「創造者」の本を宣教で効果的に用いる
1 わたしたちが宣教で出会う人の多くは,万物を創造された方に対する感謝や認識を持っていません。神と共に働く者として,こうした人々がエホバに引き寄せられるようどのように助けることができるでしょうか。この必要を満たすため,1998年夏の地域大会で「あなたのことを気づかう創造者がおられますか」の本が発表されました。わたしたちは,「創造者」の本から益を受けそうな人々に,1年を通じていつでも積極的に提供し,再訪問を重ねて関心を高めてゆきたいと思います。
2 「創造者」の本は,これまで用いてきた「創造」の本とは異なる目的があります。以前の「創造」の本は,進化か創造かという論題に関連して,様々な科学上の事例,歴史上の事実を取り上げていますが,「創造者」の本は,わたしたちがエホバとの個人的な関係を築くことに焦点を合わせています。この新しい本はどのように論議を進めているでしょうか。
この本の内容と特徴
3 2-5章では,創造者の存在を支持する科学的な証拠が取り上げられています。この本は独断的なものの見方を提示するのではなく,読者が論点について推論し,論理的な結論を下せるよう助けます。押しつけがましい文章が好まれない日本では特に役立つことでしょう。2章では宇宙の仕組み,3章では生命の始まり,4章では人間の脳の特異性にそれぞれ注意が向けられており,5章ではその背後に人格的な存在者がいるかどうかについて推論しています。「創造者」の本には,創造に関する説得力のある証拠が効果的に紹介されています。特に興味深いのは,この本が,創造者の存在を証しする近年の科学上の発見を取り上げている点です。一例として11ページでは,1995年に発見された,宇宙が膨張していることに関する強力な証拠に言及し,宇宙に始まりがあることを論証しています。
4 6章以降にも注目してみましょう。6,7章では,創造者の言葉である聖書がなぜ信頼できるかが示されています。6章は,創世記にある創造の記録を詳細に解説して,その記録が科学的に見て道理にかなっていることを説明しています。この資料は創世記の記述を単なる神話とみなしている人々の目を開かせることでしょう。7章では,聖書預言の成就からすると,聖書が神の霊感を受けた書物であり,エホバはご自分の目的を果たす力を有しておられることが証明されるという点が指摘されています。この章は,聖書の預言全体を扱うのではなく,イザヤの預言に焦点を絞り,その預言が確かに神の霊感を受けたものであることを証明しています。歴史に関心のある人は,聖書の預言がどれほど正確に成就してきたかを知ると驚くに違いありません。
5 続く8,9章は,それぞれヘブライ語聖書とギリシャ語聖書の内容を要約しているため,これらの章を読む人たちは,聖書を読み,創造者との個人的な関係を培いたいという気持ちを強められます。人々をエホバに引き寄せる上で,特に9章が効果的なのはなぜでしょうか。なぜなら,この章は四つの福音書を通してイエス・キリストの歩みについて順番に取り上げてゆくという手法ではなく,イエスの教えと行ないの代表的なものに注意を向けているからです。また,イエスの行ないをじかに目撃していたペテロやヨハネがどのような影響を受け,エホバ神の魅力的な特質について何を理解し,エホバに引き寄せられていったかも示されています。聖書を読んでもエホバについて理解することを難しく感じてきた人たちは,この分かりやすく感動的な記述から益を受けるに違いありません。10章は,愛ある神がなぜ悪を許しておられるのかという興味深い質問を取り上げています。
6 このように資料を概観しただけでも,この本はユニークな書物であり,人々の心をとらえるものであるとお感じになったことでしょう。では,これらの資料をどのように宣教で用いることができるでしょうか。
野外奉仕で「創造者」の本を用いる
7 この本の内容は家の人には難しいと考えるのではなく,まずあなたご自身がこの本全体をお読みになってみてください。この本には討議のための質問が用意されていませんので,興味深い事例などを選び出してノートに書き出し,いろいろな立場や背景を持つ人々と話し合うための話題をまとめることができるかもしれません。
8 昨今の経済不況,家族の崩壊,民族紛争,環境問題などから,生きることの意味について考えるようになった人は少なくありません。最近,多くの人が家族や趣味を大切にし,自分の人生に意味を持たせようとしていることについて触れた上で,「創造者」の本の190ページの写真と説明文を示すことができます。あるいは,7ページ2節のアウシュビッツ強制収容所を生き延びた一大学教授に関する資料を用いることもできるでしょう。今の困難な時代に首尾よく生きてゆくには,人生の意義が必要ではないかと述べてみるのはよいでしょう。
9 身近な人の病気や事故,あるいは自然災害や紛争などの日ごとのニュース報道を気にかけている人も少なくありません。家の人の置かれている状況に理解を示しながら,苦しみの原因に関する一般的な考え方について,167ページから取り上げ,家の人がそうした考えに納得しているかどうか尋ねてみます。それから,169ページ1節にある,双眼鏡の例えを用いることができるでしょう。
10 玄関先の絵などから,家の人が芸術に対して深い関心を示していることが分かる場合があります。動物と違い人間だけが芸術を楽しむことを不思議に思わないか尋ねてから,「創造者」の本,66-68ページを資料として用いることができるでしょう。67ページ1節と68ページ1節を共に読むことができるかもしれません。
11 家の人に,宇宙や,地球上の生命には始まりがあったかどうか尋ねることもできます。答えがどのようなものであれ,73ページの4節にある,「東洋の多くの人々は,自然はおのずと生じたと信じています」という一文を読みます。続いて,「あなたはどう思われますか」と述べます。続く会話の中で次のように言うことができるかもしれません。「正しく理解されていない創造者について学ぶのは道理にかなったことではないでしょうか。この本を読めばそうすることができます」。
家庭聖書研究において「創造者」の本を用いる
12 「知識」の本での家庭聖書研究を取り決める前に,あるいはその研究の補足資料として「創造者」の本を用いることができます。個々の研究生の必要を考慮なさってください。多くの人は,学校で理科の時間に進化論が教えられるため,宗教的な背景と相まって創造者についてはあまり考えてきませんでした。奉仕者の中には,エホバ神について扱っている「知識」の本の3章に入る前に,「創造者」の本の2-5章を学び,創造者に対する確信を培わせてから研究を進めることが効果的であることを経験した人もいます。本来,こうした補足資料は研究生に渡して,まず読んでもらうのが最善ですが,「知識」の本を用いた研究の初期の段階では自分で読み進むことが難しいかもしれないので,必要に応じて共に討議することもできるでしょう。24,43,そして71ページにある副見出し以降の節は,種々の証拠を熟考するよう励ましていますので,それらの節を共に読み,推論することができます。また,5章の78ページの図を用いて,学んできた証拠を振り返り,創造者がいると考えることが道理にかなっていることを納得してもらうことができるかもしれません。
13 「知識」の本でしばらく研究を進めてゆくうちに,研究生の心の中に聖書に対する確信や,エホバ神に対する愛着が十分に根づいていないことに気づく場合があります。そのような場合には,ふさわしい時に「創造者」の本の6-9章の資料のいずれかを共に読み,話し合ってみることができます。ある程度聖書の知識を有している研究生の場合,9章は効果的です。福音書に収められている様々な出来事から影響を受けた使徒たちの記述を読み進めながら,「あなたがその場にいて,この出来事を目撃した一人なら,どのようにお感じになったでしょうか」と問いかけてみることができるでしょう。
14 「知識」の本で学んでいる事柄の現実感を強めるために,この本を活用している奉仕者もいます。「知識」の本の1章3節の銀河に関して言及している箇所で,「創造者」の本の12,13ページの写真を見せたり,「知識」の本の3章8-11節にあるイスラエルの歴史のところで,「創造者」の本の126ページと127ページにある囲み記事を考慮できます。
15 人が神と共に生涯歩み続けるためには,人間を創造した方を信頼し,その方に引き寄せられる必要があります。わたしたちがまさに必要としている道具が忠実で思慮深い奴隷級によって備えられました。「創造者」の本に精通し,宣教において効果的に用いてゆきましょう。