1997年秋の特別なキャンペーンの報告
1 エホバの証人は平和な生活を願っています。エホバが許される限り,政府の支配者たちが「神の奉仕者」として機能していることを認め,ふさわしい敬意を示します。(ロマ 13:1-4)同時に,神の民は公共の利益を大切にします。最近,日本海で重油の流出災害が生じましたが,多くのエホバの証人が自発的にボランティア活動に参加した結果,そのことが地元の町長の目にとまり,エホバの証人に対する心からの感謝が表明されました。もちろん,わたしたちは隣人を心から愛しており,聖書の知識を分かつことが,地域社会への最大の善行であると考えています。―ガラ 6:10。
2 一方,ここ数年来,宗教に対する人々の不信感や警戒心が高まっています。それで昨年の秋,全日本の地方行政の責任者,新聞社,教育関係者を訪問する特別な活動が取り決められました。その目的は,世論の形成に強い影響力を持つこれらの人々が抱いているエホバの証人に対する偏見や誤解を取り除くとともに,証人たちは社会の有用な資産であることを理解してもらうことでした。どのような成果がありましたか。
行政機関への訪問
3 昨年10月に,全国の市町村長を訪問する特別な活動が日本中の306人のニュース・サービス代表の兄弟たちを中心に実施されました。それらの首長たちとの会見を取り決めるよう努めた結果,151名の市長(日本全国の市長の23%),749名の町村長(町村長の29%),その他行政の実務者761名と会見することができました。これは,地方行政機関全体の半分以上の責任者と面会できたことになります。
4 会見に応じた人々の反応: 大阪府のある市長について次のような報告が寄せられました。「市長さんはテレビを見るよりも前に,まず『ものみの塔』誌と『目ざめよ!』誌に目を通すとのことです。そして,助役であった時は,読んだ記事の中で良いと思った事柄を一冊のノートにまとめ,会合などでそれらを引用し,『このような記事が,……の雑誌に載せられていた』と語っていたそうです」。
5 ある市長は,娯楽,介護,失業,犯罪などのテーマを取り上げた協会の出版物の記事を見て,「皆さんは我々住民が抱えている最先端の問題を扱っているんですね」と述べました。別の人は,証人たちの活動の内容に感動し,「このような教育こそ今一番大切なんです」と述べ,訪問した兄弟を激励することまでしました。
6 次のような多くの励みあるコメントを得ることができました。
「(会見を申し込むための)手紙の内容を読んだだけで大変立派な団体だと思いました」。「人間のあるべき姿について積極的にアピールし,皆ボランティアで広報活動を行ない,命の大切さを説いておられるので感動しています」。「この町ではだれが奉仕していますか,とても良いことなので激励したいと思います」。「皆さんは心のきれいな人たちだと思うので心配していません」。
7 文部大臣が中央教育審議会に「心の教育」について緊急諮問し,多くの市町村がこの問題に取り組んでいる最中でしたので,今回の特別な活動で取り上げた「青少年の健全な育成」に関する話題は,首長の注意を引くものとなりました。
8 中には,協会の出版物の優れた内容に接し,エホバの証人に対する認識を新たにした人もいます。ある町長は,「青少年の健全な育成を日本の宗教に期待することはできない。町の対策にエホバの証人の協力をお願いしたい」と語り,「幸せな家庭」と「若い人が尋ねる」の書籍を10セット届けてほしいと言いました。
9 特筆すべき成果: 今回の活動で得られた優れた成果の一つは,エホバの証人に対する消極的な見方を持っていた首長たちと会見し,偏見や誤解を取り除くことができたことです。
10 一人のニュース・サービス代表は,大阪府のある市長と会見した後,秘書課長とも話し合いましたが,その時の様子を次のように報告しています。「エホバの証人についてどのように感じているかを尋ねると,その方は,『私の偏見かもしれませんが,輸血を拒否する人々と思っています。私自身18年前に心臓手術で3,200CCを輸血しましたが何のトラブルも生じていません』と語りました。それで,医療機関連絡委員会の活動に言及し,市民病院とは7年半前から無輸血手術に関して密接な協力関係を築いていること,エホバの証人は医療を拒否しているのではなく医療を選択していること,これはインフォームド・コンセントによる自己決定権を尊重する現在の法曹界や医学界の流れに調和したものであることを文献から説明すると,『これで偏見が解け,すっきりしました』と語りました」。
11 山口県のある町長との面会に関する報告は次のようなものです。「町長はあまり愛想の良い方ではありません。エホバの証人に関する懸念や疑問があればお答えしますと言うと,『エホバの証人は,片方に応援すると差別になるという理由で選挙はしない宗教か』と尋ねられました。それで,『エホバの証人は,信仰を同じくする人たちの集まりです。ですから政治に関して一切かかわりを持っていません。政治的なことは信者一人一人が自分で考えて判断する問題だと思います。宗教という旗の下に信者を集めておいて,政治的な活動や指導を行なうのはおかしいと思います。政治的な活動をしたいなら宗教の名の下にではなく,政治の旗印の下に集まるべきではないでしょうか』と説明すると,大変納得し,『それならよく分かる』と何度もうなずきました。つっかえていた疑問が解けたためか,進呈した出版物を手にして『この本を読んでみましょう』と述べました」。
12 兄弟たちが払った努力: 当初,行政側は,宗教団体の責任者と面会することにかなり慎重だったため,この活動の成功には兄弟たちによる協力が不可欠でした。行政組織に詳しい兄弟たちは,面会の約束を取りつける上でだれにどのように近づくことが最も効果的かを提案しました。また,会見を希望する手紙を市町村長に書く際には,彼らが普段どんなことに関心を持っているか,その地域が特に取り組んでいる問題が何かなどを調べるため,それぞれの町に住む兄弟たちが地元の広報誌を取り寄せたり,図書館で調べたりして情報を集めました。
13 見逃してならない一つの点は,普段から地元の兄弟姉妹たちが良い評判を築き上げていたことです。面会に応じた人の多くは特定のエホバの証人をよく知っており,その証人に良い印象を持っていたので,面会を受け入れた場合も少なくありませんでした。
新聞社への訪問
14 行政機関への訪問と並行して行なわれた活動は新聞社への訪問でした。広報を扱うために協会に新設された部門,パブリック・アフェアーズで奉仕する兄弟たちは,東京都と神奈川県に本社を持つ大手新聞社10社を訪問しました。加えて,各地のニュース・サービス代表が北海道から沖縄までの77の新聞社を訪問しました。これは,地域社会に貢献するエホバの証人の活動を広く知らせることと,人々に大きな影響を及ぼすメディアとの良い関係を築くことを目ざすものでしたが,訪問と情報提供はほとんどの新聞社で感謝されました。
15 新聞社を訪問した兄弟たちは,「家族のきずなを強めるキャンペーン」についての記事の掲載依頼を行ないました。近畿地方の一新聞は1997年10月28日付で,「家族のきずな強めよう ― ものみの塔」という見出しの記事を掲載し,その中で「ものみの塔聖書冊子協会は,今月末まで『家庭のきずなを強めるキャンペーン』を実施している…」と報道しました。中国地方の一新聞は,「若い人たちは今日の危機にどのように対処できますか」と題する公開聖書講演会について報道しました。宗教的な記事を載せることに慎重な日本の現状を考えると,これらはとても良い成果でした。
16 この奉仕に携わった兄弟たちには,普通以上の勇気とエホバに依り頼む態度が求められましたが,最善を尽くす時に,エホバがその努力を豊かに祝福してくださることはこの活動でも明らかになりました。―箴 3:5。
教育関係者への訪問
17 今まで取り上げた二つの活動とは異なり,教育関係者への訪問は,主に,子供を学校に通わせている地元の会衆の兄弟姉妹たちによって行なわれました。皆さんの多くは学校の先生を訪問し,励みある経験をなさったことでしょう。
18 この訪問は,多くの教師が抱いていた偏見を取り除くものとなりました。一人の巡回監督は巡回区での活動を総括し,「今回,当事者であるわたしたちから直接話を聞くことにより,教育関係者はそれまでの印象の間違いを認め,今後の柔軟な対応を約束してくださいました」と報告しています。また,背教者たちの活動が活発な地域にある小学校の教頭は,エホバの証人は家庭を崩壊させる反社会的グループであると誤解していましたが,話し合いを通して,背教者たちの宣伝が間違いであることを理解しました。多くの教師たちは,自分たちの間違った印象が,エホバの証人に対する知識不足から来ていることを認め,今回の活動に感謝を表わしました。
19 さらに今回の活動は,エホバの証人は進んで社会に貢献するグループであり,有用な資産であることを訴えることをも目指したものでした。四国のある教育長は「幸せな家庭」の本を丁寧に見た後,次のように述べました。「戦後の教育はアメリカの方式が基礎となったものの,『家庭での教育』についてはあまり扱われていなかった。そして現在,日本の文部省は『心の教育』の方針を打ち出したものの,どのようにそれを行なってゆくかは今後の課題となっている。この本から家庭のあり方について教えてもらいたい」。
20 奈良県のある学校の副校長は,「目ざめよ!」誌,1997年8月8日号に掲載された「子供をのびのび育てる」の記事に強い関心を示し,「この雑誌に書かれているようなことはPTAの役員会でいつも話し合っているので,もう60冊入手したい」と述べました。神奈川県の一校長は,人権教育を研究しており,今後この分野をどのように進めてゆくか模索中でした。今回,「子供をのびのび育てる」の五つの柱,つまり,適当な環境,褒め言葉,意思の疎通,怒りを制する,秩序と敬意を保つの部分が,今後の人権教育の基になるのではないかと語りました。
21 教育関係者の多くがエホバの証人に対する強い偏見を抱いているわけではないものの,証人の子供たちが参加できない学校行事が時折あるため,エホバの証人の組織は戒律が厳しく,子供たちの真の幸福に深い関心を払っていないと感じている人もいます。そのような意味で,今回の会見で用いた,「幸せな家庭」の本や「子供をのびのび育てる」の記事は,エホバの証人に対する正しいイメージを築く上で大きな助けとなりました。
22 親には,子供の学校の先生と十分に協力することや,教師を訪問してエホバの証人の立場をよく理解してもらうよう努力することが勧められています。ですから,今回の活動に限ることなく,今後も学校や教師と密接に協力し,意思の疎通を図るために,周期的に会合する機会を持つのは良いことです。
結論
23 使徒パウロは,『王たちや高い地位にあるすべての人々について,祈りと,感謝をささげるように』と述べています。公的な地位にある人たちがクリスチャンの活動を正しく理解し,わたしたちが「敬虔な専心を全うし,まじめさを保ちつつ,平穏で静かな生活をしてゆく」ために,今回の特別な活動が行なわれました。(テモ一 2:1,2)今後,このような活動を通して,なお一層エホバの証人を正しく評価してもらうことができるに違いありません。