ使いは今や何をしますか。また,何と言いますか。(ロ)啓示 18章21節の強いみ使いが行なったのと同様のどんなことがエレミヤの時代にも起きましたか。それは何を保証するものでしたか。(ハ)ヨハネの見た,強いみ使いの取った行動は,何を保証していますか。
9 ヨハネが次に見る事柄は,大いなるバビロンに対するエホバの裁きが最終的なものであることを確証しています。「また,ひとりの強いみ使いが,大きな臼石のような石を持ち上げ,それを海に投げ込んで,こう言った。『大いなる都市バビロンはこのように,速い勢いで投げ落とされ,二度と見いだされることはない』」。(啓示 18:21)エレミヤの時代にも,強力で預言的な意味を持つ,同様のことが行なわれました。エレミヤは霊感を受けて,一つの書に「バビロンに臨むすべての災い」を書き記しました。そして,その書をセラヤに渡し,旅をしてバビロンへ行くように命じました。エレミヤの指図に従ったセラヤは,その地でその都に対する次のような宣言を読みました。「エホバよ,あなたご自身がこの場所に対して語られました。それはこれを断ち滅ぼし,その中に住む者が,人も家畜さえもいなくなり,これが定めのない時に至るまでただの荒れ果てた所となるためです」。次いで,セラヤはその書に一つの石を結び付けて,それをユーフラテス川に投げ込んで,こう言いました。「このようにバビロンは沈んで行き,わたしがこれにもたらす災いのために,それは決して起き上がることはない」。―エレミヤ 51:59-64。
10 石を縛り付けられたその書が川に投げ込まれたことは,バビロンが忘却のかなたに投じられ,決して回復しないことの保証となりました。使徒ヨハネは,ひとりの強いみ使いが同様のことを行なうのを見ましたが,それも同様に,大いなるバビロンにかかわるエホバの目的が成就することの強力な保証となっています。古代バビロンの今日の完全な廃虚の状態は,近い将来,偽りの宗教に何が降り懸かるかに関する強力な証言となっています。
11,12 (イ)強いみ使いは今や,大いなるバビロンに対してどのように語りかけますか。(ロ)エレミヤは背教したエルサレムに関して,どのように預言しましたか。それは現代に関して何を示唆していますか。
11 その強いみ使いは今や,大いなるバビロンに対して語りかけ,こう言います。「そして,自分のたて琴に合わせて歌う歌い手や楽人や笛吹きやラッパ吹きの音は,二度とあなたのうちで聞かれない。どんな仕事の職人も二度とあなたのうちに見いだされない。ひき臼の音は二度とあなたのうちで聞かれず,ともしびの光は二度とあなたのうちに輝くことなく,花婿と花嫁の声も二度とあなたのうちで聞かれないであろう。あなたの旅商人たちは地の高位の者だったからであり,あなたの心霊術的な行ないによってあらゆる国民が惑わされたのである」― 啓示 18:22,23。
12 エレミヤはこれに匹敵する言葉で,背教したエルサレムに関して次のように預言しました。「わたしは彼らの中から歓喜の音と歓びの音,花婿の声と花嫁の声,手臼の音とともしびの光を滅ぼす。そして,この地はみな必ず荒れ廃れた所,驚きの的とな(ら)なければならない」。(エレミヤ 25:10,11)大いなるバビロンの主要な部分であるキリスト教世界は,西暦前607年以後のエルサレムの荒廃した状態によって,ありありと描写されているような,生気のない廃虚と化してゆきます。かつて気楽に繁栄を楽しみ,日常生活の物音で活気にあふれていたキリスト教世界は征服され,捨てられてしまいます。
13 大いなるバビロンにはどんな突然の変化が起きますか。彼女の「旅商人たち」はどんな影響を受けますか。
13 み使いがここでヨハネに告げているように,大いなるバビロン全体は確かに,国際的な強力な帝国から砂漠のような荒廃した不毛の地となるでしょう。最高位を占める億万長者たちを含め,彼女の「旅商人たち」は個人的な益のため,あるいは隠ぺい手段として彼女の宗教を利用してきましたし,僧職者たちは彼らと一緒に人目につくようにするのが有利であることに気づいてきました。しかし,それらの商人たちにとって,自分たちの共犯者である大いなるバビロンはもはやいなくなってしまいます。彼女の秘教的な宗教上の慣行で地上の諸国民をだますことは,もはやなくなります。
恐ろしい流血の罪
14 強いみ使いは,エホバの裁きが厳しいものとなる,どんな理由を述べていますか。同様に,イエスは地上にいた時,何と言われましたか。
14 結論として,強いみ使いは,エホバが大いなるバビロンをなぜそれほど厳しく裁かれるかについて告げ,こう述べます。「しかも彼女の中には,預言者と聖なる者たちの血,そして地上でほふられたすべての者の血が見いだされたのである」。(啓示 18:24)イエスは地上にいた時,エルサレムの宗教指導者たちに向かって,『義なるアベルの血から,地上で流された義の血すべて』に関して彼らに責任があるとお告げになりました。それゆえ,当時の心の曲がった世代は,西暦70年に滅ぼされました。(マタイ 23:35-38)今日,別の世代の宗教家たちが,神の僕たちを迫害してきたため,流血の罪を負っています。
15 ナチ・ドイツのカトリック教会は二つの訴因の点で,どのように流血の罪を負いましたか。
15 ギュンター・リューイは自著,「カトリック教会とナチ・ドイツ」(英文)の中で,こう記しています。「[1933年]4月13日,ババリアでエホバの証人の活動が禁止された時,教会は同派の禁じられた宗教活動に依然携わる会員がいたら,だれでも報告するようにとの文部・宗教省からの任務をさえ受け入れた」。ですから,教会は何千人もの証人たちを強制収容所に送り込んだ責任を負っており,その手は処刑された何百人もの証人たちの生き血で汚れています。ウィルヘルム・クセロウのような若い証人たちは,銃殺隊による果敢な死を遂げられることを示したので,ヒトラーは良心的兵役拒否者に対しては銃殺隊による処刑は上等すぎると判断しました。それで,ウィルヘルムの弟ウォルフガングは20歳の若さで,断頭台で死を遂げました。その同じ時に,カトリック教会はドイツの若いカトリック教徒に祖国の軍隊に入って死ぬよう励ましていました。教会が流血の罪を負っていることは一目りょう然です!
16,17 (イ)大いなるバビロンは,どんな流血の罪を問われなければなりませんか。バチカンはナチの虐殺計画で死んだユダヤ人に関する流血の罪をどのように負うことになりましたか。(ロ)現代の何百もの戦争で殺された何千万もの人々に関して,偽りの宗教が責められるべき一つの点とは何ですか。
16 しかし預言は,「地上でほふられたすべての者」の血について大いなるバビロンの罪を問わなければならないと述べています。現代でも確かにその通りです。例えば,カトリックの陰謀はヒトラーがドイツで政権を握るのを助ける働きをしたのですから,バチカンはナチの虐殺計画で死んだ600万のユダヤ人に関する恐るべき流血の罪にあずかっています。さらに,今の時代の何百もの戦争で優に1億人以上の人々が殺されました。偽りの宗教はこの点で責められるべきでしょうか。そうです,二つの点で責められるべきです。
17 一つの点は,多くの戦争が宗教上の紛争に関係していることです。例えば,1946年から1948年にかけてインドのイスラム教徒とヒンズー教徒との間で生じた暴力行為は,宗教上の問題のために引き起こされ,何十万人もの人々の命が失われました。1980年代のイラン・イラク紛争も宗派間の不和が関係しており,何十万もの人々が殺されました。北アイルランドではカトリック教徒とプロテスタント間の暴力事件のために何千人もの人々の命が奪われました。この分野の調査を行なったコラムニスト,C・L・サルズバーガーは1976年にこう述べました。「世界の至る所で現に行なわれている戦争の恐らく半分,もしくはそれ以上が,紛れもない宗教紛争か,宗教上の論争に関係があるということは,不気味な事実である」。確かに,大いなるバビロンの不穏な歴史を通じて,これまでずっとその通りでした。
18 世界の諸宗教が流血の罪を負っている二つ目の点とは何ですか。
18 二つ目の点とは何ですか。エホバの見地からすれば,世界の諸宗教は流血の罪を負っています。なぜなら,エホバの僕たちに対するご要求に関する真理を追随者たちに納得できるように教えなかったからです。神の真の崇拝者はイエス・キリストに見倣い,どの国の出身かにかかわりなく他の人々に愛を示すべきであることを納得のゆくように教えてきませんでした。(ミカ 4:3,5。ヨハネ 13:34,35。使徒 10:34,35。ヨハネ第一 3:10-12)大いなるバビロンを構成している諸宗教は,そのような事柄を教えなかったため,信奉者たちは国際的な戦争の渦に巻き込まれてきました。20世紀前半に起きた二度の世界大戦はこのことを何とはっきり示しているのでしょう。その世界大戦は二回ともキリスト教世界で始まり,仲間の宗教家同士が何と互いに虐殺し合う結果になりました。もし,クリスチャンと称する人々すべてが聖書の原則を固守したなら,それらの戦争は決して起きなかったでしょう。
19 大いなるバビロンはどんな恐ろしい流血の罪を負っていますか。
19 エホバはこのすべての流血の責めを大いなるバビロンの足元に突きつけておられます。宗教指導者たち,とりわけキリスト教世界の宗教指導者たちが人々に聖書の真理を教えていたなら,これほど大量の流血は起きなかったことでしょう。ですから,確かに,大いなるバビロン,つまり偽りの宗教の世界帝国である大娼婦は,迫害を行なって殺した「預言者と聖なる者たちの血」のみならず,「地上でほふられたすべての者の」血に関してもエホバに対して責任を負わなければなりません。大いなるバビロンは恐ろしい流血の罪を確かに負っています。彼女がついに滅ぼされる時,何といい厄介払いができるのでしょう。
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