世界展望

迫害者の二枚舌

◆ 「ばかばかしい」。南アフリカ駐在のマラウィ大使は，マラウィ政府がエホバの証人を迫害しているとの非難に対してこう述べた。しかし，N･T･ミゼレ氏は，さらにこう続けた。「同組織の会員であることを断念する覚悟ができている限り……彼らは何も恐れることはない」。ケニアのイースタン･プロビンス･ヘラルド紙は，次のように報じている。「ミゼレ氏は，マラウィでは同組織が禁令下にあることを認めたが，自分は禁令の明確な理由を語る立場にはいないと述べた」。

エホバの証人の唯一の罪が，同国でただ一つ合法とされている，バンダ大統領の政党の党員カードの携行を，中立の立場ゆえに拒絶したことであると認めるのは，確かにきまりが悪いに違いない。「わたしに言えることは，そのような組織の存続を許すのは国益に反するということだけである」と，ミゼレ氏は語った。エホバの証人には，どんな刑が課せられるかと尋ねられ，同氏はこう述べた。「禁令下にある組織に属することは刑事犯ではあるが，判決の詳細は各々の場合によって異なる」。幾千人ものエホバの証人は，強制収容所のようなところに拘留され，子供たちから引き離されている。

侮辱されたブタ

◆ サイエンス誌の最近号のある記事には，「ブタに予防接種を施すべきか」という見出しが掲げられている。米国ニュージャージー州，フォート･ディックスで“豚流感”が発生して以来，世界保健機構と米国農務省は，病気の源と思われるブタの間でこの病気を抑えることは可能であると唱えている。しかし，サイエンス誌の述べるところによると，この見解は「養豚業者の同意を得ていない。彼らは，ブタの病気によって人間が脅かされていると見るよりも，人間の病気によってブタが脅かされているとみなす傾向がある」。事実，全米家畜食肉委員会は，「“豚流感”という呼び名に強く反対しており」，“香港風邪”などの名付け方に倣って，“ニュージャージー風邪”というような地理的名称を使用するよう提案している。ニュージャージー州当局は，「その栄誉を辞退した」。

無事だった斜塔

◆ 去る五月，北イタリアを襲った悲惨な地震は，最も被害の大きかった地域から300㌔余り離れたピサの斜塔をも揺り動かした。しかし，800年を経た斜塔は被害を免れ，垂直線から5㍍傾くその傾斜にも変化はなかった。当局は，その“弾力性”を喜んだ。

政治と聖人

◆ 去る五月，ナポリの守護“聖人”ヤヌアリウスの乾いた血が，予定の日に溶けなかったため，同市のカトリック教徒は災難が差し迫っているのではないかと案じている。問題は，「クリスチャン生活を妨げる異教主義復興」である，と地元の大司教ウルシ枢機卿は述べている。伝えられるところによると，まだ血が固まっているのは，イタリアにおける共産主義の台頭と最近の選挙でのその政治運動をヤヌアリウスが是認していないことを示すと信者たちは解釈していた。

最も小さな役者

◆ 運動中の原子が最近，初めて撮影されたと言われている。比較的大きなウラニウム原子の撮影に，1,000万倍の倍率を持つ走査電子顕微鏡が用いられた。米国シカゴ大学の二人の物理学者は，最近30秒に及ぶその映画を上映した。

父親の罪

◆ 米国のある航空機製造会社は，日本における取り引きのために巨額のわいろを払っていたが，日本のある子供たちは，最近のこの恥ずべき贈収賄事件の悲しむべき犠牲者となっている。日本の関係代理店に勤める社員の子供は，運動場で行なわれる，「証言ごっこ」という遊びで，いじめられている。（英文読売紙の伝えるところによると彼らは，「その父親の上司たちが国会での喚問の際行なったと同じように，『記憶にございません』という言葉を繰り返させられている」。

ガンの弱み？

◆ 腫瘍の中を流れる血液の速さは，正常な組織内を流れる速さの2％から15％にすぎない。アメリカ医学会ジャーナル誌によると，現在ある研究者たちはこの事実を利用して，正常な組織を傷付けずに，ガン腫瘍を熱で破壊しようとしている。電子レンジの熱と同種の，高周波による熱が，被験者の腫瘍に当てられた。周囲の組織は，勢いよく流れる血液がラジエーターのように冷却作用を果たすお陰で，ほとんど傷付かずに済んだ。しかし，腫瘍内では血液がゆっくり流れているため，周りの組織より5度ないし10度も熱くなり，腫瘍は破壊された。また患者も，そうした治療から実際何の痛みも感じなかった。

アルコール飲料の払う犠牲

◆ 米国では，900万人余りのアルコール中毒患者もしくは問題を持つ飲酒家がいると言われている。パレード誌によると，同国の労働総人口の10％が飲酒の問題を抱えており，「その結果，一年で推定250億㌦（約7兆5,000億円）の損失を経済界にもたらしている」。また同誌は，毎年米国では，アルコールのために，交通事故で死亡する人が2万5,000人余り，他の事故で死ぬ人が2万人，病気になって死亡する人が2万人，自殺をしたり殺人を犯したりする人が1万5,000人に上ると伝えられている。

米国への移民

◆ パレード誌の伝えるところによると，1820年から1974年までの間に，4,671万2,725人の移民が米国に入国を許可された。その中で圧倒的に多いのは欧州からの移民で，3,588万8,309人を数え，全体の76.8％を占めている。

不振のスイス時計業界

◆ スイスの時計製造業者は，昨年，全世界で製造された時計のほぼ40％を生産した。同年の生産高は7,900万個であったが，輸出は前年に比べて22％の落ち込みを見せた。過去18か月間に1万6,000人余りのスイスの時計職人が職を失った。これは時計産業に従事する人の21％に相当する。世界的な景気の後退と金融市場におけるスイスフランの価値の上昇（1971年以来スイス製の時計はドル価格で70％上昇した）が不振の原因とされている。タイム誌は別の要素をこう指摘している。「しかし最も大きな失敗は，市場活動における不手際であった。スイスの時計業界は，電子デジタル時計の売れ行きの伸びを正しく評価しなかった」。しかしながら現在，スイスの時計業界はデジタル時計の生産に力を注いでいる。

有毒植物

◆ 1975年中に，「少なくとも1万2,000人のアメリカ人が植物中毒にかかり，中には死亡した者もいる」と，タイム誌は伝えている。米国カリフォルニア州のフォンタナに住むガイ･ハルトマン博士の作成した危険な葉の一覧表が同誌に掲載された。アザレア，オランダカイウ，ヒマの実，ジンチョウゲ，キョウチクトウ，イボタノキ，キンポウゲ，フジ，フジウツギなどの類はどの部分を食べても中毒にかかる。特定な部分を食べると危険なものに次の植物がある。ニセアカシア（樹皮，葉，若芽）; モチノキ，タマサンゴ，ランタナ（実）; セイヨウキズタ（葉と実）; ラッパズイセン（球根）; ウルシ，ダイオウ（葉）; ポインセチヤ（葉と茎）; アヤメ（葉，根，肉質部）; ゴクラクチョウカ（さや）。おとなは見なれないものをめったに口に入れないが，親は，子供が野原や裏庭で遊んでいるとき，植物を口に入れないよう十分言い聞かせるべきである。前述の植物の中には，重い病気を引き起こすものや，命にかかわるものもある。植物中毒にかかったら，医師の診察を受け，病院で治療を受けることが肝要であろう。

空気中のガソリン

◆ 石油会社の貯蔵タンクからくみ出されて自動車の燃料タンクに入れられるまでの間に，10,000㍑のガソリンにつき60㍑余りが失われると推定されている。どうしてだろうか。10,000㍑のガソリンがタンクローリーに入れられる際，10ないし20㍑ほどのガソリンが気化して空気中に消えてしまう。そして，タンクローリーが各地の給油所にガソリンを供給する際，また自動車のタンクにガソリンを入れる際にも同じ事が生じる。タンクの注入口から気化したガソリンが立ち上っているのに気付いた人もいるだろう。この浪費をなくし，毎年1億600万㍑のガソリンを節約しようと，米国カリフォルニア州は現在，特殊なノズルと全段階において回収装置を用いるよう求めている。この対策による別の益は，大気汚染が少なくなることである。

羊の“芝刈り機”

◆ 人や機械の力を用いず，静かに芝生を刈り，土地を肥よくにして欲しいと考えている，西ドイツ，ボン近辺の人々は，農業大学のある冒険好きな女学生と取り引きをしている。彼女は，一シーズン8㌦（約2,400円）以下で，空腹の“芝刈り機”を貸す，“羊の賃貸し”を始めた。すでに幾百匹もの羊が，個人や会社，さらには学校にまで貸し出された。それらの顧客は，シーズン中，0.4ヘクタール以上につき少なくとも5匹の羊を飼うことに同意している。この若い事業家は，賃貸料を当てにせず，芝生を食べて太った羊を，秋に肉屋や畜産家に売って利益を得るつもりでいる。

中国の廃物利用

◆ 中国は最近，肥料，およびメタンガスの原料として使用するため，香港から人間の固型の排出物を輸入し始めた。ガスは家庭の照明のために用いられる。

馬のカムバック

◆ 米国オレゴン州において，訓練された一つがいの農場馬の値段は四年前にはおよそ500㌦（約15万円）だったが，現在は5,000㌦（約150万円）にもなっている。それに，需要も大きい。なぜだろうか。機械化された農機具と燃料費の大幅な値上がりのため，多くの小規模農業経営者は馬を見直すようになった。ベテランの訓練家である，L･L･ラムゲイはこう述べている。「馬は所有地に生える牧草を食べるし，どこか具合が悪くても，大抵自然に直ってしまう。農場のために肥料を供給してくれるし，子を生んで増えもする」。別の利点について彼はこう述べている。「これらの馬は，2歳から，16，7，8歳ころまで，一日中よく仕事をする。維持費がほとんど，あるいは全くかからずに，それほど長く動くトラクターがあったら教えて欲しい」。

科学技術は犯罪を助長する

◆ 偽札を造る者が自分たちの仕事を，ほとんど気付かれずに行なえる方法を発見した。写真複写機で造られ，色鉛筆で修正された偽造の一万円札は，「非常に精巧にできていて，偽札担当の警官でさえ薄暗い場所では本物の紙幣と区別ができなかった」と，英文読売紙は述べている。印刷局の当局者は，1958年に発行された同紙幣に関して，非常に精巧な印刷技術のため偽造される心配はないと断言した。今や当局者たちは，偽札を造る者たちが新しいカラー写真複写機を試用したらどうなるだろうかと心配している。

スケートボードの流行による犠牲者

◆ 1975年中，スケートボードによる事故のため病院で治療を受けたアメリカ人の数は，前年の九倍に激増し，推定2万7,500人に達した。政府の記録では8人の死者が出た。全米防災協議会は，すべての街路と，街路へ向けて下り坂になっている私道でスケートボードを使わないよう人々に忠告している。