世界展望
なおざりにされる聖書
◆ 聖書はベストセラーであるが,教会では聖書を読むことがなおざりにされている。このことにかんして,ニューヨークのユニオン神学校の教授,J・D・スマートは述べた。「教会では聖書はあやうい状態にある。……アメリカでは聖書学がたいへんな進歩を遂げ,聖書にかんする著作がいちじるしく増大し,たいへん読みやすい幾つかの新しい聖書翻訳が“ベストセラー”となっている世紀に,聖書を説教の基礎として用いる説教者の苦悩は増大し,教会で聖書を教えることは影をひそめる一方で,教会員のあいだに見られる聖書の内容にかんする無知ははなはだしくなるばかりである」。
“最後の戦争”か?
◆ ベトナム戦争が終結に向かいつつあることを述べたニクソン米大統領は最近こう語った。「実際,もう一度戦争をしようなどとは,とても考えられない。おそらくこれこそ最後の戦争であろう」。かなり昔のことだが,アメリカの別の大統領ウードロー・ウィルソンは,第一次世界大戦は「戦争を終わらせるための戦争である」と語ったものである。
より多くのものを盗む従業員
◆ 1971年中,アメリカの組織暴力はこの国の産業界に5億ドル(1,800億円)の損害をもたらすと推測されている。が,こうした犯罪行為を嘆く人々も多くが実際はそれよりもはるかに多額の損害をもたらす犯罪に力を貸しているのである。それは雇用者の現金や商品を盗む従業員である。1971年中,こうした従業員の盗みにより,米国産業は40億ドル(1兆4,400億円)余の損害をこうむるであろうと推測されている。
牧師の減少
◆ 過去25年間に,英国ウェールズの組合教会の牧師は420人から264人に減少した。現在,この派の332の教会は牧師が空席のままになっている。
司祭の減少
◆ バチカンからの最近の報告によると,1970年の司祭の数は1968年当時より1,476名少なかったことが明らかにされた。僧職を授与された人の数が12.5%減少したのはさらに重大なことである。こうした傾向はカトリック教会に深刻な問題を引き起こしている。
妊娠中絶を是認する諸教会
◆ 最近,カナダ合同教会の第25回総会は,妊娠中絶は「特定の医学・社会・経済上の事情のもとでは倫理的に正当と認めることができる」と宣言した。同総会はカナダ政府に対し,妊娠中絶を刑法から除外するよう要請した。アメリカのルーテル教会も類似の立場を取り,こう言明した。「福音主義の倫理観に立脚し,女性あるいは夫婦は,妊娠中絶の処置を求めるかどうかを責任をもって決定できよう」。こうした見解は,人間の命を尊重せよとの聖書の命令に反するものである。
広まる狂気
◆ 最近,ワシントンの国会議事堂に爆弾が投げ込まれ,その一部が破壊された事件ののち,社説記者S・オルソップはこう評した。「[ベトナム]戦争がたとえ終わったところで,わが国の無分別の流行病を終わらせることができるかどうかあやぶまれる。貧困者と同様,狂気じみた人間はいつもわれわれの社会につきまとってきたが,その数は今日では以前にもまして多くなっているかに見える。その狂気のさまは自力でふえる疫病の様相を呈している」。
増大する離婚率
◆ 1960年代のアメリカでは離婚率が著しい上昇を示した。1960年には結婚1,000件につき離婚者35人であったが,1970年,その割合は結婚1,000件につき離婚者47人で,33%の増加となった。
ふえる自殺者の割合
◆ オーストラリアでは,1955年から1965年までの10年間に自殺者の割合が10万人につき13.1%から18.5%に増加した。女性の場合その割合は3.4から10.8%にふえた。このため,オーストラリアは自殺者の割合の点で世界最高の国の一つとなった。フランスのその割合は10万人につき15.3%,アメリカは10.8%である。フランスの自殺者の半数以上は17歳から25歳までの年齢層の人々である。オーストラリアのサンデー・メール紙はこうした自殺の主因として「社会的孤立,失業,経済的無能,アルコール中毒,麻薬の常用,死もしくは遺棄による愛する者との離別」をあげている。
ロールスロイスの教訓
◆ 英国の首相は,ロールスロイス社の破産は経済上重要な教訓を世界に与えるものになったとして次のように述べた。「経営者は,引き合わない条件で仕事をいつまでもやってゆけるという妄想を捨てねばならない。労組は,会社あるいは産業界に及ぼす影響を考えずに,また,消費者の負担となる価格を考慮せずに際限なく給与の増額を要求できるという妄想を捨てねばならない。政府は,採算の合わない冒険事業に納税者の税金から絶えず補助金を与えることによって繁栄への道を見いだせるという妄想を捨てねばならない。われわれすべては,将来をいわば抵当にいれることによって今日の問題を解決する道を買い取れるとする妄想を捨てねばならない。それは容易な解決策と思えるかもしれないが,今やわれわれはそれが致命的な道であることを知っているのである」。
英国の新しいお金
◆ 1971年2月15日付で英国は十進法に基づく新通貨を採用した。こうしてこの国の通貨を改革しようとする300年来の努力がついに結実した。英国を訪れる人ならだれもが認めるとおり,ポンド・シリング・ペンスから成るこの旧来の通貨は世界でも最も複雑なものの一つとされていた。今やこの通貨は1ポンドを100ペンスとする簡単なものになったのである。同時に,かなりの重さのあった英硬貨も平均してこれまでの半分以下の重さになることになった。18か月間の転換期中は,新旧両通貨が通用する場所もあるので,ある程度の混乱が予想されている。
エチオピア教会の危機
◆ 最近のニューヨーク・タイムズ紙によれば,エチオピア正教会が「危機にひんしている」とのことである。同教会はその影響力の大半を失いつつあるが,都会の教育のある若者たちのあいだでは特にそうである。同教会は十七,八世紀中,エチオピア全土の3分の1を所有し,後にそれを司祭に分配したため,相当の土地が司祭たちの所有地となっている。また,司祭には結婚が許されているゆえ,司祭は自分たちの土地をむすこに譲り渡すことができた。そして,それらむすこたちが司祭になると ― エチオピア人70人につき一人がそうするのだが ― その所有地は免税の扱いを受けるのである。