世界展望
次のインフレへの懸念
◆ 昨年,世界各地で猛威を振るった二ケタのインフレはどうやら収まってきたようである。また,伝えられるところによると,ある経済評論家たちは,最近の景気後退も間もなく回復すると見ている。しかし,この次のインフレは本当に破壊的なものになると予見する消息筋もある。英国の二人の経済学者は,「二度目の大恐慌」と題するその新刊書の中で次のように述べている。「この次の経済拡張が進行する際に,インフレの速度が速まることは確実である」。この次のにわか景気のために,「幾つかの主要国が自国の通貨を制御できなくなる危険は大きく,そうなるのは正に確実に近いと言える」。
猛威を振るう性病
◆ “放任主義的な世代”はその代償を支払っている。大抵の国で性病は猛威を振るっているが,当局者は,実情は公表されている数字よりもずっと悪いと述べている。世界保健機関(WHO)は,性病に冒されている人の数は医師が実際に報告する数の3ないし10倍に上ることに注目している。保健施設の不十分な国々では,15歳から30歳までの人のうち6ないし10%が性病にかかっている。アジアの幾つかの国では,一年のうちに大学生の20から55%が性病に感染した。最近,英国で行なわれたある調査は,わずか一人の性病患者から連鎖反応の結果,何と1,639人もの人が性病に感染したことを示している。
サハラ砂漠の拡大は食い止められるか
◆ 拡大するサハラ砂漠は,毎年アフリカ大陸の膨大な面積を侵食している。ある推定によると,同砂漠は二年ごとに米国のコネチカット州と同じ広さの土地を砂漠に変えている。現在,新たに植林された広大な“緑の壁”を用いて,砂漠の拡大を食い止め,所によっては失地回復を図れるかどうかを調べる実験が行なわれている。アルジェリアでは,荒れ果てた土地に1,000本の若木が植えられ,そのうち800本は灌漑のお陰で成長した。やがて,さらに多くの木が植えられ,そこには13万本の木が生い茂っている。それらの木は,今や地下水に届くようになった根から,さらに雨水からも養分を得ている。それらの木によって造り出された肥沃な土地には,野菜,穀物,かんきつ類などが育つだけでなく,同時にそれらの木は砂あらしを防ぎ,周囲を涼しくし,地表湿度を増大させている。
酔って生まれてくる赤子たち
◆ ワシントン大学の一研究員は,最近,アルコール中毒の母親は,後日精神薄弱の兆候をも示す泥酔した赤子を産むことがあると述べた。デービッド・W・スミス博士は,アルコール臭い息をして生まれてくる嬰児は珍しくないと述べた。妊婦が飲んだアルコール分は,容易に胎児の血液の中に流れ込む。ある新生児の血液中のアルコールの量は,法によって泥酔者とみなされる量より50%も多かった。担当の小児科医は,「その子は,酔いつぶれていた」と述べた。
火災時に逃げ場のない危険な建物
◆ 大都市のアパートの窓には,錠の下りた鉄製のよろい戸の付いたものがある。そうするのは泥捧に入られないためである。しかし,ニューヨーク市の当局者は,緊急時によろい戸のかぎがすぐに見付からなければ,アパートは火災時に逃げ場のない所になってしまう,と警告している。正にそうした状況の下で,同市ブルックリンに住むある母親と二人の息子が焼死した。火災予防官は,錠を取り付ける代わりに,内側に掛け金が付いていて,外からは開けられないよろい戸の使用を強く勧めている。
失業者を出さない方法
◆ 不況のため,従業員の数を削減した会社や政府機関は少なくない。ニューヨークのある会社は別の方法でその問題を解決した。2,000人中400人の従業員を解雇する代わりに,労使双方の代表者は,すべての人が週四日間だけ働くという条件で全従業員を会社にとどめることに合意した。それは,従業員各人にとって賃金のカットを意味したが,一人も失業せずに済んだ。
計算違い
◆ 米国の学校で調査の対象になった17歳の学生たちのうち,小数点の付いた簡単な掛け算の問題を解けたのは,わずか30%であった。片や英国では,ロンドンのデーリー・メール誌が次のように述べている。「子供たちはもはや正しく掛け算の方法さえ教えられていない,という驚くべき証拠が最近の報告から明らかになった」。試験を受けた幾千人もの子供のうち,11歳と12歳の子供の3分の2以上は,7と8の掛け算ができなかった。15歳の男子の半分以上は,間違った答えを出した。
低い理科の成績
◆ ソ連が1957年に最初の“スプートニク”衛星を打ち上げて以来,米国は科学教育の質を向上させるために多大の努力を払ってきた。ところが,最近の試験の成績は,9歳から17歳までの学生のうち比較的に簡単な科学の問題に答えられたのは,わずか半数ほどであったことを明らかにした。三年間で科学に関する知識は,実際に著しく低下した。科学教師協会の理事長はこう述べている。「一般の人で科学に対する信仰を失った人が余りにも多い」。その結果,若者たちの熱意もさめてしまった。
平和?
◆ カンボジア及びベトナムにおける実戦が終結した時,「1931年以来初めて世界は完全な平和を体験した」と,ロサンゼルス・タイムズ紙は述べた。ところが,「主な国際交渉で順調に進展しているもの,近い将来に良い見込みのあるものは一つもない」と,やや矛盾した見解を同紙は述べている。またAP通信は,諸国家は「組織的な人殺しのための口実を見付けるのに今だに外部からの敵を必要としてはいない。だれがだれを支配するかといういつもの問題をめぐって,各国の市民同士が互いに殺し合うような闘争が世界中で起きている」と伝えている。
大人のまねをする
◆ 14歳になるカナダの一少年は,盗んだライフル銃を使って,90人の級友と3人の教師を30分間人質にした。本気であることを示すために一発,発砲した後,少年は全員に顔を床にうつぶせにならせ,自分の行為に加わらせるため他の学校にいる一人の友人を29分以内に連れて来るようにと要求した。もしそうしなければ,10分ごとに一人ずつ人質を射殺すると言った。しかし,トロント警察はこの自称テロリストの説得に成功した。
万引きをする老人
◆ インフレと不況のため,多くの老人,とりわけ定額所得だけで生活している老人は,生活必需品を買うのにいよいよ困難を覚えている。その結果として万引きが著しく増加した。米国フロリダ州マイアミ・ビーチの商店経営者たちは,万引きで逮捕される人の数は昨年の2倍を超えたことを伝えている。同地の警察は,逮捕者の大半が55歳以上の人であることに注目している。
減少したゴミの量
◆ 人々の捨てるゴミの量は難しい時代の別の指標である。1975年の前半,収集されるゴミの量は着実に減少した。消費者の購入する品物が減り,捨てるものが少なくなったからである。今年の最初の三か月間にシカゴ市の清掃局員の集めたゴミの量は,昨年同期よりも20万㌧も少なかった。1974年にニューヨーク市のゴミの量は100万㌧減少し,今年に入ってからも減少を続けている。
とても手が届かない
◆ アメリカ銀行協会会長によると,平均的なアメリカ人の家族はもはや標準価格の家を買うだけの余裕がない。今では,そのような家は3万4,000ドル(約1,000万円)もする。それに加え,修理費や維持費,財産税,燃料費,公益事業費,保険料なども近年急激に高くなった。同会長は,平均的な家族はもはや利息なしのローンを利用しても家を購入することができなくなった,と結論している。日本でも同じようなことが言える。東京のデーリー・ヨミウリ紙はこう述べている。「庶民の大多数にとって,マイホームのために自分の土地を購入することは,相変らず実現し難い夢である」。
義務を怠る親
◆ 英国の教育当局者によると,毎週50万人を超える子供たちが学校を休んでいる。しかし,親から教師に送られる欠席届の約40%は,「部分的に,もしくは全面的に真実でない」と同当局者はみており,そうした欠席届にうそを書く親は国辱であり,ゆくゆくは国民性に有害な影響を与える」と考えている。
忘れっぽい乗客
◆ 日本の国鉄は,一年間に列車の中で約180万点の忘れ物があったことを報じた。それは,前年の忘れ物の数を約6万7,000点も上回る。忘れ物の中には,かさ44万1,000本,衣類36万9,000点,義歯72個,骨つぼ7個などがあった。一年以内に持ち主が現われないなら,忘れ物は競売にかけるなどして処分される。
車にかぎを掛けることをお忘れなく
◆ 車にかぎを掛けておけば盗難も少なくなるので,ドイツ,カッセル市の警察は,最近,地元民に対し,車にかぎを掛ける必要を教える新しい方法を採用した。警官はかぎの掛かっていない車の座席と床にある物品をすべて押収し,カッセル市警察のカードを置いてゆく。自動車の所有者は,自分の持ち物を返してもらうためには,警察署に出頭し,罰金を支払わねばならない。
“汚い”硬貨とお札
◆ アメリカ医学会ジャーナル誌は,貨幣が病気を媒介する可能性を確かめるためになされた検査の結果を最近報じた。無作為に抽出した150個の硬貨の13%に,ブドウ状球菌など,病気の原因となる菌の付着していることが分かった。50枚の紙幣を使って行なわれた同様の検査の結果,紙幣は硬貨の三倍も汚れていることが明らかになった。
ワシをわなで捕える
◆ 米国モンタナ州の南西部では,子羊を守るためにイヌワシをわなで捕えている。今年になってから,少なくとも64羽のワシがモンタナ州やコロラド州の別の地域に移された。牧場主たちは,1974年に彼らの子羊の22%ないし35%をワシに殺された,と主張している。一調査によると,殺された58頭の子羊のうち,ワシに襲われたのは44頭であったと言われている。
最も豊かな国
◆ 国民一人当たりの平均所得について考えると,世界で最も豊かな国はどこだろうか。スイスのユニオン銀行によると,中東の小さな産油国クウェートである。1974年の同国の国民一人当たりの平均所得は1万1,000ドル(約330万円)であった。ベスト・テンの二位以下の順位は次の通りである。スイス,スウェーデン,デンマーク,米国,カナダ,西ドイツ,アイスランド,ノルウェー,フランス。
ユダヤ人とは何か
◆ イスラエル政府は最近,黒人であるエチオピアのファラシャ教徒を,ユダヤ人として認めた。議論の的となっているその決定によると,移住して来るファラシャ人は帰還するユダヤ人すべてに適用される1950年度の法令の下で即座に市民権を与えられることになる。そのエチオピアの宗派の本当の起源については現在議論されている。