世界展望
減少する日本の鳥
◆ 日本にいる424種の鳥のうち76%は渡り鳥である。汚染のためにそれらの鳥の多くはもはや日本に渡ってこない。1971年に日本で見られたがんの数は1953年のわずか10分の1であった。この事態を憂慮する環境庁長官は,二,三の限られた猟場を除き,日本全国で鳥の猟を禁止したい意向である。
法王が聖年を設定
◆ 法王パウロ6世は,1975年を聖年に選定した。先の聖年は1950年であった。「平和と繁栄と進歩の新しい年の先ぶれ」となることが望まれたにもかかわらず,その年は朝鮮戦争勃発の年となった。その前の聖年は1933年である。その年,ヒトラーはドイツの首相となり,世界にとっては恐怖と破滅の時代の始まりとなった。
子どもの安全
◆ アメリカでは1960年から1969年にかけて4歳未満の子ども約1万人が自動車事故で死亡した。そのほかに重傷を負った子どもがおり,中には脊柱の負傷でからだがまひしてしまった子どももいる。これらの事故からわかることは,安全ベルトのない子どもにとって最も危険な場所は車の前の座席であるということだ。また,自動車事故のときには子ども用の座席や母親のひざも危険な場所と言われている。子どもが座席からほうり出されたり,母親のひざにいる場合なら母親のからだで押しつぶされたりすることがある。事故の分析者によれば,車に乗っている幼児にとっていちばんよい場所は,後の支柱を後部座席の安全ベルトにしっかり結びつけ,前の支柱は床に結びつけて後部座席にすえたゆりかごの中である。子どもは足を前方にして寝かせなければならない。ゆりかごに網か丈夫な帯ひもを掛けておくと,自動車が事故で転倒しても子どもは守られる。18か月から4歳までの子どもの場合は,拘束ベルトについている止め具で後部座席にしっかり止めておくとよい。
出血を引き起こすアスピリン
◆ アメリカのメアリーランド大学医学部教授,V・M・スミス博士によれば,アスピリンは腸の大出血を引き起こすことがある。それはアスピリンが出血を止める血小板の働きを抑制するためと同博士は見ている。「ごく少量のアスピリンが血小板の凝集力を冒すことは人体実験によって証明されている」と語った。彼はアスピリンを「危険な薬」とみなしている。
タバコによる一酸化炭素中毒
◆ 喫煙の弊害に数えられるものはますますふえているが,今アメリカでは,一酸化炭素中毒もその一つとしてリストに加えられている。科学者たちがタバコの煙の充満した部屋の状態を調べたところ,一酸化炭素の濃度が法律で定められている大気汚染の最大許容量の限界に等しいか,時にはそれを越えていることがわかった。その報告は,「一酸化炭素の濃度がこれほど高いからには,それにさらされる時間の長さによっては,健康に害の及ぶことが時としてありえる」と述べている。これは室内の喫煙者にも非喫煙者にも当てはまる事実である。タバコを吸うことによって他人の健康をそこなうのは確かに隣人愛とは言えない。
英国では青少年のあいだで暴力が増加
◆ ロンドンの新聞サンデー・テレグラフ1971年12月5日付は英国の学童のあいだで暴力が増加の一途をたどっていることを伝え,次のように述べている。「ある学校では悪童たちの一団が,映画“ブラックボード・ジャングル”ばりに校庭をのし歩く。教師たちは襲われたり,いたずらで悩まされており,中には神経衰弱で辞職する教師もある」。教員協会は2年にわたって,校庭での刃物ざたや,わずか6歳と7歳の子どもたちの一団がカミソリの刃を振りまわし,その防御にラケットが学童の間で使われていることなどの証拠を集めたと同紙は報じている。
胆石の溶解
◆ 従来,胆石は切除して治すのがふつうである。ところが最近,アメリカ,メーヨー病院の医師たちは,人間や動物の胆汁中に自然に含まれているCDCという化学物質を使って4人の女性の胆石を溶解することに成功したという。この治療方法は今のところ実験段階にある。
自殺薬
◆ 英国の警察は最近,針の頭ほどの大きさの小さな紫の薬のことで頭を悩ましている。その薬には超濃縮のLSDが含まれていて,それを飲む者は不安や恐怖を感じ,自殺行為に走る傾向をもつようになる。マイクロドットと呼ばれるその薬を飲んだある十代の若者は走っているバスに身を投げた。
ケベックの教会に危機
◆ 去る1月2日付のニューヨーク・タイムス紙によれば,カナダ,ケベック州のローマ・カトリック教会は危機にひんしている。若い人々を失い,十分の司祭を補充できないうえ,教会の出席者は減少する一方である。著名な信徒団体も消滅するか,またはなくなりつつある。同紙は次のように報じている。「ケベックのあらゆる社会階層と教会との親密な関係は,過去の10年間にほぼ消滅してしまった」。
フランコ,司祭たちに警告
◆ 最近,フランコ将軍はスペインの司祭たちに,自分の政権に反対する政治活動を許さない旨警告した。国家は,「数人の聖職者の断固とした世俗的な態度を前にして手をこまねいているわけにはゆかない」と述べた。スペインには,ローマ・カトリック教会がフランコ将軍に与えてきた緊密な支持に終止符を打とうとしている司祭や司教がいる。
異教徒の“クリスチャン”
◆ ブラジルでは人口の90%がカトリック教徒を自認している。しかし,その多くは,同国の2,000万人に上る神霊術の帰依者でもあるのだ。彼らの中には,おおみそかの夜にリオデジャネイロの海岸で異教の儀式に参列した者もいる。彼らはそこで海の女神イエマンジャを崇拝し,彼女に口紅,くし,宝石類,香水,花をささげた。何百年にもわたってカトリック教会はブラジルの人々に支配的な影響を及ぼしてきたにもかかわらず,異教がはびこっている。そのことに関して,今年のタイム誌1月10日号はこう報じている。「今日,ブラジル人の多くは二つの宗教を同時に奉じている。日曜日のミサに出席するかと思えば,月曜日の“魂の夜”にはふたたび同じ教会へ行き,自分の好む霊に念じるろうそくをともす」。
イスラエルで宗教紛争
◆ イスラエルでは最近,超正統派と一般のユダヤ人の間に宗教紛争が起きている。アメリカ,ラビ会議の議長はその事態を憂慮し,それは,「イスラエルの存続にとって,イスラエルを取りまくアラブの敵よりもはるかに大きな危険である」と述べた。週ごとの安息日のあと,安息日の律法の厳格な解釈に従わないバスの運転手や他の人々は,エルサレムで超正統派のユダヤ人が住んでいる地区の付近を車で通ると投石される。また,病理学者たちは,正統派の人々が「人体に対するいまわしい行為」と見なしている検死解剖をするために死の脅威にさらされている。警察の当局者はこうした悩みを阻止する力のないことを認めている。
スパイスの中に異物
◆ 料理に使うスパイスの中に,虫のこま切れとかねずみのふん,幼虫,泥やほこりがはいっているかもしれないことに気づいている人は少ない。スパイス製造業者は,スパイスを完全に清潔にするのは不可能だと主張するから,0.5から2%の“異質”物は許されるものと考えられている。しかし,食物の中にどんな異物がはいるのもいやだと言う人々もいるのである。
胎児の法的権利
◆ オーストラリアのビクトリアン・フル裁判所は先ごろ,出生前に害をこうむった胎児は出生後,損害賠償を要求する権利を有するという裁定を下した。その裁定は,母親が妊娠中に会った交通事故があきらかな原因で脳障害を持って生まれた子どもに関係したものであった。胎児に法的権利を与えた以上,同裁定は妊娠中絶法にも関係する法的意味を持ちえないだろうか。