世界展望
「スパイ」が「敬意」を学ぶ
● ノートルダム大学の英語の準教授がエホバの証人の地域大会を訪れ,受けた印象を「ノートルダム」誌上で次のように報告した。「他の宗派と接触することについては,心のどこかにまだカトリック教徒としての昔ながらの病的嫌悪感がある。多少スパイのような気もする。……大人も子供も,女は皆女性らしい服を着,男はネクタイを着用していることには既に気づいている」。彼女はプログラムを観察してこう書いている。「私はエホバの証人のもとを離れるが,四日前に持っていたよりも深い理解と敬意をもってそうするのである。混とんとした,いい加減な世の中にあって,彼らは究極的な秩序の実現を目指して努力するため一つに結び合わされている。私は,非常に熱心な顔,きちょうめんさ,世から離れていることに対する緊急感をよく考える。私は,新たにバプテスマを受けたビル・スチュワートに,なぜ奥さんと一緒にエホバの証人になることを選んだのか,と尋ねた時に彼が言ったことをよく考える。彼は,『私たちは清い組織を求めていた』と答えたのである」― 1983年5月号,14-16ページ。
武器の「不合理性」
● デクエヤル事務総長は最近の国連経済社会理事会の席上で,「[今年,]世界の軍事費は速い勢いで8,000億㌦[約192兆円]に達しつつある」と,苦情を述べた。「私の大ざっぱな計算によると,すべての発展途上国に与えられた各方面からの公式援助の年間総額は,今では全世界の軍事費の18日分に相当する」。同事務総長は,「この不合理性 ― そうとしか言いようがない ― にはどこかで歯止めをかけなければならない」と結論した。
儀式偏重に屈する教会
● 「ジンバブエのショーナ族[部族民]はカトリック教会の認可を得て,愛する死者を保護するため,死者の墓にビールをかけ,霊を呼ぶことができるようになった」と,南アフリカ,ダーバン市のサンデー・トリビューン紙は述べている。「カトリック教徒は従来この儀式を異教のものとして退けてきたが,『クチェヌラ・ムンフ』[「死者の霊魂を清める」の意]と題する小冊子は,同じ儀式ではあるが言い回しにおいてはキリストの名の付いた儀式について詳細に説明している」。同紙によれば,その小冊子は「ジンバブエのカトリックの司教6人に委託された」ものである。「今ジンバブエのショーナ族のクリスチャンは,ローマのカトリック教会から認可と是認を与えられていることを知っているので,自分たちの伝統的な部族の儀式を引き続き行なうことができる」。
● メキシコのサンフワン・チャムラに住むマヤ族のインディアンの一羊飼いは,教会の「聖人」の前に花をささげながら,「聖人は花とろうそくと香で生きておられる。この花を召し上がっていただくので,聖人は私に羊をくださるのだ」と言った。ウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道によると,このインディアンたちはここで「ミサを催し,バプテスマを受ける。しかし,同時に彼らは教会の床に座り,たばこを吸い,体をしびれさせるサトウキビ製のラム酒 ― ポッシュをがぶ飲みし,その一方で,1㌦50㌣で雇われたいやし手は頭痛をいやすための助けを,太陽の神であるイエス・キリストに懇願するのである」。人類学者は,地元の教会の64「聖人」は,マヤ族独自の神々に相当すると考えている。尼僧のルシア・ヒメネスは,たとえそうであったとしても,「チャムラのインディアンたちをカトリック教徒と考えざるを得ない」と語り,「彼らには偶像礼拝に関していささか問題がある」と付け加えた。
高熱でも平気
● 水の沸点の2倍を優に上回る温度(摂氏250度)で繁殖するバクテリアが,大洋の底の火道で発見された。生命の存在が可能であると以前に考えられていた温度の2倍以上の温度である。英国の科学雑誌「ネイチャー」は,他の動植物の大半は摂氏40度以上のところにずっと置かれると死ぬが,これらの微生物は摂氏75度という高温以下では事実上成長できないと述べている。また,ほとんどの生物が有機物と,直接あるいは間接的に日光からエネルギーを得ているのに対し,これらの生物は,通常の光合成ではなく化学合成と呼ばれる過程を用い,イオウ,マグネシウム,鉄分などの無機物から暗闇の中でエネルギーを生み出す。
自由のための「衝突」
● 「もろい自由 ― カナダにおける人間の権利と異議」という本は,カナダにおける自由に貢献した幾つかの事件について述べている。著者トマス・R・バーガーによると,一つの重要な要素は,「カトリック教会と[エホバの]証人との衝突,[ケベック州の知事]デュプレッシーとエホバの対立であった……[それによって],言論の自由と信教の自由の対立する考えが明らかになった」。この本はデュプレッシー時代(1936年から1959年まで)について伝えている。それは,「言論の自由と信教の自由のための闘争を再三カナダの最高裁判所にまで持ち出したエホバの証人たちを,教会と国家が結託して迫害していた[時代]である。……この小さなプロテスタントの一派の熱心さは[もろもろの権利と自由に関する]憲章の知的な基盤を確立することと少なからぬ関連があった」。なぜこのような闘争が起きたのだろうか。バーガーはこう答えている。「エホバの証人は神の言葉を広めるのに常に熱心であった。彼らは,他の人に自分たちの信仰を分かち与えなければならないと考えている……世界は概して無関心であり,時には彼らに敵意を示した」。
毒の力
● 「地上にいま存在する除草剤のうち,パラクワットほど強力なものはほかにないだろう」と,肺の専門家エドワード・ブロックは主張する。この人はこの除草剤の犠牲者になった人々を幾人か扱って来た。しかし,「これは世界で最も強い毒物の一つでもある」。それは肺の中に蓄積し,肺をもろくするが,それを口から入れたり吸い込んだり,皮膚につけたりする人々にきく解毒剤は存在しない。ところが,この除草剤は経済的な「不耕起」栽培(耕さずに栽培する方法)用に畑を整備する面で大変効果があるため,世界中で飛ぶように売れている。繁茂しすぎて除かれた草はすぐにしおれて保護用の根おおいとなり,毒自体は土壌に接して中性化される。ブロック博士は,制御された状況下でのみ危険は許容できると考えている。しかし,この除草剤は発展途上国で無教育な労働者たちが容易に購入できる。パラクワットによる死者は過去20年間で600人から1,000人と推定されているが,未経験な者たちの間で多く使われるようになれば犠牲者はもっと増加すると専門家は危ぶんでいる。
ピカソのいたずら
● マンチェスター・ガーディアン・ウィークリー誌の編集者に寄せられた1通の手紙は,ロンドンの画廊で最近開かれたキュービズム(抽象芸術)の展覧会に関する新聞の評について次のように述べている。「今日の芸術における奇妙なもの,人騒がせなもの,常軌を逸したものだけを望む人々について,[キュービズムの芸術家,故]ピカソは次のように語った。『そして私自身は……これらの仲間たちに彼らの欲していたものを与え,これらの批評者たちには私の頭をよぎったばかげた考えのすべてをもって満ち足らせた。彼らがその考えを理解できなければできないほど,彼らは私をほめそやした』」。ピカソは自分のゆがめられた芸術によって裕福になり,有名になったが,次のことを認めている。「私は一人になると,図々しくも,自分がその語の持つ古い立派な意味において芸術家である,などとは少しも考えなかった。私は一般大衆のためのピエロ,ぺてん師にすぎない」。(1980年10月22日号の「目ざめよ!」誌[英文]31ページも参照。)
自動車による死者が減少
● 米国における交通事故による死亡件数は昨年再び減少し,1980年には5万1,077件,1981年には4万9,125件だったのが,4万6,300件になった。これに相応して,自動車による死者の数も,1億6,000万㌔当たり2.95件に減少した。当局は,実際の走行キロ数の合計が1%ほど増加しているのになぜこうした減少が生じたのかいぶかっている。
● 最近行なわれた連邦政府による調査で,米国に住む人々の血液中の鉛の平均量が,1976年から1980年にかけて3分の1以上減少したことが明らかになった。「血液中の鉛の量が減少した理由の説明として最も妥当と思われるのは,この期間中ガソリンの含鉛量が減らされたということである」と,「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」誌に掲載された調査報告に述べられている。政府はすべての新車が無鉛燃料を用いることを求めている。大気中の鉛の大半はガソリンによるものと言われており,この4年間に,ガソリン製造のために用いられた鉛の量は半分以上減少したと言われている。
潰瘍の単純な治療法?
● ある晩のこと,イランのエビン刑務所の中で潰瘍からくる激痛に苦しんでいた一人の患者を必死で助けようとして,やはり投獄されていた医師がその時間に入手できる唯一の治療薬,つまり水を処方した。この医師は患者に約500ccの水を与えた。「臨床消化器病学ジャーナル」誌の報告によると,「患者の痛みは次第に治まり,それから8分後には完全になくなった」。この医師は他の受刑者にも実験を試み,食前30分にコップ1杯の水,そして2時間半後にもう1杯の水を処方することに定めた。この医師は服役中に600人以上の患者の快復を文書で証明でき,刑務所内の薬局では制酸剤の需要がほとんどなくなった,とその文書の最後で述べている。
「死んだ」ペットが息を吹き返す
● チワワのパーシーは車に引かれて心臓が止まってしまった。悲しみに沈んだ飼い主の父親は,その小犬を袋に入れ,英国バーンズリーの自宅の庭に埋めた。ところが,父親の飼っていたテリア犬のミッキーがその墓のある場所でクンクン鳴き続けた。パーシーを飼っていた子供の話によると,7時間後,ミッキーは「家の中に走って来て,父と母のところで鳴き続けたので二人が犬の跡を追って外へ出て見ると,パーシーが袋に入ったままそこにいた。その心臓はまた鼓動し始めていた」。このテリア犬はまだ命があるのを感じ取り,袋を掘り起こしてそれを家の方まで引っ張って来たものと思われる。パーシーの飼い主は,「この2匹の犬が普段はいがみ合っていたとは信じ難い」と驚いている。
愛煙家のための「偽薬」?
● この6月,カナダ航空の旅客機が飛行中に少なくとも23人の命が火事で奪われた事件は,旅客機の飛行中の喫煙をめぐる問題を提起した。米国航空安全協会の会長は,飛行機の手洗いにあるごみ箱で毎年約25回火を消さなければならない,と述べている。犯人は多くの場合たばこである。同会長は,「紙巻きたばこを吸うことは民間航空では禁止すべきである。もし必要とあらば偽薬を人々に与えてもよいが,喫煙は飛行機から降ろさなければならない」と述べた。