世界展望
世界を台なしにした年
◆ 「ニューヨーク・タイムズ紙の報道した20世紀の戦争と平和」は,この世代の戦争を扱った有名なニュースの見出しのページを新しく編集したものである。その第1ページには,次のような興味深い背景となる情報が載せられている。
「1815年にナポレオン戦争が終結して以来,ほぼ1世紀は国際的な大戦争はなかった。19世紀には科学や発明において驚異的な進歩が見られ,同時に大規模な産業が成長して,有用な産物が実に豊富に生み出された。人類は平和と繁栄が世界に行き渡る段階に到達したのではないか,と人々は考えた。
「しかし今世紀初頭におけるそうした展望は,一つの爆発によって打ち砕かれることになっていた。その爆発のために世界はそれ以来混乱と動揺のさなかにある。……1914年6月28日にその火花が飛んだ。その日に,オーストリア-ハンガリア帝国の確実な王位継承者であったフランツ・フェルディナント大公がサラエボで暗殺された。……こうして第一次世界大戦の幕が切って落とされた」。
逃げ場がない
◆ 研究者たちは,人跡まれな太平洋エネウェタク環礁の大気中から初めてヘクサクロロベンゼン(HCB)を検出した。「今や地上のどこに行ってもHCBの検出されない場所はないだろう」と,テキサス農工大学の化学主任であるC・S・ジャムは語っている。「観測された各地でこの化合物が比較的変わらないことは,HCBが非常に安定しており,長い間大気中にとどまることを示唆していると思われる」。この化学物質は,研究室の実験動物にガンを発生させることが知られている。十指に余る工業過程からこの物質が副産物として生じる。例えば合成ゴムの製造過程がそうである。
1,710の言語で訳される聖書
◆ 英国のロンドンにある聖書協会によると,聖書中の少なくとも1冊の本は1,710の言語で入手できる。同協会の報告によると,1980年には新しく27の言語による聖書の部分訳が世に出,聖書全巻は今275の言語で読めるようになっている。「世界記録のギネスブック」は,推定25億冊の聖書が出版されていると述べている。
激しさを増すアドベンティスト派の論争
◆ 「女性創設者の盗作に揺れるアドベンティスト派」。米国のアトランタ・ジャーナル・アンド・コンスティテューション紙は上のような見出しを掲げた。この論争は同派の主立った創設者であるエレン・G・ホワイト夫人の著作に関連して最近明らかになった事柄をめぐるものである。ホワイト夫人は,1844年から1915年までの自分の著作は自分の見た様々な幻に基ついていると主張していた。その幻の中で,彼女は神の声を聞き,聖書の教理から食べ物や服装といった事柄に至るまでのあらゆる物事に関する教えを受けたとされている。しかし,アドベンティスト派の学者たちにより,同夫人の著作が「これまで考えられていた以上の広い範囲にわたって」他の様々な資料を書き写したものであることが明らかにされた。ホワイト夫人の著作に疑問を投げかけたために,同教会から最近僧職者の資格を剥奪されたデスモンド・フォードはこう語った。「彼女の教えは誤用され,教理の基礎とされてきた。まるでそれは聖書に代わるものとされている」。
同夫人の盗作を裏付ける数々の証拠を発見して同様に僧職を追われた,アドベンティスト派の前牧師ウォルター・レアはこう言明している。「彼女はほとんど何を書くにも盗用し,それを書き写した。このことはある程度以前から知られていたが,これほど広範囲にわたるものとは考えられていなかった。今や我々が発見したところによると,それは驚くほどの範囲に及んでいる。その大半は彼女の神学の正に核心を成すものである」。レアは,「あきれるほどの量」の盗作がなされている事実が一般の教会員に隠されている点を指摘し,こう言葉を加えている。「そのようにすること[隠すこと]は事実を率直に告げる以上の害をもたらしている。問題は消えてなくなるどころか,一層深刻になってゆくであろう」。
狂気の戦争熱
◆ 様々なグループによる年次調査報告書,「世界の軍事費と社会支出」によると,諸国家は昨年,5,000億㌦(約120兆円)以上を軍備費につぎ込んだ。米ソ両超大国だけでも既に約5万基の核兵器を保有している。これは,世界を幾度も絶滅させることのできる量である。それにもかかわらず,両国は毎日合わせて7億㌦(約1,680億円)以上を費やして軍事物資を蓄積している。
『我がもの顔の悪人たち』
◆ 「警察,裁判所,刑務所のいずれも既にお手上げの状態であるというのがニューヨークの犯罪事情に関する厳しい現実である」とニューヨーク誌は伝えている。同誌によると,ニューヨーク「は今や犯罪者に対して無防備な都市となっている。現実的かつ継続的に法律を施行することはもはや行なわれていない。発生する犯罪の件数だけでも,1970年以来人員が3分の1近くも削減された警察の手には負えなくなっている。犯罪者はうようよしているのに,それを捕まえる警官の数が全く足りない。告発する検察官も,審理を行なう法廷も,犯罪者を収容する刑務所も足りない」。
統計はこうした主張を裏付けているようである。殺人事件は1960年の390件から1980年の1,787件へと急増した。ニューヨーク市の人口は過去10年間に100万人減少したが,殺人事件の件数は60%も増加している。ニューヨーク市では路上の暴力犯罪や抱きつき強盗が年間8万2,572件,1日平均226件発生しており,発生件数では今や全米第1位となっている。住居侵入事件は1日500件以上も発生している。
同誌はさらにこう述べている。「銃や刃物を用いた殺人,傷害,強盗事件がひん発し,その度にパトカーが出動するため,他の暴力事件の被害者や目撃者たちは待ちくたびれて家に帰ってしまう」。犯罪統計にも驚かされるが,実際の犯罪はもっと発生しているのだが,被害者の多くはそれを通報してもむだだと考えている,という点も指摘されている。
行儀の良い子供たち
◆ ニューヨーク・タイムズ紙の北京特派員は次のように伝えている。「中国を訪れるアメリカ人は,ほとんどどの子供たちも行儀が良いことに感銘を受ける。実際このことに驚かされることさえ少なくない。おとなしく,素直で,先生の指示にすぐ従う。アメリカの子供のように大げんかをしたり我を張るようなことはめったにない。また,アメリカの多くの子供は不安や緊張感を抱いている兆候を示すが,ここの子供にはそうした兆候もほとんど認められない。中国の子供は泣き騒いだり,かんしゃくを起こしたり,親指をしゃぶったりするようなことはない」。
中国の人はどのようにして子供をこれほど素直に育て上げるのだろうか。子供に対する親の親近感にその原因があると考えられている。また,一般に大勢で生活するため,子供はあまりわがままを言うことができない。学校教育の初期の段階から,素直に権威を認めてそれに従う性格を身に付けるよう教えられる。中国を訪れたアメリカの心理学者たちは次のように感じている。すなわち中国人の親や教師は一般に温かく親切で思いやりがあるが,子供たちを教える際には,子供が自分の益のためではなくグループの一員として行動するよう訓練している,ということである。
知恵遅れの子供のためのビタミンと無機物
◆ メディカル・トリビューン誌は,米国バージニア州ノーフォークで心理学の一教授を中心とする研究者のグループが幾つかの対照実験を行ない,次のような結論に達したことを伝えている。知恵遅れの子供に8か月にわたりビタミンと無機物を特別に与えたところ,知能指数や体の成長,外見が驚くほど良くなった。例えば,以前は“ママ”といった簡単な言葉しか話せなかった5歳児は1年生用の初等読本を読み,それを空で言うことができるようになった。知恵遅れの子供のための特別教育を受けていた二人の子供は通常のクラスに戻った。特に興味深いのは,メディカル・トリビューン誌の報道によれば,ダウン症候群の子供の外見が実験の間に著しく改善されたことである。性格も良くなったことが観察されている。予期しなかったことであるが,てんかん患者である4人の子供は実験期間中一度も発作を起こさなかった。こうした子供にとって栄養がどれほど価値があるかに関する研究が今後さらに行なわれることになっている。
クレジット・カードの詐欺
◆ 最近行なわれている詐欺行為の一つに,人々の家庭に電話を掛け“バーゲン品”その他を安い値段で売り込む手口がある。電話の声の主は代金を付けにすることに同意する。それからお客にクレジット・カードの番号と期限を尋ねる。相手の住所氏名とこのようにして得た情報とをもとに,今度は本当の業者に自分が注文して品物その他をせしめるのである。
産み台
◆ 今から3,500年ほど昔,イスラエルの婦人たちは「産み台」を使っていた。(出エジプト 1:16,新)横にならずに,座るかしゃがむかして子供を産もうとする女性によって,こうした台もしくはいすは幾千年にもわたり用いられてきた。ところが,1738年にフランスの産科医が横になって分娩する方法を提唱し,西欧諸国ではそれ以来そうした方法がとられている。しかし今や,産み台は再び使用されるようになってきている。米国では,150の病院でこれが使用されている。重力の作用を利用できる姿勢で分娩することは母子の双方にとって助けになることを認める医師の数は増加している。現代の産み台はデンマーク風のいすを台座の上に取付けたものに似ている。そしてモーターで座部を高くしたり低くしたり傾けたりすることができる。
ニューヨークのレノックス・ヒル病院に勤めるワーナー・ナッシュ博士は次のように語った。「物を排出する自然の力は上から下に作用するので,女性は体を起こした姿勢を自然に選ぶものである。座位を取ると分娩は軽くて速く済み,安産である。我々は,それによって出産第2段階 ― 子宮頸部が完全に開いた後,胎児を分娩するまでの段階 ― に要する時間を50%短くできることを知った。これを使った産婦の3分の2はいきむ時間が25分以内で済んだ。残りの産婦も大半は45分以内で済んだ。これに対し,初産の場合は通常1時間から1時間半かかる」。
増え続ける日本における青少年非行
◆ 日本の社会はしつけの良いことと犯罪の少ないことで長い間世界に知られていたが,日本の関係当局は非行少年や非行少女が急激に増加していることに深い憂慮の念を表明している。昨年,法律に触れる行為をした青少年は14万3,000人に達したが,これは過去10年間で最高の数字であった。例えば,未成年者の万引きは前年よりも30%急増した。性犯罪は74%増えた。英文読売の社説は次のように述べている。「我々の社会環境は,急増する新たなタイプの犯罪を生み出してきた。例えば,麻薬等に関連した犯罪で昨年は1万8,552人が逮捕された。これは1970年の検挙者の11倍に当たる。……十四,五歳の少年による強盗や殺人,放火の増加がひときわ目につくことは警戒を要する」。同紙は,「我が国の都市が西欧の諸都市のような危険な場所にならないようにする」必要があることにも言及している。