研究記事 20
23番の歌 エホバはわたしたちの力
慰めの神エホバは私たちを安心させてくださる
「父である神が賛美されますように。神は,温かな憐れみの父,あらゆる慰めの神で[す]」。コリント第二 1:3
ポイント
エホバが捕囚にされたユダヤ人を慰めて安心させたことから大切な教訓を学びます。
1. 捕囚にされたユダヤ人はどんな状況でしたか。
バビロンに捕囚にされたユダヤ人がどんな気持ちだったか想像してみてください。生まれ育った町が破壊されるのを目にしました。自分たちや父祖たちが犯した罪のために,住まいを奪われ,外国に連れていかれました。(代二 36:15,16,20,21)確かに,バビロンでもいくらか自由に暮らすことはできました。(エレ 29:4-7)とはいえ,そこでの生活は,望んでいたものでも楽なものでもありませんでした。こうした状況についてどう感じていたでしょうか。そこにいた人の1人はこう言っています。「バビロンの川のほとりに私たちは座った。シオンを思い出して泣いた」。(詩 137:1)でも,捕囚にされて心が沈んでいた人たちは安心することができました。どうしてでしょうか。
2-3. (ア)エホバは捕囚にされたユダヤ人のためにどんなことをしましたか。(イ)この記事ではどんなことを考えますか。
2 エホバは「あらゆる慰めの神」です。(コリ二 1:3)優しい神エホバは,ご自分のもとに来る人たちを慰め,安心させます。エホバは,捕囚にされた人の中にも,矯正を受け入れてご自分のもとに戻ってくる人がいることを知っていました。(イザ 59:20)それで,バビロン捕囚の100年以上前に預言者イザヤにイザヤ書を書かせました。その中にこうあります。「あなたたちの神はこう言う。『慰めよ,私の民を慰めよ』」。(イザ 40:1)エホバは,捕囚にされたユダヤ人がイザヤ書を通して安心感を得られるようにしました。
3 捕囚にされたユダヤ人と同じように,私たちも不安に感じるときがあります。この記事では,エホバが当時の人々に安心感を与えた3つの方法を考えます。エホバは,(1)悔い改めた人たちを許すことを約束し,(2)ご自分に仕える人たちに希望を与え,(3)不安を和らげました。当時の人たちを安心させるためにエホバが語らせた言葉を振り返り,それがどのように私たちの力になるか考えましょう。
エホバは憐れみ深く許してくださる
4. エホバが憐れみ深い神であることはどんなことから分かりますか。(イザヤ 55:7)
4 エホバは「温かな憐れみの父」です。(コリ二 1:3)そのことは,捕囚にされた人たちが悔い改めるなら許すとエホバが約束していたことから分かります。(イザヤ 55:7を読む。)エホバは「永遠に続く揺るぎない愛をもってあなたを憐れむ」と言っていました。(イザ 54:8)エホバはその通りに行動しました。ユダヤ国民は罪の結果を身に招きましたが,ずっとバビロンにとどまるわけではないとエホバは約束しました。捕囚の期間には終わりがありました。(イザ 40:2)悔い改めた人たちは,こうした言葉を聞いて慰められ,安心したに違いありません。
5. 私たちが,捕らわれていたユダヤ人以上にエホバの憐れみを確信できるのはどうしてですか。
5 学べること。エホバはご自分に仕える人たちを寛大に許します。現代の私たちには,捕囚にされていたユダヤ人以上にそのことを確信できる理由があります。エホバが私たちを許すためにどんなことをしてくださったかを理解しているからです。イザヤ書が書かれてから約700年後,エホバは悔い改めた罪人全員を許すために,独り子イエスを地球に遣わしました。こうした犠牲によって,私たちは罪を「消し去って」いただくことができるのです。(使徒 3:19。イザ 1:18。エフェ 1:7)エホバは本当に憐れみ深い神です。
6. エホバの憐れみに注目すると,どんな良いことがありますか。(写真も参照。)
6 罪悪感にのみ込まれそうな時,エホバがイザヤ 55章7節に記録させた言葉を読むと安心できます。もしかすると間違いを悔い改めた後も,後ろめたい気持ちを拭えないことがあるかもしれません。間違いによって生じた結果にまだ苦しめられている場合は特にそうかもしれません。でも,罪を告白して悪い行いをやめたなら,エホバが許してくれていることを確信できます。エホバは,罪を一度許したなら,後からそれを思い出すようなことはしません。(エレミヤ 31:34と比較。)エホバが私たちの以前の罪について考え続けていないのですから,私たちもそうすべきです。エホバは,私たちがこれまでにどんな間違いをしたかではなく,今何をしているかに注目しています。(エゼ 33:14-16)温かな憐れみの父であるエホバは間もなく,私たちが自分の間違いの結果として経験している問題や苦しみを全てなくしてくださいます。
エホバは,私たちがこれまでにどんな間違いをしたかではなく,今何をしているかに注目している。(6節を参照。)
7. 隠れて罪を犯している場合,どんなことを思い出すと助けを求める勇気が湧きますか。
7 重大な罪を隠していて良心の痛みを感じているなら,どうすべきですか。聖書は,長老たちに助けを求めるよう勧めています。(ヤコ 5:14,15)自分の悪い行いについて長老たちに話すのは簡単なことではないかもしれません。でも,自分のしたことを心から悔やみ,エホバとエホバが任命した兄弟たちが憐れみ深く助けてくれることを思い出すなら,兄弟たちに話す勇気が湧いてくるでしょう。良心の強い痛みを感じていたアーサー兄弟は,憐れみ深いエホバのおかげで安心感を得ることができました。a こう言っています。「約1年にわたってポルノを見ていました。でも,良心に関する話を聞いて,妻と長老たちに自分の罪を打ち明けました。ようやくほっとしましたが,自分のしたことを考えると,ネガティブな気持ちがなかなか消えませんでした。長老たちはエホバが私を見捨てたりしていないことを思い出させてくれました。エホバは,私たちを愛しているからこそ矯正してくださるんです。兄弟たちの優しい言葉が心に染みて,考え方をリセットすることができました」。今アーサー兄弟は援助奉仕者で,開拓奉仕を楽しんでいます。私たちは,悔い改めるならエホバが憐れみ深く許してくださることを知っているので安心できます。
エホバは希望を与えてくださる
8. (ア)捕囚になった人たちにエホバはどんな希望を与えましたか。(イ)イザヤ 40章29-31節によると,その希望は悔い改めたユダヤ人たちにどんな影響を与えましたか。
8 人間の観点からすると,捕囚にされたユダヤ人たちは絶望的な状況にいました。当時の世界強国だったバビロニア帝国は捕虜を故国に帰らせないことで知られていました。(イザ 14:17)でもエホバは希望を与え,ご自分の民を自由にすると約束しました。エホバをとどめられるものは何もありませんでした。(イザ 44:26; 55:12)エホバから見れば,バビロンは一息吹けば飛んでいってしまうほこりのようなものだったからです。(イザ 40:15)エホバからの希望は,捕囚になった人たちにどんな影響を与えたでしょうか。安心感を与えました。でもそれだけではありませんでした。イザヤはこう書いています。「希望を抱いてエホバを待つ人は,再び力を得る」。(イザヤ 40:29-31を読む。)人々は希望によって元気づけられ,「ワシのように翼を広げて舞い上がる」ことができました。
9. 捕囚にされた人たちには,エホバの約束を信じられるどんな根拠がありましたか。
9 エホバは当時の人たちに,ご自分の約束を信じられる根拠も与えました。すでに実現した預言です。例えば,エホバの予告通り,アッシリアが北のイスラエル王国を征服して人々を捕囚にしたことを知っていました。(イザ 8:4)バビロニア人がエルサレムを破壊し,そこに住んでいた人たちを捕囚に連れていくのを見ました。(イザ 39:5-7)また,ゼデキヤ王が失明させられ,バビロンに連れていかれたことも知っていました。(エレ 39:7。エゼ 12:12,13)全てエホバが予告した通りになりました。(イザ 42:9; 46:10)こうしたことを考えると,捕囚にされた人たちを自由にするというエホバの約束もその通りになる,という信仰が強まったことでしょう。
10. 終わりの時代に希望を失わないようにするために,どんなことができますか。
10 学べること。心が沈む時も,希望があれば安心でき,再び力を得ることができます。私たちは大変な時代に生活していて,強い敵からの攻撃に立ち向かわなければならないこともあります。でも私たちは絶望すべきではありません。エホバは私たちに,本当に平和で安全な世界で永遠に生きるという素晴らしい希望を与えてくださっています。私たちはいつもその希望について考え,心の中で生き生きと思い描く必要があります。そうしないと,私たちの希望はかすんでいってしまうかもしれません。せっかくの美しい景色も,汚れた窓を通して見るとぼんやりしてよく見えないのと同じです。希望がかすまないよう,どうすれば心の窓を磨くことができるでしょうか。新しい世界でどんな素晴らしい生活を送れるか,時間を取って考えることを習慣にできます。希望を思い描くのに役立つ記事やビデオ,歌を活用しましょう。祈ってエホバに話し掛け,どんな約束が実現するのを楽しみにしているか伝えることができます。
11. 慢性的な病気を抱えている姉妹が再び力を得る上で何が助けになりましたか。
11 慢性的な病気を抱えているジョイ姉妹の例を考えてみましょう。姉妹は希望があることで力づけられ,安心することができています。「圧倒されそうに感じる時,自分の気持ちを全てエホバにお伝えします。エホバなら理解してくださると分かっているからです。エホバは祈りに答えて『普通を超えた力』を与えてくださっています」。(コリ二 4:7)姉妹は「『私は病気だ』と言う住民はいなくなる」という約束が実現する時,新しい世界で自分がどんな生活をしているかをイメージするようにもしています。(イザ 33:24)私たちも心にあるものを全部エホバに伝え,希望に目を向けるなら,再び力を得ることができます。
12. エホバの約束を信頼できるどんな根拠がありますか。(写真と挿絵も参照。)
12 エホバは捕囚にされていた人たちの場合と同じように,約束が実現すると信じられる根拠を私たちにもたくさん与えてくださっています。今実現している預言について考えてみましょう。例えば,英米世界強国には確かに「強い部分ともろい部分」があります。(ダニ 2:42,43)また,「あちらこちらで……地震が」起きています。そして,私たちは「世界中で」良い知らせを伝えています。(マタ 24:7,14)そのほかにもたくさんの預言が実現していることを考えると,まだ実現していないエホバの素晴らしい約束も必ずその通りになるという信仰が強まります。
今実現している預言は,エホバの約束を信頼できる根拠になる。(12節を参照。)
エホバは不安を和らげてくださる
13. (ア)解放される時期にユダヤ人はどんなことを不安に思ったかもしれませんか。(イ)イザヤ 41章10-13節から分かるように,エホバは捕囚にされたユダヤ人たちにどのように安心感を与えましたか。
13 エホバは捕囚にされた人たちを安心させる素晴らしい希望を与えました。それでも,その人たちが解放される時期に不安を感じるような出来事が起きることを知っていました。エホバは,捕囚の期間の終わりごろに強い王が現れて,バビロンの周りの国々を打ち倒し,バビロンの脅威となることを予告していました。(イザ 41:2-5)ユダヤ人は不安に感じる必要があったでしょうか。エホバは民が安心できるように前もって次のように約束していました。「恐れてはいけない。私があなたと共にいる。心配してはいけない。私があなたの神である」。(イザヤ 41:10-13を読む。)エホバはどういう意味で「私があなたの神である」と言ったのでしょうか。ご自分を崇拝する必要があることを思い出させようとしていたのではありません。それは,みんなよく分かっていることでした。エホバは自分が今もユダヤ人の側にいることを思い起こさせていたのです。(詩 118:6)
14. エホバはほかにもどんな方法で捕囚にされていた人たちの不安を和らげましたか。
14 エホバはご自分の無限の力や知恵を思い起こさせることによっても,捕囚にされていた人たちの不安を和らげました。その人たちに夜空の星を見上げるように勧めました。そして,ご自分が星を創造しただけでなく,その名前も全て知っているということを伝えました。(イザ 40:25-28)エホバは,ご自分に仕える一人一人の名前も当然知っているに違いありません。エホバが星を造る力を持っているのであれば,ご自分に仕える人たちを助ける力を持っていることも確実です。捕囚にされていたユダヤ人たちが恐れたり心配したりする理由はありませんでした。
15. エホバは,捕囚にされていたユダヤ人たちを今後起きる事柄に備えさせるためにどんなことをしましたか。
15 エホバは,ご自分の民が今後起きる事柄に備えることができるようにも助けました。同じイザヤ書の中でエホバはご自分の民にこう言っていました。「奥の部屋に入り,扉を閉めなさい。少しの間,隠れていなさい。憤りが過ぎ去るまで」。(イザ 26:20)この言葉はバビロンがキュロス王によって征服された時に最初に実現した可能性があります。古代ギリシャの歴史家によると,キュロスはバビロンに入った時,兵士たちに「屋外にいる者は,見つけ次第,皆殺しにするようにとの命令を与え」ていました。バビロンに住んでいた人たちがどれほど恐ろしい気持ちになったか想像してみてください。でも,捕囚にされていたユダヤ人たちは,エホバの指示に従ったので命を救われたことでしょう。
16. これから起きる事柄について心配しなくてよいのはどうしてですか。(写真も参照。)
16 学べること。間もなく,私たちは人類史上最大の患難に遭うことになっています。その時,人々は恐怖を感じ,混乱します。でも,エホバに仕える人たちはそうではありません。エホバが私たちの神だからです。「[自分たち]の救出が近づいている」ので,私たちはしっかりと立つことができます。(ルカ 21:28)諸国家の連合体に攻撃されても動じることはありません。エホバは,天使たちを使って私たちを保護することに加え,命を救うための指示を与えます。その指示はどのようにして伝えられるのでしょうか。私たちにはまだ分かりません。恐らくそうした指示は会衆を通して与えられるでしょう。ある意味で会衆が私たちの「奥の部屋」となるのかもしれません。私たちはそこで安全に守られます。将来起きることのために今何ができますか。兄弟姉妹との絆を強めましょう。また,責任ある兄弟たちをエホバが導いていることを確信し,与えられる指示に進んで従いましょう。(ヘブ 10:24,25; 13:17)
エホバが私たちを救う力や能力を持っていることを考えると,大患難の間も心配し過ぎないで済む。(16節を参照。)b
17. どうすれば本当の安心感を得られますか。
17 捕囚にされたユダヤ人たちは大変な経験をしましたが,エホバは当時の人たちが必要としていた慰めや安心感を与えました。エホバは私たちにも同じようにしてくださいます。それで,これからどんなことが起きるとしても,慰めの神エホバに頼るなら安心感を得ることができます。本当に憐れみ深い神を信頼しましょう。希望を生き生きと思い描いてください。エホバが私たちと共にいてくださるので,何も不安に感じる必要はありません。
68番の歌 助けを求める祈り
a 一部の名前は変えてあります。
b 写真や挿絵: 少人数で集まっている兄弟姉妹。エホバには,どこに住んでいても自分たちを守ってくれる力や能力があることを確信している。