頻繁に網羅されている区域で聖書研究を取り決める
1 日本における福音宣明の業の歴史は,49年目を迎えました。出発当時ほんのわずかであった奉仕者が今では22万人以上に増大しています。(イザ 60:22)一方,区域の事情は大きく変化しつつあり,最近では週に一度の割合で網羅することも珍しくありません。このように区域が頻繁に網羅されていることは,わたしたちにとってマイナス要因だと考えるべきではありません。むしろ,頻繁に家の人に接することにより,その人や家族に対して個人的な関心を示すことができ,その分だけ話し合う機会が増えることになります。
2 区域内には,かつて幼かった子供たちが今では成長し,その中には進んで聖書研究に応じる人もいます。また,新聞やテレビで報じられる証人に関するニュースに接し,命にかかわる事柄にさえ動じることなく忠誠を保とうとする証人たちの姿勢に感動し,聖書を調べてみたいと申し出る人もいます。さらに,これまで奉仕者たちを単なる“文書配布人”と考えていたものの,無償の聖書研究を紹介されたことにより,宣教の真の目的を初めて知った人も少なくありません。
3 それで,どんなに網羅が頻繁になっても,区域に住む人々に個人的な関心を払い,聖書研究の機会を差し伸べることは,わたしたちの責務です。福音宣明者フィリポはエチオピアの宦官に積極的に近づき,「イエスについての良いたより」を時間をかけて説明し,その人が水のバプテスマを受けるまで援助しました。(使徒 8:27-39)わたしたちもフィリポの手本に倣いたいと思います。では,頻繁に網羅されている区域でどのように聖書研究を取り決めることができるでしょうか。
心に訴える再訪問の話を準備する
4 聖書研究を紹介したいという強い願いがあるなら,「王国宣教」の4ページ(または8ページ)に載せられる再訪問の証言例を積極的に活用するだけでなく,心に訴える再訪問の話を自分で準備することができます。そうするなら,経験の少ない開拓者や伝道者たちも再訪問に対する苦手意識を取り除き,新しい聖書研究を取り決める道が大きく開かれるに違いありません。
5 「王国宣教」1997年5月号折り込みには,聖書研究を取り決めるのに役立つ再訪問の証言例が幾つも載せられています。それらの証言例を参考にしながら,家の人の関心をとらえる再訪問の話題を自分で作る方法をぜひ身につけてください。新しい奉仕者は経験を積んだ奉仕者に近づき,遠慮なく援助を求めることができるでしょう。次のような方法で証言例を準備できます。
6 話の内容,目的,場面を検討する: まず初めに,再訪問のための記録を調べ,その人に,何を,どのような目的で話したいかを考えてください。家の人の立場,年齢,関心事によって,話す事柄や目的が異なります。例えば,親の立場にある人と子供のことについて話す場合でも,その話が本当に興味あるものかどうかは子供の年齢によって大きく左右されます。家の人の子供が幼いなら,“子供のしつけをどのように行なうか”,子供が十代なら,“子供との意思の疎通をなめらかにする”などは適切な内容の話と言えるでしょう。同時に,どんな場面で再訪問を行なうかについても考えてください。家から家の再訪問,電話による再訪問,ビジネス街で会った人への再訪問など,それぞれの場面に合った証言を考えます。
7 話題を集め,整理し,並べてみる: 次に,話の目的や場面を念頭におき,それを発展させるための話題を幾つか考えます。それらは,あなたの話の骨子となります。それで,家の人が興味を持つであろうと思われる具体的な情報を黙想してください。人々の生活を観察し,世の中の出来事に関心を払うなら,家の人にとって有益な話題が幾つか思い浮かぶことでしょう。多くの場合,適切な聖句を含め,話し合いの際に用いることのできる興味深い情報は,協会の出版物の中に見いだせます。役立つ情報がすぐ思い浮かばない時には,協会の「出版物索引」を活用してください。探し出したそれぞれの話題に見出しをつけ,メモやカードに書き込んでおくと便利です。
8 話題を絞る: 一定量の資料を網羅する聖書研究とは異なり,一度の再訪問で話せる量は限られています。それで,幾つかの話題の中から相手が特に興味を示すと考えられるものを注意深く選択する必要があります。たいていの場合,その人が真に必要としており,すぐに役立つような事柄だけを中心に証言するほうが効果的です。
9 例えば,親が十代の子供とどのように意思の疎通を図ったらよいかについて話し合う場合,最初の再訪問では,「家庭」の本の65ページにある「包み隠しのない率直な対話」と題する副見出しだけに話題を絞りたいと思うかもしれません。こうして,一度に話し合う論点を少なくすることは,家の人にとって負担にならないだけでなく,何を話すべきかをはっきり思いに留めることができるので,奉仕者自身にとっても有益です。
10 ふさわしい主題を設ける: 適切な主題を念頭におくことは,話そうとする考えをまとめるのにたいへん役立ちます。最も中心となる話題を芯にしてふさわしい主題を設けてください。普通,再訪問で多くの事柄を論じることはできないので,出版物の特定の章や記事の主題をそのまま証言の主題として用いるよりも,特定の副見出し,あるいは副見出しの下に説明されている具体的な点を考慮した主題を設けるほうがよいでしょう。どんな主題を選ぶにしても,それは話全体を貫くものであると同時に,「子供をしつけるための上手な教え方」などのように,ある程度具体的な面を含んでいるべきです。相手の人と話し合う際,主題を常に意識しましょう。
11 話を組み立てる: これで,再訪問の話の準備が整ったことになります。最後に簡単な筋書きを作りますが,全文原稿にはしないほうが賢明です。自分で設けた主題の下に,一つか二つの話題,聖句,資料などを簡潔に書いたメモがあるだけで,自然に話を発展させることができます。もちろん,どのような話題を取り上げるにしても,奉仕者が一方的に話を進めるべきではなく,家の人の反応や表情などに気を配るべきです。そのためにも,簡潔な筋書きを用いる方法は融通性があり効果的です。
12 分かりやすく話す: 話題そのものは家の人の心に訴えるものであっても,話す言葉や内容が相手にとって理解しにくかったり,一方的な話になったりするなら,相手の関心は冷めてしまう可能性があります。ですから,その話題をどのように分かりやすく説明したらよいかを考えてください。興味を抱かせるために,相手が知っている実例や例えを用いてください。また,相手の考えを自由に述べてもらえるような質問を前もって考えておき,相手の言うことに十分耳を傾け,できるだけ会話的な証言を行なうようにしましょう。
13 でき上がった再訪問の話を自分の宣教用ノートかカードのようなものに整理しておき,再訪問を重ねるたびに,同じ要領で他の証言を準備できます。また,奉仕者が互いに情報を交換するのも有益です。どうぞ,料理を作る場合と同様,できるだけ証言例のレパートリーを増やし,それらを自由自在に用いられるようにしてください。なお,自分で準備したこのような証言例は再訪問の時だけでなく,家から家の証言,電話証言,街路での証言などの際にも活用できます。ですから,あらゆる機会をとらえて活用しましょう。
協会の出版物にある有益な情報を活用する
14 社会情勢が大きく変化し,人々は好むと好まざるとにかかわりなく世の影響を受けるようになっています。多くの人々は,問題の多い不安定な時代にどのように対処したらよいかを模索し,助けを求めています。ですから,わたしたちが宗教以外の様々な話題について話し合い,家の人にとって真に役立つ情報を提供したり,提案を差し伸べたりするなら,聖書研究に通じる新たな道が開かれることになります。
15 「目ざめよ!」誌は,現代社会に山積する様々な問題を取り上げ,有益な情報と実際的な提案を載せています。もちろん,それら有用な情報の背後にあるものは霊感を受けて書かれた聖書の見方や原則です。(テモ二 3:16)したがって,関心をもって「目ざめよ!」誌の記事を読む人々は,やがて聖書の価値を認めるようになるに違いありません。ですから,これらの有益な記事を活用して再訪問の話題を準備するなら区域の人々の必要にこたえることができます。
16 年ごとの「目ざめよ!」誌,12月22日号31ページには索引が載せられているので,その部分を調べるなら,再訪問に活用できそうな多くの話題を容易に見いだせます。例えば,比較的最近の「目ざめよ!」誌の中から,次のような記事を活用することができます。
感情的・身体的なストレスについて
● セクシュアル・ハラスメントがなくなる時!(96 5/22)
● 燃えつきの犠牲になっていますか(95 1/8)
● 孤独 ― あなたにできる事柄(93 9/22)
● あなたも消極的な感情を克服できます(92 10/8)
経済について
● 上手にやりくりする方法(96 12/22)
● 失業 ― 解決策はあります(96 3/8)
家族について
● 子供をのびのび育てる(97 8/8)
● 学校の危機(95 12/22)
● 片親家庭 ― どれほどうまくやってゆけますか(95 10/8)
● 年老いた親の世話に取り組む(94 2/8)
● 夫婦間のコミュニケーション(94 1/22)
● 学習は胎内で始まる(92 1/22)
健康について
● 心臓発作 ― どうすればよいか(96 12/8)
● 更年期をよりよく理解する(95 2/22)
● 腰痛でお悩みですか(94 6/8)
● 慢性疲労症候群 ― どう対処するか(92 8/22)
人間関係について
● とげのある言葉ではなく優しい言葉を(96 10/22)
● あなたは感情移入の上手な聴き手ですか(94 12/8)
17 ある奉仕者は,「ものみの塔」誌や「目ざめよ!」誌の最終ページにまとめられている短い記事を上手に活用しています。例えば次のような記事は役立つに違いありません。
● 聖書預言の成就(塔96 9/15)
● 専門家たちは輸血に代わる治療法について考える(塔96 8/15)
● 若い人たちが今日必要としているもの(目96 11/22)
● 将来にすばらしい希望のある地球(目96 9/8)
18 ここで取り上げた記事は,ほんの一例にすぎません。家の人の必要に応じ,他のどんな記事でも活用できます。また,生活上の諸問題に首尾よく対処するのに役立つこうした情報を家から家の証言や電話証言を行なう時にも用いるなら,きっと良い話し合いができることでしょう。
無償の聖書研究を巧みに紹介する
19 これまで,家の人に直接聖書研究を勧めてみたものの,ほとんど良い反応が得られなかったため,この方法をあきらめてしまった人がいるかもしれません。しかし,証人たちの活動がかなり知られてきた今,直接聖書研究を紹介するのは効果的な方法の一つと言えます。それでこの方法に熟達し,家から家の奉仕はもちろん,電話証言や街路伝道などでも積極的に用いたいものです。どのように会話することができるでしょうか。
20 聖書を読んだことのある人に: 相手がある程度聖書を知っている人であるなら,聖書に関係のある幾つかの質問を投げかけ,聖書そのものから答えを見いだせることを伝え,聖書研究を勧めます。次のように尋ねることができるでしょう。
「人々の努力にもかかわらず世の中がますます悪くなっているのはなぜでしょうか。聖書が述べる『世の終わり』は本当に来るのでしょうか」。
「多くの人が毎日主の祈りを通して『神の国が来ますように』と祈っていますが,その祈りはいつ答えられるのでしょうか」。
「人は死んだらどうなるのでしょうか。本当に天国や地獄へ行くのでしょうか」。
21 聖書を読んだことのない人に: 聖書に直接関心がないとしても,次のような疑問を持ったことがないかどうか尋ねてみます。
「最近はあまりにも暗いニュースが多いので,多くの親は子供たちが大きくなるころ,世の中はどうなってしまうのだろうと不安に感じています。今後,わたしたちはより良い社会を期待できるのでしょうか。それとも事態はもっと悪くなるのでしょうか」。
「この美しい地球になぜわたしたち人間が存在しているのでしょうか。人の一生は,ある一定の期間生活を楽しみ,それから死ぬ,ただそれだけのことなのでしょうか」。
「だれでも,無意識のうちに他の人の感情を害したり,友達と仲たがいしたりすることがありますが,どのように解決したらよいでしょうか」。
22 その他,人々が日ごろ疑問に思っていることを考えさせるような仕方で尋ね,相手の意見に十分耳を傾けてから,「世界のベストセラーとして知られている聖書は,この種の疑問や問題に満足のゆく仕方で答えています」と述べ,聖書を一度調べてみるよう勧めます。事情が許すなら,その場ですぐに聖書や出版物を用いて相手の人の疑問に対する答えを述べることができます。
23 聖書研究を勧める際,そのことに関して家の人が不安を抱かないように配慮する必要があります。例えば,聖書について話し合うため,自分にとって都合のよい時に20-30分程度の時間を割くだけでよいこと,聖書の研究は全く無償であること,家の人の望む場所で話し合えることなどを説明します。また,学ぶ内容については,神と神の目的,現代生活にかかわる様々な問題に対処するための聖書の原則,家の人が聖書について尋ねたいと思う質問のすべてが含まれることなども親切に説明してください。
24 話し合いの手引きとして,「求め」のブロシュアーか「知識」の本を紹介できます。場合によっては,家の人はまず特定の問題について知りたいと考えているかもしれません。もしそうなら,研究資料を紹介する前に「目ざめよ!」誌や「ものみの塔」誌に載せられた特定の記事などを自由に用いることができます。
様々な機会に聖書研究を取り決める
25 家から家の奉仕だけでなく,他のいろいろな証言の機会に聖書研究を気軽に勧めたいものです。どのような人に,またどのような機会にそうすることができますか。
26 雑誌経路になっている人: 定期的に雑誌を受け取っている人たちに,「求め」のブロシュアーを用いる短期間の聖書研究を勧めて成功している奉仕者は少なくありません。ブロシュアーの各課を30分以内で扱うとすれば,16課全部をわずか合計8時間で終えることができるのです。雑誌経路になっている人とは,すでに良い関係が培われているわけですから,それらの人々に聖書研究を積極的に勧めるようにしましょう。
27 以前の研究生: 以前に用いていた研究用の手引きと比べるなら,「知識」の本は簡潔で分かりやすい内容なので,この手引き書で研究したことのない人たちに6か月間ほどの聖書研究を紹介してみることができます。その際,その人が以前にだれと,どれくらいの期間研究をしたことがあるのか,またどのような理由で研究を中止したのかを巧みに聞いておくのはよいことです。もしかすると,その人は幾人もの奉仕者と何年間にもわたって聖書研究をしてきたものの,何ら実質的な進歩を示してこなかったかもしれません。わたしたちは誠実な心を持つ人々を見いだしたいと考えています。―「王国宣教」,1988年10月号,8ページをご覧ください。
28 電話証言や街路証言の機会に: ある姉妹は初めて電話証言に参加した時,興味深い経験をしました。家の人はためらいながらも自分の考えを次のように述べました。「自分は電話で話すのは好きではないし,まして宗教関係だったらいつもすぐ断わっているんですが,顔は見えなくても,声の調子や気遣いの示し方であなたの誠実さが伝わってきます。今は素直な気持ちで聞けそうなので,あなたが話したいことを全部うかがいましょう」。姉妹が証言の最後に「知識」の本を用いる聖書研究を勧めたところ,相手の人は,もう一度電話をかけてほしいと言って電話を切りました。姉妹は翌週,電話で再訪問し,エホバの証人と世のクリスチャンの違いを説明したところ,相手の人はぜひ自分の家に訪ねてきてほしいと述べ,研究が始まりました。
29 電話の相手は見えませんので,声の調子と言葉によって相手に対する純粋の気遣いをはっきり示すことが大切です。また,いろいろな資料を手元に置いておき,相手の人に合った話題について取り上げてください。少しでも会話ができたなら,次回話したいと考えている関心ありそうな話題を投げかけ,電話による再訪問を続けましょう。早い機会に何らかの出版物を届け,ふさわしい時に直接会って話し合う努力を続けるなら,研究に結びつく可能性が大きくなります。
30 街路証言の場合も,相手が少しでも関心を示したなら再訪問を続け,関心を高める努力を払いたいものです。積極的に,また巧みな仕方で,相手の住所や電話番号を尋ねるようにしてください。
絶えず聖書研究を意識する
31 どんなに頻繁に網羅されてきた区域であっても,人々の命がかかっていることを意識し,あらゆる機会に聖書研究を取り決めるよう励みたいものです。パウロは「自分自身と自分の教えとに絶えず注意を払いなさい。……そうすることによって……自分と自分のことばを聴く人たちとを救うことになるのです」と述べました。(テモ一 4:16)緊急感を抱き,魂を込めて教える業にあずかるなら,豊かな祝福を経験できるに違いありません。