世界展望
緊張の世代
◆ 気分を落ち着かせ,鎮静作用のある薬品を使用する人は急増している。西欧および米国に住む大人の約15%は,今や,入手可能な数多くのそうした薬品の一つにすぎないバリウムを常用している,と伝えられている。一昨年,米国だけでも,バリウムのための処方せんが5,700万枚も書かれた。この数字は,「我々があたかもノイローゼにかかった国民であることを示しているかのようである」と,ニューヨーク・サンデー・ニューズ紙は述べている。
増える高齢者
◆ 社会保障関係者によると,1940年当時アメリカでは,20歳から64歳までの労働年齢にある人100人に対し,65歳以上の高齢者は11.7人であった。今日では,その割合は100人に対し18.3人である。現在の率でゆくと,数十年後には,労働年齢にある人100人に対し30人近くの高齢者がいることになる。なぜこれほどの増加を見たのだろうか。それは,1960年以来,15歳から44歳までの婦人一人当たりの出産予想数が3.7人から1.85人に減少したからである。出産の割合がこのように半減したのに対し,保健対策が向上したため,より多くの人が長生きできるようになった。
子供と母親に益となる
◆ 最近の研究は,新生児が母親にゆだねられ,母親の愛を受ける時期が早ければ早いほど,その子のために益となることを示している。母親もまた,子供に対して一層深い愛情を持つようになることが明らかになった。グアテマラ市の一病院で,一つのグループの母親は,ほとんど分べん直後にその子供を与えられた。別のグループの母親は,北アメリカの大抵の病院で普通行なわれているように,分べん後12時間たつまで子供から離されていた。「かわいがったり,口づけしたり……見つめたり,赤子を抱き締めたりする」といった母親の愛情の示される時期が早ければ早いほど,子供と母親の双方にとって良いことがわかった。
コヨーテの遠ぼえ
◆ 多くの人にとって,コヨーテ(オオカミに似た草原犬)の鳴き声は非常に不気味なものだが,米国西部の牧羊業者にとって,それは特に不快なものである。毎年,幾万頭もの羊がコヨーテのえじきになるからだ。この捕食動物は,わなにかけられ撃ち殺されてはいるが,それでもほとんど痛手を受けておらず,その数は今や250万頭に上る。最近になって,コヨーテの生息地は,カナダ南部および米国東部にまで広がっている。
インフレの結果
◆ 米国の仲買業者,スペンサー・トラスク商会は,最近,過去二年間における日用品とそれらの価格の上昇率を示す一覧表を作成した。二,三の物の価格の上昇率に注目されたい。フィルムの現像料22%,ワイシャツのクリーニング代25%,郵便料金25%,犬の鑑札料33%,ピザパイ一切れ36%,くつみがき80%,物ごいやこじきの典型的な要求額150%などである。
英ポンドを“救う”
◆ カンタベリー大主教ドナルド・コーガンは,最近英ポンドの価値が激減したことを憂慮して,神の助けを求めた。同大主教は,危機に陥っている通貨のため「熱心に祈る」よう,教会員に勧めた。
絶滅にひんするサイ
◆ 現在かろうじて生き残っているスマトラサイの数は,わずか30頭から50頭と推定されている。その上,この動物が絶滅を免れる唯一の希望は,北部スマトラのグナング・リュセール保護区に託されているように見える。サイが絶滅にひんしているのはなぜだろうか。一つの点として,人間の居住区が広げられたため,スマトラサイの生息地が失われてきたことが挙げられる。しかし,世界野生生物基金(WWF)の伝えるところによると,媚薬になると言われるその角を得るために,ハンターはサイを絶滅状態に追いやった。
自家製びん詰めの危険
◆ まれではあるが,家庭でびん詰めを作る際,ボツリヌス中毒の原因となる菌が混入することがある。酸度の低い野菜,魚,肉などをびん詰めにする場合,特にその危険が多い。大抵の果物はこれに含まれるが,酸度の高い食品は,びん詰めにしたものを湯沸しに入れ,ふたをせずに高温で処理すれば安全である。しかし普通,酸度の高い食品と考えられているトマトのびん詰めを作る場合でも,ボツリヌス中毒の発生するおそれがある。なぜだろうか。それは,トマトの酸度が,品種,栽培された土壌,そしてびん詰めにした時の熟れ具合などに大きく左右されるからである。米国農務省によると,酸度の低い食品をびん詰めにする際には,びん詰め用の圧力がまを使うべきである。レッドブック・マガジン誌は,さらにこう警告している。「びん詰めに関する確かな情報源が,特定の食品を調理および処理することに関して勧めている方法,時間,そして温度などに従うべきである」。
英国の由緒ある邸宅
◆ 英国の由緒ある邸宅はインフレの犠牲になっている。USニューズ・アンド・ワールドリポート誌によると,中規模の田舎の邸宅でも年間維持費は,1951年の6,400㌦(約200万円)から現在の5万㌦余り(約1,500万円)に上がった。「由緒ある邸宅の所有者で,その邸宅を有料で一般公開する人は増えている」と同誌は述べている。「そうした邸宅を壊してしまう人もいる。1930年以来,英国政府が重要文化財に指定した建物のうち,約1,400戸が取り壊された。1975年には,英国だけでさらに279戸を解体するための申請がすでに出されている。
窓ガラス泥棒
◆ 泥棒は,大きなネジ回しで,一分足らずの間に,窓ガラスを手際よく盗むことができる。しかし,なぜ窓ガラスなどを盗むのだろうか。昔の材料でできている古風なステンド・グラスが,米国で非常に人気を集めているからである。事実,美術的価値のある窓ガラス一枚が数百㌦で売れることもある。ところで,こうしたたぐいの盗難はどれほど多いだろうか。イリノイ州シカゴの建築用古物商はこう述べている。「当市で取り引きされる古ガラスの半数は盗品である」。ステンド・グラスは芸術品とみなされるので,自家居住者が掛ける普通の保険では,絵画などに適用される非常に金のかかる追加条項が保険証書に付されていない限り,被害額の全部が補償されることはない。
ヨガの危険
◆ 去年の6月1日,米国ミシガン州アン・アーバーに住むヨガ教師ロバート・アントスクズシックは,知人たちに星気体射出を試みると述べて自分の部屋に引き込もった。その状態になると,人の“魂”は,宇宙の“星気体平面”を行き巡ると言われている。ところが,29歳のアントスクズシックは,二日後には死んでいた。その死体は,深い瞑想に入るヨガの姿勢を取ったまま発見された。伝えられるところによると,この若者の健康状態は良好で,酒も飲まず,たばこも吸わず,麻薬を使うこともなかった。病理学者たちに若者の死因は分からなかったが,アントスクズシックは非常に深い瞑想の域に達し,心臓の動きが著しく弱まったため,脳に十分の血液を送れなくなったのではないか,と述べる学者もいる。
広く使われている言語
◆ 中国語は,最近発行された,主要言語一覧表の筆頭に挙げられている。7億5,000万人が中国語を話す。第二位は英語で,3億5,000万人によって使われている。その次はヒンディー語で,2億5,000万人,スペイン語は第四位で2億2,000万人,第五位はロシア語で1億4,500万人によってそれぞれ使用されている。
従業員の中の犯罪者
◆ 米国では,従業員による不正が驚くべき割合に達した。インダストリー・ウィーク誌の中で,マイケル・L・ジョンソンはこう述べている。「一観察者は,工場や事務所で働く人の約半数は多少とも盗みをしており,大量に盗むとみなされた者は5%から8%いると述べた」。自分が犯罪者となっていることを知っても,改めようとしない人がいるのではないか,とさえ思われるであろう。敬虔な人々は,「すべてのことにおいて正直に行動」する。―ヘブライ 13:18。
テレビ視聴記録
◆ 今や日本人は,テレビを見ることにかけて世界記録を保持している。日本人は,平均して毎日7時間17分テレビ番組を見るが,それに比べ,カナダと米国の住民は6時間11分をテレビのために費やしている。
外科用のホッチキス
◆ 最近ある外科医は,家庭にあるホッチキスに似た器具を用いるようになった。それは,カートリッジに入った絹の縫い糸を使う器具である。伝えられるところによると,手術室での時間と費用の節約が利点として挙げられている。また,表皮組織の創傷が少なくなる点も挙げられたが,それは多くの患者にとって手術後の回復が早くなることを意味している。
貿易の減少
◆ 国際通貨基金の年次報告は,1975年上半期の世界の貿易量が低下したことを明らかにしている。著しい増加が見られたのは,産油国の輸入量だけであった。1975年上半期には,工業国の輸出量は減少を見た。
黄道十二宮
◆ 初めてのこととして,黄道十二宮図が,中国で発掘された天文図の中に見いだされた。それは,河北省で最近発掘された12世紀の墳墓の天井に見られる。その図には,中国式の天体図と,西洋でよく見られ,バビロンに起源を持つ,十二の星座の分け方を書いた黄道十二宮図が含まれていた。
危機にひんするアフリカゾウ
◆ 野生動物の専門家たちは,十年以内にアフリカゾウが絶滅にひんするかもしれないとの懸念を表明している。なぜだろうか。一つには,ゾウの生息地が広範にわたって人間の住居および農耕地に転用されつつあるからであり,それに加え,増大する象牙貿易にこたえるために多くのゾウが不法に殺されているからである。1930年から1970年までの間,ケニアの象牙輸出高は年間2万ポンドから9万ポンドであったが,その後急増し,1973年にはケニアだけで90万ポンドの象牙を輸出した。この事実は,需要の増大を物語っている。1969年当時,象牙の価格は1ポンド当たり2㌦80セントであったのが,1973年までには1ポンド当たり約36㌦に上がった点も注目に値する。1970年までは,自然死したゾウのきばから取る“発見された象牙”で需要の大半が満たされていた。
1,900年前の宮殿
◆ メソポタミヤの女王の宮殿であったと考えられる二階建ての建物の遺跡が,エルサレムの旧市街で最近発掘された。神殿のあった場所の南方に位置し,約1,000平方㍍を占めるこの建造物は,ユダヤ教に改宗したヘレナ女王によって建てられたものと思われる。同女王は,イエス・キリストがその地方で宣教を開始した西暦30年ごろエルサレムに住んでいた。この発掘計画の責任者ベンヤミン・マザールは,西暦70年にローマ人がエルサレムの神殿を破壊した際,この宮殿も共に破壊されたと考えている。