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  • 今や荒廃に直面するキリスト教世界とユダヤ教
    世の苦難からの人間の救いは近い!
    • 12章

      今や荒廃に直面するキリスト教世界とユダヤ教

      1 ローマ・カトリック教会の宗教暦では1975年はどんな年ですか。このような祝いはどれほど頻繁に守られていますか。

      西暦1975年はローマ・カトリック教会の宗教暦では聖年として祝われた特別の年ですが,実際にはこれは1974年12月24日のクリスマス・イブに始まりました。この二十世紀にはこのような聖年は三回,1925年,西暦33年におけるイエス・キリストの死を記念した千九百周年の1933年,また1950年にそれぞれ祝われました。この問題について新カトリック百科事典は第7巻108,109ページで一部こう述べています。

      特別の条件のもとに正式の全贖宥が忠実な信徒に与えられ,かつ特別権限が聴罪司祭に与えられる年である。聖年には一定の間隔をおいて(現代では25年ごとに)訪れる普通の聖年と,ある特別の理由で,例えば贖罪の記念として祝われた1933年の場合のように宣言される特別臨時の聖年とがある。1300年から1950年までに通例の聖年は25回祝われた。……

      1300年の最初の聖年は,12月24日から25日にかけての晩に始まった。……教皇ボニファキウス八世は百年目ごとに大ヨベルを祝う大勅書を出した。……1342年にはクレメンス六世は50年目ごとのヨベルを定めた。……1389年,ウルバヌス六世はその期間を33年に短縮し……1390年を第三回聖年と宣言した。……第四回のヨベルは百年目の1400年で,第五回目は1425年に祝われた。……最後に,1470年のこと,パウルス二世はその期間を25年に短縮したので,次の聖年は1475年に祝われた。そしてこの習慣が我々の時代まで存続してきたのである。……

      2 最近の統計はキリスト教世界の大きさをどのように示していますか。

      2 ローマ・カトリック教会は同教会を今日の地上最大の宗教組織としている推定5億5,194万9,000人の同教会員と共に1975年の聖年を迎えました。これに次ぐ大宗教組織はヒンズー教の制度ですが,その成員は5億1,558万500人に上ります。もしローマ・カトリックの宗教人口に東方正教会の推定9,158万700人の会員と新教諸派の3億2,426万3,750人と言われる教会員を加算すれば,キリスト教世界の教会員数は少なくとも9億6,779万3,450人となりますから,この驚異的な宗教組織を覆す,あるいは地上から絶滅させるなどということは普通では不可能に思えるでしょう。(1975年の「ワールド年鑑」322ページをご覧ください。)

      3,4 キリスト教世界が数の上で増大してきた度合いはどんな例えの中でイエスにより予告されていましたか。

      3 西暦4世紀に始まったキリスト教世界の当時の大きさから判断すれば,今日の同世界の主張する宗教人口は確かに,恐るべき増大のほどを示しています。これはキリスト教世界がその名称としてちなんで取り入れた名を持つ方から祝福されてきたという印象を与えます。同世界の教会員がおよそ10億人に増大したことを示す統計は,キリスト教世界がぜいたくなまでの霊的なパラダイスに恵まれて繁栄してきたかの印象を与えるでしょう。中には,同世界がかつての目標,世界の改宗という目標に向かって進んでいると考える人もいるでしょう。同世界が数の上で現在の大きさに増大したからと言って驚くには当たりません。それはイエス・キリスト自ら予告したことだからです。一連の預言的な例え,もしくは例え話の中で,イエスは生活上のありふれた事を用いて,キリスト教世界の増大を予告し,ありありと描写しました。例えば,こう言われました。

      4 「天の王国はからしの種粒に似ています。人がそれを取って自分の畑に植えました。実にそれはすべての種の中でいちばん小さいものですが,成長したときには野菜のうちでいちばん大きくて木のようになり,天の鳥たちが来て,その枝の間に宿り場を見つけるのです」― マタイ 13:31,32。マルコ 4:30-32。

      5 (イ)ここで「天の王国」を引き合いに出したイエスは,何を考えておられましたか。(ロ)その前の例え話から考えて,それはどうして不思議なことではありませんか。

      5 この例え話の中でイエス・キリストは「天の王国」を引き合いに出しながら,その偽造物のことを考えておられました。これは不思議なことではありません。このすぐ前の例え話の中で,偽クリスチャンがおびただしく生み出されることを示しておられるからです。イエスは立派な小麦の種を畑にまく人のように,比喩的な「りっぱな種」,「王国の子たち」をまいていました。ところが,例え話の中で人びとが眠っている間に夜敵がやって来て,同じ畑に雑草の種,のぎのある毒麦の種をまいたように,後日,バプテスマを受けて信仰を表明したクリスチャンが目をさまして誤信や詐称者が入り込まないよう警戒するのを怠った時,サタン悪魔は真の「王国の子たち」の中に偽クリスチャンをまきました。そのために神の予定の時,つまり今日わたしたちが生を享けている「事物の体制の終結」の時期に真のクリスチャンを偽のそれから分けることが必要になりました。―マタイ 13:24-30,36-43。同47-50と比べてください。

      6 世界の改宗を予言する代わりに,イエスは「王国の子たち」の人数について何を予告しましたか。

      6 主イエス・キリストは世界が真のキリスト教に改宗されることを期待も予言もなさいませんでした。人類世界全体がいつの日か実際に「王国の子たち」になるとは予言しませんでした。「王国の子たち」になる見込みのある者たちに対して彼はこう言われました。「あなたがたの父は,あなたがたにこれらのものが必要なことを知っておられるのです。でもやはり,絶えず神の王国を求めてゆきなさい。そうすれば,これらのものはあなたがたに加えられるのです。恐れてはなりません,小さな群れよ。あなたがたの父は,あなたがたに王国を与えることをよしとされたからです」。(ルカ 12:30-32)からし種の例え話を述べてから約65年後,復活して栄光を受けたイエス・キリストは使徒ヨハネに啓示を伝えて,「王国の子たち」である霊的なイスラエル人の数は一万二千の十二倍であることを明らかにしました。これと現代のキリスト教世界の会員数を,つまり14万4,000人と9億6,779万3,450人とを比べてみてください。―啓示 7:4-8。

      7 イエスの例えのからしの木に宿り場を見つける「鳥」の実体を明らかにするのに,聖書中の文脈はどのように助けとなりますか。

      7 それでイエス・キリストは,真のキリスト教,「天の王国」は鳥が枝々に宿ったり,その下に十分の木陰を見いだせるような比喩的な「木」になるのではないことを十分承知しておられました。「王国のことば」を表わす立派な種がまかれる四種類の土について前に述べた例え話の中で,イエスは鳥のことを述べました。その「鳥」はだれのようなものであると説明されましたか。「邪悪な者」「悪魔」です。つまり,邪悪な悪魔の地上の手先です。(マタイ 13:1-8,18-23。ルカ 8:4-8,11-15)マルコ 4章15節はそれをサタンと呼んでいます。それで,同様の一連の例え話の同じ文脈の中で指摘されている鳥は,同様のものを表わしていると考えるのはもっともなことでしょう。ゆえに,からしの木に宿り場を見いだす鳥は,「邪悪な者」「悪魔サタン」の手先を表わしています。それは小麦と雑草の例え話の中の「雑草」である偽の小麦に相当します。「邪悪な者の子たち」なのです。

      8 では,例え話の中のからし種をまいた「人」とはだれですか。四世紀にはだれが手先として著しい仕方で用いられましたか。

      8 それは偽造物である偽物の「天の王国」すなわちキリスト教世界です。同世界はそれら象徴的な鳥,「邪悪な者の子たち」で満ちています。今日,それは彼らすべてを収容できるほど大きなものです。例え話の中でからしの種粒をまいた「人」は,「人の子」イエス・キリストを表わしていました。しかし,それを異常に成育させるため,悪魔サタンは徐々に真のキリスト教にとっては異質的な分子,偽クリスチャンを侵入させました。西暦4世紀にはサタンはローマ帝国の主要な政治家すなわちコンスタンチヌス大帝によって徹底的な措置を講じました。西暦312年,この血に汚れた軍人はキリスト教に,とは言え実際には将兵たちが奉じた当時の背教したキリスト教に改宗した旨公言しました。この野心的な人物は,政治上の対抗者たちを征服して,ローマ帝国の皇帝の地位を獲得しました。そして,そのような資格で異教ローマの宗教の最高僧院長もしくは大祭司を勤めました。彼はクリスチャンと称したにもかかわらず,この異教の宗教上の称号や地位や権威を固守したのです。

      9 (イ)この象徴的な「木」に宿る「鳥」は皆,どんな神を崇拝しますか。(ロ)例えの中で彼らを「天の王国」と結びつけるのにふさわしいこととして,彼らは皆,やがてはどこに行くことを期待していますか。

      9 最高僧院長であるコンスタンチヌス皇帝はあたかもクリスチャン会衆の見える頭でもあるかのように振る舞い,西暦325年,小アジアのニケアでいわゆる「司教たち」,自称クリスチャンの諸会衆の主宰監督たちの宗教会議を召集しました。その宗教会議で最高僧院長コンスタンチヌスは三位一体論の側を支持して,神は三位の神,三つの見えない位格を有する神,すなわち父なる神,子なる神また聖霊なる神であることを定め,神とはだれでどんな方かをめぐって争われた監督たちの論争に結着をつけました。“三位一体”というこの非聖書的な教理は今日に至るまで,キリスト教世界の教会諸派の基本的な教理となっています。多くの世俗的な「鳥」は,この異常に成育したからしの「木」に群がって宿っています。彼らは皆,「王国の子たち」のように天に行って,説明し難いこの神秘的な三位の神にまみえることを期待しているのです。確かに,「からしの種粒」に関する例え話は見せかけの「神の王国」であるキリスト教世界のうちに成就しています。

      宗教的腐敗

      10 マタイ 13章33節でイエスは「天の王国」に関してさらにどんな例えを述べておられますか。

      10 マタイ 13章33節によれば,からしの種粒に関する例え話をした直後,イエス・キリストは偽の「天の王国」についてさらにある事を示すため別の例えを述べました。こう書かれています。「イエスは彼らに別の例えを話された,『天の王国はパン種に似ています。女がそれを取って大升三ばいの粉の中に隠したところ,やがてかたまり全体が発酵しました』」。(また,ルカ 13:18-21)さて,この例えはどのように成就していますか。

      11 (イ)聖書時代のパン種とはどんなものでしたか。それはどんな影響を及ぼしますか。(ロ)聖書ではパン種は比喩的な意味でどのように用いられていますか。例を挙げて述べなさい。

      11 聖書時代のパン種は発酵させた生パンで,それを取って置いて一かま分の練り粉に加えると生パンは発酵して気泡を生じ,塊全体が膨らみ,つまり軽くなりました。発酵は実際には一種の分解作用つまり腐敗させることですから,しばしば腐る場合があります。このような訳で,聖書では普通それは比喩的に悪い意味で用いられています。例えば,不信仰なパリサイ人やサドカイ人は霊的なパン種の調達人で,そのパン種についてイエスは弟子たちに,「パリサイ人とサドカイ人のパン種に警戒しなさい」と語りました。弟子たちはそれが「パリサイ人とサドカイ人の教え」を指していることを理解しました。(マタイ 16:6-12)ルカ 12章1節によれば,イエスは弟子たちに,「パリサイ人たちのパン種に用心しなさい。それはつまり偽善のことです」と語りました。この教義上の儀式主義的なパン種はまた,ヘロデ王のユダヤ人の党派的な追随者によって表わされているように政治的色合いを帯びることもあり得ました。それでイエスは言われました。「油断なく見張り,パリサイ人のパン種とヘロデのパン種に気をつけなさい」― マルコ 8:15。

      12 コリント第一 5章6-8節でパン種は何を表わすため,また何と対比されて用いられていますか。

      12 こうした警告に十分に従った一世紀のクリスチャンは,古代ユダヤ人の種入れぬパンの祭りの対型を日々の生活の中で祝っていました。その祭りは年ごとの過ぎ越しの後七日間祝われました。それで大変適切にも使徒パウロは比喩的なパン種に注意するようこう警告しました。「あなたがたが誇りとしていることは誉れあることではありません。あなたがたは,少しのパン種が固まり全体を発酵させることを知らないのですか。古いパン種を除き去りなさい。あなたがたは酵母を持たない者なのですから,それにふさわしく新しい固まりとなるためです。実に,わたしたちの過ぎ越しであるキリストはすでに犠牲にされたのです。ですから,古いパン種や悪と邪悪のパン種を用いず,誠実さと真実さの無酵母パンを用いて祭りを行なおうではありませんか」。(コリント第一 5:6-8)使徒の述べたこの言葉は悪と邪悪の比喩的なパン種,つまり分派的な教えや宗教的偽善と,誠実さや純粋さや真実さとを対比させています。

      13 イエスはその例えの中でなぜ女を引き合いに出しましたか。パン種の量と粉の量とはどのように比べられていますか。

      13 当時,農耕地は男の領域であったように,台所は女の領域でした。(サムエル後 13:6-8。列王上 17:11-13。エレミヤ 7:18。ルカ 17:35)それで適切にもイエスはその例えの中で,一かま分の大きな練り粉を膨らませるために一切れの小さなパン種を入れる人として女を用いました。その一塊の練り粉には「大升三ばいの粉」が入っていました。新英語聖書はマタイ 13章33節を次のように訳して,その粉がどれほどの量かを示しています。「天の王国は酵母のようであって,女がそれを取って五十分銅分の粉と混ぜたところ,ついにそれは全部膨れた」。新アメリカ聖書はその作用を述べてこう訳しています。「神の統治は,女が取って升三杯分の粉に混ぜ合わせた酵母のようである。やがて練り粉の塊全体が膨れ上がった」。バイイングトンの翻訳もまた,膨れた練り粉の量を強調してこう訳しています。「天の統治はわずかの酵母のようであって,女がそれを取って四十クォートの粉に埋めたところ,ついにそれは全部発酵した」。これは比喩的な酵母が一体どのように働くかを例証しています。

      14,15 (イ)比喩的なパン種は宗教組織にどんな影響を及ぼしますか。(ロ)使徒ペテロは会衆内のそのような影響に注意するよう,どんな言葉遣いをもって警告しましたか。

      14 実際のパン種あるいは酵母のように,比喩的なパン種も宗教組織の酸敗を引き起こします。それは宗教的腐敗をもたらす媒介物です。それは悪魔サタンによって用意されますし,サタンはまた地上の人間の手先を用いて比喩的なパン種を清い宗教組織に入れさせます。それはそのような組織を腐敗させ,神の用に供するにはふさわしくないものにし,神に非難や不面目をもたらすものにするのがその目的です。西暦33年のペンテコステの日に真のクリスチャン会衆が創設されてから約31年たったころ書かれた手紙の中で使徒ペテロは,宗教的パン種がこうして会衆の中に持ち込まれることに注意するよう,こう警告しました。

      15 「したがって,わたしたちにとって預言のことばはいっそう確かなものになりました。そしてあなたがたが,夜があけて明けの明星が上るまで,暗い所に輝くともしびのように,心の中でそれに注意を向けているのはよいことです。なぜなら,あなたがたはまずこのことを知っているからです。つまり,聖書の預言はどれも個人的な解釈からは出ていないということです。預言はどんな時にも人間の意志によってもたらされたものではなく,人が聖霊に導かれつつ,神によって語ったものだからです。しかしながら,民の間に偽預言者も現われました。それは,あなたがたの間に偽教師が現われるのと同じです。実にこれらの者は,破壊的な分派をひそかに持ち込み,自分たちを買い取ってくださった主人のことをさえ否認し,自らに速やかな滅びをもたらすのです。さらに,多くの者が彼らの不品行に従い,そうした者たちのために真理の道があしざまに言われるでしょう。また,彼らは強欲にもまことらしいことばであなたがたを利用するでしょう。しかし彼らに対して,昔からの裁きは手間どっているのでもなければ,その滅びはまどろんでいるのでもありません」― ペテロ第二 1:19から2:3。

      16 同様に,使徒パウロは何についてエフェソスの会衆に警告しましたか。

      16 使徒パウロはまさしく同じ事柄に関して小アジア,エフェソスの会衆の長老たちに口頭の言葉をもってこう警告しました。「わたしは何一つ差し控えることなく,神のみ旨をことごとくあなたがたに伝えたからです。あなたがた自身と群れのすべてに注意を払いなさい。神がご自身のみ子の血をもって買い取られた神の会衆を牧させるため,聖霊があなたがたをその群れの中に監督として任命したのです。わたしが去ったのちに,圧制的なおおかみがあなたがたの中に入って群れを優しく扱わないことを,わたしは知っています。そして,あなたがた自身の中からも,弟子たちを引き離して自分につかせようとして曲がった事がらを言う者たちが起こるでしょう」― 使徒 20:27-30。

      17,18 (イ)やがて,それら偽教師や偽預言者は何になりましたか。(ロ)彼らが「滅びの子」と呼ばれたのはどうしてもっともなことでしたか。

      17 そのような偽教師や偽預言者,つまり羊のように装った狼のような人間は徐々に勢力を盛り上げ,複合の「不法の人」を形成することになりました。悪魔サタンのこのような人間の手先は,キリスト教を奉ずると唱える宗教組織の中で反逆つまり「背教」を引き起こすのです。それゆえに,宗教指導者たちのそのような僧職団体は滅びに定められることになりました。ですから,この「不法の人」はまさしく「滅びの子」と呼ぶことができました。無論,この「不法の人」の支配を受ける宗教組織は神の恵みを受けるのではなく,神の予定の時に滅ぼされるよう印づけられるのです。なぜでしょうか。

      18 「彼らがこうして滅びゆくのは,真理への愛を受け入れず,救われようとしなかったことに対する応報としてなのです。そのゆえに神は,誤りの働きを彼らのもとに至らせて,彼らが偽りを信じるようにするのであり,それは,彼らすべてが,真理を信じないで不義を好んだことに対して裁きを受けるためです」― テサロニケ第二 2:3-12。

      19 「不法の人」はどのようにして西暦4世紀にはっきり見分けられるようになりましたか。

      19 「この不法の秘事」は使徒たちの時代に既に働いていましたが,その複合の「不法の人」は西暦4世紀の最初の四半期のコンスタンチヌス大帝の治世に至るまでは明らかにそれと分かる形は取りませんでした。この異教徒の最高僧院長は混合を行なわせて“融合宗教”を造り出そうとしました。真のキリスト教はこの世のどんな偽りの宗教とも混じり合ったり融合したりすることは決してできません。(コリント第二 6:14から7:1)ところが,ローマ帝国の宗教および政治上の頭と交渉したいわゆる“司教たち”をその頭は強制的に妥協させました。それで,それら“司教たち”の監督した不純にされたキリスト教は,異教のローマの宗教と融合しました。それは心では依然として異教徒で,自分たちの異教的な考えや慣習を保持したいと願っていた人たちにとって違和感の少ない,受け入れやすい“融合宗教”を造り出すためでした。彼らはそれまでの自分たちの異教の中で慣れてきた事柄と似たものとして,“司教たち”が彼らを治める僧職階級を形成して彼らを平信徒階級として支配することを許しました。このような融合宗教が国教となったのです。

      20,21 (イ)キリスト教世界の始まりに際して問題の宗教的な「パン種」が同世界に混ぜられた結果,何が発達しましたか。(ロ)キリスト教世界の諸教会の教会員は,自分たちは死後天に行くと考えてはいるものの,彼らの中に広く見られる「肉の業」は何を示していますか。

      20 キリスト教世界はこのようにして土台が据えられ,以来何世紀もの間に大きくなって今日のそれとなりました。今日,それは巨大な宗教的集団ですが,最初はその組織に混ぜられたわずかな宗教的「パン種」から始まって,異教主義,俗事への干渉,悪,邪悪,人間の伝承,偽善,悪霊の教えなどによって完全に発酵させられました。キリスト教世界は自ら偽宗教の世界帝国,大いなるバビロンの一部となり,また増大してその宗教帝国の中でも最も優勢な単一集団となりました。(啓示 17:3-6)キリスト教世界という名称からすれば,その教会員は死後天の王国に行くよう定められていると思えるかもしれません。ところが今日,以前のいかなる時代にもましてキリスト教世界は「肉の業」で満ちています。それがどんな業で,天の王国に入るのを許す根拠となるかどうかについては,使徒パウロはこう述べています。

      21 「少しのパン種が固まり全体を発酵させます。さて,肉の業は明らかです。それは,淫行,汚れ,不品行,偶像礼拝,心霊術の行ない,敵意,闘争,ねたみ,激発的な怒り,口論,分裂,分派,そねみ,酔酒,浮かれ騒ぎ,およびこれに類する事がらです。こうした事がらについてわたしはあなたがたにあらかじめ警告しましたが,今また警告しておきます。そのような事がらをならわしにする者が神の王国を受け継ぐことはありません」― ガラテア 5:9,19-21。

      22 キリスト教世界は今日,霊的なパラダイスを享受していますか。神の他の何らかのパラダイスに同世界が入れるかどうかという見込みについてはどうですか。

      22 再三指摘された事実すべてを考えれば,今日キリスト教世界はその膨大な教会員と共に聖書に述べられているような霊的パラダイスを享受していると言える,正直な心の持ち主がいるでしょうか。同世界の教会員は死後天に行って,「神のパラダイスにある命の木」から食べるよう定められていますか。(啓示 2:7)あるいは,キリスト教世界はその宗教的名称や信仰告白のゆえにエホバ神により容赦され,現在の世の苦難を生き延びて,神のみ子イエス・キリストの近づいた千年統治の期間中,文字通りの地上のパラダイスを享受するでしょうか。(ルカ 23:43)このような問いに,はいと答えられる聖書的な根拠はありません。むしろ,キリスト教世界を待ち受けているものは,イザヤの34章の預言の成就としてエドムの地に臨んだ事柄によって予示されています。

      エドムの現代の相対物

      23 今日,だれがイザヤが予告したようにエホバを自分たちの審判者,立法者また王として仰いでいますか。それゆえに彼らはどんな病気から守られていますか。

      23 そのイザヤ書 34章の冒頭の言葉に先行する三節は,キリスト教世界もユダヤ教も取って来なかった宗教上の立場を宣言しています。その節は次の通りです。「エホバはわたしたちの審判者,エホバはわたしたちの立法者,エホバはわたしたちの王,この方がわたしたちを救われる……[敵の帆走する艦隊を攻撃する]あなたの綱は必ず解けて垂れ下がる。彼らの帆柱を彼らはしっかり立たせることはない。彼らは帆を広げなかった。その時,おびただしい分捕り物さえ必ず分けられることになり,[エホバの救出された民の]足のなえた者たちがまさしく大きな略奪物を取る。そして,居住者はだれも,『わたしは[霊的に]病気です』とは言わない。その地に住んでいる民は過ちを赦された者たちである」。(イザヤ 33:22-24,新)キリスト教世界やユダヤ教とは著しく対照的に,神の恵みや保護にあずかる霊的なパラダイスに住んでいるエホバ神のクリスチャン証人こそ,エホバを自分たちの王,立法者,審判者また救い主とみなしてきた者たちです。従って,彼らこそ,キリスト教世界やユダヤ教を苦しめている霊的な病気や疾患や災いから守られている者たちなのです。―詩 91:1-10。

      24,25 (イ)イザヤ書 34章でエホバは諸国民に,彼らが何に関係しているということを知らせていますか。(ロ)この法的な係争問題はどんな結果になることが彼らに知らされていますか。

      24 その預言のすぐ後に続くイザヤの預言の34章は,世の諸国民のための恐るべき見通しを述べています。この見通しは,次の(35)章で描写されている明るい霊的なパラダイスを一層くっきりとした浮き彫りにする対照的な背景となっています。エホバは諸国民の前途にあまりにも悲惨な事があるゆえに,またそれがご自身から出るものであるがゆえに,諸国民や諸国家群に対して事前通告を出しておられるのです。諸国民は今日,神は問題に何ら関係していない,自分たちはどんな問題でも神と関係してはいない,唯物主義的な人間として自分たちは人間独自の事柄を処理しているのであって,至高者つまり創造者に対して責任を持っている訳ではないと考えるかもしれません。しかし,エホバは預言者イザヤを通して諸国民をはっとさせて注意を促し,彼らが宇宙の法廷に提出されている法的な係争に確かに関係しており,またそれゆえに裁きの執行に遭うということを諸国民に思い起こさせています。

      25 そこで,34章の冒頭で代弁者はこう述べています。「国々の民よ,近づいて聞け。国民よ,注意を払え。地とそれに満ちるもの,産出的な土地とその産するものは皆,聴け。エホバはすべての国の民に対しで憤りを,彼らのすべての軍隊に対して怒りを抱かれるからである。この方は必ず彼らを滅ぼし絶やし[この方は彼らを必ず滅ぼすと誓われた],必ず彼らを殺りくに渡される。そして,彼らの殺された者たちは投げやられ,彼らの死骸はと言えば,その臭気が立ち昇る。山々は彼らの血のゆえに必ず溶ける。そして,天の軍勢のすべては必ず朽ち果てる。そして天は巻き物の書のように,必ず巻き上げられる。その軍勢は皆,しなび果てる。葉がしなびてぶどうの木から落ちるように。いちじくの木から落ちるしなびたいちじくのように」― イザヤ 34:1-4,新; エ。

      26 ここで神は,何に関して申し開きをするよう諸国民に求めておられますか。特にそのように求められているのはどの諸国民ですか。

      26 ここで注目されるのは,諸国民の流血の罪です。中でも,キリスト教世界の諸国民は最も重い罪を負っています。彼らは野生動物を手当り次第殺して血を流しただけでなく,特に人間の血を流してこの地をずぶぬれにさせました。諸国民の流したこれらの血すべてをそれら諸国民に要求し,その血が天与の命を表わすゆえにそれを返すよう諸国民に当然求めて然るべき方はだれですか。それは人類に生命を支える血液を授けた命の与え主なる創造者にほかなりません。今日の諸国民はすべて一層おびただしい数の常備軍を持っており,しかもそのすべては国際紛争でさらに多くの人間の血を流す装備を整え,訓練を受けているのです。

      27 (イ)魂には魂を代えなければならないという神の律法はどれほど重大なものですか。(ロ)「山々は彼らの血のゆえに必ず溶ける」という言葉は何を示していますか。

      27 命には命を,つまり魂には魂を代えなければならないという公正な律法をエホバ神が述べた時,単なるむだ話をされたのではありません。(創世 9:4-6。出エジプト 21:23-25)この取り消せない律法に忠実な神は,諸国民の血を流れさせて彼らを死に至らせます。諸国民の増大する流血の罪はあまりにも大きいため,命の与え主に支払うよう要求される血はあたかも山々を溶かし,溶解させるに足るほどの十分の液体となるでしょう。無論,世の諸国民の軍勢が完全に滅びる際には,聖書の中で時おり「山」として描かれている彼らの諸政府も倒れることになります。

      28 この預言の中の「天の軍勢のすべて」という表現は何を指していますか。それらはどうなりますか。

      28 この預言者は「天の軍勢のすべて」という表現によって天空の恒星や,太陽や月などのような惑星や銀河や,はるかかなたの星雲のことなどを指しているのではありません。むしろ,人類を治める諸政府が上にある権威として非常に高いものであるゆえに,地上の人類社会の上にある天になぞらえられているのです。(ローマ 13:1-4)それで,「天の軍勢」とは人類のそれら天のような諸政府を合体した集団と言えるでしょう。天のように高い諸政府の最強の部分と思えるこの「軍勢」は,滅びるもののように「朽ち果て」,崩壊してゆくのです。わたしたちの頭上の文字通りの天は,普通凹面に,つまり内側に文字が書かれた古代の巻き物の書のようにアーチ形で,湾曲しているように見えます。天空の太陽や月や恒星は,広げられたアーチ形の天空に巻き物の書の内側に記されているかのように現われます。

      29 この象徴的な天はどのようにして「巻き物の書のように」,また「しなびたいちじく」のようになりますか。

      29 巻き物の内側に記されている資料が読者の目の前を通過すると,読み終えた巻き物は巻き上げられて片付けられます。同様に,天にも似た諸政府の「軍勢」が人間の歴史の記録の上で見える仕方で役割を演ずると,諸政府は必ず終わりを,つまりその歴史の書の最後のページを迎え,従って必ず最期を迎え,廃止されます。それ以上存在する許しは神から与えられず,片付けられてしまいます。そのような訳で,「天は巻き物の書のように,必ず巻き上げられる」のです。その印象的な「軍勢」は生き生きとした清新さを失って落ち,その歴史を読む人の視界から,さながらぶどうのつるから落ちるしなびた葉のように,いちじくの木から落ちるしなびたいちじくのように消えてゆきます。その季節は終わるのです。―啓示 6:12-14の言葉遣いと比べてください。

      エドムの現代の相対物であるキリスト教世界

      30,31 イザヤの預言の続きの節は,ここで言及されている「天」とは神の住んでおられる見えない霊の天ではないことをどのように示していますか。

      30 「天」またその「軍勢」が朽ち果てる,あるいはしなびて落ちるとありますが,これは神の住んでおられる見えない霊の天のことと解すべきではありません。このことはイザヤの預言のもっと先の箇所からも分かります。その中でエホバはご自分の思うところをこう述べておられます。

      31 「天ではわたしの剣は確かにびしょぬれになるからである。見よ,エドム[イドマヤ,ギリシャ語七十人訳]の上にそれは下り,わたしにより公正をもって滅び絶やされる民の上に下る。エホバは剣を持たれる。それは必ず血で満ちる。それは必ず脂肪で,若い雄羊や雄やぎの血で,雄羊の腎臓の脂肪で脂ぎる。エホバはボズラ[エドムあるいはイドマヤの首都]で犠牲をほふり,エドムの地で大いなる殺りくを行なうからである。そして,野生の雄牛は彼らと共に,若い雄牛は力の強いものたちと共に必ず下って来る。彼らの地は必ず血でびしょぬれになり,その塵までも脂肪で脂ぎるようになる。エホバは復讐の日を,シオンの法的な係争のために応報の年を持たれるからである」― イザヤ 34:5-8,新; トムソン訳セプトゥアギンダ。

      32 エドム人とはだれのことですか。彼らはどんな地域に住んでいましたか。

      32 死海とアカバ湾の間アラバにまたがるエドム人の領土は「エサウの山地」と呼ばれました。(オバデヤ 8,9,19,21,新)エサウとはエドムと呼ばれた人の元の名でした。エサウは一食分の赤味がかった煮物と引き替えにアブラハムの家系の長子相続権を双子の弟ヤコブ(イスラエル)に売ったため,「赤い」という意味のエドムという異名をもらいました。(創世 25:29-34。ヘブライ 12:16,17)ヤコブは貴重な長子相続権の点でエサウに取って代わったため,エサウ(あるいはエドム)は霊的な思いを持つ双子の弟に対して残忍な憎しみを抱きました。(創世 27:30-45)エサウは山地に居を定めたので,天のように高い所に住みました。エホバは預言者オバデヤの口を通してエサウ人(エドム人)に次のように述べた時,そのような見地から物事を述べたのです。

      『山崖の巌屋にをり高きところに住む者よ汝が心のたかぶりなんぢを欺けり 汝心のうちにいふ 誰か我を地にひきくだすことを得んと 汝たとひ鷲のごとくに高くあがり星の間に巣を造るとも我そこより汝をひきくださん エホバこれを言ひたまふ』― オバデヤ 3,4。

      33 (イ)イザヤ書 34章5節の「天では」神の剣がびしょぬれになるという言葉は何を意味していますか。(ロ)エドムの大いなる者たちや弱小な者たちのことはどんな用語によって言及されていますか。

      33 ゆえに,戦いの「剣」によるエドムの国民の滅びについて述べる際,エホバは比喩的に,「天では」ご自分の剣が血で満ちてびしょぬれになると語ることができました。エホバはエドム人を公正をもって滅ぼし絶やし,あるいはそうすると誓われたので,その滅びはボズラという首都で表わされた,エドムの国民の中の最高位者層にまで及ぶことになりました。エホバはこの敵国をほふることを犠牲として述べておられます。それは宇宙の主権者としてご自分の裁きを執行し,ご自分の正しさを立証するものとなるからです。エホバは大いなる者たちや弱小な者たちのことをそれぞれ象徴的な「野生の雄牛」や「若い雄牛」,また「若い雄羊」や「雄やぎ」として語っておられます。殺人を好む,流血の罪のあるこの国民の地は,エホバの「剣」でほふられて流される彼ら自身の血で必ずびしょぬれになるのです。

      34-36 エドム人は神の手からこのような徹底的な処置を取られるに値するどんな事をしましたか。

      34 エドムの地はこのような徹底的な処置を受けるに値しました。さもなければ,それは神による公正な業ではなかったでしょう。「エホバは復讐の日を,シオンの法的な係争のために応報の年を持たれるから」です。(イザヤ 34:8,新)それはいわゆる「シオン主義」にかかわる事ではありませんでした。むしろ,エホバの選民の油そそがれた歴代の王が「エホバの王座」に座した古代のシオンが関係していました。西暦前607年にバビロンの軍隊は聖都エルサレムを滅ぼし,ユダ王国を覆し,生き残ったユダヤ人をバビロンの異教の地に追放しました。その時,エホバの懲らしめられた民に対するエドムの国民の態度がはっきりと示されました。どのようにしてですか。

      35 エホバは預言者オバデヤを用いてその点に彼らの注意を向けさせて,こう言われました。

      『汝が遠く離れて立ちをりし日 すなはち異邦人[バビロニア人]これが[イスラエルの]財宝を奪ひ他国人これが門に進み入りエルサレムのためにくじをひきたる日には汝も彼らの一人のごとくなりき

      『汝は汝の兄弟の日すなはちその災禍の日をみるべからず またユダの子孫の滅亡の日を喜ぶべからず その苦難の日には汝口を大きく開くべからざるなり 我が民の滅ぶる日には汝その門に入るべからず その滅ぶる日には汝その患難を見るべからず またその滅ぶる日には汝その財宝に手をかくべからず 汝みちのつじつじに立ちてその逃亡者を斬るべからず その患難の日にこれが遺る者をわたすべからず エホバの日万国に臨むことちかし 汝のなせるごとく汝もせられ汝の応報なんぢの首に帰すべし 汝らのわが聖山にて飲みしごとく万国の民もつねに飲まん すなはちみな飲みかつすゝりてはじめよりあらざりし者のごとくならん』― オバデヤ 11-16。

      36 霊感を受けた詩篇作者も次のようにエホバに祈った時,兄弟国の同様の悪意のある行ないを思い起こしました。『エホバよ ねがはくはエルサレムの日に エドムの子らがこれを掃ひ除け その基までもはらいのぞけといへるを聖意にとめたまへ ほろぼさるべきバビロンの女よ なんぢがわれらになししごとく汝にむくゆる人はさいはひなるべし』― 詩 137:7,8。

      37 (イ)エドムと「シオンの法的な係争」をエホバはなぜご自分の問題とみなしましたか。(ロ)エホバの復讐の表われはいつエドム人に臨み始めましたか。

      37 西暦前607年の災いの日にエドム人が神の選民に対して行なった事を,エホバはご自分に対してなされた事とみなしました。このような訳でエホバは「シオンの法的な係争」問題を持っておられました。ですから,エホバが「シオンの法的な係争のために応報」を施し,不快なエドム人に対して復讐する年は必ず到来します。(イザヤ 34:8,新)確かにエホバはエルサレムの滅亡後ほどなくしてバビロンの王ネブカデネザルを用いてエドム人に対して正義の復讐を行ない始められました。―エレミヤ 25:17-21。

      エドム人ヘロデ家の行為

      38 ヘロデ大王,ヘロデ・アンテパス,王ヘロデ・アグリッパ一世などのエドム人の支配者は,エホバの民に対するさらにどんな行為の点で罪を犯しましたか。

      38 エドム(エサウ)の子孫はギリシャ人からはイドマヤ人と呼ばれましたが,彼らは引き続き神の選民に対して犯罪的行為を犯しました。ヘロデ大王の一族はイドマヤ人つまりエドム人でした。聖書の記録によれば,エルサレムの壮麗な神殿を建てたこの王は恥ずべきことに,自分の家系の王国のことを心配して,ベツレヘム-ユダで幼子イエスを殺害しようとしたことが分かります。(マタイ 2:1-22)それから約30年後,きつねのような地区支配者ヘロデ・アンテパスは,イエスの先駆者バプテストのヨハネを打ち首にしました。(マタイ 14:1-11。ルカ 13:31,32)西暦33年,イエスが命がけで裁判を受け,知事ピラトによりヘロデ大王の子で当時のガリラヤの王だったヘロデ・アンテパスのもとに送られた時,この支配者はイエスに失望し,メシアとしてのイエスを信ぜず,彼をピラトのもとに送り返して死なせました。(ルカ 23:6-12)何年か後,王ヘロデ・アグリッパ一世はユダヤ人を喜ばせようとして,イエス・キリストの十二使徒の一人ヨハネの兄弟ヤコブを剣で打ち殺し,次いでユダヤ人の過ぎ越しの後に処刑させるつもりで使徒ペテロを投獄させました。(使徒 12:1-6)そして最後に,王ヘロデ・アグリッパ二世についてはどうですか。

      39 クリスチャンになる機会を与えられたにもかかわらず,王ヘロデ・アグリッパ二世は依然何の代理者のままとどまりましたか。

      39 使徒パウロは知事フェストの取り計らいでカエサレアでの特別の会合の折,彼の前に連れ出されました。自分の立場を法的に弁護する論議の最高潮に際してパウロが,「アグリッパ王,預言者たちを信じておられますか。信じておられることを知っております」と王に語った時,このイドマヤ人はパウロに言いました。「あなたはわずかの間に,わたしを説得してクリスチャンにならせようとしている」。(使徒 26:27,28)アグリッパ王は当時,割礼を受けたユダヤ人の改宗者でしたが,霊的なイスラエル人つまりクリスチャンには決してならず,異教のローマ帝国の代理者として依然政治に携わっていました。

      40 (イ)ヘロデ党の追随者はイエスに対するどんな陰謀に加わりましたか。(ロ)聖書の預言の成就として,エドム人はどんな出来事に次いで歴史からその姿を消しましたか。

      40 イエスの生存中,ヘロデ党の追随者はパリサイ人と一緒になって,カエサルに税金を払うのはユダヤ人にとって聖書上正当かどうかにつき意見を述べさせてわなにかけようとしました。イエスを板ばさみにさせ,ローマ人が国家主義的なユダヤ人のヘロデ党のいずれかともん着を起こさせようとしたのです。(マタイ 22:15-22)このようにヘロデ家の支持者はキリスト教に対して最初から好意的な態度を取りませんでした。聖書の記録によれば,ヘロデ王家の率いるエドム人もしくはイドマヤ人についても同じでした。彼らはユダヤ教に固執していました。西暦70年にローマ人がエルサレムを攻囲した時,イドマヤ人は,一部のユダヤ人の反対をおして神殿の境内を守っていたユダヤ人の一派からの要請に答え応じました。しかし,イドマヤ人(エドム人)の援助は役に立たず,エルサレムはローマ人の手に落ち,ヘロデの神殿もろとも滅びました。この大惨事の後,イドマヤ人つまりエドム人は中東の歴史の舞台から姿を消しました。聖書の預言は彼らに関して成就し損なうことはありませんでした。

      古代エドムと現代の対型

      41 「エドムの地」の現代の相対物とは何ですか。

      41 同様に,エホバの預言は「エドムの地」の現代の相対物つまり対型の上にも間違いなく成就します。その対型とは何ですか。それはキリスト教世界です。古代のユダヤ国民とエルサレムはキリスト教世界にかかわる物事を予示するため,エホバ神により表象的な仕方で用いられたのと同様,兄弟国であったエドムもエホバにより表象的な仕方で用いられました。(コリント第一 10:6,11。コロサイ 2:16,17)エドムの人びとは,エドム(“赤い”)という異名を得たエサウの肉の子孫でした。彼らの国民的な父祖は,イスラエルという異名で呼ばれるようになったヤコブの双子の兄でした。エサウはイサクとリベカの初子だったため,祖父アブラハムから伝わった長子相続権を受け継ぐ生来の権利があると考えていました。

      42 長子相続権に関連して発展したどんな事情の結果,エサウはヤコブに対して憎しみを抱くようになりましたか。

      42 しかし,エホバ神は長子のその生来の権利を無視して,その双子が生まれる前に,二番目に生まれる双子のヤコブ(“取って代わる者”の意)の方を好んでいることを表明されました。たとえ事情がそうであったにせよ,エサウは不敬な仕方で,つまり霊的な物事を正しく評価せずに長子相続権を取り扱いました。疲労と空腹に陥った時,ただ一回の食事と引き替えにこの長子相続権を,物事を正しく評価する弟のヤコブに喜んで売りました。後に,父イサクがアブラハムの祝福を授ける時が来たとき,エサウは長子相続権の売渡しを確認するために既に誓った誓いを無視して,もはや自分には受ける資格のない長子相続権の祝福を受ける用意をしました。この問題で彼が出し抜かれ,神の意志に従って祝福がその正当な取得者であるヤコブのものとなったのは,まさしくもっともなことでした。ところが,エサウは不当にも取って代わられ,だまされたと感じて憎しみを抱き,なるべく早くヤコブを殺そうともくろみました。―創世 25:29から27:45。ヘブライ 12:16,17。

      43 (イ)この問題で,ヤコブはだれのことを表わす人物となりましたか。(ロ)エサウについてはどうですか。

      43 こうした点で,ヤコブはアブラハムの約束の相続者を表わす人物となりました。それらの相続者はアブラハムの霊的な「胤」,すなわちアブラハムの「胤」の主要な方であるイエス・キリストの油そそがれた弟子たちとなるのです。(ガラテア 3:16-29)物質主義的な考えを持ったエサウはと言えば,アブラハムの肉の子孫で,アブラハムの祝福は当然自分たちのものだと考えていた生来のイスラエル国民の予型となりました。

      44 割礼を受けた生来のイスラエル人は全体としては,確かにエサウのようであることをどのように示しましたか。

      44 ところが,割礼を受けたそれら生来のイスラエル人は,アブラハムの霊的な胤となる資格にかないませんでした。彼らはアブラハムの約束の「胤」の主要な方すなわちイエス・キリストを退けて殺させ,その後,イエスの忠実な追随者を迫害しました。生来のユダヤ人のほんの少数の残りの者だけが必要条件にかない,アブラハムの霊的な胤の一部となりました。それで,アブラハムの霊的な胤のなお必要な残りの成員は,必要条件にかなう非ユダヤ人の中から取られねばなりませんでした。(ローマ 2:28,29; 11:1-29)こうしてユダヤ国民の大多数の者は遠縁のおじエサウつまりエドムのようになりました。

      45 エサウつまりエドムの子孫はその兄弟の国民であるイスラエル人に対する敵意をどのように表わすようになりましたか。

      45 エサウは不敬な態度,霊的な物事に対する認識の欠如ゆえに,その子孫となった国民であるエサウ人つまりエドム人にアブラハムからの長子相続権を伝えることはできませんでした。(ヘブライ 12:15-17)それらエドム人は不信仰な異教徒の妻たちによるエサウの子孫でした。(創世 26:34,35; 27:46; 28:6-9)当然,彼らが約束の祝福にあずかる権利を持つ,アブラハムの生来の胤となる身分を自分たちのおじヤコブつまりイスラエルの行動のために奪われたと考えたのももっともなことでしょう。それで彼らの国民的な先祖エサウがヤコブに対して感じた憎しみを抱くことを容易に覚えましたし,その憎しみは彼らの兄弟の国民であるイスラエル人に対する敵意となって表われました。以後何世紀にもわたって,エドム人つまりイドマヤ人はエホバ神の不興を思い知らされました。―エゼキエル 35:1-9。マラキ 1:2-4。

      46 マカベア家の治世中にエドム人はどのようにしてユダヤ国民と融合しましたか。

      46 ユダの地の復帰したユダヤ人のマカベア家の支配者の治世中,生き残ったエドム人は余儀なくユダヤ教の改宗者となりました。大体,西暦前130-120年の間にマカベア家のヨハネ・ヒルカノスはエドム人を征服し,ユダヤ教への改宗者として強制的に割礼を受けさせました。これでユダヤ人がエドム人(イドマヤ人)の王であるヘロデ大王や同王家の成員による支配を認めた理由も分かります。(フラビウス・ヨセフス著「ユダヤ古誌」13巻9章1節; 15巻7章9節をご覧ください。)こうしてエドム人(イドマヤ人)は,キリスト教世界の予型として聖書で用いられている西暦1世紀当時のユダヤ国民と融合しました。

      47 キリスト教世界はエサウつまりエドムと同様であることをどのようにして示しましたか。

      47 エサウつまりエドムと同様,キリスト教世界はアブラハムの約束にあずかる資格があると主張し,同世界こそアブラハムの霊的な胤,つまりイエス・キリストと共に天の王国を受ける相続者であると考えています。その宗教上の主張によれば,キリスト教世界の成員は,神のメシアによる王国の真のクリスチャン相続者たち,つまりメシアなるイエスの真の弟子たちの双子の兄弟となっています。とは言え,キリスト教世界は霊によって油そそがれたそれらキリストの忠実な弟子たちを愛してはいません。残忍な憎しみを抱いて彼らを憎んでいます。(ヨハネ第一 3:12-15)キリスト教世界は西暦4世紀に設立されて以来,偽クリスチャンではない人たちを迫害してきました。それらの人たちはイエスの言葉や模範に従ってこの世のものとはなっていませんが,キリスト教世界は自らを世のものにしてこの世の友となりました。ですから,世が憎むものを同世界も憎みます。(ヨハネ第一 2:15-17。ヨハネ 15:19; 17:14,16。ヤコブ 4:4)同世界は真のクリスチャンを迫害することによって,自らは聖なる奉仕を神に捧げていると考えているのです。―ヨハネ 16:2。

      48 西暦前607年におけるエルサレムの滅亡の際のエドム人と全く同様,キリスト教世界は第一次世界大戦中,霊的なイスラエルに対してどのように振る舞いましたか。

      48 現代の二十世紀の歴史はこのことを証言しています。第一次世界大戦中,霊的なイスラエルの忠実な残りの者はあらゆる国民から憎まれました。イエス・キリストがご自分の真の追随者に関して予告した通りです。(マタイ 24:9; 10:7-22)このように世から憎まれたのは,油そそがれた残りの者が神のメシアの王国を全地の正当な支配権を有するもの,全人類に希望を与える唯一のものとして宣明したためです。(マルコ 13:10-13)忠実な残りの者があらゆる迫害や苦しみを被っていた時,キリスト教世界は彼らに対する同情の言葉を述べませんでした。実際のところ,記録文書による証拠は,キリスト教世界の僧職者が神のメシアによる王国の「良いたより」のそれら宣明者に対するこうした迫害を扇動したことを示しています。エドム人が西暦前607年におけるエルサレムの滅びをバビロニア人と共に喜び合ったのと同様,キリスト教世界は同世界の交戦国と共に,それら王国宣明者を弾圧し,その公の証言の業を葬ったことを喜び合いました。―啓示 11:7-10。

      49,50 (イ)第二次世界大戦中,キリスト教世界は古代エドムの精神を持っていたことをさらにどのように示しましたか。(ロ)イザヤを通して述べられた神のみ言葉の成就として,ユダヤ教はもとより,現代のエドム人であるキリスト教世界の人びとは今や何に直面していますか。

      49 激烈な戦争で流血行為に携わった同世界の諸教会の会員とは対象的に真のクリスチャンとして際立った霊的なイスラエル人の残りの者に対する憎しみを募らせたキリスト教世界は,弾圧された王国の証人たちが西暦1919年に神の霊によって生き返った時,喜びませんでした。回復されたそれら霊的なイスラエル人が導き入れられた霊的なパラダイスをも,同世界は喜びませんでした。(イザヤ 35:10)キリスト教世界それ自体の領域内で勃発した,西暦1939年から同45年にわたった第二次世界大戦中,同世界はまたもや宗教的迫害を引き起こし,霊的なイスラエルの残りの者と彼らの仲間のエホバ神の崇拝者たちの霊的パラダイスを一掃しようと狂気のように努力しました。しかし,それはすべてむだでした! エホバのクリスチャン証人は二度目の世界大戦を生き残り,かつてないほどの人数の一大勢力を伴って現われ出ました。エホバのクリスチャン証人に対するキリスト教世界のこうした激しい憎しみからすれば,エホバ神は「シオンの法的な係争」問題を持っておられますか。その「応報の年」,エホバの「復讐の日」は現代のエドム人の上に臨んでいるのでしょうか。―イザヤ 34:8,新。

      50 その答えは,然りです! ゆえに,キリスト教世界は今や荒廃に直面しています。ユダヤ教も同様です!

  • キリスト教世界やユダヤ教がもはやない時代!
    世の苦難からの人間の救いは近い!
    • 13章

      キリスト教世界やユダヤ教がもはやない時代!

      1 (イ)西暦1世紀当時,ユダヤ教の信奉者とエドム人はキリスト教に対する態度では一致していましたか。(ロ)エドムに関する聖書の預言はなぜ今日のわたしたちにとって興味深いものですか。

      古代のエドム(イドマヤ)国民は,エホバ神の忠実な崇拝者に敵対しました。西暦1世紀のイエス・キリストの使徒たちの時代でさえ,ユダヤ教の筋金入りの信奉者たちは,エドム人(イドマヤ人)と一体となって,新たに成立したキリスト教と戦いました。(使徒 4:25-28; 12:1-6)やがてエドム国民は歴史のページから姿を消しましたが,聖書預言の主要な完全な成就の点でその悪名高い国民は現代の相対物を持っています。それはキリスト教世界です。ゆえに,エドムに関する聖書の預言は今日,現代のこの相対物に降りかかる事柄という視点から理解しなければなりません。

      2,3 (イ)イザヤ書 34章8節に予告されているエホバの「復讐の日」は今やだれに対して近づいていますか。(ロ)イザヤ書 34章のさらに先の節では,どんな「応報」が予告されていますか。

      2 イザヤ書 34章に収められているエドムに対する著しい預言の中には不吉な言葉が記されています。「それはエホバにとって復讐の日,シオンにかかわる法的な係争のための応報の年だからである」。(イザヤ 34:8,新)古代エドムの現代の相対物に関してはエホバの「復讐の日」「応報の年」が近づいています。それで,イザヤのこの預言のさらに先の箇所を考慮するに際し,今日のキリスト教世界のことを念頭に置けます。古代のシオンもしくはエルサレムに対するエドムの憎むべき不法行為ゆえに臨もうとしている「応報」を予告した預言者イザヤは,さらにこう述べます。

      3 「そして,その急流は必ず歴青に変わり,その塵は硫黄に,その地は必ず燃える歴青のようになる。夜も昼もそれは消されない。定めなき時までその煙は立ち上る。代々にそれは乾き切り,限りなく永久にだれもそこを通過することがない。そして,ペリカンややまあらしはそこを所有し,とらふずくや渡りがらすがそこに住む。彼は必ずその上に虚空の測りなわを張り,虚無の石[下げ振りの石]を下げられる。その貴人たち ― そこには彼らが王位につかせる者はだれもいない。その君たちさえも皆,無に帰する。その住まいの塔の上にはいばらが必ず生え上り,いらくさやとげのある雑草がその防備を施した所に生える。そこは必ずジャッカルの住みか,だちょうのための中庭となる。そして,水のない地域に出没するものが必ず,ほえる動物と共に会い,やぎの形をした悪鬼さえその仲間を呼び出す。然り,そこには確かによたかが住み,自分のために憩う所を見つける。そこには矢の蛇が巣を作り,卵を産む。それは必ず卵をかえし,その陰に集める。然り,そこにはとびもそれぞれ連れ合いと共に集まる」― イザヤ 34:9-15,新。

      4 (イ)一口に言って,そこで描写されているのはどんな状態のことですか。(ロ)その状態はいつまで続くことになっていましたか。

      4 これは「エデンの園」「楽しみのパラダイス」の描写どころではありません。それは完全な荒廃と廃墟の光景,つまり野獣や野鳥のための格好な場所ではあっても人間が住むには不適当な地域にほかなりません。こうしてエドムの地はあまりにも乾き切った所となるため,あたかも急流の谷は歴青を伴って流れ,その塵は硫黄で,しかもそれら可燃性の物質が燃え立たされてでもいるかのように見えます。エドムの地のこの乾き切った状態は「限りなく永久に」続き,その以前の住民やその子孫が復帰することはありません。エドムが象徴的な仕方で燃えて立ち上る「煙」は,大いなるバビロンの火のような滅びの際の「煙」のようになります。同バビロンについては,「彼女から出る煙はかぎりなく永久に上りつづける」と記されています。―啓示 19:3; 18:18。

      5 オバデヤ書 18節は今日の霊的イスラエル人の残りの者が現代のエドムに対する火のようなこの音信に関して何をすべきことを示していますか。

      5 このような預言をキリスト教世界の来たるべき滅びに当てはめる点で,霊的なイスラエル人の回復された残りの者は,神からのこうした「復讐」をキリスト教世界に対して宣言する使命を神から受けています。オバデヤの類似の預言が示す通りです。『ヤコブ[イスラエル]の家は火となりヨセフの家は火焔となりエサウの家はわらとならん すなはち彼らこれが上に燃えてこれをやかん エサウの家には遺る者一人もなきにいたるべし エホバこれを言ふなり』。(オバデヤ 18)霊的なイスラエル人の今日の残りの者は,現代のエドムであるキリスト教世界に対するこうした火のような音信を告げるので,なお一層同世界の憎しみを受けるのです。

      6 イザヤ書 34章16,17節の言葉遣いはどんな保証を表現していますか。

      6 「エドムの地」が野の鳥獣や蛇しか住まない荒れ果てた荒地にどのようにしてなるかを預言的な筆致で描写した後,預言者イザヤは,その預言を適中させる上でエホバは決して失敗なさらないことをわたしたちに保証し,聖書預言の研究者に対してこう語っています。「エホバの書を自分で調べて大声で読め。これらのもののうち何一つ失われてはいない。彼らはまさしくそれぞれ連れ合いを欠くことはない。それはエホバの口が命令を与え,その霊が彼らを集めたからである。そして,彼が彼らのためにくじを引き,そのみ手が測りなわによって場所を彼らに割り当てた。定めなき時まで彼らはそれを所有し,代々にわたってそこに住む」― イザヤ 34:16,17,新。

      7 詳しく言えば,イザヤ書 34章16,17節の言葉遣いは何を意味していますか。

      7 こうして,エドム人の男女が再び自分たちの元の土地で夫婦になってエドム人の世代を次々に生み出す代わりに,野の鳥獣がつがうことになります。雌が連れ合いを欠くことはありません。エホバ神はかつて人口の多かったエドムの地を今やそのような野生動物の格好な住みかにします。活動的な力の働くそのみ手がこの場所を彼らのために指定し,彼らをそこに集めました。エホバはあたかも建築家で,測りなわを張り,下げ振りを落として計り分け,「エドムの地」の状態という建物をまっすぐに建てているかのようです。エホバが測って物事を導くところによれば,それは人間に関する限り「虚空」の地,また人間が新たに建てる高い建物に関する限り「虚無」の地域と化すことになっていました。その地が「わたしにより公正をもって滅ぼし絶やされる民」であるエドム人の故国として再生することはありません。―イザヤ 34:5,11,新。

      8 (イ)それはキリスト教世界にとって何を予示するものですか。(ロ)このようなことがキリスト教世界に起きるのは,どれほど確かな事ですか。

      8 あの預言は現代の「エドムの地」すなわちキリスト教世界にとって,畏怖の念を引き起こす何という終わりを予示するものなのでしょう。キリスト教世界がその膨大な教会人口やその富,またその宗教建造物や宗教制度もろとも再興の希望もなくそうした終わりを迎えるなどと考えると,宗教家たちは恐怖に襲われるかもしれません。しかし,その預言は今では絶滅したエドムの民の上に確かに縮図的な成就を見たのと全く同様,エドム人的なキリスト教世界の上に最終的な完全で主要な成就を確かに見ることになります。というのは,大いなるバビロンの滅びに関して,「エホバ神,彼女を裁いたかたは強いからである」と言われている通りなのです。―啓示 18:8。

      9,10 その預言の結びで,オバデヤは霊的なイスラエルの回復した残りの者のためのどんな見通しを予告していますか。

      9 霊的なイスラエル人の回復された残りの者の事情は見通しの点で何と異なっているのでしょう!「エサウの山」に関するオバデヤの預言はイザヤの預言の型に従って,バビロンに追放されたイスラエル人を見て喜んだエドム人と当のイスラエル人の物事の結末を対比させています。預言者オバデヤは友愛の情の薄い意地の悪いエドム人に臨む神からの処罰を述べるのをやめて,その預言をこう結んでいます。

      10 『シオン山には救はるゝ者どもをりてその山聖所とならん またヤコブ[イスラエル]の家はその産業を獲ん……然る時に救ひ者シオンの山に上りてエサウの山をさばかん しかして国はエホバに帰すべし』― オバデヤ 17-21。

      11 (イ)「救ひ者」が上る「シオンの山」とは何ですか。(ロ)霊的な状態の相違によって霊的なパラダイスの美しさはどのように強調されていますか。

      11 天のシオンの山の上ではエホバは詩篇 2篇5,6節の成就として,ダビデ王家のご自分のメシアなる王すなわちイエス・キリストを即位させます。その天のシオン山上で救い主,神の子羊は14万4,000人の霊的なイスラエル人をご自分のもとに集め,ご自身と共に千年間統治を行なわせます。(啓示 14:1-3; 7:4-8)現代の「エサウの山」「エドムの地」すなわちキリスト教世界に対してエホバの裁きの音信を今宣明しているのは,14万4,000人の霊的なイスラエル人のなお地上にいる油そそがれた残りの者です。エホバの裁きを告げ,エホバの復讐と応報が対型的なエドム人に執行されることを予告する者として,それら残りの者は,西暦1919年以来エホバによって導き入れられた麗しい霊的なパラダイスを一層正しく評価しています。―イザヤ 35:1-10,新。

      キリスト教世界とユダヤ教の終わり

      12 キリスト教世界とユダヤ教の終わりがどのようにして起きるかを聖書はどこで述べていますか。

      12 今日,およそ10億人の教会員を擁して自慢しているキリスト教世界が,かつてエドムの地のために予言された荒廃状態に陥る時,それが人びとを大いに驚がくさせるのももっともなことです。そのようなおよそ信じ難い事がどうして生ずるのでしょうか。とりわけ,60年余の昔 ― 西暦1914年に異邦人の時の終わりを経験したこの世代のうちに,キリスト教世界とその親密な宗教上の提携者であるユダヤ教はどのようにして終わるのでしょうか。イザヤとオバデヤに霊感を与えてエドムに対する預言を記させたエホバ神は,そのことを述べる預言を霊感のもとに書き記させました。その預言は聖書巻末の書である啓示 17章にわたしたちのために明確に記されています。

      13 啓示 17章ではなぜキリスト教世界という名称は挙げられていませんか。しかし,重要なこととして,その章では何の名が挙げられていますか。

      13 キリスト教世界の擁護者はこのような考えに反対して,啓示 17章ではキリスト教世界という名称は全然挙げられていないと論ずるかもしれません。その通りです。というのは,使徒ヨハネが啓示と呼ばれる書を記した当時,キリスト教世界は存在しなかったからです。ローマの異教の宗教とキリスト教との妥協を図って合同宗教を作り出し,こうして適当な国教を制定しようと努める代わりに,使徒ヨハネの時代のローマ帝国は残忍な迫害によってキリスト教を撲滅しようとしていました。使徒ヨハネが流刑地,パトモス島で流刑の身となっていたのはそのためでした。(啓示 1:9)それで,キリスト教世界がコンスタンチヌス大帝によって確立されたのは,それから2世紀余の後でした。とは言え,当時すでに存在していたあるものが啓示 17章の主要な登場人物となっています。それは大いなるバビロンです。

      14 啓示の書の中では,どんな象徴的な二人の女が互いに対照をなしていますか。両者は何を表わしていますか。

      14 啓示の書の中では二人の象徴的な女が互いに対照をなしています。一方はこの大いなるバビロンで,他方は神の子羊の「妻」です。(啓示 19:1-8)一方の大いなるバビロンには「娼婦」という烙印が押されていますが,他方の「子羊の妻である花嫁」は処女です。(啓示 17:1-5; 21:9)両者とも宗教組織で,一方は汚れたもので,他方は清い組織です。「子羊の妻である花嫁」は,子羊イエス・キリストの14万4,000人の処女のような忠実な追随者の会衆で,そのすべては霊的なイスラエル人です。(啓示 7:4-8; 14:1-5)大いなるバビロンは,14万4,000人の霊的なイスラエル人の実践する真のキリスト教に反する宗教を奉ずる人たちで構成されています。使徒ヨハネが,「その女が聖なる者たちの血とイエスの証人たちの血に酔っているのを見た」のはそのためです。(啓示 17:6)ですから,大いなるバビロンの成員の宗教はキリストの教えに即してはおらず,バビロン的で,従って偽りの宗教です。―イザヤ 47:1,12-15。

      15 大いなるバビロンがその上に王権を行使している「地の王たち」とはだれのことですか。

      15 大いなるバビロンについては使徒ヨハネは,『あなたの見た女は,地の王たちの上に王国を持つ大いなる都市である』と説明されました。(啓示 17:18)こうして地の王たちの上に“女王”のように座しているゆえに,大いなるバビロンは偽りの宗教の世界帝国を表わしています。(啓示 18:7)この女は単にある特定の期間あるいは特定の世紀中,地の王たちの上にそのような帝王の王権を行使したのではなく,何千年にもわたって一連の世界強国(象徴的な「王」)の上にそうしてきたのです。西暦1914年における異邦人の時の終わりに至るまでにそうした七つの世界強国が相次ぎました。すなわちそれは,(1)古代エジプト帝国,(2)アッシリア帝国,(3)新バビロニア帝国,(4)メディア-ペルシャ帝国,(5)ギリシャ帝国,(6)ローマ帝国,そして(7)英米二重世界強国です。これは「娼婦」の乗った獣が七つの「頭」を持っているという事によって表わされています。

      16 「娼婦」の乗った「緋色の獣」の頭に関して,「ひとりはいまおり」と述べた時,み使いは何を意味していましたか。

      16 み使いはこの「緋色の野獣」の様々の部分の意味を述べて,ヨハネにこう言いました。「七つの頭は七つの山を表わしており,その上にこの女が座っている。そして七人の王がいる。五人はすでに倒れ,ひとりはいまおり,他のひとりはまだ到来していない。しかし到来したなら,少しの間とどまらなければならない」。(啓示 17:9,10)「ひとりはいまおり」という表現で,み使いは第六世界強国,クリスチャンの使徒ヨハネを囚人としてパトモス島に拘留したローマ帝国のことを指していました。

      17,18 キリスト教世界は最初からどのように大いなるバビロンの一部でしたか。

      17 西暦4世紀にこの第六世界強国は最高僧院長であるコンスタンチヌス大帝によってローマの異教の宗教と諸会衆の何百人かのいわゆる“司教”を擁する背教したキリスト教との合同を図りました。コンスタンチヌスは勅命によってその合同宗教を国教と定めました。こうして名目上の,つまり名ばかりのキリスト教がローマ帝国の国立の宗教となりました。このようにしてキリスト教世界が誕生しました。大いなるバビロンはローマ世界強国の上に王国を有していましたが,キリスト教世界はそのローマ世界強国の最も有力な宗教組織となることによって,大いなるバビロンの一部となりました。このような訳で,キリスト教世界は事実上大いなるバビロンの娘のような組織でした。同バビロンについてはこう言われています。

      18 「額には一つの名が書いてあった。それは秘義であって,『大いなるバビロン,娼婦たちと地の嫌悪すべきものとの母』というものであった」― 啓示 17:5。

      19 (イ)キリスト教世界の顕著な教義や慣行はどんな源に由来しますか。(ロ)キリスト教世界はその宗教上の母親に倣って,それ自体「娼婦」であることをどのように示してきましたか。

      19 従って,キリスト教世界の諸宗派の顕著な教義や慣行がメソポタミアのユーフラテス河畔の古代バビロンに由来する異教的,バビロン的なものであっても不思議ではありません。また,キリスト教世界がその宗教上の母親に倣っていても少しも不思議ではありません。その母親についてはこう言われているのです。「地の王たちは彼女と淫行を犯し,地に住む者たちは彼女の淫行のぶどう酒に酔わされた」。(啓示 17:1,2)霊的に言って,キリスト教世界は「娼婦」です。同世界はこの邪悪な世と親しい交友関係を持っているからです。その汚れた交友関係についてヤコブ 4章4節はこう述べています。「姦婦たちよ,あなたがたは世との交友が神との敵対であることを知らないのですか。したがって,だれでも世の友になろうとする者は,自分を神の敵としているのです」。教会と国家とが結合した,キリスト教世界の国立諸教会は,同世界に誉れをもたらしていません。かえって,同世界に霊的な淫婦,世の政治に干渉する者としての烙印を押しています。

      20 (イ)それで,キリスト教世界はその名称が挙げられてはいませんが,啓示 17章に含まれていると解すべきです。なぜですか。(ロ)同世界にはどんな将来かありますか。

      20 キリスト教世界が同世界を偽りの宗教のあの世界帝国の最も有力な部分としている教会員と共に大いなるバビロンの一部となっていることに何らかの疑問があるでしょうか。一つもありません! 従って,啓示 17章の中でキリスト教世界という名称が挙げられてはいなくても,同章には同世界が含まれていますし,またそう解すべきでしょう。であれば,「娼婦」大いなるバビロンに起きるものとして同章で描かれている事柄はまた,必ずキリスト教世界にも起きます。それで,啓示 17章はキリスト教世界がどのように滅ぼされるかを確かに示しています。また,そうであるに違いありません。大いなるバビロンのいかなる部分も滅びを免れられないからです。同バビロンが生み出した宗教的「娼婦たち」は彼女と共に必ず滅びます。それでは,今,「多くの水の上に座る大娼婦に対する[神からの]裁き」を考慮するに際し,不可分の関係を持って包含されているキリスト教世界を念頭に置かねばなりません。―啓示 17:1,5。

      第八世界強国の役割

      21 神の使いは「八人めの王」について使徒ヨハネに何と述べましたか。

      21 不思議に思った使徒ヨハネに神の使いはこう言いました。「わたしは,女と,その女を運んでいる,七つの頭と十本の角を持つ野獣の秘義をあなたに告げよう。あなたの見た野獣はかつていたが,いまはいない。しかし底知れぬ深みからまさに上ろうとしており,そして去って滅びに至ることになっている。こうして,その野獣がかつてはいたが,いまはおらず,のちに現われるようになるのを見る時,地に住む者たちは驚いて感心するであろう。しかし彼らの名は世の基が置かれて以来命の巻き物に書かれていない。……そして,かつていたがいまはいない野獣,それ自身は八人めの王でもあるが,[その七人]から出,去って滅びに至る」― 啓示 17:7-11。

      22 その「八人めの王」とは何ですか。それはどのようにして「その七人から出」てきますか。

      22 七つの頭と十本の角を持ったその象徴的な野獣は「八人めの王」すなわち第八世界強国を表わしています。この世界強国は西暦1914年に異邦人の時が終わった後,それも第一次世界大戦後存在するようになりました。現代の歴史はこの第八世界強国が世界の平和と安全のための国際機構であることを明らかにしています。この機構は1919年に作られ,1920年の初頭に実施されました。第七世界強国すなわち英米世界強国は世界の平和と安全のための同機構の作成に大きな責任を負いました。(啓示 13:11-15)同機構は「国際連盟」という名称で機能し始めました。同機構はそれ自身のうちに第七世界強国およびそれ以前の六つの世界強国の残存物すべてを合体させたという点で,それまでの七つの世界強国から出ました。

      23 (イ)その「野獣」はいつ『底知れぬ深みから上り』ましたか。どんな名称を得ましたか。(ロ)キリスト教世界とユダヤ教は国際連合のうちにどんな要素を持っていますか。

      23 西暦1939年,第二次世界大戦が勃発したため,国際連盟は死同然の無力な状態の底知れぬ所に陥りました。1945年の夏,第二次世界大戦の終結後,世界の平和と安全を守る務めを受けたこの第八世界強国は特に第七世界強国,つまり英国とアメリカで成る二重世界強国に助けられて,戦時下の底知れぬ所から上って来ました。そして,国際連合という新しい名称を帯びました。発足当初,その加盟国は51か国でしたが,今日では138か国になりました。キリスト教世界はこの世界的機構の加盟国となっている同世界の多数の国々によって国際連合のうちに相当の代表を持っています。世界中に1,444万3,925人の正当派および改革派のユダヤ人の成員を擁するユダヤ教は,1949年以来,イスラエル共和国によって国際連合内に代表を持っています。それで,大いなるバビロンはユダヤ教をも支配しています。

      24 大いなるバビロンはどのように「緋色の野獣」の上に乗りましたか。彼女はそれに乗った自分の立場をどのように見ていますか。

      24 七つの頭と十本の角を持つ緋色の野獣が国際連合という形を取って底知れぬ所から上って来た時,大いなるバビロンは「地の王たちの上に王国を持つ」「女王」としてその野獣の背に再び乗りました。彼女はエホバのクリスチャン証人によって世界中で告げ知らされていた神のメシアなる王国よりもむしろ,世界の平和と安全のための人間の作ったあの機構に信仰を持つことによってそのような行動を取りました。大戦後の時代に絶滅を免れるよう身を守るために,反キリストのこの機構に信頼したのです。あの象徴的な野獣にまたがった大いなるバビロンは自信ありげに,「『わたしは女王として座す,やもめなどではない,嘆きを見ることは決してない』と言いつづけて」います。(啓示 18:7)しかし,彼女は誤算しています!

      25 神の使いが使徒ヨハネに述べたところによると,娼婦のような偽りの宗教の世界帝国はどんな方法によって終わりを見ることになりますか。

      25 あの象徴的な緋色の野獣の十本の角は娼婦のような偽りの宗教の世界帝国を攻撃するよう定められています。神の使いは預言的な幻を見守っていた使徒ヨハネにこう言いました。「また,あなたが見た十本の角は十人の王を表わしている。彼らはまだ[ヨハネの時代には]王国を受けていないが,[平和と安全のための現代の世界的機構に加わることによって]一時のあいだ野獣とともに王としての権威を受けるのである。これらの者は一つの考えをいだき,それゆえに自分たちの力と権威を野獣[今日の国際連合]に与える。……あなたの見た水,娼婦が座っているところは,もろもろの民と群衆と国民と国語を表わしている。そして,あなたの見た十本の角,また野獣,これらは娼婦を憎み,荒れ廃れさせて裸にし,その肉を食いつくし,彼女を火で焼きつくすであろう。……そして,あなたの見た女は,地の王たちの上に王国を持つ大いなる都市[大いなるバビロン]なのである」― 啓示 17:12-18。

      26,27 (イ)政治支配者の態度がどのように変化する結果,そのような暴力的な処置が取られるようになることが分かりますか。(ロ)彼らが『彼女を火で焼く』のはどうして適切ですか。

      26 象徴的な十本の角(平和と安全のための世界的機構の加盟国)は,娼婦のような偽りの宗教の世界帝国に対する肉欲的な関心を失い,彼女を突き刺して殺します。実際,象徴的な野獣(今日の国際連合)全体は「大娼婦」大いなるバビロンとのみだらな関係から満足が得られなくなり,緋色の「野獣」の「七つの頭」の口は「その肉を食いつく」すことになります。「十本の角」と他のすべてのものを含め,その「野獣」のような機構全体にとって彼女はやつれ果てた娼婦,貪欲で利己的な仕方で使うにはもはや好ましくない女となります。現実的に言えば,世界的な危機に迫られて,国際連合の加盟国の政治支配者は,悪化の一途をたどる世界情勢を考慮に入れて抜け目なく考えるようになります。そして感傷を一切無視して,自分たちの政治上の諸制度や社会的・経済的機構を守るため徹底した非情な処置を講ぜざるを得なくなります。彼らは偽宗教の世界帝国がそのバビロン的な宗教上の信条や慣行や習慣のゆえに国際的な厄介もので,自分たちの緊急な諸活動の妨げであることを知るでしょう。

      27 大いなるバビロンが崇拝してきた神々や女神は,偽宗教の世界帝国を助けるためにやって来て,以前の多情な情夫たちの行動から彼女を救う訳ではありません。彼女の以前の愛人だった政治および軍事上の諸分子は,大いなるバビロンのそれら神々が無力で,偽宗教の世界帝国の司祭や礼拝堂付き牧師,一般僧職者や有力な僧職者が祈り求めても自分たちにとって何ら救いの力とはならないことに気付きます。それら政治および軍事上の分子は欺かれ,だまされ,ばかにされたことを感じ,世の宗教に対する敬意を失います。彼らは『娼婦を憎む』のに共産主義に変わる必要はありませんが,ただ急進的な態度を取り,偽善的な宗教組織を片付ける上で“神を信じない共産主義”と協力できるようになります。彼らは昔,ある娼婦たちに課せられた処置を彼女に講じます。つまり,「彼女を火で焼きつくす」でしょう。―創世 38:24。

      28 大いなるバビロンのすべてが荒廃させられる時,なぜキリスト教世界は免除されませんか。

      28 わたしたちはこれがバチカンとそのサン・ピエトロ-バシリカ大聖堂にとって,他の大聖堂・教会堂・イスラム教寺院・神殿・ユダヤ教礼拝堂・神社その他の宗教建造物にとって何を意味するかを想像できます! また,それら宗教建造物の中で印象的な祭服をまとって司式する僧職者を何が待ち受けているかをも想像できます。キリスト教世界はキリストの名において世界を前にして行進しているゆえに逃れられるなどと考えてはなりません。同世界もまた,その母である大いなるバビロン同様宗教的「娼婦」を演じてきたのです。同世界がこの世の政治および軍事上の分子との間で培い,維持してきた交友関係は期待はずれに終わります。同世界はこの世との不義の交友関係のゆえに自らが「神の敵」,またキリストの敵となっているのを知ってショックを受けます。(ヤコブ 4:4)1975年の聖年を祝ったからとて,エホバ神の前における同世界の状態は変わりません。キリスト教世界は古代エドムのために予告された虚空と虚無の状態に必ず陥れられます。―イザヤ 34:11-13。啓示 18:2,8と比べてください。

      29 (イ)ユダヤ教はどのようにして大いなるバビロンと提携してきましたか。(ロ)ユダヤ教の宿命を避けるためにそれから出て来た人がだれかいますか。

      29 ユダヤ教も大いなるバビロンの側に立ってきました。国際連合のユダヤ人・アラブ人・イスラム教徒・ヒンズー教徒・仏教徒・いわゆる“キリスト教徒”,共産主義者の加盟138か国の一つであるイスラエル共和国は,あの第八世界強国の乗り手,すなわち大いなるバビロンの傘下にあります。(啓示 17:3-6)西暦1世紀にはタルソスのサウロという名のユダヤ教のパリサイ人がユダヤ教から出て来て,またの名をパウロと呼ばれたクリスチャンの使徒となりました。(ガラテア 1:1,13-17。フィリピ 3:3-6)このタルソスのサウロとは異なって,割礼を受けた生来のユダヤ人の大多数は伝統的なユダヤ教を固守してきました。

      30 キリスト教世界とユダヤ教の両者は前途に何を控えていますか。一世紀の出来事はそれをどのように示していますか。

      30 西暦70年にユダヤ教の拠点エルサレムは,イエス・キリストの予告通り異教ローマ人によって滅ぼされました。(マタイ 24:1-3,15-22。ルカ 21:20-24)ローマ人によるエルサレムとその神殿のあの滅びおよびユダの地の荒廃は,今後の「大患難」に際し今やまさにキリスト教世界に臨もうとしている滅びと荒廃を示す預言的な予型となりました。ユダヤ教は西暦1世紀に取った立場ゆえに西暦70年に災厄を被りましたが,その時と同じ立場を固守しているゆえに,その対型であるキリスト教世界と同様の悲運に遭遇します。

      31 キリスト教世界やユダヤ教から離れて別個のものとして際立っている人びととはだれですか。それらの人は今でさえどんな状態を享受していますか。

      31 それで,大いなるバビロンがもはやない時代が近づいています! これはキリスト教世界やユダヤ教がもはやない時代が必ず到来することを意味しています! しかし,樹立された神のメシアによる王国を告げ知らせている人たち,すなわちエホバのクリスチャン証人についてはどうですか。彼らが今住んでいる霊的なパラダイスについてはどうですか。霊感を受けた聖書の預言的な言葉は,それら証人たちに彼らの期待すべき事を明らかにしています。―アモス 3:7。啓示 1:1-3。

  • 人間の古い秩序が神の新秩序に道を譲る時!
    世の苦難からの人間の救いは近い!
    • 14章

      人間の古い秩序が神の新秩序に道を譲る時!

      1,2 (イ)大いなるバビロンはどんな手先によって滅ぼされますか。(ロ)啓示 17章17節はあの緋色の「野獣」の「十本の角」について何と述べていますか。

      大娼婦」大いなるバビロンが差し迫った「大患難」に際して滅ぼされる時,人間の古い秩序の長年続いてきた部分は過ぎ去ります。偽宗教のあのバビロン的な世界帝国は以前の愛人たちによって滅ぼされます。つまり,その滅びは「緋色の野獣」すなわち世界平和と安全のための世界的機構の「七つの頭」にある象徴的な「十本の角」の手先によってもたらされます。大戦後のその機構は西暦1919年に作られ,最初国際連盟という名称のもとに機能しました。

      2 その象徴的な「野獣」に恐ろしい様相を帯びさせている「十本の角」に関して,啓示 17章17節はこう述べています。「神は,ご自分の考えを遂行することを彼らの心の中に入れたからである。すなわち,彼らの王国を野獣に与えて彼らの一つの考えを遂行し,神のことばの成し遂げられるに至ることである」。

      3 (イ)「十本の角」は何を象徴していますか。(ロ)政治諸国家間に存在する関係については,啓示 17章17節は何と述べていますか。

      3 1919年の講和会議により幾つかの新しい政治国家が創設されました。こうして,第一次世界大戦後には同大戦直前よりもさらに多くの象徴的な「角」が存在しました。それで,世のすべての政治国家間の関係はどうなるのであろうかという疑問が焦眉の問題となりました。(十という数は聖書では全体制を意味するものとして用いられている完全数なので,それら諸国家すべては「十本の角」で表わされていた。)この問題に関しては,「神は,ご自分の考えを遂行することを彼らの心の中に入れ」ました。そのような事をどのようにしてなし得たのでしょうか。

      4 政府について言えば,1914年には何が起こりましたか。

      4 さて,霊的なイスラエル人の従順な残りの者は1914年における異邦人の時の終わりを公に知らせていました。その年に,異邦人国家が神のメシアによる王国の干渉を受けずに世界を支配することを認めた神の許可が切れました。そして,メシアによる王国を天で,ダビデ王の永久相続者イエス・キリストの手に樹立することによって,ご自分の許可がそのように終わった旨表明されました。ダビデの王統のメシアによる王国は,2,520年前の西暦前607年に踏みにじられたように蹂りんされることは二度と再びありません。―ルカ 21:24。

      5 地上の政治諸強国に対しては,それら諸強国が自分たちの支配権を神の支配するメシアに引き渡すべき時が到来したことを知らせるどんな通告が伝えられましたか。

      5 霊的なイスラエル人の油そそがれた残りの者にとっては,1914年の荒れ狂う第一次世界大戦とそれに伴って起きた食糧不足や疫病は,同年の異邦人の時の終わりに神のメシアによる王国が天で完全に生まれ,完全に樹立されたことを確証する事柄でした。それで彼らは樹立された神の王国の良いたよりを宣べ伝えましたが,ついに戦時下の事情や激しい迫害のため彼らの業は事実上中止させられました。王国を宣べ伝えるこの業は,地の異邦人政治強国すべて,つまり象徴的な「十本の角」に対する通告の業でした。妨げられることなく世界を支配できるよう神が諸国家に与えた権限が尽きたことを諸国家は知らされました。神の宇宙主権を認め,天で即位した神のメシアに自分たちの支配権を引き渡すべき時が来たのです。

      6 神は異邦諸国家が行なう事柄に関する「ご自分の考え」をどのように既に明らかにしておられましたか。それはどんな考えでしたか。

      6 とは言え,象徴的な「十本の角」はそうしないことを神は考え抜き,予告しておられました。例えば,詩篇 2篇はこのことに関する神の考えを明らかに示して,地の異邦人の王や高官たちが一団となって神とその即位した王に逆らうことを述べています。(使徒 4:24-30と比べてください。)既にダニエル書 2章44節の中でも,神はご自分の宇宙主権に逆らう不変の抵抗者としての彼らすべての滅びを予告しておられました。今や神の考えは,「十本の角」で表わされる異邦諸国家を神が全創造物の前で滅ぼすのを正当なことと証明し得る特定の行動を諸国家にはっきりと取らせることでした。神の考えは,諸国家が糾合して一団となって一致した行動を取り,そのすべてを神が一度に滅ぼせるようにすることでした。これこそまさしく諸国家が行なったことでした。このような訳で,神が特定の行動を取ることによって,神の考えを行なおうとする意向を象徴的な「十本の角」の心に入れたことが分かります。

      7 (イ)「十本の角」はどのようにして自分たちの「王国を野獣に与え」ましたか。(ロ)彼らが「野獣」と共に権威を持つことになっている「一時」とはどんな期間ですか。

      7 その証拠として啓示 17章17節はさらに,「すなわち,彼らの王国を野獣に与えて彼らの一つの考えを遂行し」と述べています。それにしても,彼らは自分たちの王国を霊的なイスラエルの残りの者によって告げ知らされた神のメシアによる王国に与えはしませんでした。それどころか,象徴的な「野獣」,つまり当時国際連盟と呼ばれた世界平和と安全のための人間の作った機構に自分たちの王国を与えました。時たつにつれて,さらに多くの国家が連盟に加盟し,そのようにして自分たちの「王国」を連盟に与えました。そのようにして,彼らは「一時のあいだ野獣とともに王としての権威を受けるのである」と言えました。それら諸国家は一つの考えを持っており,またそれゆえに「自分たちの力と権威を野獣に与える」のです。(啓示 17:12,13)諸国家は「一時のあいだ野獣とともに王としての権威を受ける」ことになっているのですから,象徴的な「野獣」は比較的短期間,あたかも「一時」の間存在することになっています。これまでその「野獣」的機構は,新バビロニア世界強国の存続期間(西暦前607-539年)よりも少ないわずか55年間存在してきたにすぎません。

      8 予告された通り,「十本の角」はエホバ神の代理としてどんな仕事を成し遂げなければなりませんか。

      8 その象徴的な「十本の角」,世界平和と安全のための機構の加盟諸国は,エホバ神の代理として成し遂げるべき仕事を持っています。それは何ですか。それは大いなるバビロンによって象徴されている偽宗教の世界帝国を滅ぼすことです。神の使いは使徒ヨハネにこう述べます。「あなたの見た十本の角,また野獣,これらは娼婦を憎み,荒れ廃れさせて裸にし,その肉を食いつくし,彼女を火で焼きつくすであろう」― 啓示 17:16。

      9 現実に即した言い方をすれば,それは何を意味していますか。

      9 これはその時まで存在する,宗教と国家,また教会と国家間のいかなる密接な結合関係も解消されることを意味しています。依然存在している国民教会あるいは国教会は廃され,宗教団体の免税処置は中止されます。聖書を出版,頒布するキリスト教世界の諸協会さえも活動を禁止されるでしょう。キリスト教世界の教会の宣教師の仕事はやみ,軍隊や議会の付属牧師は解雇され,復活祭やクリスマス,ヨム・キプル(贖罪の日)や過ぎ越しの祝いは行なわれなくなります。非常な窮境に陥った政府は,略奪者が思いのままに力ずくで奪ったあとに残る,宗教制度の莫大な物質上の富を収用するでしょう。男女を問わずだれであれ,キリスト教世界の宗教団体の成員であることを示す独特の僧服を着ている者は,国家の敵もしくは危険人物として襲われたり逮捕されたりする羽目になるでしょう。多くの人びとにとってはなお驚くべき事と思えるかもしれませんが,キリスト教世界は永遠になくなってしまいます!

      10-12 (イ)滅ぼされるのはキリスト教世界だけですか。(ロ)イザヤ書 2章10-22節では,エホバの裁きの日は結果として人類にどんな影響を与えることが予告されていますか。

      10 大いなるバビロンの最も強力な部分であるキリスト教世界がそうなるのであれば,同世界外の十分堅固に守られている古来の他の宗教組織すべてについては何が考えられますか。大いなるバビロンはすべて地上から必ず消滅します! それは全能者なるエホバ神の予告された裁きの日に生じますが,その日についてはこう記されています。

      11 「あなたは岩の間にはいり,ちりの中にかくれて,〔エホバ〕の恐るべきみ前と,その威光の輝きとを避けよ。その日には目をあげて高ぶる者は低くせられ,おごる人はかがめられ,〔エホバ〕のみ高くあげられる。これは,万軍の〔エホバ〕の一日があって,すべて誇る者と高ぶる者,すべておのれを高くする者と得意な者とに臨むからである。……

      12 「こうして偶像はことごとく滅びうせる。主が立って地を脅かされるとき,人々は岩のほら穴にはいり,また地の穴にはいって,〔エホバ〕の恐るべきみ前と,その威光の輝きとを避ける。その日,人々は拝むためにみずから造ったしろがねの偶像と,こがねの偶像とを,もぐらもちと,こうもりに投げ与え,岩のほら穴や,がけの裂け目にはいり,主が立って地を脅かされるとき,〔エホバ〕の恐るべきみ前と,その威光の輝きとを避ける。あなたがたは鼻から息の出入りする人に,たよることをやめよ,このような者はなんの価値があろうか」― イザヤ 2:10-22,口語〔新〕。啓示 6:15-17と比べてください。

      13 (イ)その預言の中で示されているように,人びとはその時,宗教に関する事柄をどのように取り扱いますか。(ロ)世俗的な人びとはどこに逃れますか。イザヤはそのことをどんな言葉遣いで予告しましたか。

      13 人間の古い秩序に対するエホバのその裁きの日に,世俗的な人間は何を行なうでしょう。世界的に退廃してゆく状態に直面するため,宗教的な事柄に対する信仰を失って宗教的なものから離れ,それらを無益で無価値なものとして捨てるでしょう。そして,鼻を通して呼吸する空気に依存している人間以外の何ものでもない専門の宗教家を何ら価値のない者とみなします。今やそのような者に幻滅を感じさせられる人びとは,唯物主義的なものに専ら頼るようになります。そして,あらゆる世俗的な宗教を捨てて,非精神的で地的な組織に逃れ,それが山々やがけのように自分たちを守ってくれるものと考えて,そこに保護と救いを求めます。かつて,超人的な霊の領域と関係を持つ,神々のようにみなしていた宗教家にはもはや頼らなくなります。彼らが逃れる山のような組織の一つは,第「八」世界強国である国際連合です。「十本の角」を持つその象徴的な「野獣」は大いなるバビロンを滅ぼすからです。

      14 大いなるバビロンの滅びという形で表明されるのは,実際にはだれの裁きですか。これはその方の正しさを立証するのにどのように役立ちますか。

      14 大いなるバビロンを荒廃させ,裸にし,食い尽くして焼くのは,緋色の「野獣」の象徴的な「十本の角」が直接行なうことですが,それはやはりエホバ神からの裁きの執行の表われです。こうした見方と一致して,偽宗教の世界帝国について啓示 18章8節には,「そのために,彼女の災厄は一日のうちに来る。それは死と嘆きと飢きんであって,彼女は火で焼きつくされるであろう。エホバ神,彼女を裁いたかたは強いからである」と記されています。ですから,宗教上の「大娼婦」大いなるバビロンの支配下から人類を解放する誉れは,全能者なるエホバ神に帰されます。そして,エホバ神はバビロン的な偽宗教の世界帝国の創始者でもなければ,ましてやキリスト教世界の創始者ではないことが立証されるでしょう。

      大いなるバビロンの滅びを喜ぶ

      15-19 大いなるバビロンが滅ぼされる時,だれの間には喜びがありますか。使徒ヨハネはこのことについて何と書きましたか。

      15 大いなるバビロンにとって神の手から臨む災厄の一つは「嘆き」ですが,エホバ神とその清い崇拝の側にいる人たちは大いなる喜びを経験します。霊感を受けた使徒ヨハネはエホバの崇拝者の側のこの喜びを描写しています。「大いなる都市バビロンが投げ落とされ,二度と見いだされ」なくなる預言的な光景を見た後,使徒ヨハネはこう書いています。

      16 「これらのことののち,わたしは大群衆の上げる大きな声のようなものを天に聞いた。彼らは言った,『あなたがたはヤハを賛美せよ[ギリシャ語,ハレルヤ]! 救いと栄光と力はわたしたちの神のものである。その裁きは真実で義にかなっているからである。神は,その淫行によって地を腐敗させた大娼婦に裁きを執行し,ご自分の奴隷たちの血について報復をなし,それを彼女の手から要求された』。そしてすぐ,彼らは再びこう言った。『あなたがたはヤハを賛美せよ[ハレルヤ]! そして,彼女から出る煙はかぎりなく永久に上りつづけるのである』」。

      17 「すると,二十四人の長老と四つの生き物はひれ伏し,み座にすわっておられる神を崇拝して言った,『アーメン! あなたがたはヤハを賛美せよ[ハレルヤ]!』」。

      18 「また,声がみ座から出てこう言った。『神を恐れるそのすべての奴隷たちよ,小なる者も大なる者も,わたしたちの神を賛美せよ』」。

      19 「またわたしは,大群衆の声のような,多くの水の音のような,そして激しい雷の音のようなものを聞いた。彼らはこう言った。『あなたがたはヤハを賛美せよ[ハレルヤ!]。全能者なるわたしたちの神エホバは,王として支配を始められたからである』」― 啓示 19:1-6; 18:21-24。

      20 エホバをそのように賛美する事態はどこで起きますか。しかし,ほかにだれが加わりますか。

      20 エホバが予告された裁きを「大娼婦」に対して執行されたゆえにこのように賛美されている様はすべて,明らかに天で,それも聖なるみ使いたちの間で起きている事として表わされています。しかし,三度目のハレルヤという叫びが上がった後に天のみ座から聞こえてきた声はこう言いました。「神を恐れるそのすべての奴隷たちよ,小なる者も大なる者も,わたしたちの神を賛美せよ」。み座から出るこの命令には,「大娼婦」大いなるバビロンの滅びの後,地上になおとどまっている,ヤハ・エホバの「奴隷たち」のことが含まれています。それらの「奴隷たち」は,もっと前に天から出された神からの命令に服した人たちです。「わたしの民よ,彼女の罪にあずかることを望まず,彼女の災厄をともに受けることを望まないなら,彼女から出なさい。彼女の罪は重なり加わって天に達し,神は彼女の数々の不正な行為を思い出されたのである。彼女自身が返したとおりに彼女に返し,二倍を,つまり,彼女が行なったことの二倍を彼女に行ないなさい。彼女が混ぜ物を入れた杯に,二倍の混ぜ物を彼女のために入れなさい。彼女が自分に栄光を帰し,恥知らずのおごりのうちに暮らしたその分だけ,彼女に責め苦と嘆きを与えなさい」― 啓示 18:4-7。

      21 西暦1919年以来大いなるバビロンから出て来たのはだれですか。それで,彼らにはどんな優れた見込みがありますか。

      21 自分たちがエホバの「民」であることを証明するため,西暦1919年以来大いなるバビロンから出て来たのは,霊的なイスラエル人の残りの者と羊のような仲間の「大群衆」の両者を含む,エホバのクリスチャン証人です。彼らは「彼女の罪にあずかることを」望みませんでしたし,「彼女の災厄をともに受けること」も望みませんでした。従って,大いなるバビロンと共にその「死と嘆きと飢きん」の災厄にあずかって,もろともに「火で焼きつくされる」ことはありません。(啓示 18:8)それで,これらエホバの従順なクリスチャン証人は偽宗教のバビロン的な世界帝国の滅びを生き残ります。彼らはその滅びの証人となります。そして,「二十四人の長老」で象徴されている者たちを含め,天の大軍はあの「大娼婦」に対して聖なる復讐を行なわれたヤハ・エホバを賛美するのですから,生き残るそれらエホバのクリスチャン証人が歓喜して「ハレルヤ!」と叫ぶのは正当なことと言えるでしょう。しかし,それからどうなりますか。

      子羊に対する「十本の角」と「獣」の戦い

      22 (イ)大いなるバビロンの滅亡に次いで,どんな対決が起きますか。(ロ)エホバのクリスチャン証人はその時実際に何と対決しますか。

      22 それから,その時地上に残っている者たちの間の対決があります。七つの頭と十本の角のある緋色の野獣と,その獣のことでなおも『驚いて感心している』地の住民は,論争の一方の側に立ちます。生き残るエホバのクリスチャン証人は他方の側に立ちます。その緋色の野獣は,「これと戦いうる」者はいないと考える人びとによって崇拝されている,海から上った,七つの頭と十本の角のある野獣の単なる「像」にすぎません。ですから,それはエホバのクリスチャン証人が実際には,その像が作られたこの象徴的な「野獣」と対決するようになることを意味しています。海から上ったこの野獣は,人間の支配権を有する世界的な政治体制を象徴しました。その体制に悪魔サタンは「自分の力と座と大きな権威」を与えたのです。(啓示 13:1-8)全地にまたがるこの政治体制は,今では人類の「海」から上った野獣の「像」となっている国際的機構である現代の国際連合のうちに,同体制を代表する138か国を有しています。これこそエホバの証人がその時対決しなければならないものなのです!

      23 (イ)啓示 13章11-13節で予告されているように,『龍のごとくに話す』二本の角のある「野獣」とは何ですか。(ロ)国際連合はどんな「野獣」の「像」として言及されていますか。その政治的な「像」を作ることを提唱したのはだれですか。

      23 野獣の「像」のうちに成員国を持っているそれら国家集団の中には,以前の大英帝国(西暦1931年以降,英連邦として再編成された)と北アメリカ合衆国があります。英語を話すこれら二つの集団は世界の危機に際して一緒に行動してきたので,この二者は二重つまり英米世界強国,聖書預言の第七世界強国を構成しています。一般的に言って,この第七世界強国は象徴的な野獣と共に働き,その獣のような世界的政治体制の代弁者あるいは預言者として行動してきました。このような訳で,啓示 13章11-13節ではそれは,子羊の角のような二本の角を持って「地」から上って来る,龍のような口のある野獣として描かれているのです。この二本の角のある二重世界強国が今日の国際連合の加盟国となっているのも実にもっともな話です。というのは,「海」から上った「野獣」の政治的な「像」を作るよう提唱し,その企てを成し遂げたのはこの英米世界強国だったからです。―啓示 13:14,15。

      24 (イ)歴史の事実によれば,国際連盟,そして国際連合はどのようにして組織されることになりましたか。(ロ)国際連合は実際のところ,世俗的な政治家の側の何の表われですか。

      24 第一次世界大戦の苦悶の最中,当時の英国の首相ロイド・ジョージは,戦後に第二の世界大戦をはばむ手段として働く国際連盟を組織することを考え,戦時下の米大統領T・W・ウィルソンは同連盟設立のため懸命に働きました。同様に,二度目の世界大戦の末期の何か月間かに,二本の角のある「野獣」の他方の構成国である米国は,当時消滅していた国際連盟の後身を組織するよう図りました。1945年10月,世界平和と安全のためのこの改められた機構は国際連合として出現しました。それは実際には政治上の「野獣」の例の同じ「像」でしたが,新しい名称を帯びていました。それは1914年における異邦人の時の終わり以来,エホバのクリスチャン証人が告げ知らせ,推奨していた,神のメシアによる王国を無視する世俗的な政治家によって提唱され,実施されたのです。

      25 (イ)それで,啓示 17章の真の意義によれば,大いなるバビロンが滅ぼされた後,エホバのクリスチャン証人は何と対決しなければなりませんか。(ロ)それら証人たちが代表しているのはどんな政府ですか。

      25 前述の事柄に照らしてみると,啓示 17章が七つの頭と十本の角のある緋色の「野獣」についてうんぬんする場合,この象徴的な「像」の背後にある真の強国,すなわち海から上った野獣で象徴されている世界的な政治上の支配体制のことを考えなければなりません。地から上った,二本の角のある野獣,すなわち英米二重世界強国は,海の獣によって表わされているより大きな政治体制の支配的な部分です。従って,象徴的な「像」の成員国である諸国家が宗教上の大いなるバビロンを滅ぼした後,エホバのクリスチャン証人が対決しなければならないのは非宗教的な政治政府のその世界的体制です。それら証人たちは人類の世に対する唯一正当な支配権を有するものとしての神のメシアによる王国をなおもしっかり支持して行きます。それこそ彼らの代表している天の政府です。事実,霊的なイスラエル人の油そそがれた残りの者は,メシアによる政府の「大使」なのです。―コリント第二 5:20。エフェソス 6:20。

      26 (イ)大いなるバビロンが滅ぼされた後にも残る唯一の「宗教」とはどんな宗教ですか。(ロ)その宗教は世の政治問題に関係することに対してどんな態度を取るよう人に影響を与えますか。なぜですか。

      26 イエス・キリストの予言した「大患難」の第一部は,宗教上の大いなるバビロンの滅びをもって終わります。(マタイ 24:21,22。ダニエル 12:1をも見てください。)今や地上では重大な時期が到来します。生き残るエホバのクリスチャン証人たちだけが,天地の創造者なる生ける唯一真の神の崇拝者として立っています。彼らの崇拝の方式は,その時存在する政治政府が一掃し得なかった唯一の「宗教」となるのです。それもそのはずです。なぜなら,それこそ「わたしたちの父なる神から見て汚点や欠点のないような宗教」だからです。(ヤコブ 1:27,新英語聖書)この「ような宗教」が地上からぬぐい去られない限り,不敬虔な諸国家は不満をかこちます。この「ような宗教」こそ,新たな政治機構と合体したり,自らを「世のもの」としたりしないよう,生き残るエホバのクリスチャン証人を守ってきたものなのです。(ヨハネ 15:19; 17:14,16)それら証人たちは終始一貫して,いと高き全能の神エホバの宇宙主権を支持します。

      27 (イ)その時,どんな問題が結着を要しますか。(ロ)諸国家は一致結束してエホバのメシアによる王国に反対していることをどのようにして示しますか。

      27 対抗関係なしに地を支配すべきなのはだれかという激烈な問題が今や発火点に達します。反宗教的な諸国家は全地に対する支配権を神のメシアによる王国に引き継がせまいと決意します。諸国家は全地を自分たちの領土であると主張しているのです。そして,国際連合機構の代理者による場合のように一致結束して,子羊イエス・キリストの手中にある,主権者なる主エホバのメシアによる王国に対する一か八かの反対を表明します。1914年における「異邦人の時」の終わりは諸国家にとっては何の意味もありません。国々は逃げ去ることを拒み,神の即位したメシアなる王である子羊に自分たちの国家主権を引き渡すのを拒みます。戦いを交えずに屈服することは決してしません。そうした必死の戦いのゆえに,核兵器を備えた諸国家は自分たちの戦力が頂点に達したことを感じます。ゆえに今度は,最後の決戦となります!

      28 啓示 17章12-14節にあるように,これらの事柄がどのように説明されているかを述べなさい。

      28 この世紀の戦いについて啓示 17章12-14節はこう述べています。「あなたが見た十本の角は十人の王[地上の政治強国すべて]を表わしている。彼らは[使徒ヨハネの時代には]まだ[国際連盟や国際連合に加わって]王国を受けていないが,一時のあいだ野獣とともに王としての権威を受けるのである。これらの者は一つの考えをいだき,それゆえに自分たちの力と権威を野獣[平和と安全のための世界的機構]に与える。これらの者は子羊と戦うであろう。しかし子羊は,主の主,王の王であるので,彼らを征服する。また,召され,選ばれた忠実な者たちも彼とともに征服する」。

      29 政治支配者たちは子羊イエス・キリストと直接戦おうとしてもキリストを見ることができるでしょうか。使徒パウロはそのことをどのように示していますか。

      29 使徒パウロは仲間の宣教者テモテに手紙を書き送り,かつて犠牲にされましたが今では栄光を受けた状態にある神の子羊について述べ,こう言っています。「すべてのものを生かしておられる神,また,証人としてポンテオ・ピラト[ユダヤのローマ人知事]の前でりっぱに公の宣言をされたキリスト・イエスのみまえであなたに命じます。わたしたちの主イエス・キリストの顕現の時まで,汚点のない,またとがめられるところのないしかたでおきてを守りなさい。その顕現は,幸福な唯一の大能者がその定めの時に示されるのです。彼は王として支配する者たちの王,主として支配する者たちの主であり,[それら主や王たちすべての中で]ただひとり不滅性を持ち,近づきがたい光の中に住み,[栄光を受けた不滅の状態にあるので]人はだれも見たことがなく,また見ることのできないかたです」。(テモテ第一 6:13-16)従って,「野獣」である国際連合の象徴的な「十本の角」は世界支配の問題で直接子羊イエス・キリストと戦おうとしてもキリストを見ることはできません。

      30 では,「十人の王」は彼らの攻撃をだれに向けますか。

      30 しかし,その「十人の王」が行なう戦いは,王なる子羊イエス・キリストの見える地上の代表者たちに向けられます。それは霊的なイスラエル人の油そそがれた残りの者と,「王国のこの良いたより」を告げ知らせる献身した人たちの「大群衆」を含むエホバのクリスチャン証人です。(マタイ 24:14)それら証人たちは世界的汚染や諸国家の苦難にもめげず,生活の中で神の霊の実すべてを生むと共に神の恵みと保護と清い崇拝にあずかる霊的なパラダイスを享受してゆきます。

      31 諸国家はイエスの忠実な弟子たちを攻撃する際,だれと戦うことになりますか。

      31 彼らの励みとなるよう,子羊イエス・キリストは「事物の体制の終結」に関するその預言の中で,ある事柄を述べました。それはつまり,「これらわたしの[霊的な]兄弟のうち最も小さな者のひとり」に対してなされた事は皆,直接王なるイエスに対してなされたも同然であるということです。(マタイ 24:3; 25:40)わたしたちが実際にその「事物の体制の終結」の時期にいる今,この規則は依然として当てはまります。それで,イエス・キリストの忠実な弟子たちを絶滅させようとして戦う際,諸国家は栄光を受けた神の子羊と戦うことになります。ゆえにエホバのクリスチャン証人は,基本的に言ってその戦いは証人たちではなく,神とその子羊に対する戦いであることを正しく評価します。

      「マゴグの地のゴグ」の指揮下で戦う

      32 (イ)その最終的な戦いが起きる時,真の崇拝者たちの年来のどんな敵は見当たりませんか。(ロ)それにしても,「十本の角」をかり立てて戦わせるのはだれですか。

      32 霊的なイスラエル人の油そそがれた残りの者と,りっぱな羊飼いの「ほかの羊」の「大群衆」を構成するその忠節な仲間に対するこの最終的な戦いの際には,以前彼らを攻撃したある者が見当りません。それは偽宗教の世界帝国である大いなるバビロンです。過去においては同帝国はその手先として“国家権力”を用いて,イエス・キリストの足跡に従うエホバの「聖なる者たち」に対する激しい霊的な戦いを行ないました。使徒ヨハネは次のように記して彼女の犯罪記録を聖書の中に残しました。「わたしは,その女が聖なる者たちの血とイエスの証人たちの血に酔っているのを見た」。(啓示 17:6)しかし今度は,彼女は「十本の角」によって滅ぼされたので,緋色の「野獣」に乗って何らかの点で影響を及ぼすことはありません。それにしても,地上に生き残っている忠実な弟子たちによって代表される子羊と戦うよう,「十本の角」をせき立てる力があります。その見えない超人的力は悪魔サタンです。―啓示 13:1,2。

      33 (イ)悪魔サタンはその時もなおどんな立場を保っていますか。(ロ)地上のエホバの崇拝者に対してなされる戦いは実際には悪魔のせいであることを聖書はどのように示していますか。

      33 宗教上の大いなるバビロンが滅びるからと言って,悪魔サタンがイエスから呼ばれた「この世の支配者」,あるいは使徒パウロから呼ばれた「この事物の体制の神」の立場から退けられる訳ではありません。(ヨハネ 12:31; 14:30; 16:11。コリント第二 4:4。啓示 13:3,4)悪魔崇拝を推し進めた大いなるバビロンが滅ぼされた後,地上のエホバの崇拝者であるクリスチャンに対する悪魔の怒りはそれまで以上に激しくなります。悪魔は天から放逐されて以来ずっと彼らに対して行なって来た戦いを激化させます。その戦いについては次のような言葉で預言的に伝えられています。「龍は女[メシアによる王国を生み出した,神の天的組織]に向かって憤り,彼女の胤のうちの残っている者たち,すなわち,神のおきてを守り,イエスについての証しの業を持つ者たちと戦うために出て行った」― 啓示 12:17。

      34 ハルマゲドンで神に対する戦いを推し進めるのは悪魔とその政治体制であることを啓示 16章12-16節はどのように示していますか。

      34 ゆえに今や,ハルマゲドンと呼ばれる世界情勢のあの段階で「全能者なる神の大いなる日の戦争」の勃発する時が訪れます。サタンが世の諸国家をその最後の戦いに駆り立てる様は啓示 16章12-16節に示されています。そこで使徒ヨハネはこう書いています。「わたしは,かえるのように見える三つの汚れた霊感の表現が,龍[悪魔サタン]の口から,野獣の口から,偽預言者[野獣の政治的『像』を作ることを提唱し,促進させた者たち]の口から出るのを見た。それらは実は悪霊の霊感による表現であってしるしを行ない,また人の住む全地の王たちのもとに出て行く。全能者なる神の大いなる日の戦争に彼らを集めるためである。……そして,それらは王たちを,ヘブライ語でハルマゲドンと呼ばれる場所に集めた」。それで,世界的な政治体制と英米世界強国は龍と共に働いて,ハルマゲドンにおける神との総力戦を推し進めます。

      35 (イ)大いなるバビロンが滅ぼされた後の出来事の中で悪魔が演ずる役割は,どんな預言の中で述べられていますか。(ロ)そこで「ゴグ」として述べられているのはだれですか。「マゴグの地」とは何ですか。

      35 放逐された悪魔が大いなるバビロンの滅亡後,彼の地上の見える組織の残っているものを集めて神の子羊と戦わせる点で演ずる役割は,エゼキエル書 38章1節から39章16節までの預言の中で鮮やかに描かれています。その預言の中では,地の近辺に放逐された悪魔サタンは「マゴグの地のゴグ」と呼ばれています。その地は遠い北方,「北の果」に位置する場所として描写されています。それは神の恵みから遠く退けられた卑しめられた状態,つまり完全な無活動の底知れぬ所に投げ込まれる前の短期間,悪魔サタンとその悪霊たちが拘束されているこの地の近辺を表わしています。(エゼキエル 38:6,15; 39:2,口語。啓示 20:1-3)マゴグの地の象徴的なゴグとして悪魔サタンは,北と南から,またかつてユーフラテス河畔に立っていたバビロンの東のペルシャからも大いなる軍勢を集める様が描かれています。

      36,37 (イ)ゴグの攻撃はいつ起きますか。(ロ)エゼキエル書 38章8,9節で述べられているように,ゴグが攻撃をしかける「地」とは何ですか。

      36 マゴグの地のゴグとしての悪魔サタンによる攻撃が行なわれる時はエホバ神によって定められており,それは「終りの年」「終りの日」に起こることになっています。(エゼキエル 38:8,16,口語)これは悪魔の地上の見える組織の終わりに近い時代を意味しています。従って,その攻撃は霊的なイスラエルの悔い改めた残りの者がエホバの恵みにあずかる正当な霊的状態に回復された後,相当の期間がたってから行なわれるものと考えられます。それは霊的なイスラエル人が神の力によって大いなるバビロンへの捕らわれから解放され,自由に王国奉仕を行なえる状態に復帰した西暦1919年の何年も後のことを意味します。別名マゴグの地のゴグと呼ばれる悪魔サタンに対して次のように述べた神は,中東のイスラエル共和国ではなく,クリスチャンである「神のイスラエル」の回復された霊的な状態のことを指しておられたのです。

      37 「多くの日の後,あなたは集められ,終りの年にあなたは戦いから回復された地,すなわち多くの民の中から,人々が集められた地に向かい,久しく荒れすたれたイスラエルの山々に向かって進む。その人々は国々から導き出されて,みな安らかに住んでいる。あなたはそのすべての軍隊および多くの民を率いて上り,暴風のように進み,雲のように地をおおう」― エゼキエル 38:8,9,口語。

      38,39 (イ)霊的なイスラエルの残りの者に対するこのような攻撃が起きるのはどういう訳ですか。(ロ)この時代における神の民の霊的な状態はエゼキエル書 38章10,11節でどのように描写されていますか。

      38 霊的なイスラエル人の回復された残りの者にこのような最後の攻撃がなされるのはどうしてでしょうか。それは神の祝福のもとで繁栄する地上の彼らの霊的状態がエホバ神の宇宙主権の正しさを示す世界的な証拠となるからです。それに加えて,彼らはこの世のものとはならず,世の紛争に対してはクリスチャンとしての厳正中立を保ちながら大胆に進出し,しかも自衛や保護の手段として恐ろしい兵器などにも頼っていないからです。それに彼らは,霊的なパラダイスの中でエホバの崇拝と活発な奉仕を楽しく行なっているのです。次のような言葉がゴグの口に上るのはそのためです。

      39 「わたしは無防備の村々の地に上り,穏やかにして安らかに住む民,すべて石がきもなく,貫の木も門もない地に住む者どもを攻めよう」― エゼキエル 38:10,11,口語。

      40 この預言の次の節には,地上のエホバの崇拝者がその時霊的なパラダイスを享受していることをさらに示すどんな証拠が含まれていますか。

      40 回復された崇拝者たちが霊的なパラダイスの中にいることを証言して,エホバはマゴグの地のゴグにこう言います。「あなたは物を奪い,物をかすめ,いま人の住むようになっている荒れ跡を攻め,また国々から集まってきて,地の中央に住み,家畜と貨財とを持つ民を攻めようとする」。世の評者たちが侵入しようとするマゴグの地のゴグにこう尋ねるのはそのためです。「あなたは物を奪うために来たのか。物をかすめるために軍隊を集めたのか。あなたは金銀を持ち去り,家畜と貨財とを取りあげ,大いに物を奪おうとするのか」― エゼキエル 38:12,13,口語。

      41 このような国際的攻撃を招くのは霊的なパラダイスの住民の物質上の富ではありません。なぜですか。

      41 霊的なイスラエル人の回復された残りの者と霊的なパラダイスの仲間の住民の「大群衆」は,大いなるバビロンが何世紀にもわたって蓄積してきた物質上の膨大な富や資産と比べられる物質的な富を持ってはいません。彼らはイエス・キリストの助言に従って,この唯物主義的な世の物質上の財産よりもむしろ,第一に神の王国と神の義を求めてきました。(マタイ 6:33)では,地的財産という点で,現代のマゴグの地のゴグの見えぬ指揮下にある軍隊によるそのような国際的攻撃を招来するどんなものを持っているのでしょうか。

      42 (イ)エホバのクリスチャン証人の霊的なパラダイスは実際には何を示していますか。それはどうしてですか。(ロ)世の諸国家はこのことで何を行なう覚悟でいますか。

      42 物質上の富ではなく,エホバのクリスチャン証人の霊的なパラダイスによって表わされているものこそ,大いなるバビロンが灰じんに帰した後,悪魔サタンの見える地的な組織による世界的な侵攻を招くものとなります。エホバ神が地上に設けられた,彼らの霊的なパラダイスは,全地に対する主権を行使する正当な資格が神にあることを示しています。しかし,地に対する主権こそ世の諸国家がその権利を主張しているもので,国際連合の各加盟国は今なお自国の国家主権を固執し続けています。霊的なパラダイスの住民は「新しい地」つまり新しい地的社会の基を構成します。従って,現代のマゴグのゴグの指揮下の世の諸国家は「新しい地」のその基をはぎ取り,そうすることによって自己の利己的益のために,主権者なる主エホバから独立した古い地的社会を存続させたいと考えています。これを成し遂げることは自己統治を主張する諸国家にとって金銀や物質上の富や資産以上のものを意味します。

      43 (イ)ゴグの大軍の侵攻はエホバのクリスチャン証人の用いている法人団体やその所有する資産にどんな影響を及ぼし得ると考えられますか。(ロ)これはエホバのクリスチャン証人が存在しなくなることを意味していますか。

      43 大いなるバビロンが滅びた後にゴグの大軍が「イスラエルの地」に入ることがエホバのクリスチャン証人にとって何を意味するかは,その時の地上の出来事が雄弁に物語るでしょう。もし,ペンシルバニア州のものみの塔聖書冊子協会の九十七の支部が閉鎖され,その資産が反宗教的政府により収用されても驚くには及びません。霊的教導を受ける場所として地球上の至る所でエホバのクリスチャン証人の建てた何千軒もの王国会館がどうなるかは,将来分かるでしょう。エホバの証人が聖書や聖書文書の印刷・頒布を遂行する機関として用いている各種法人団体の設立許可書や登録証を発行した政府がその時,こうした法人団体を許可もしくは認可するとはまず期待できないでしょう。無論,敵意を抱く政府機関と言えども全世界のエホバのクリスチャン証人を解体させることはできません。と言うのは,証人たちはいかなる土地でも人間の作った「カエサル」の法律のもとで法人化されているのではないからです。

      44 政府機関と言えども「忠実で思慮深い奴隷」やその統治体を解体できるものではありません。なぜですか。

      44 同様に,現代のマゴグのゴグの指揮下の国や州の政府は,統治中の王イエス・キリストにより信頼できるものであることを知られ,キリストの地上の「すべての持ち物」をつかさどるよう立てられた「忠実で思慮深い奴隷」の団体を解体することはできません。そうすることはできません。と言うのは,この集合的な「奴隷」は世界のいかなる政府機関の法律のもとでも決して法人化されたことはないからです。(マタイ 24:45-47。ルカ 12:42-44)この「奴隷」級は王なる主人イエス・キリストによって組織された西暦1世紀以来存在し,この時代に至るまで主の奉仕に活発に携わり続けており,「カエサル」やマゴグの地のゴグではなく,主人に対して責任を負っています。このことはまた,油そそがれた「忠実で思慮深い奴隷」級の,聖書に基づく統治体についても当てはまります。象徴的な「野獣」の政治機関はペンシルバニアのものみの塔聖書冊子協会の法人組織やその理事会,また各地のエホバのクリスチャン証人の他の法人団体を解体させるかもしれません。しかし,「忠実で思慮深い奴隷」級を代表する統治体の神権的な任命を解消もしくは無効にすることはできません。

      45 エホバのクリスチャン証人にとって地下活動を遂行するのは何か目新しいことでしょうか。

      45 エホバのクリスチャン証人にとって自分たちの霊的活動を遂行するため地下に潜ることは目新しい経験ではありません。西暦1世紀には一般の歴史によれば,忠実なクリスチャンは残忍な迫害の最中,ローマ帝国内の地下埋葬場で一緒に集まりました。この二十世紀でも,エホバのクリスチャン証人は禁令や追放にもめげず,首尾よく地下組織を維持して,弟子を作る活動を遂行してきました。

      46 (イ)たとえ地下に追いやられても,エホバの民は互いのことを考えて何をしますか。(ロ)マゴグのゴグによるそのような攻撃は霊的なパラダイスを滅ぼすことになりますか。

      46 これまでの何十年もの間,共産主義諸国を覆ういわゆる鉄のカーテンの背後でも,証人たちは神への崇拝と奉仕を続行してきました。たとえ,マゴグのゴグの大軍が侵攻する際,世界的に地下活動を余儀なくされようとも,証人たちは組織を保ってゆきます。互いに連絡を保つよう努力します。エホバの仲間の崇拝者たちから身体的に引き離される場合は特に互いのために祈ります。そして,霊的なパラダイスのうちにあって引き続き歓喜します。マゴグのゴグの手で激しい迫害を被ろうと,神からの恵みや是認や祝福を失っている訳ではないことを知っているからです。彼らの霊的な特質はかつてなかったほどに一層明るく輝きますし,単に体を殺し得ても,その後はエホバ神への忠誠を守る忠実なクリスチャンに対してそれ以上何もできない人間のために自分たちの霊的な命を消滅させるようなことは許しません。―ルカ 12:4。マタイ 10:28。

      47 エゼキエルを通して与えられた預言は,マゴグのゴグの指揮下で実際に侵攻が行なわれることをどのように示していますか。

      47 現代のマゴグのゴグの配下の大軍が一体どれほど深く侵入するのを全能者なるエホバ神が許されるかについては,注意を喚起されているエホバの証人は待機して見守らなければなりません。エゼキエルを通して与えられた預言は,侵攻がなされることを示しています。「〔主権者なる主エホバ〕は言われる,その日,すなわちゴグがイスラエルの地に攻め入る日に,わが怒りは現れる。わたしは,わがねたみと,燃えたつ怒りとをもって言う。その日には必ずイスラエルの地に,大いなる震動があり,海の魚,空の鳥,野の獣,すべての地の這うもの,地のおもてにあるすべての人は,わが前に打ち震える。また山々はくずれ,がけは落ち,すべての石がきは地に倒れる」― エゼキエル 38:18-20,口語〔新〕。

      48 マゴグのゴグの軍勢による攻撃を受ける時,エホバのクリスチャン証人はどのように反応しますか。それはなぜですか。

      48 マゴグのゴグの「軍勢」による激しい攻撃を受けるとは言え,エホバのクリスチャン証人はその愛のうちに,その是認のもとにありますから,霊的に安全です。預言によれば,「穏やかにして安らかに住」み,「すべて石がきもなく,貫の木も門もない」状態ですから,主権者なる主エホバのそれら崇拝者たちは,マゴグのゴグの重装備を持つ軍勢に激しく抵抗して手を挙げたりはしません。神にその保護の力を行使して守っていただきます。彼らはエホバの崇拝者たちが同様の侵入を受ける窮境に迫られて預言者が述べた次のような言葉を思い起こし,その言葉に信仰を抱きます。『この大衆のためにおそるゝなかれ 慄くなかれ 汝らの戦ひにあらず エホバの戦ひなればなり』。(歴代下 20:15)全能の神に信頼することは見当違いとはなりません。神はそれをご自分の戦いとします。その戦いは実際,証人たちに対するものではなく,彼らの神であるその方に対する戦いだからです。今や神は本当に怒り,その怒りを表わすのは全く正当なこととなります!

      49 (イ)聖書の中でハルマゲドンと呼ばれているあの「場所」は何を意味していますか。(ロ)ご予定の時に,エホバはだれを用いて地上の敵に対するその戦いを遂行なさいますか。

      49 今や「全能者なる神の大いなる日」が到来し,エホバの宇宙主権の正しさを立証するその日を印づける「戦争」の時となります。ヘブライ語でハルマゲドンと呼ばれる,あの比喩的な「場所」,全能者なる神とゴグの勢力との間の敵意が爆発しそうになるあの段階に達するのです。(啓示 16:14,16)地上のエホバのクリスチャン証人ではなく,エホバが,今や戦闘隊形を整えた地上の敵に対して戦いを開始されます。エホバはその大元帥,戦士である王イエス・キリストに合図なさいます。イエスとその天の軍勢はその合図に従って直ちに行動を起こし,エホバの名において,あたかも軍馬にまたがってでもいるかのように戦闘に突入します。続いて起こる,宇宙的重要性を持つ戦い,および現代のマゴグのゴグ配下の軍勢の世界的な戦列に何が起きるかは,霊感を受けた聖書巻末の書の中でわたしたちのために描かれています。

      ハルマゲドンにおける戦い

      50 ハルマゲドンにおける戦いに関する事前の報告の中で,使徒ヨハネは義の側に立って戦う者たちのことをどのように描写していますか。

      50 その戦場は象徴的にハルマゲドンと呼ばれています。時は,象徴的な「十本の角,また野獣」によって大いなるバビロンが火のような滅びを被った後と考えられます。(啓示 17:16から19:9)新聞やニュース雑誌の従軍記者のように使徒ヨハネはハルマゲドンにおけるその戦いに関する事前の報告を寄せて,こう書いています。「また,わたしは天が開かれているのを見た。すると,見よ,白い馬がいた。そして,それに乗っている者は忠実かつ真実と称えられ,その者は義をもって裁きまた戦う。彼の目は火の炎であり,頭には多くの王冠がある。彼には記された名があるが,彼自身のほかはだれもそれを知らない。そして,彼は血のかかった外衣で身を装っており,その称えられる名は神のことばである。また,天にある軍勢が白い馬に乗って彼のあとに従っていたが,彼らは白くて清い上等の亜麻布をまとっていた。そして彼の口からは鋭くて長い剣が突き出ている。それによって諸国民を打つためである。また彼は,鉄の杖で彼らを牧する。また,全能者なる神の憤りの怒りの酒ぶねも踏む。そして,彼の外衣に,実にそのもものところに,王の王また主の主と書かれた名がある」― 啓示 19:11-16。

      51 (イ)その時,地上にいるエホバの証人はなぜ大きな信仰を必要としますか。(ロ)王の王の口から突き出る「鋭くて長い剣」とは何ですか。

      51 王の王の指揮下のそれら「天にある軍勢」はその姿を戦列を整えた地上の諸国家に見せはしません。それで,他を害さない無防備のエホバの証人にとって,非常な窮境の際にそれら天の軍勢の救助を受けられるということを信ずるには信仰が要ります。しかし,それら目に見えない軍勢はその戦闘活動を,悪魔サタンであるマゴグのゴグの指揮下の諸国家すべてに痛感させます。王の王は「鉄の杖で」諸国民を「牧する」ので,彼らは陶器師の陶器のように粉砕される時,その威力を思い知らされます。彼は神のことばです。ですから,その口から突き出る「鋭くて長い剣」とは,諸国民に対して刑を執行するために口から出る裁きの言葉です。彼の口の述べる事は諸国民に対して執行され,彼らは打たれて死にます。

      52 (イ)諸国民の経験することはどうして酒ぶねの中のぶどうのそれに似ていますか。(ロ)聖書によれば,エホバの憤りは何によって表わされますか。

      52 王の王が『全能者なる神の憤りの怒りの酒ぶねをも踏む』以上,これは諸国民がいわばつぶされることを意味しています。その光景にふさわしく,彼らは途方もなく大きな「酒ぶね」に熟したぶどうのように投げ込まれ,「全能者なる神の憤りの怒り」がそこに投じられて彼らを押しつぶすような影響をもたらします。また,王の王と,馬にまたがったその天の軍勢はつぶす仕事,その象徴的な酒ぶねを踏むことに加わります。酒ぶねを踏む時に出現する象徴的な情景は,全能者なるエホバ神があたかも地震や疫病,はんらんを引き起こす豪雨や雹,火や硫黄,それに多大の流血をもってするようにマゴグのゴグの大軍に対してご自分の憤りや火のような怒りを表わすと言われたことと合致します。―エゼキエル 38:18-22。ヨエル 3:9-16や啓示 14:18-20と比べてください。

      53,54 (イ)ハルマゲドンにおける宇宙的な戦いにおける勝者はだれであることが明らかですか。(ロ)戦いが終わる前でさえ,「中天を飛ぶすべての鳥」に対してどんな招きが差し伸べられていますか。

      53 霊的なマゴグのゴグの配下で戦闘隊形を整える多国連合軍は,いと高き全能の神エホバの宇宙主権のために戦う,王の王で主の主なる方に対して地歩を保てるなどとどうして考えられるでしょう。国際連合機構また核兵器を備えた諸国家と言えども,決してそうすることなどできるものではありません! ハルマゲドンにおける宇宙的な戦いの際の勝者はだれかという結論の答えは既に分かっています。全能者なる神は敵の死者のしかばねで戦場を覆わせますが,それらしかばねは,中空を飛ぶ,腐肉を食べる鳥すべてのためのいわゆる「神の大きな晩さん」のごちそうとなります。その戦いがなお最後まで行なわれないうちに,太陽の光で飾られたひとりの天の使いがそれらの鳥すべてに向かって,神が彼らのためにハルマゲドンで用意する食事を食べに来るよう差し招く様が描かれています。そのことについて,ニュース記者ヨハネはこう述べています。

      54 「わたしはまた,ひとりの使いが太陽の中に立っているのを見た。彼は大声で叫び,中天を飛ぶすべての鳥に言った。「さあ来なさい,神の大きな晩さんに集まれ。王たちの肉,軍司令官たちの肉,強い者たちの肉,馬とそれに乗る者たちの肉,そしてすべての者,すなわち自由人ならびに奴隷および小なる者と大なる者の肉を食べるためである」― 啓示 19:17,18。

      55 (イ)それらの鳥は「野獣」や「偽預言者」を食べるよう招かれているのではありません。どうしてでしょうか。(ロ)エゼキエルの預言では,鳥のほかにどんな生き物がその宴に招かれていますか。

      55 「中天を飛ぶすべての鳥」が政治的な「野獣」や政治的「偽預言者」の死骸を食べるよう招かれているのでないことは注目に値します。(啓示 13:1-8,11-13; 16:13)ここで描かれているのはまさしく,敵の軍勢の死骸で覆われた戦場の光景です。それはどう猛な野獣を追跡したり,唯一の「偽預言者」を攻撃したりするような光景ではありません。霊的なパラダイスに住む,回復されたエホバの民に対するゴグの軍勢による攻撃に関する預言者エゼキエルの幻の中では,『もろもろの類の鳥』以外のものも,打ち負かされた敵の死骸を食べるよう招かれています。『野のもろもろの獣』も皆,「勇士の肉」『馬と騎者と勇士ともろもろの軍人』を食べるよう招かれています。(エゼキエル 39:17-20)「全能者なる神の憤りの怒りの酒ぶね」の中で天の軍隊によって踏みつぶされる者たちに対するエホバの侮べつや軽べつの念は,殺された敵の死骸を葬らずに鳥や獣のための腐肉のえさとして放置させることによって示されます。

      56 啓示 17章はエホバの王を攻撃する,マゴグのゴグ配下の結束した地的勢力をどのように描写していますか。

      56 悪魔サタンの結束した見える組織全体がその戦いに加わります。マゴグのゴグの配下で地上の諸勢力がエホバの王の王に敵して結束する様は,七つの頭と十本の角のある集団的な唯一の「野獣」による攻撃として描写されています。この緋色の「野獣」は最初に,偽宗教の世界帝国である大いなるバビロンを滅ぼすものとして描かれています。その集団的な「野獣」の十本の角で表わされている反宗教的政治支配者たちに関して,使徒ヨハネはこう言われました。「これらの者は一つの考えをいだき,それゆえに自分たちの力と権威を野獣に[国際連合に]与える。これらの者は子羊と戦うであろう。しかし子羊は,主の主,王の王であるので,彼らを征服する。また,召され,選ばれた忠実な者たちも彼とともに征服する」― 啓示 17:13,14。

      57 (イ)子羊は「主の主,王の王」と呼ばれていますが,このことにはどんな意義がありますか。(ロ)国際連合を表わす「野獣」による襲撃の目標となるのはだれですか。

      57 七つの頭と十本の角のある野獣と子羊とが戦うのでは互角の戦いとは思えません。ところが,この預言の象徴的な子羊は,エホバの用いる任命された主の主で王の王ですから,加盟138か国を有する国際連合である象徴的な「野獣」のうちに結束している主や王たちすべてよりも勝っています。彼らは地的な存在ですから,直接子羊と戦おうとしても肉眼ではその子羊を見ることはできません。しかし,「召され,選ばれた忠実な者たち」の油そそがれた残りの者が肉身で地上にいるのを見ることができます。それらの者は王の王また主の主なる方を代表しているゆえに,国際連合の加盟諸国は特に王国の共同相続者の油そそがれた残りの者と戦うことによって,子羊と戦います。この忠実な残りの者と交わっているのは,エホバの宇宙主権をしっかり支持し,立派な羊飼いイエス・キリストに従う「大群衆」の数え切れないほどの成員です。ですから,「大群衆」に属するそれら弟子たちもまた,油そそがれた残りの者と共に反宗教的な国際連合の猛攻撃を受けます。

      58 その時,(イ)王の王,(ロ)その地上の臣民はどんな征服を仕遂げますか。

      58 象徴的な「十本の角」と緋色の「野獣」は,王の王の地上の忠実な代表者すべてを滅ぼせるものではありません。マゴグのゴグによる攻撃に関する預言的描写の場合のように,「召され,選ばれた忠実な者たち」や「大群衆」が王の王の保護を受けている霊的なパラダイスを一掃できる訳ではありません。(啓示 7:9-17; 12:17)天界のみ使いたちの軍勢と共に王の王は,「野獣」という世界的機構に属する,戦う「十本の角」を文字通り征服します。地上では「召され,選ばれた忠実な者たちも彼[王の王]とともに」,全地を支配する王の王の権利を決して否認せず,永遠の王エホバ神の宇宙主権を決して否定せずにクリスチャンの信仰によって征服します。(啓示 15:3)霊的なパラダイスの仲間の住民の「大群衆」も同様に妥協を拒み,十本の角と七つの頭のある「野獣」の,全地に対する世界支配にかかわる要求に屈することもしません。

      59,60 (イ)その時,信仰によって征服するとは言え,中には敵の手にかかって死ぬ人がいるでしょうか。(ロ)このようにしてエホバの主権に対する忠節を実証するよう,それらの人を強めるのはどんな希望ですか。(ハ)その時,油そそがれた残りの者と「大群衆」が敵によって一掃される可能性が果たしてあるでしょうか。

      59 信仰によって征服する者たちの中には,エホバのメシアによる王国に激しく反対する者らの手にかかって死を遂げることにより神の宇宙主権に対する忠節を実証することを全能者なる神から許される人たちがいるかもしれません。とは言え,それは彼らがエホバの元帥イエス・キリストの指揮下のみ使いの軍勢によって処刑されるという意味ではありません。

      60 宇宙の神の主権のために死ぬそのような忠実な殉教者は,キリストによるエホバの支配の正当性を立証する者として忠実のうちに死にます。エホバの恵みと感謝を受けながら死ぬのです。「いおうで燃える火の湖」で象徴されているような永久の滅びである「第二の死」に投じられることはありません。(啓示 19:20; 20:10,14,15; 21:8)イエス・キリストご自身も死なれたように,神のご予定の時に死人の中から復活させられるという心強い希望を抱いて,征服されることなく死ぬのです。(啓示 2:10; 14:13; 20:4,6,11-13)とは言え,油そそがれた残りの者の成員すべてがエホバのメシアによる王国に反対して戦う者たちによって絶滅される訳ではありません。また,啓示 7章9-14節は,ほかにも「大群衆」の数え切れないほどの成員が「大患難」のその最高潮に生き残ることを保証しています。個々の人は死ぬ場合があるかもしれませんが,残りの者と「大群衆」全体がそうなることはありません。

      王の反対者たちを壊滅させる

      61 啓示 19章19-21節で使徒ヨハネは,ハルマゲドンで処刑される者たちのことをどのように描写していますか。

      61 啓示 19章19-21節で使徒ヨハネは,ハルマゲドンにおける「全能者なる神の大いなる日の戦争」で永遠の命を受けるにふさわしくない者として地上で処刑される者たちについて報じています。その事前のニュース記事の中でヨハネはこう書いています。「そしてわたしは,野獣と地の王たちとその軍勢が,馬に乗っているかた[王の王また主の主]とその軍勢に対して戦いをするために集まっているのを見た。そして,野獣[サタンの世界的政治体制]は捕えられ,それとともに,野獣の前でしるしを行ない,それによって,野獣の印を受けた者とその像[国際連合]に崇拝をささげる者とを惑わした偽預言者も捕えられた。彼らは両方とも生きたまま,いおうで燃える火の湖に投げ込まれた。しかし,そのほかの者たちは,馬に乗っている者の長い剣で殺された。その剣は彼の口から出ているものであった。そして,すべての鳥は,彼らの肉を食べて満ち足りた」。

      62 その時,諸国民は反宗教的態度によってどの程度特徴づけられているでしょうか。

      62 ハルマゲドンでこの戦争を行なう時分までには大いなるバビロンは絶滅させられています。偽宗教のあの世界帝国の滅びのことがここで述べられていないのはそのためです。完全な無宗教状態が諸国民の間に行き渡るその時までにはまた,もはや大いなるバビロンと淫行を行なえないためにしばしの間泣くような「王たち」はいなくなります。同様に,もはや彼女と共に利己的な商売を行なえないゆえに泣いて嘆き悲しんだ「旅商人」もいません。また,もはや大いなるバビロンと利己的な交易を行なえぬゆえに泣いて嘆き悲しんでいる『すべての船長,またどこであろうと航海をする者もみな,また水夫たちや海で暮らしを立てる者もみな』いなくなります。(啓示 18:9-19)もしそれらの者が大いなるバビロンの滅亡後まで生き残りたいのであれば,龍であるサタンが力と権威と座を与えた,七つの頭と十本の角のある「野獣」の政治的な「像」に対する崇拝は別として徹底的な反宗教の立場に転ぜざるを得なくなります。―啓示 13:1-8; 14:9-11; 16:2。

      63 地上の支配者たちによる偽宗教の世界帝国の滅びは,神のメシアによる王国に対する彼らの愛を示すものとなりますか。彼らはそのことをどのようにして示しますか。

      63 それで啓示 19章19-21節のその戦いの幻が成就する時には,象徴的な「野獣」と「地の王たちとその軍勢」はあの宗教上の「娼婦」に対する憎しみを表わして,「大いなるバビロン」を片付けてしまっています。彼女は決してエホバの神権政府を代表したことはありません。キリスト教世界と呼ばれる,彼女のあの部分と言えどもそうです。しかし,偽宗教である大いなるバビロンの滅びは,神のメシアによる王国に対する「地の王たちとその軍勢」の側の何らかの愛を示すものではありません。それら地上の王たちとその軍勢は全地に対する独自の政治的主権に対する愛ゆえに神の王国を憎んでいます。そこで今度は,大いなるバビロンがなくなったので,彼らはイエス・キリストとキリストの運営する天の王国に対して戦いを行なうことに注意を集中できます。

      64 (イ)残りの者と「大群衆」は「地の王たちとその軍勢」にとってどうして不快な存在ですか。(ロ)敵はどんな手段によってエホバの民に対して戦うと考えられますか。

      64 キリストの油そそがれた共同相続者の生き残っている残りの者は,それに彼らの忠節な仲間の「大群衆」もまた,人の住む全地でメシアによる王国の良いたよりを終わりに至るまであらゆる国民に対する証しのために宣明してきたゆえに世の諸国民の標的となってきました。(マタイ 24:14)エホバの宇宙主権のこのような擁護者たちは,「地の王たちとその軍勢」にとって不快で鼻持ちならぬ存在です。それで彼らは思いのままに用い得る政治・軍事・司法・経済上の手段を駆使して戦いを行なうことにより,目に見えない王の王に対する敵意を表わします。「地の王たちとその軍勢」は,やつらを根絶しろ! というスローガンを唱えるでしょう。天の王の王は,油そそがれた残りの者と「大群衆」に対する彼らの敵意のある行動をご自分に対するものとみなされます。最高司令官であられるエホバ神から正確に時を定めて出される合図と同時に,王の王とそのみ使いの軍勢は,神を侮る地上の敵に対する戦いに突入します。

      65,66 (イ)啓示 19章20節で描写されているように,神の地上の敵の一致はハルマゲドンでどのようにして打ち破られますか。(ロ)この処置が取られる時,「野獣」や「偽預言者」が「生きたまま」であるということは何を示していますか。(ハ)それらが「いおうで燃える火の湖」に投げ込まれるということは何を示していますか。

      65 最初の措置は,地上の敵の一致を打ち砕くことです。それは海から上った「野獣」で象徴されている世界的な政治体制を粉砕することを意味します。それが解体されると共に,第八世界強国つまり「野獣の像」で象徴された世界平和と安全のための全地球的な機構である国際連合が解体され,また第七世界強国すなわち「偽預言者」で象徴されている英米二重世界強国も解体されてしまいます。従って,使徒ヨハネはこう述べています。

      66 「そして,野獣は捕えられ,それとともに,野獣の前でしるしを行ない,それによって,野獣の印を受けた者とその像に崇拝をささげる者とを惑わした偽預言者も捕えられた。彼らは両方とも生きたまま,いおうで燃える火の湖に投げ込まれた」。(啓示 19:20)この処置が取られる時,それら政治組織が「生きたまま」であるということは,「全能者なる神の大いなる日の戦争」がハルマゲドンで始まる際,今日のそれら世俗的組織はなお機能していることを示しています。世界を支配している「野獣」と英米「偽預言者」は共に,油そそがれた残りの者とその霊的なパラダイス内の「大群衆」を滅ぼそうと努めている最中に捕らえられます。次いでそれらの組織は解体され,残りの者と「大群衆」を滅ぼす代わりに,神を侮る人間のそれら政治組織が未来永劫にわたって壊滅させられます。その非業の死は,再組織される希望のない「第二の死」となります。ゆえに,それらのものは「いおうで燃える火の湖」に投じられる様が描かれているのです。

      67 悪魔サタンとその悪霊たちは,いつあの「火の湖」で「野獣」や「偽預言者」と一緒にされますか。

      67 このように,ハルマゲドンにおける「全能者なる神の大いなる日の戦争」の時でさえ,また悪魔サタンが底知れぬ所に入れられて人類に対するキリストの千年統治が始まる前に,ハルマゲドンで王の王とそのメシアの王国に敵して戦う者たちは「第二の死」に処されることが分かります。「第二の死」という処罰は,「いおうで燃える火の湖」で象徴されています。キリストの千年統治が終わった後,神のご予定の時に,悪魔サタンと配下の使いである悪霊すべてはその「火の湖」で,「野獣」および「偽預言者」で表わされた,人間の作ったもろもろの政治組織と一緒にされます。(啓示 20:10)それは「悪魔とその使いたちのために備えられた永遠の火」となります。―マタイ 25:41。

      68 人間の見える古い秩序が除き去られると共に,生き残る人たちにはどんなすばらしい見込みがありますか。

      68 こうして,宗教上の大いなるバビロンと,七つの頭のある「野獣」や「偽預言者」で表わされている政治組織が悲惨な終わりを遂げると共に,人間の見える古い秩序はこの地のための神の新秩序に道を譲ります。それは人類史上,生き抜くのに最も困難な時期となるでしょう。(マタイ 24:21,22。ダニエル 12:1)しかし,地上にはそれを生き残る人たちがいます。生き残って祝福された神の新秩序に入る人たちは何と幸いでしょう。

  • 神の新秩序に敵対して戦う者たちの被る非常な災い
    世の苦難からの人間の救いは近い!
    • 15章

      神の新秩序に敵対して戦う者たちの被る非常な災い

      1 ハルマゲドンで何が終わりを告げますか。

      ハルマゲドンにおける「全能者なる神の大いなる日の戦争」に際し,地上の悪魔の見える組織は滅ぼされます。これは,それと気づかれずになされている悪魔サタンの監督下で世俗的人間が設けた種々の政府機関の悲惨な終わりを意味しています。(啓示 13:1,2; 16:14,16。ヨハネ 14:30)そして予想通り,人間のそれら諸政府の支配者や支持者たちはハルマゲドンで神のメシアによる王国に敵対して戦います。

      2 それらの組織を運営したり支持したりした人たちはどうなりますか。

      2 それら政府機関を機能させた政治支配者やその支援者や臣民についてはどうですか。彼らはエホバのクリスチャン証人が世界中で宣明している神のメシアによる王国を無視して運営してきた政治組織もろとも必ず滅びてしまいます。その滅びは,ヨハネへの啓示が戦いの結果について述べる事柄によって示されています。「しかし,そのほかの者たち[すなわち地の王たちとその軍勢]は,馬に乗っている者の長い剣で殺された。その剣は彼の口から出ているものであった。そして,すべての鳥は,彼らの肉を食べて満ち足りた」― 啓示 19:21。

      3 啓示 19章17,18節で示されているように,ハルマゲドンの戦場で倒れる死者の中にはだれが含まれますか。彼らの場合,その滅びはどんな種類の滅びですか。

      3 『中天を飛ぶ鳥』は殺された王たち,軍司令官たち,強い者たち,馬や騎兵,自由人や奴隷,大なる者や小なる者の腐敗する肉を食べて満腹します。(啓示 19:17,18)王の王に対する戦いを彼らが積極的に支持したのは,イエス・キリストとその忠実な弟子たちに助けとなる事を単にしなかったということよりもはるかに悪質なことです。どちらかと言えば,それらの者は皆,羊とやぎに関するイエスの例え話の中で描かれている象徴的な「やぎ」です。彼らは,戦いを行なう王の王の口から突き出る象徴的な「長い剣」によって,「悪魔とその使いたちのために備えられた永遠の火」に入るよう命じられます。王の口から出る剣のような命令を受けると,神とそのキリストに敵して戦う,それら「のろわれた者たち」は,「去って永遠の切断にはいり」ます。永遠の処罰として一掃され,存在しなくなるのです。―マタイ 25:31-46。

      4 古代エルサレムの外の火の燃えるゲヘナについて知られている事から考えて,ハルマゲドンで死骸が片付けられる仕方について述べられている事柄に関してどんな疑問が出されるでしょうか。

      4 それら殺されたやぎのような者たちの死骸が,死人の中から復活させられるとの希望をもって墓に葬られるのを使徒ヨハネが見なかったのはそのためです。しかし,それらの死体すべてが啓示 19章20節で述べられている湖,「いおうで燃える火の湖に投げ込まれ」るのではありません。なぜでしょうか。イエスとその使徒たちの時代のエルサレムでは,復活に値しないほど卑劣な者とみなされた,処刑された犯罪者の死体は,同市の南側の城壁からヒンノムの谷つまり「ゲヘナ」に投げ落とされ,そこで硫黄を加えて燃やされている火で焼却されたことを思い起こします。また,もし死体が硫黄の燃える箇所に落ちないと,近くの高温の場所で野ざらしのままになり,死体は一面にわいて群がってはい回るうじによって食い尽くされました。イエスが述べた通りです。「また,もしあなたの目があなたをつまずかせるなら,それを投げ捨てなさい。あなたにとっては,片目で神の王国に入るほうが,二つの目をつけてゲヘナに投げ込まれるよりはよいのです。そこでは,うじは死なず,火は消されないのです」― マルコ 9:43-48。

      5 「野獣」と「偽預言者」は「生きたまま」火の湖に投げ込まれるということには,どんな異常な点が見られますか。これは明らかに何を示唆していますか。

      5 有罪宣告を受けてヒンノムの谷の火の中に(つまりゲヘナに)投げ込まれた犯罪者の体は死体でしたから,象徴的な「野獣」と「偽預言者」が「いおうで燃える火の湖」に投じられる時,『彼らが両方とも生きたまま,投げ込まれる』のは注目すべきことです。(啓示 19:20)明らかにこれは,それらのものが突如終わりを告げることを意味しています。なお活発に機能しているうちに,それらの政治組織は突然停止し,崩壊させられ,こん跡も残存物も周りに残さずに永遠に解体されてしまいます。腐肉をあさる鳥に食べさせて,骨の多い骸骨をついばんできれいにしてもらうような死骸を戦場に一つも残しません。

      6,7 (イ)ハルマゲドンで王国に敵して戦う者たちについて言えば,彼らの永遠の滅びはどのように描かれていますか。(ロ)すべての死体の肉を片付ける方法を聖書はどのように述べていますか。

      6 しかし,ハルマゲドンで王国に敵して戦う者たちの永遠の滅びは別の方法で描かれていました。どのように描かれていましたか。エホバはご自分の宇宙主権に敵して反対する者や戦う者たちの死体をもって,「中天を飛ぶすべての鳥」のための血だらけの宴を設けることを意図されました。(啓示 19:17,18)殺された者たちの体は,名誉ある埋葬場で朽ちるのではありません。葬られぬまま,彼らの肉はきれいについばまれて骨だけにされ,身元不明のむきだしの骸骨と化します。殺される者はおびただしいので,それは腐肉をあさる生き物にとって途方もなく大きな宴となるでしょう。ダビデ王は詩篇 110篇5,6節〔新〕で,古代の王メルキゼデクによって予表された王の王である主イエス・キリストに語りかけてこう述べました。「〔エホバ〕はもろもろの国のなかにて審判をおこなひたまはん こゝにもかしこにも屍をみたしめ(たまへり)」。この最後の箇所はこうも訳されています。「彼らの頭骸骨を打ち砕き,彼は広い世界にしかばねを山と積まれる」。(エ)ハルマゲドンにおける戦いの結果,地を覆う死体は,人間の健康上の理由から言って無理のない期間中にその全部を片付け得る,腐肉をあさる鳥よりもずっと多いのはまず明らかなことです。それで,あまった死体は神が他の方法で処分なさると考えるのは当を得ています。

      7 エホバの民の回復された残りの者に対するマゴグの地の君ゴグとその大軍の攻撃に関する類似の預言の中で,神に敵して戦って打ち負かされる者たちのしかばねを片付ける際,『もろもろの類の鳥』が『野のもろもろの獣』によって助けられると述べられていることを,わたしたちは思い起こします。それら腐肉をあさる生き物に対しては預言的にこう言われています。『汝らわが席につきて馬と騎者と勇士ともろもろの軍人にあくべしと〔主権者なる〕主エホバいひたまふ』。(エゼキエル 39:17-20〔新〕)それで,ヒンノムの谷で(つまりゲヘナで)腐敗する肉をうじにすっかり食べさせて骨だけにさせる代わりに,ハルマゲドンで殺される敵の死骸はいわば自然界の衛生隊である腐肉をあさる鳥や野獣によってすっかり食い尽くされて骨だけにされてしまいます。

      8-12 (イ)エゼキエル書 39章11-20節には,メシアによる王国のかつての反対者たちの骨を片付けるためのどんな備えが述べられていますか。(ロ)骨を埋めるその仕事が『七か月』も続くと言われていることは何を示唆していますか。

      8 ハルマゲドンでエホバとそのメシアによる王国に反対する者すべてのまさに当然の何と卑しむべき終わりなのでしょう。しかし,主権者であられる主エホバのかつての反対者たちの,日にさらされて白骨と化すままに,つまりもろい汚れた恐ろしい遺骸と化して崩れるままに放置される骨についてはどうですか。エゼキエル書 39章11-20節〔新〕にはマゴグのゴグの大軍の死者に関して,全能の主なる神によってハルマゲドンで処刑される者たちの骨のために忌まわしい思い出となる忌むべき場所を取ってあることが示されています。次のような神の言葉がそのことを示唆しています。

      9 『その日に我〔そこで場所(名ある場所,ギリシャ語セプトゥアギンタ訳; ラテン語ウルガタ訳)を〕イスラエルにおいて墓地をゴグに与へん これ往き来の人の谷にして海[死海]の東にあり これ往き来の人をさまたげん そこに人ゴグとその群衆を埋め これをゴグの群衆の谷となづけん イスラエルの家これを埋めて地を清むるに七月を費やさん[これは骨がおびただしいことを示唆している。] 国の民みなこれを埋め これによりて名をえん これ我が栄光をあらはす日なり

      10 『彼ら定まれる人を選む その入国のうちをゆきめぐりて往き来の人とともにかの地のおもてにのこれる者を埋めてこれを清む 七月の終はれる後かれら尋ぬることをなさん 国を行き巡る者往き来し人の骨あるを見るときはその傍らに標をたつれば死人を埋むる者これをゴグの群衆の谷[もしくはハモン-ゴグの谷]に埋む まちの名もまた〔ハモナ[ハモナは11,15節(新)のヘブライ語ハモンの女性形で「群衆」の意]〕ととなへられん かくかれら国を清めん

      11 『人の子よ〔主権者なる〕主エホバかく言ふ 汝[エゼキエル]もろもろの類の鳥と野のもろもろの獣に言ふべし 汝ら集ひ来たり 我が汝らのために殺せるところの犠牲に四方よりあつまれ すなはちイスラエルの山々の上なる大いなる犠牲に臨み肉を食らひ血を飲め 汝ら勇士の肉を食らひ地の君たちの血を飲め 牡羊 羔羊 牡山羊 牡牛などすべてバシャンの肥えたる畜を食らへ 汝らわが汝らのために殺せるところの犠牲につきて飽くまで脂を食らひ酔ふまで血を飲むべし

      12 『汝らわが席につきて馬と騎者と勇士ともろもろの軍人にあくべしと〔主権者なる〕主エホバいひたまふ』― 欄外の読み方(新)をご覧ください。

      栄光 対 永遠の恥辱

      13,14 (イ)不名誉な記憶を呼び起こすどんな名称が,ゴグの人間の大軍の埋葬地と結びついていますか。(ロ)イザヤ書 66章23,24節では,エホバの崇拝に反対する者たちが感じさせられる永遠の屈辱がどのように述べられていますか。

      13 こうして,最高司令官であられるエホバ神はその代理元帥イエス・キリストによってご自分のために不滅の栄光を得られますが,一方象徴的なゴグとその地上の大軍は自分たちのために永遠の恥辱を被ります。いわばゴグの人間の大軍の骨はごちゃ混ぜにされ,個人の墓など見分けられないように一緒くたに葬られてしまいます。「ハモン-ゴグの谷」は,彼らの不名誉な記念の恥ずべき名称となります。このことはまた,その場所から思い起こされる歴史的な事柄の記念として設けられる,都市のような何らかの標の名称となるかもしれないハモナという名称についても当てはまるでしょう。エホバの崇拝に反対するそれら違犯者たちを待ち受けている永久の屈辱に関し,イザヤの預言はエホバを崇拝する生存者たちについて述べ,こう言っています。

      14 『エホバいひ給ふ 新月ごとに[つまり月ごとに]安息日ごとに[つまり週ごとに]よろづの人わが前にきたりて崇拝をなさん かれら出でてわれに逆きたる人の屍をみん そのうじしなず その火きえず よろづの人にいみきらはるべし』― イザヤ 66:23,24。

      15,16 (イ)ハルマゲドンにおける神の裁きの表われとしての滅びは,それを経験する者たちすべてにとって何を意味しますか。(ロ)マラキの預言の中でこのことがさらにどのように強調されていますか。

      15 万事を考慮に入れると,ハルマゲドンで「全能者なる神の大いなる日の戦争」を行なう際,エホバは単に軍事演習を仕終えて,ご自分に敵して戦う者たちに永続的な結果をもたらすのではなく単なる見せ物のために単に訓練の目的で模擬戦を行なわれるのではないことが分かります。それどころか,エホバの軍事行動は,こうしてエホバによってその宇宙主権の正しさを立証するために裁きが執行される地上の者たちすべてにとって「永遠の切断」を意味するものとなります。そして,ハルマゲドンにおいて根絶する者たちをどう見ているかを,マラキの預言の中でさらにこう強調しておられます。

      16 『万軍のエホバいひたまふ みよ 炉のごとくに焼くる日来たらん すべてたかぶる者と悪をおこなふ者はわらのごとくにならん そのきたらんとする日 彼らを焼きつくして[完全に根絶されるように]根も枝ものこらざらしめん されど我が名をおそるゝ汝らには義の日いでて昇らん その翼にはいやす能をそなへん 汝ら[生存者たち]は牢よりいでし犢のごとく躍跳らん またなんぢらは悪人をふみつけん すなはちわが設くる日にかれらは汝らの脚のうらの下にありて灰のごとくならん 万軍のエホバこれを言ふ』― マラキ 4:1-3。

      17 サタンの見える組織全体の悲惨な終わりに続いて,彼とその配下の使いである悪霊たちはどうなりますか。

      17 いと高き神の生き残る崇拝者たちは,神の義の新秩序を完全に確立する道がその時切り開かれていることを知って歓喜するでしょう。人間の古い秩序は神の新秩序に平和裏に,おとなしく道を譲るものではありません。来たるべき「大患難」によって神の約束の新秩序のために強制的に道を開けさせられるのです。というのは,「この世の支配者」「この事物の体制の神」すなわちマゴグの地の現代の君ゴグである悪魔サタンが神の新秩序に反対しているからです。しかし,その強情な反対は失敗します。預言的なマゴグのゴグが敗北し,『マゴグに火をおくる』と言明されたエホバ神の目的の遂行を阻止し得なかった通り,悪魔サタンは「大患難」に際して彼の見える組織全体が滅ぼされるのを見,またその後直ちに地球の近くの彼のいる見えない場所が荒廃させられるでしょう。そして,サタンと配下の使いである悪霊の大軍は鎖でなされるように縛られて,地の近辺から遠く離れた底知れぬ所に投げ込まれます。―ヨハネ 16:11。コリント第二 4:4。エゼキエル 39:1-6。啓示 20:1-3。

      18 サタンの支配する,人間の古い秩序が滅んだ後,霊的なごちそうにあずかって歓喜する時が確かに訪れます。どうしてでしょうか。

      18 サタンの支配する,人間の古い秩序の滅びは,霊的なイスラエル人の生き残る残りの者と彼らと共にエホバの宇宙主権を支持する側に整列する「大群衆」にとって霊的な宴を開く機会を提供するものとなります。その時,彼らはどうして歓喜せずにおれるでしょう。大いなるバビロンの来たるべき火のような滅びに際して,天の聖なるみ使いたちは大声で「ハレルヤ!」と叫び,天の王座から出る声はこう命じるでしょう。「神を恐れるそのすべての奴隷たちよ,小なる者も大いなる者も,わたしたちの神を賛美せよ」。(啓示 19:1-5)ハルマゲドンにおける「全能者なる神の大いなる日の戦争」でエホバが人間の古い秩序を滅ぼすことを堂々と完了なさる時,エホバ神の崇拝者の地上の生存者たちが歓喜して「ハレルヤ!」と叫ぶ理由はさらに多いことでしょう。その時こそ,エホバの宇宙主権の正しさが立証され,その聖なるみ名が神聖にされる宇宙史上最大の出来事が成し遂げられるのです。―エゼキエル 38:23; 39:6,7。

      19,20 ハルマゲドンで殺される者たちの死骸のごちそうを食べるよう鳥が招かれるのと同様,人間の生存者が確かにあずかるごちそうを,詩篇 46篇はどのように描写していますか。

      19 ハルマゲドンにおけるその戦争に関する啓示の書の光景の中では,「中天を飛ぶすべての鳥」は神の輝かしい使いの命令に従って,期待を抱いてハルマゲドンの戦場に集まりました。そして,そこで宴にあずかることが約束されていましたが,確かに宴にあずかりました。エホバの任命された王の王で天軍の王である方によって殺された者たちの死骸を食べ,「そして,すべての鳥は,彼らの肉を食べて満ち足りた」のです。(啓示 19:17-21)全く同様に,その戦いに生き残る霊的なイスラエルの残りの者と「大群衆」は,「全能者なる神の大いなる日の戦争」の,神に誉れを帰す結末という霊的なごちそうに得心のゆくまで存分にあずかります。生存者たちに対して次のように言われている通りです。

      20 「来たれ,あなたがた民よ。エホバのみわざを見よ。地上にどのように驚くべき出来事を置かれたかを。彼は地の果てまで戦争をやめさせようとしておられる。弓を折り,実に槍を切り砕き,もろもろの車を火で焼かれる。『服せよ,あなたがた民。そして,わたしが神であることを知れ。わたしは諸国民の間で高められるであろう。わたしは地において高められるであろう』」― 詩 46:8-10,新。

      21-23 (イ)ハルマゲドンの生存者となる人たちはどんな勝利を得ていますか。(ロ)啓示 15章2-4節で描かれているように,それら生存者は声を合わせてどんな歌詞の歌を歌いますか。

      21 ハルマゲドンにおける宇宙の全能の主権者の驚嘆すべきわざに大いに恐れて,霊的なイスラエル人の生き残る残りの者は,その方に向かって歌うでしょう。あらゆる戦いの中の戦いでその輝かしい勝利が収められる時までには,この忠実な残りの者は666という数を持つ象徴的な「野獣」とその盲目的に崇拝される「像」に対する完全な勝利者となっていることでしょう。勝利を博するその時,人間の古い秩序の顕著な部分であったそれら二つの政治組織は永遠の死に沈められ,死をもたらす「いおうで燃える火の湖」に投げ込まれます。(啓示 19:20; 17:8,14)勝利を収めるこの残りの者がハルマゲドン後に歌う歌声は,神の霊的な神殿の仲間の崇拝者たちの「大群衆」の歌声で強化されますが,これからの近い将来に予想されるその様子は非常な壮観であるため,使徒ヨハネはその壮大甘美な出来事の予告編を与えられました。今日のわたしたちにとって幸いなことに,彼は霊感によって描かれたその出来事を書き著わして,こう述べています。

      22 「そしてわたしは,火の混じった,ガラスのような海[神の霊的な神殿にあるガラスのような大水盤]と思えるもの,また,野獣とその像とその名の数字[666]から勝利を得る者たちが神のたて琴を持って,そのガラスのような海のそばに立っているのを見た。そして,彼らは神の奴隷モーセの歌と子羊[イエス・キリスト]の歌をうたってこう言う。

      23 「全能者なるエホバ神,あなたのみわざは偉大であり驚くべきものです。とこしえの王よ,あなたの道は義であり真実です。エホバよ,ほんとうにだれがあなたを恐れないでしょうか,あなたのみ名の栄光をたたえないでしょうか。ただあなただけが忠節なかただからです。あらゆる国民はみまえに来て崇拝するのです。あなたの義なる定めは明らかにされたからです」― 啓示 15:2-4。

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