世界展望

拘束に憤慨する司教たち

米国のローマ･カトリックの司教たちは，アメリカ人のカトリック教徒に教会の教えを説く上でもっと大幅な自由を得べく闘争を続けている。全米カトリック司教協議会は最近の会合で，グループとして行動する権威を弱めることを狙ったバチカンの方針書を205対59で否決し，「他の草案に置き換えるべきである」という決議を採択した。ある司教はバチカンの提案を，「幾らお金をつぎ込んでも修理できない中古車」になぞらえた。

多くの命を奪う地震

中国の当局者は20年近くたってから，1970年に雲南省南部でマグニチュード7.7の地震が起こり，約1万人が死亡したことを公表した。この情報が明らかにされたのは，昨年の11月6日にその同じ地域を襲った地震による死亡者数が訂正された時であった。1988年のその地震では4,015人が負傷し，30万人が家を失った。死亡者数は，938人から730人に訂正された。

無血移植手術

最近の調査によって，輸血せずに腎臓移植手術を受けた患者の生存率と腎機能の程度は，輸血を受けた腎臓病患者の場合と同様であることが分かった。ミネソタ大学の研究者たちは，信教上の理由から輸血を拒んだエホバの証人と，輸血をして腎臓移植手術を受けた，エホバの証人ではない一群の人々とを対照させた。その調査結果は，トランスプランテーション誌の1988年6月号に掲載されている。

危険なヒッチハイク

ヒッチハイクをする人は金銭的には安く旅行できるだろうが，隠れた代償があることは勘定に入れていないかもしれない。それは自分の命である。ドイツの警察によると，ドイツ連邦共和国では1980年から1987年の間に，ヒッチハイクをしていた男女が57人殺害されている。そのほかに40人が「危うく殺されるところだった」と，ドイツの新聞「フランクフルター･アルゲマイネ」は述べている。ヒッチハイクには危険が多い。

暴力的な娯楽

フランスでは1週間に，670の殺人，15の婦女暴行，27の拷問，20の性交シーンがテレビで放映された。「彼ら[視聴者]は毎日，パリのような都市で1年間に発生するよりも多い殺人や他人の権利を侵す行為を目撃している」と，フランスの週刊誌「ル･ポワン」は伝えた。こうした暴力行為を見ることからどんな結果が生じているだろうか。一人の警察官は，「暴行犯人を尋問すると，婦女暴行が違法であることを知って驚く場合が多い。テレビは様々な仕方で，そうした事柄は日常生活には付き物であると考えるように仕向けている」と述べた。

コンピューター化された“閻魔大王”

冥界を支配し，善人であったか悪人であったかを裁く閻魔の像を見ても，日本の子供たちは昔とは違い，こわがって言うことを聞くというようなことはない。そこで，東京のある住職は，コンピューターを使って法乗院の閻魔をもっと恐ろしいものにすることを思いついた。高さ3.5㍍の閻魔は，さい銭を入れて12の願い事のうち一つを選ぶと作動する仕組みになっている。真っ赤に怒った閻魔の顔がぱっと照らし出されると，「うそをついたことはないか，心にとげを持ったことはないか……」などと大声で問いただす。住職は，閻魔の問いかけで人々が人格を改めるようになることを望んでいる。

トレイン･サーフィン

ブラジルのリオデジャネイロの若者たちは，命を落とす危険のあるトレイン･サーフィンという新しいスポーツを始めた。海でサーフィンをするお金がないので，高速で走る通勤列車の屋根の上に立ってスリルを求めるのだ。その離れ業は自殺行為になることが多い。電車は時速120㌔という高速で走るので，サーファーはたいてい吹き飛ばされるか，電線に触れて感電死する。1年半の間に，およそ200人が死亡し，500人が負傷したこともあった。国のある検察官によれば，若者がこの“スポーツ”の危険性を意に介さないのは，インフレと様々な社会問題に原因がある。子供を亡くした一人の父親も同様に，「ブラジルの若者たちは非常に苦しんでいる。彼らは生きる理由が分からないのである」と述べた。

避け得る死

英国の場合，避け得る死の主な原因はたばことアルコールである，と英国政府の医務長官ドナルド･アチソン卿は言う。最近発表された同長官の報告書「1987年度の公衆衛生状況について」はまた，その二つの危険にさらされている罪のない犠牲者 ― 胎児ならびに喫煙者のたばこの煙を吸い込む非喫煙者と飲酒運転の犠牲者 ― に注意を向けている。

ゼロ成長

第三世界の多くの国々が人口爆発の問題と取り組んでいる中にあって，「昨年のオーストラリアの出生率は人口ゼロ成長を11％も下回った」と，シドニー･モーニング･ヘラルド紙は伝えている。これは何を意味しているのだろうか。もし移民がなくなれば，「オーストラリアの人口の老齢化と減少が急速に進む」ことになる，と同紙は述べている。その記事によれば，過去12年間の統計は，オーストラリアの出生率が補充率をかなり下回っていることを示している。物質の財産をつくるため，より長く働けるよう出産を延ばす女性が増えていることが，出生率の低下につながっていると考えられている。

室内汚染

省エネ住宅が深刻な健康問題を引き起こしている。なぜだろうか。そうした住宅は室内の汚染物質を封じ込めるからだと，建築家であり環境調査員でもある一人のカナダ人は言う。トロント･スター紙によれば，「洗剤，香水，スプレー式の芳香剤，消毒剤，光沢剤，ワックス，接着剤などによって皮膚に炎症が起きることがある」と，同調査員は言う。オンタリオ州のロンドンにある大学病院の免疫およびアレルギー科の部長，ウィリアム･チョダーカー博士の話では，全体の15％の人々が家の中にある物に対してアレルギー反応を起こすということである。博士はその最も一般的なものとしてぜん息を挙げている。密閉された省エネ住宅では，冷暖房システムが汚染物質を循環させ，問題を大きくしている。

狂犬病の進行

ロンドンのインディペンダント誌が伝えるところによれば，狂犬病のない国は世界に七つしかない。北半球に5か国（英国，アイルランド共和国，スウェーデン，アイスランド，ノルウェー本土），南半球に2か国（オーストラリアとニュージーランド）である。しかし，最近狂犬病が発生したことから，北欧諸国の当局は，狂犬病をこれ以上広げないため北極圏内の各国に十分警戒するよう呼びかけてきた。狂犬病はすでに，グリーンランド，シベリア，アラスカを含む北極地方の風土病になっている。家畜やトナカイは今のところ影響を受けていないようだが，アカギツネ，ホッキョクギツネ，ミンク，クズリなどは，広まりつつあるこの命取りの病気の犠牲になっている。

荒らし回るバッタ

この四半世紀で「世界最悪のバッタの災い」がアフリカ北部を襲っており，その進路に当たる作物はすべて被害を受けている，と英国のエコノミスト誌は伝えている。3年前にバッタの発生を見たのはエチオピアであったが，今では65の国々がバッタの大発生に脅かされている。国連食糧農業機関は，この災いは鎮圧されるまでさらに2年間続くものと見ている。移動するサバクトビバッタは食欲がおう盛なので，毎日自分の体重に匹敵する量の食物を平らげることができる。したがって，0.9平方㌔の広がりを持つ約5,000万匹のバッタの群れは，「500人の村人が1年間に食する食物を1日で食い尽くすことができる」と，同誌は述べている。