世界展望
火星人はいるか?
◆ 火星に生命の存在する可能性についてひとしきり報道された今,何らかの結論が出たであろうか。米国航空宇宙局アメス研究センターのバンス・オヤマは,火星着陸船による実験で明らかになった,一見矛盾と見える事柄を説明するのに「生物学的な過程」(生命)「を持ち出す必要はない」と語った。サイエンス・ニュースによれば,オヤマは「すべての事実と一致し,しかもみごとに一致する」と彼の主張する無生物説を打ちたてた。
コンゴにおける手術
◆ ベルギーの新聞デ・スタンダールへの手紙の中でル・コンプテ博士という人は次のように書いている。「コンゴでわたしは3,000件以上の手術を行なったが,輸血をしたことは一度もない。しかも死亡した患者は二人だけである。輸血をしたくても必要な設備を欠いているために血液型を判定できないというのが実情である。我々は修道女のものであるストーブの上の大きな鍋で手ずから作った生理食塩水[殺菌した水に食塩を加えたもの]を使った。手術中にこの液を一度に一滴ずつ患者に与える。死亡した二人の患者は輸血をしても助からなかっただろう。彼らは絶望的なケースだった」。
血液の代金
◆ インドにおける血液売買に反対する赤十字の運動を報じたニュー・デリーのラジェンドラ・バジパイ記者は次のように述べている。「職業的な売血者の大多数は貧しく,彼らから血を買う患者に血清肝炎をうつすことが多い」。「大都市の病院の近くでは,血液を求める患者の縁者に“ブローカー”が接触して,職業的な売血者をあっせんする」。これらの職業的な売血者は「一単位[250立方センチ,約250CC]26ドル(約7,800円)を請求することがしばしばである。―これはインドでは大きな金額で,多くの勤労者の一か月分の給料に相当する」と彼は述べている。
窓のしっぺい返し
◆ 英国でクリケット競技場の観客席の窓にれんがを投げつけた少年は,窓にしっぺい返しをされた。それは割れないタイプのガラスで「れんがははね返って少年の足に激しく当たった」とロンドンのデーリー・エキスプレス紙は伝えている。しかし少年の母親はこれを蛮行に対する正当な仕返しとは見ずに,このような“危険な”ガラスを使うことは“犯罪行為”であると不平を言った。母親がこのような態度では「息子の行動も怪しむには足りない」とサセックス州の警察部長ジョージ・テリーは感想を述べた。
死者のために火を燃やす
◆ 香港で最近行なわれた死者のための祭りには157件の山火事というおまけがついた。「墓のそばで線香 ― つくりものの金色の紙幣 ― を燃やし,食物を供えて死者を祭るのが中国人の伝統である」とAP電は伝えている。火のついた線香を振る時,注意するようにとの訴えが公になされたにもかかわらず,約400エーカー(約160ヘクタール)の松林を焼失し,25万本近くの樹木を台なしにした。
危険な長髪
◆ 長髪をしたカリフォルニア州の,あるコックはヘアスタイルについて考え直したかもしれない。休みの時間にトラックを修理しようとして車の下にもぐり込んだ時,24インチ(61センチ)もある長髪が回転するドライブシャフトに巻き込まれた。まゆ毛の上の頭皮全部をはぎ取られ,頭蓋骨も折れ,片方の耳をもぎ取られてしまった。しかしサンフランシスコの神経外科医と整形外科医6人が17時間に及ぶ顕微鏡外科手術で,からみ合った血管を元通りに直し,頭皮を再び植えた。「ゆで過ぎの,まだ乾いていないスパゲッティを見たことがありますか」。損傷した血管を描写して外科医の一人はこう語った。「それはとても扱いにくい。すべってしまって,つまむことができず,手が震え出す。午前3時ともなればなおさらである」。これは頭皮の再植に成功した,米国で最初の例と言われている。
血液と外科手術
◆ ニューヨークの外科医広瀬輝夫は「輸血をしなかったために患者を死なせたことは一度もないと物静かに言明している」とパレード誌に報ぜられている。同医師は4,500人のエホバの証人の手術を手がけた。またほとんど血液を使わずに何千人という他の患者の手術も行なっている。「エホバの証人に関連した広瀬医師の医療は他の患者の益にもなった」と同誌は述べている。輸血には,たとえ最小のものにせよ,肝炎その他何らかの有害な副作用の危険が常にあるからだ」。パレード誌の伝える広瀬医師の見解によると,輸血は「注意深く手術を行なうことによって避けられる場合が多い。エホバの証人であってもなくても,同医師は肺全部の切除や足の動脈からバイパスを作る手術などでさえ,輸血をほとんどしない」。
● ファミリー・ヘルス誌は輸血の害に注目して次のことを伝えている。「過去10年以内に推定3万人が血清肝炎(B肝炎とも呼ばれる)のために死亡し,さらに何千人が汚染された血を輸血されたために回復不能の肝臓障害に悩んでいる」。―1977年3月号36ページ。
特異な犯罪対策
◆ 日本の暴力団の多くは米国のギャングと同様,起訴をうまく免れている。そこで大阪の警察では犯罪と戦う日本独得の武器として社会からの追放という方法を用い始めた。警察の勧めによって親は子供を暴力団員の子供と遊ばせないようにする。主婦同士の伝統的な親しいあいさつもせず,商店は暴力団員の家族に冷淡にする。
暴力団の年長のリーダーが突然,警察に呼ばれ,椅子にひとり座らされて説教され,組を解散するように説得される。「うとんぜられ,社会的に孤立していることを感じさせて……彼らの泳ぐ海を変えるのが我々の狙いである」と,ある警察の署長は語っている。
充電されたみつばち
◆ みつばちが植物の授粉に効果的なのはなぜか。ファーム・ジャーナルの最近号に載せられた研究報告によれば,ひとつの答えはミツバチが電気を帯びていることにあるらしい。ミツバチは一日の初めには「陰電気をやや帯びている」という政府の昆虫学者の発見を同誌の記事は伝えている。「しかし湿度の低い,よく晴れた暖かい日の午後早くには,1.5ボルトにも達する陽電気を帯びていた」。ある植物はその時刻に陰電気を帯びるので,反対の電気を帯びていることが「効果的な授粉に役立つのではないか」と科学者は考えている。
“別のエネルギー危機”
◆ 開発途上国の多くにおいて薪不足の事態がひろがっている。1973年末に灯油や他の石油製品が大幅に値上がりして大衆の手に届かなくなって以来,驚くほどの早さで木が切り倒されている。アフリカン・ディベロップメントは次のように報じている。「マリやチャドのような国でバマコあるいはヌジャメナから50あるいは100㌔も行けば,薪の山があったのはそう昔のことではない。今では150㌔遠くまで行かねばならない。しかも薪は急速に減少している」。「ポットは暖めるよりも満たすほうが安い」ということわざがオートボルタにある。
ペットにも眼鏡
◆ パリのペット愛玩者またパリに行く気があれば他の人でも,近視の動物のために眼鏡をあつらえることができる。眼科医デニス・レミエールは彼女のペットのドーベルマンが近視になった時,その事を思いついた。網膜を調べる光学機械を使って彼女はレンズを処方し,またレンズを支える枠を考案した。「慣れるための短い期間が過ぎれば,ペットは完全に眼鏡になじむ」と彼女は確言している。
バングラデシュにおけるガン
◆ インド医学研究会議の報告によると,バングラデシュではガンのために毎年6万人の死者が出ている。口腔ガンの非常に多いことが注目されているが,それはなぜか。カルカッタのアムリタ・バザール・パトリカに載せられた報告によれば,これらのガンの多くは「びんろうの実と葉をライム果,たばこと混ぜてかむバングラデシュの習慣が原因である」。
アラブ人の感謝
◆ サウジアラビアで働く一英国人は,砂漠に墜落した飛行機から二人のアラブ人のビジネスマンを救助した。ところが彼らの感謝の仕方に閉口してしまった。AP電によると,彼らは14歳から16歳までの娘4人を彼に与えようとしたのである。彼には妻と5人の子がすでにある。彼は次のように語っている。「もしそれを断わるなら,ひどい侮辱とみなされ,刑務所あるいはもっと重い罰を受けるかもしれないと言われた」。彼の会社は直ぐに飛行機で彼を英国に送り帰した。彼はお礼の申し出が無効になる4月1日まで英国に留まることが必要だった。その日を過ぎれば,アラブ人は彼に他の物を贈り,しかも面目を保つことができる。
偽造犯人の共犯
◆ 新式の精巧なカラー複写機を使って紙幣を偽造するのに加えて(1976年9月22日号「目ざめよ!」,31ページ),悪知恵にたけた偽造犯人の中には小切手を偽造する者もいる。解雇されたことを恨んだ元従業員は彼女の最後の給料である小切手を12枚も複写して現金化した。これや他の事件が重なったため,米国法務省の係官は,複写機の性能の向上で,「ずぶのしろうとにも偽造が可能なほどである」とぼやいている。法務省では,「犯罪に使われないように複写機をもう少し精巧でない」ものにすることをメーカーに要望したいところであるとタイム誌は伝えている。しかしあるメーカーのスポークスマンのいわく,「銀行強盗がシボレーに乗って逃げたからといって,ゼネラル・モーターズの責任にする人はいないでしょう」。
ゴキブリ退治
◆ 殺虫剤を使ってもはびこるゴキブリに手をやいたニューヨークのアパートの住人3人は,東南アジアから駆除の専門家を取り寄せた。「彼らはナキヤモリ ― 黄色がかった薄緑の輝く小さな目と,ぎらぎら光るオレンジ色の水玉模様をした,そして昆虫をむさぼり食う長さ1フィート(約30センチ)のヤモリを買い入れた」とニューヨーク・タイムズ紙は伝えている。ヤモリは夜になると冷蔵庫の下の住みかから出てきて,ゴキブリの大群を食べた。「夜になるとゴキブリをかみ砕く音が聞えた」とアパートの住人の一人は語った。「最初はそれで目が覚めたが,数日で慣れてしまった」。2,3か月後にはヤモリのお陰でゴキブリの数は手に負える程度」にまで減少した。
もうひとつの地下墓所
◆ ローマにある有名なクリスチャンの地下墓所には何百万人の観光客が訪れているが,同時代のユダヤ人の地下墓所は,バチカンが一般公開を差し止めてきたためにほとんど知られていない。しかし1929年にバチカンとムソリーニ政府の間に結ばれた政教条約がこのたび改訂された結果,ユダヤ人の地下墓所はイタリアのユダヤ人社会に引き渡されることになった。1世紀から4世紀にかけて何千人に上るユダヤ人がそこに埋葬されたと言われている。碑文のほとんどは当時のユダヤ人が話したギリシャ語で記され,クジャク,海の怪物など異教のシンボルがユダヤ人の伝統的な燭台,ラッパ,巻物などと並んで壁を飾っている。