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    ものみの塔 1985 | 10月1日
    • 「嫌悪すべきもの」は平和をもたらすことに失敗する

      「エルサレムが野営を張った軍隊に囲まれるのを見たなら……その時,ユダヤにいる者は山に逃げはじめなさい」― ルカ 21:20,21。

      1,2 (イ)人間が国際連合のような機構を通して決して平和をもたらすことができないのはなぜですか。(ロ)神はどのように地に平和をもたらされますか。

      人間が国際連合のような機関を通してどれほど平和と安全をもたらすために努力しようと,決してうまくゆきません。なぜでしょうか。なぜなら,人類は今日,神と平和な関係にあるわけではないからです。永続する安全は人間と創造者との平和な関係の上に初めて成り立つものです。(詩編 46:1-9; 127:1。イザヤ 11:9; 57:21)どうすればこの問題を解決できるでしょうか。幸い,エホバご自身はすでに問題を解決しておられます。平和と安全は最終的に神のみ子による神の王国を通してこの地にもたらされます。そのみ子イエスの誕生の際,み使いたちは,「上なる高き所では栄光が神に,地上では平和が善意の人々の間にあるように」と歌いました。―ルカ 2:14。詩編 72:7。

      2 イエスは1世紀に神の王国を告げ知らせ,平和を求める人たちに神の子,およびその王国でご自身の共同支配者となる機会をお与えになりました。(マタイ 4:23; 5:9。ルカ 12:32)その後に生じた出来事は,今世紀に生じた出来事と非常によく似ています。それらの出来事を調べれば,「平和と安全」のための人間製の機構である国際連合の将来の歩みについて多くのことを学べるでしょう。

      ユダヤ人は選択をする

      3 イエスの時代に国際的な平和と安全を維持しようと努めていたのはだれですか。それが決して完全には成功しなかったのはなぜですか。

      3 イエスの時代,ローマ帝国は地上の大半を支配し,平和と安全について独自の考えを持っていました。同帝国は自国の軍団により,既知の世界の大半にパックス・ロマーナ(ローマの平和)を強制しました。しかし,パックス・ロマーナは決して恒久的な平和とはなり得ませんでした。異教ローマとその軍団は決して人間と神との和解をもたらすことができなかったからです。したがって,イエスが告げ知らせた王国は,はるかに優れたものでした。

      4 大半のユダヤ人は,イエスの宣べ伝える業にどのように反応しましたか。それにもかかわらず,1世紀には徐々にどんな進展が見られるようになりましたか。

      4 それにもかかわらず,イエスの仲間の同国人の大多数は神の王国を退けました。(ヨハネ 1:11; 7:47,48; 9:22)彼らの支配者たちはイエスを国家の安全を脅かす者と考え,「わたしたちにはカエサルのほかに王はいません」と主張し,イエスを処刑させるために引き渡しました。(ヨハネ 11:48; 19:14,15)しかし,一部のユダヤ人,そして後に多くの異邦人は,イエスを神の選ばれた王として喜んで認めました。(コロサイ 1:13-20)それらの人々は多くの国々でイエスについて宣べ伝え,エルサレムはクリスチャンの国際的な交わりの中心地となりました。―使徒 15:2。ペテロ第一 5:9。

      5,6 (イ)ユダヤ人とローマの関係はどのような進展を見せましたか。(ロ)イエスはどんな警告をお与えになりましたか。それは西暦70年にどのようにクリスチャンの命を救うものとなりましたか。

      5 ユダヤ人がキリストに勝る者としてカエサルを選んだという事実にもかかわらず,やがてエルサレムとローマの関係は悪化してゆきました。ユダヤ人の熱心党は,西暦66年にとうとう公の戦争が勃発するまで,ローマ帝国に対するゲリラ活動を行なっていました。ローマの軍隊はパックス・ロマーナを回復することに努め,ほどなくエルサレムは攻囲されました。クリスチャンにとってこれは重大なことでした。かなり前にイエスは,「エルサレムが野営を張った軍隊に囲まれるのを見たなら,その時,その荒廃が近づいたことを知りなさい。その時,ユダヤにいる者は山に逃げはじめなさい。都の中にいる者はそこを出なさい」と警告しておられました。(ルカ 21:20,21)今やエルサレムは囲まれて,クリスチャンは逃げる機会をうかがっていました。

      6 その機会は速やかに訪れました。ローマ人が神殿の城壁の土台をくずし,多くのユダヤ人が降伏しようとしていた矢先,ローマの指揮官ケスチウス・ガルスが不意に軍隊を引き揚げ,去って行ったのです。熱心党はこの機会をとらえて防備を固め直しましたが,クリスチャンは滅びに定められたその都を捨てました。西暦70年にローマの軍団が戻って来てエルサレムの城壁の周りに野営を張ったので,エルサレムはこの時に滅びうせました。歴史的なこの悲劇はわたしたちにどのような影響を及ぼしますか。追随者の命を救うものとなったイエスの警告は,今日のわたしたちにとっても意味があるということです。

      一度だけではない成就

      7-9 (イ)エルサレムが軍隊に囲まれることに関するイエスの預言の成就が一度だけで終わらないことがなぜ分かりますか。(ロ)ダニエル書を理解力を働かせて読むならば,そのことはどのように裏づけられますか。

      7 その警告は,イエスがある重要な質問に対する答えとして述べられた長い預言の一部となっています。イエスの追随者たちは,「[ユダヤ人の神殿の滅び]はいつあるのでしょうか。そしてあなたの臨在と事物の体制の終結のしるしには何がありますか」と尋ねました。それに答えてイエスは,エルサレムの攻囲を含め,数多くの特色から成るしるしをお与えになりました。(マタイ 24章。マルコ 13章。ルカ 21章)イエスの死後幾年もの間にこの預言の特色の少なからぬ部分が成就し,ついに西暦70年にはエルサレムとユダヤ人の事物の体制が滅びました。―マタイ 24:7,14。使徒 11:28。コロサイ 1:23。

      8 しかし,弟子たちはイエスの「臨在」についても尋ねました。聖書はその臨在を全世界的な事物の体制の終わりと結びつけています。(ダニエル 2:44。マタイ 24:3,21)イエスの霊的な臨在と世界的な事物の体制の終わりは1世紀には生じなかったので,イエスの預言に関する将来のより重要な成就は,1世紀のこれらの出来事をその大規模な成就の型とみなせるような仕方で生ずるものと期待できました。これには,エルサレムの滅びに関するイエスの警告の大規模な成就も含まれることでしょう。

      9 この点は,その警告の出ている聖書中の他の二つの書にそれがどのように記されているかを調べると,一層明らかになります。マタイによる書では,攻囲する軍隊は『荒廃をもたらす嫌悪すべきものであり,預言者ダニエルを通して語られたとおり,聖なる場所に立っている』と描かれています。(マタイ 24:15)マルコの記述によれば,「嫌悪すべきもの」が「立ってはならない所」に立つ,とされています。(マルコ 13:14)マタイの記述は,「嫌悪すべきもの」のことがダニエル書の中でも言及されていると述べています。実際,「嫌悪すべきもの」という表現はダニエル書の中に3回出ています。1回は(複数形で)ダニエル 9章27節に出てきますが,そこでは,エルサレムが西暦70年に滅びた時に成就した預言の一部として記されています。次いで,ダニエル 11章31節と同12章11節に出ています。これらあとの二つの聖句によれば,「嫌悪すべきもの」は「定めの時」,つまり「終わりの時」に位置につけられることになっていました。(ダニエル 11:29; 12:9)わたしたちは1914年以来「終わりの時」に住んでおり,それゆえにイエスの警告は今日でも当てはまるのです。―マタイ 24:15。

      キリスト教世界の行なった選択

      10,11 今世紀に生じた出来事は,1世紀の出来事とどのように似ていますか。

      10 今世紀の出来事は,1世紀の場合と同じような型に従っています。当時と同じく今日も世界の舞台を支配している一つの帝国があります。その現代の帝国とは英米世界強国のことで,同強国は平和と安全に関する独自の考えを人類に強制しようと躍起になっています。1世紀に肉のイスラエルは神の油そそがれた王としてのイエスを退けました。エホバの即位した王としてのイエスの「臨在」は1914年に始まりました。(詩編 2:6。啓示 11:15-18)しかしキリスト教世界の人々を含め,諸国民はそのイエスを認めようとはしませんでした。(詩編 2:2,3,10,11)その証拠に彼らは,国際的な主権を求める激烈な世界戦争に巻き込まれてしまいました。キリスト教世界の宗教指導者はユダヤ人の指導者と同様,先頭に立ってイエスを退けました。彼らは1914年以来,常に政界で活動してきましたし,王国の良いたよりを宣べ伝える業に反対してきました。―マルコ 13:9。

      11 それでもイエスの時代と同じく,いま大勢の人々がエホバの選ばれた王を喜んで認め,その方の王国の良いたよりを世界中に広めています。(マタイ 24:14)現在は250万人を上回るエホバの証人が神の王国に対する忠節を表明しています。(啓示 7:9,10)この世の政治に関しては中立を保つそれらの証人たちは,平和と安全をもたらすエホバの取り決めに全き信仰を抱いています。―ヨハネ 17:15,16。エフェソス 1:10。

      今日の「嫌悪すべきもの」

      12 現代の「嫌悪すべきもの」とは何ですか。

      12 では,現代の「荒廃をもたらす嫌悪すべきもの」とは何でしょうか。1世紀の場合,それはエルサレムにパックス・ロマーナを再び強制するために派遣されたローマの軍隊でした。しかし現代において,第一次世界大戦を戦った諸国民は,全面戦争が平和を強制する点では役に立たなかったことに幻滅し,新しいもの,つまり世界平和を維持するための国際的な機構で実験を試みました。それは1919年に国際連盟として産声を上げ,今なお国際連合として存続しています。これが,現代の「荒廃をもたらす嫌悪すべきもの」です。

      13,14 (イ)「嫌悪すべきもの」についてキリスト教世界はどのようなへつらいの言葉を語ってきましたか。(ロ)これが偶像礼拝の行為と言えるのはなぜですか。同世界は「嫌悪すべきもの」をどのような位置に置きましたか。

      13 興味深いことに,ダニエル書の中で「嫌悪すべきもの」と訳されているヘブライ語はシックーツです。この語は聖書の中で主に偶像および偶像礼拝に関して用いられています。(列王第一 11:5,7)この事を念頭に置き,国際連盟について宗教指導者たちが述べた幾つかの意見を読んでみてください。

      「もしこれを神の王国とみなさないとしたら……人類の世界連邦をどのようにみなすことができるだろうか」。「国際連盟は福音に根ざしている」。(アメリカ・キリスト教会連邦協議会)「[国際連盟の]種々の目的と活動のいずれを取っても,それはイエス・キリストの教えによって知らされた神の意志を成就するものだと断言できる」。(英国国教会主教団)「したがってこの会議は,国際連盟を,[地上における平和]を実現させるための有効な唯一の手段としてキリスト教を奉ずる人々すべてが支持し,祈りとすることを勧める」。(英国のバプテスト教会・組合教会・長老派教会の教会員から成る一般団体)「[国際連盟]は,法王庁が幾度も願い求めてきた事柄を実践するためになされてきた唯一の組織的な努力である」― ウェストミンスター大司教,ボーン枢機卿。

      14 諸国民が神の王国を退けたばかりか,平和をもたらすために独自の機構を確立したことは反逆の行為でした。キリスト教世界の宗教指導者がその機構を神の王国および福音と同一のものとみなし,それは平和をもたらすための「有効な唯一の手段」であると宣言したことは偶像礼拝の行為でした。彼らは同機構を神の王国の位置に,つまり「聖なる場所に」置いていたのです。確かにそれは「立ってはならない所に立って」いました。(マタイ 24:15。マルコ 13:14)そして宗教指導者は,設立された神の王国を人間に指し示すよりも,国際連盟の後身である国際連合をなおも支持し続けています。

      キリスト教世界が直面している危険

      15,16 キリスト教世界と,「嫌悪すべきもの」を支持する諸国民との関係はどのように進展していますか。

      15 キリスト教世界の諸宗教は国際連盟とその後身である国際連合を神の王国に勝るものとして選びましたが,同世界の諸宗教と,国際連盟および国際連合の成員国との関係は悪化してきました。ユダヤ人とローマの間で生じた事柄についても同じようなことが言えます。1945年以来,国際連合には非キリスト教あるいは反キリスト教の国家が次第に多く加わるようになりました。これはキリスト教世界にとって幸先の良いことではありません。

      16 その上,多くの国々ではキリスト教世界の諸宗教と国家との間で軋轢が生じています。ポーランドのカトリック教会は同国の政権に対立するものと見られています。北アイルランドとレバノンでは,キリスト教世界の諸宗教が平和と安全の問題を悪化させてきました。それに加えて,キリスト教世界の諸宗教はユダヤ人の熱心党のように,暴力を助長する人々を生み出してきました。例えば,プロテスタント世界教会協議会がテロリストの組織に献金するかと思えば,カトリックの司祭はゲリラとして密林の中で戦い,革命政府のもとで働いています。

      17 (イ)現代のエルサレムとは何ですか。(ロ)最終的にそれはどうなりますか。

      17 キリスト教世界の諸宗教と諸国家の関係がどこまで悪化してゆくかは時間がたたなければ分かりませんが,1世紀に生じた出来事は,そのすべてがどのように終わるかをすでに予示していました。イエスが予見された通り,1世紀にローマ軍は最終的にエルサレムを滅ぼし,多大の患難をもたらしました。預言的な型にしたがい,諸国家は国際連合と手を組んで「エルサレム」,つまりキリスト教世界の宗教上の構造物を攻撃し,滅ぼします。―ルカ 21:20,23。

      山に逃げなさい

      18 柔和な心を持つ人々は,「嫌悪すべきもの」が位置についたことを識別する時,どのようにすべきですか。

      18 1世紀には「嫌悪すべきもの」が現われた後,クリスチャンの逃げる機会が訪れました。イエスは,その機会がいつまで続くか分からないのですぐさま逃げるようにと助言なさいました。(マルコ 13:15,16)同じように今日,柔和な心を持つ人々も,「嫌悪すべきもの」の存在を識別したなら,キリスト教世界の宗教上の領域から直ちに逃げなければなりません。そこにとどまっていればいるだけ,霊的な命は危険にさらされます。それに,逃げる機会がいつまでそれらの人たちのために開かれているかはだれにも分かりません。

      19,20 (イ)1世紀のクリスチャンはエルサレムがローマ軍に囲まれるのを見た時に何をしましたか。(ロ)「山」は今日,何を表わしていますか。今日,柔和な心を持つ人々は何に促されてそこに逃げるべきですか。

      19 ルカの福音書は当時のクリスチャンに,「エルサレムが野営を張った軍隊に囲まれる」のを見たなら逃げるようにと警告しました。すでに注目してきたように,その軍隊は西暦66年にやって来て,ケスチウス・ガルスが軍隊を引き揚げたその同じ年に逃げる機会が生じました。クリスチャンが逃げた後も,エルサレムの周囲で行なわれたわけではありませんが,ユダヤ人とローマ人との間の戦いは続きました。ネロ帝からウェスパシアヌスがパレスチナに派遣され,この人は67年と68年にそこでの軍事作戦を成功裏に推し進めました。その後ネロが死亡し,ウェスパシアヌスは王位継承問題に関与するようになりましたが,西暦69年に皇帝となったあとはユダヤの戦争を終わらせるため,息子のティツスを派遣しました。こうして西暦70年にエルサレムは滅びました。

      20 しかし,クリスチャンはそのすべてをエルサレムでずっと見ていたわけではありません。攻囲する軍隊を見るや否や,エルサレムが非常な危険にさらされていることを理解しました。今日でも同様に,キリスト教世界の滅びをもたらす手段が姿を現わしています。したがって,キリスト教世界がさらされている危険を識別したらすぐに,「山」,つまり神の神権組織と共にあるエホバの避難所に「逃げ」なければなりません。他の預言を調べても,キリスト教世界に対する攻撃が開始されてから同世界が最終的に荒廃するまでの間に息つく暇があると考えてよい根拠は見いだせません。実際のところ,交戦中にそのように一息入れる必要は少しもありません。柔和な心を持つ人々は賢明にも今キリスト教世界から逃げます。

      エルサレムとキリスト教世界

      21 「嫌悪すべきもの」がエルサレムの終わりの時の終わりに現われたのに対し,今世紀にはそれがこの体制の終わりの時の初めごろに現われたのはなぜですか。

      21 1世紀には「嫌悪すべきもの」がエルサレムの滅びの直前に現われたのに対し,今日ではそれがこの世の終わりの時の正しく初めに現われたからといって,わたしたちは驚くべきでしょうか。驚くべきではありません。どちらの場合にも,「嫌悪すべきもの」はご自分の民が逃げるようエホバが望まれたその時に現われています。1世紀にクリスチャンは宣べ伝えるためしばらくエルサレムにとどまらなければなりませんでした。(使徒 1:8)滅びが迫っていた西暦66年になってはじめて「嫌悪すべきもの」が確かに現われ,クリスチャンたちに逃げるよう警告するものとなりました。しかし,現代のエルサレムの『中に』いるということは,キリスト教世界の宗教上の領域の一部となることを意味しています。a 腐敗し,背教したそうした環境の中にいながら,エホバに受け入れられる仕方で神に仕えることは不可能です。したがって,この世の終わりの時の早い時期に「嫌悪すべきもの」が現われて,クリスチャンに逃げるよう警告するものとなったのです。「嫌悪すべきもの」が位置についたことを識別したなら直ちに逃げるようにとの警告が各人に与えられているので,キリスト教世界から逃げることは今なお続いています。

      22 どんな疑問に対する答えを次に考慮しますか。

      22 しかし,国際連合内の軍国化した分子によりキリスト教世界が滅ぼされるというこの極めて意外な処置の前に,どんな事が起きるのだろうかという疑問が生じるかもしれません。それはいつ起こるのでしょうか。そして,それはこの地の平和と安全にどのように貢献し得るのでしょうか。次の記事ではそれらの疑問について考慮します。

  • 平和,安全,そして『獣の像』
    ものみの塔 1985 | 10月1日
    • 平和,安全,そして『獣の像』

      「そして彼は,霊の力のうちにわたしを荒野に運んで行った。そこでわたしは,冒とく的な名で満ちた,七つの頭と十本の角を持つ緋色の野獣の上に,ひとりの女が座っているのを目にした」― 啓示 17:3。

      1 七つの頭と十本の角を持つ獣に関するヨハネの幻がわたしたちの関心事となるのはなぜですか。

      使徒ヨハネは神の霊感によって与えられた幻の中でこの恐ろしい獣を見ました。しかしヨハネだけがその獣を見たわけではありません。たぶんあなたも見たことがあるでしょう。あるいは少なくとも新聞でそれについて読んだことがあるかもしれません。あなたはその獣が何であるか分かりますか。

      2,3 ヨハネは幻の中でどんな一連の生き物を見ましたか。

      2 もちろん,今日この獣を見ても,その外見はヨハネの描写したものとは違います。ヨハネが見たのは,「主の日」に地上に存在することになるものの象徴でした。(啓示 1:10)今日わたしたちは,その成就を見ています。ヨハネが見た獣の不快な形は,獣が表わしているものをエホバがどうご覧になるかを反映しています。それはエホバにとって忌まわしいものなのです。ヨハネはすでにその幻の中で,悪魔サタンが地に投げ落とされ,「自分の時の短いことを知り,大きな怒りを抱いて」いる様を目撃しました。(啓示 12:12)そして,人類の「海」から上って来た,七つの頭と十本の角を持つ奇怪な獣として表わされている,サタンの世の政治体制をも見ていました。(啓示 13:2; 17:15。イザヤ 57:20。ルカ 4:5,6)その獣は全人類に対する権威を有しており,人々の右手と額には獣を支持していることを意味するものとして,『獣の印』が強制的に付けられました。―啓示 13:7,16,17。

      3 ヨハネは人間がこの獣の像を作るところも観察しました。(啓示 13:14,15)啓示 17章に描写されている前述の幻の中でヨハネが見たのは,この像でした。七つの頭と十本の角を持つこの「像」は,将来の出来事において重要な役割を果たすことになります。ですから,その実体を知るのはわたしたちにとって肝要なことです。ではどのようにその実体を知ることができるでしょうか。

      今日の獣の「像」

      4,5 幻の中の獣の頭は何を表わしていましたか。

      4 み使いはわたしたちの助けとなる幾らかの情報をヨハネに与え,こう述べました。「七つの頭は七つの山を表わしており,その上にこの女が座っている。そして七人の王がいる。五人はすでに倒れ,一人は今おり,他の一人はまだ到来していない。しかし到来したなら,少しの間とどまらなければならない」。(啓示 17:9,10)「王」と「山」― 聖書の中では政治勢力を表わすためにしばしば用いられる ― に言及されていることは,獣の頭が政府を表わすことを示しています。(エレミヤ 51:25)ここで関係しているのはどの七つの政府でしょうか。

      5 ヨハネの時代,五つはすでに倒れ,一つはまだ存在しており,もう一つはこれから来ることになっていました。聖書の歴史の中では主要な五つの帝国が繁栄し,神の民を圧迫し,その後ヨハネの時代になる前に倒れました。それは,エジプト,アッシリア,バビロン,メディア-ペルシャ,ギリシャの五つです。ヨハネが生きていた時代にはローマ帝国が勢力を振るっていました。ヨハネの死後何世紀かたってからローマ帝国は有力な世界強国としては舞台から姿を消し,やがて大英帝国に取って代わられました。その後まもなく,この帝国内の西部の植民地が独立を勝ち取って英国と密接な関係を保って行動するようになり,英米世界強国を形成しました。これが,ヨハネの時代に『まだ到来していなかった』「王」です。ヨハネが見た獣と,その頭によって表わされていた七つの帝国とはどのような関係にあるのでしょうか。『それ自身は八人目の王でもあるが,その七つから出る』のです。―啓示 17:11。

      6 (イ)獣の角は何を意味していましたか。(ロ)それはどんな意味で「まだ王国を受けていない」と言えましたか。

      6 この獣に十本の角があることも忘れてはなりません。その角についてみ使いは,「あなたが見た十本の角は十人の王を表わしている。彼らはまだ王国を受けていないが,一時のあいだ野獣と共に王としての権威を受けるのである」と言いました。(啓示 17:12)聖書の中で十という数字は,地上の物事が完全に整っていることを表わします。したがってこれらの角は,「主の日」の期間中のわずかな時間(「一時のあいだ」),野獣を支持する全地の政府の勢力全体を象徴しています。その中には,「獣」の他の六つの「頭」から出た現代の諸政府はもちろん,七つ目の世界強国も含まれます。もっとも,それら他の六つはもはや世界強国ではありません。これらの「王」はヨハネの時代には存在しませんでした。a それらの王たちはすでに権威を得ているので,「自分たちの力と権威を野獣に与え」ます。―啓示 17:13。

      7,8 (イ)啓示 17章に描写されている,ヨハネが見た獣とは何ですか。(ロ)その獣と,幾つもの頭や角はどのような関係にありますか。

      7 これで,獣が何であるか分かりましたか。そうです,それは「荒廃をもたらす嫌悪すべきもの」と同じものであり,国際連盟として始まり,今は国際連合として存在しています。(マタイ 24:15。ダニエル 12:11)この機構はどのような意味で『七つの世界強国から出て』いるのでしょうか。獣のような組織全体は,第八強国と同じく,英米世界強国を主要な後援者また支持者として,既存の諸政府により生じさせられたという意味において,そう言えるのです。

      8 それに加えて,み使いがヨハネに告げたように,「十本の角」すべては「力と権威を野獣に与え」ます。(啓示 17:13)実際,頭と角によって表わされている諸政府の支持なくしてはその獣は無力なものとなるでしょう。なぜでしょうか。その獣は単なる像にすぎないからです。(啓示 13:14)すべての像と同様,この像もそれ自体は無力です。(イザヤ 44:14-17)何らかの命があるとすれば,それはその支持者たちから来ているのです。(啓示 13:15)時々それら支持者の一部は,例えば朝鮮戦争の時のように,国際連合を通して決定的影響を及ぼす行動を取ってきました。

      9 獣の実体に関するわたしたちの見解はどのように確証されていますか。

      9 この獣の実体に関するわたしたちの見解は,み使いが述べたさらに詳しい幾らかの情報によって確証されます。「あなたの見た野獣はかつていたが,今はいない。しかし底知れぬ深みからまさに上ろうとしており,そして去って滅びに至ることになっている」と,み使いは述べました。(啓示 17:8)この言葉の一部はすでに成就しています。第二次世界大戦は事実上この国際連盟を消滅させました。エホバの証人がこの預言を明確に理解するようになった1942年には,国際連盟という獣について,「今はいない」と言うことができました。b しかし1945年には,国際連合機構として『底知れぬ深みから上って』来ました。同機構は平和と安全をもたらすその任務を果たせるでしょうか。預言は,そのようなことはないと述べています。むしろそれは「去って滅びに至ることになっている」のです。

      獣に乗っている者

      10,11 (イ)ヨハネの幻の中で獣に乗っていたのはだれですか。(ロ)幻のこの特色は,現代においてどのように成就してきましたか。

      10 この獣について別の点に気づかれましたか。獣に乗っている「女」がいました。彼女は,偽りの宗教の世界的な帝国,つまり「大いなるバビロン,娼婦たちと地の嫌悪すべきものとの母」とされています。(啓示 17:3-5,15)世界の諸宗教は国際連盟と国際連合双方の機構に「乗り」,その歩みを導こうとしてきたでしょうか。特にキリスト教世界の諸宗教は正しくそのようにしてきました。

      11 例えば,オランダの特派員ピエール・ファン・パーセンは,国際連盟の会議に出席した米国,英国,スカンジナビア諸国のプロテスタント教会を代表する人たちの「宗教的熱意にも似たもの」について書きました。1945年にアメリカ・キリスト教会連邦協議会は,「我々は国際連合機構の治療的かつ創造的機能を今後も拡張してゆくために努力する覚悟である」と言明しました。1965年には法王パウロ6世が,この機構の中に,「地上における人類の進歩に対する,神の愛ある優れた意図の反映[を見る。] その反映の中に我々は,天的なものである福音の音信が地的なものになっているのを見る」と言明しました。確かに宗教指導者たちはその機構を,「冒とく的な名で満ちた」ものにしてきました。―啓示 17:3。マタイ 24:15; マルコ 13:14と比較してください。

      平和をもたらす勢力ではない

      12 国際連合機構の支持者は,神の王国とどんな関係にありますか。

      12 国際連合は神の王国との良い関係を保ってはいません。実際,その支持者たちは神の王国に反対します。み使いはヨハネにこう告げました。「[十本の角は]子羊と戦うであろう。しかし子羊は,主の主,王の王であるので,彼らを征服する。また,召され,選ばれた忠実な者たちも彼と共に征服する」。(啓示 17:14)この預言にたがわず,諸国民は子羊の王国の大使として行動する人々に反対し,彼らを迫害して,この終わりの時の間じゅう絶え間なく『子羊と戦って』きました。しかし,子羊を征服することはできず,禁令や投獄,死をさえものともせず神の王国の良いたよりを宣べ伝え続ける地上のその僕たちを征服することもできません。―マタイ 10:16-18。ヨハネ 16:33。ヨハネ第一 5:4。

      13 国際連合が決して真の平和をもたらす力となり得ないのはなぜですか。

      13 事実,国際連合は決して真の平和をもたらすための勢力とはなりません。それに乗っている「大いなるバビロン」は歴史上最も邪悪な戦争挑発者の一人であり,「聖なる者たちの血とイエスの証人たちの血に酔って」います。(啓示 17:6)その機構を支持する諸国民の戦争は,この地を血に浸してきました。(マタイ 24:6,7)その背後にある力である悪魔サタン,つまり「大いなる龍」も,平和を作り出す者ではありません。(啓示 12:9,17; 13:2)人類はこれらの者が存在する限り決して安全を享受することはありません。それらは除き去られなければならないのです。

      平和に向けて必要な措置

      14 (イ)ヨハネの幻の中で,獣に乗っていた者にはどんなことが生じましたか。(ロ)それはどのように成就しますか。

      14 最初に,非常に意外な仕方で消え去ることになっているのは偽りの宗教です。それは次のようにして生じます。「あなたの見た十本の角,また野獣,これらは娼婦を憎み,荒れ廃れさせて裸にし,その肉を食いつくし,彼女を火で焼き尽くすであろう」。人類にとって実に大きな衝撃です!(啓示 17:16; 18:9-19)彼女を荒れ廃れさせるのは,国際連合機構の中で重きをなしている破壊的かつ国家主義的な「角」です。このことは,「嫌悪すべきもの」が「エルサレム」を荒廃させるというイエスの預言をわたしたちにまざまざと思い起こさせます。(マルコ 13:14-20。ルカ 21:20)しかし,その刑の執行に当たるのは諸国家ですが,実際にはキリスト教世界を含む「大娼婦」に神の裁きを執行しているのです。結果はどうなりますか。偽りの宗教は「二度と見いだされることはない」のです。―啓示 17:1; 18:21。

      15,16 (イ)「大患難」とは何ですか。(ロ)それはどんな結果を生じさせますか。(ハ)人類の平和の見込みを打ち砕こうとするサタンはどのようにそれを阻まれますか。

      15 キリスト教世界の滅びは,「世の初めから今に至るまで起きたことがなく,いいえ,二度と起きないような大患難」の始まりとなる,とイエスは言われました。(マタイ 24:15,21)大患難が続くあいだ,神の王国はサタンの組織の政治的および商業的部分全体に裁きを執行します。(ダニエル 2:44)次にヨハネはその王が行動に移るのを見ます。こう記されています。「わたしは天が開かれているのを見た。すると,見よ,白い馬がいた。そして,それに乗っている者は忠実また真実ととなえられ,その者は義をもって裁き,また戦う」。その王に敵対して整列しているのは,『獣の像』と地の政治諸国家です。その戦争の結果はどうなりますか。またもや,平和破壊者たちが滅びることになります!―啓示 19:11,19-21。

      16 その結果,平和を妨げる大きな障害物が一つだけ残ります。それは悪魔サタン自身です。ヨハネはさらに,人類のこの大いなる敵が無力にされる様を次のように描写しています。「わたしは,ひとりのみ使いが底知れぬ深みのかぎと大きな鎖を手にして天から下って来るのを見た。そして彼は,悪魔またサタンである龍,すなわち初めからの蛇を捕らえて,千年のあいだ縛った」― 啓示 20:1-3。

      選択の時

      17 真の平和を見たいと願う人々は,今どんな措置を講ずるべきですか。

      17 人類にとって何という転換期なのでしょう! しかし,さまざまな機構と政府が除き去られても,個人個人に生ずる事柄は主にその人自身の選択の問題となります。エホバは愛の表明として,大患難の前に「あらゆる国民の中で,良いたよりがまず宣べ伝えられねばなりません」と命じておられます。(マルコ 13:10)平和愛好者たちは大いなるバビロンから『出る』よう招かれています。(啓示 18:4)キリスト教世界の人々は,『山に逃げる』よう勧められています。(ルカ 21:21)神の王国に従う人々は『獣の印』を付けられないようにしなければなりません。(啓示 14:9-12。ヨハネ 17:15,16)正しい心を持つそうした人々の大群衆は,「大患難から出て来る」ことになります。(啓示 7:9-14)実際,だれであれ,必ずしもサタンの体制と共に滅びうせなければならないわけではありません。―箴言 2:21,22。

      18,19 (イ)大患難が勃発する時については何と言えますか。(ロ)その時のために,クリスチャンは今どのように準備していますか。

      18 地を揺るがすこれらの出来事はいつ生ずるのでしょうか。「良いたより」はいま世界中で聞かれます。「嫌悪すべきもの」は位置についています。(マタイ 24:14-16)実際,すでに存在の第二段階にある『獣の像』は「去って滅びに至る」ことになっています。(啓示 17:8)「しるし」の成就は,わたしたちが1914年以来71年にわたってイエスの臨在の時期に生活してきたことを示しています。(マタイ 24:3)「これらのすべてのことを見たなら,彼が近づいて戸口にいることを知りなさい。あなた方に真実に言いますが,これらのすべての事が起こるまで,この世代は決して過ぎ去りません」と,イエスは言われました。(マタイ 24:33,34)したがって,「大患難」はごく間近に迫っているに違いありません。それ以上の詳しい事柄をわたしたちは知ることができるでしょうか。今は知ることができません。

      19 使徒パウロは,「人々が,『平和だ,安全だ』と言っているその時,突然の滅びが……彼らに突如として臨みます」と予告しました。(テサロニケ第一 5:3)ですから大患難は,人類一般にとって衝撃的な驚きとなります。しかし,クリスチャンにとっては衝撃ではありません。彼らは大患難が来ることを知っており,「それで,起きることが定まっているこれらのすべての事を逃れ,かつ人の子の前に立つことができるよう,常に祈願をしつつ,いつも目ざめていなさい」というイエスの助言に従います。―ルカ 21:36。

      20 クリスチャンが大患難の到来する時について今は何も言うことができないのはなぜですか。

      20 とはいえ,クリスチャンは大患難が臨む正確な時を前もって述べることはできません。エホバは「その日または時刻」を明らかにはされませんでした。(マルコ 13:32。マタイ 24:42)ですから,例えば国際連合が1986年を「国際平和年」と宣言する時,クリスチャンは事態の進展を興味を持って見守りますが,これが前述のパウロの言葉の成就となるかどうかを前もって述べることはできません。しかしクリスチャンは,エホバの力によって,『獣の像』と「荒廃をもたらす嫌悪すべきもの」の意味を識別できるようになったことを感謝しています。そのためにクリスチャンはエホバがご覧になるようにこの機構を見ており,平和をもたらそうとするその運動に誤導されることはありません。

      21 (イ)今でさえクリスチャンはどんな平和を享受していますか。(ロ)クリスチャンは確信を持って何を待ち望むことができますか。

      21 確かに「いつも目ざめて」神の王国に従う人々は,今でさえ平和を享受します。「平和の神エホバ」は彼らと共におられ,「一切の考えに勝る神の平和」をお与えになります。(フィリピ 4:7,9)さらにそのような人々は,全地が遠からずイザヤの述べる美しい預言の成就を経験する時を待ち望んでいます。こう記されています。「真の義の働きは必ず平和となり,真の義の奉仕は定めのない時に至る平穏と安全となる。そして,わたしの民は平和な住まいに,全き確信の満ちる住居に,かき乱されることのない休み場に必ず宿る」。(イザヤ 32:16-18)全世界的な規模で安全が実現されるのです。(イザヤ 11:9)そしてエホバご自身が平和を作り出されるゆえに,真の平和が訪れるのです。

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