世界展望
司教の服の下はゲリラ?
◆ ブラジルで権威のあるオ・グロボ紙の論説欄は,サンパウロで開かれたカトリック教会の第4回世界教会国際会議を評し,「サンパウロでの神学的な集まりは,神学と世界教会運動を単なる口実にした,政治的思想的示威運動であった」と述べた。伝えられたところによると,その会議中,数人の代表者は「ブラジルの司教ペドロ・カサルダリガ師にゲリラの制服を差し出した。ついで,その論説は次のように述べている。「サンパウロ主教管区の新聞によれば,カサルダリガ師は拍手かっさいのうちにそのゲリラの制服を早速身に着けた。そして,いずれの服も同一の希望を表わしているので,ゲリラの制服も僧服と同じものと考えて着用すると言明した」。
オ・グロボ紙によれば,「会議中,一貫して,このゲリラ神学が論じられた」。また,その後放送された談話の中でポルトアレグレの大司教は,その秘密会議は神学的な会議というよりも,武力征服の準備をする左寄りの政治組織の国際的な集まり」という印象を呈していた,と語った。
愛国心のほど?
◆ 米国ケンタッキー州の上院は最近,議会の開会に際して国旗敬礼を行なうことを投票によって決めた。ジョージア・M・デービス・パワーズ上院議員もその儀式を行なうことに賛成の票を投じた。「しかし,実際に宣誓を唱える段になると,同女史は宣誓をしなかった」とルイスビル・タイムズ紙は伝えている。同紙は,また,こう報じている。「パワーズ上院議員は他の議員たちと一緒に起立したが,他の議員が国旗の方を向いて宣誓を唱えているあいだ,無言のまま立っていた」。それはなぜだろうか。同上院議員は,「議会に出席するたびに愛国心を誇示しなければならないというのは,あまりにもばかばかしいと思った」と答えた。
自然の避妊法?
◆ 人類学者たちは,ある種のアフリカ遊牧民が近代的な避妊法を用いないで,どのようにして子供の誕生の間隔を3年ないし4年あけることができるのか,長年疑問に思っていた。ハーバード大学の二人の科学者たちは,自分たちの調査に基づいて答えを提出した。彼らは,母親が幾年もの間,幼児に短時間づつではあるが絶えず母乳を与えているのを観察した。科学者たちは,こうした授乳法によって,卵巣の働きを抑えるホルモンが急速に造られるようになると信じている。それが排卵を妨げ,その結果妊娠しなくなるのである。
困難な時期の代償
◆ 医療研究家たちは,インフレや失業など経済的に困難な時期には,病気が劇的に増加すると述べている。ジョンズ・ホプキンズ大学のM・ハーベー・ブレンナー博士は,6年間にわたって失業が1%増加しただけでも,通常より3万7,000人も死者が増加していることを示唆する強力な証拠がある,と述べている。同博士は次の点に注意を引いた。「例えば,二,三年,不景気が続くと,多くの慢性病による死亡率が上昇することが分かった」。増加する病気には,心臓病,精神病,アルコール中毒などがあるが,恐らくある種のガンもそうではないかと博士は述べている。一つの理由として,どのようにして仕事を見つけ,家族を養ってゆけるかを絶えず思い悩んでいる人は,思いや体,および感情に相当なストレスを加えていることが挙げられている。また,お金が少ししかないと,必要な医療処置が延期されがちになるということもその理由である。
スポーツに関する誤信
◆ 英国,ロンドンでのある会議で演説したエジンバラ公フィリップ殿下は,次のように述べた。「一つの極めてありふれた誤信は,国際間のスポーツ競技が必ず善意を生み出し,すべての人が勝つことより参加することにより大きな関心を抱いているという点である。そんなことはないと言われるかもしれない。……多くの国々が成功を国際的に威信を高める手段とし,政治理論またはイデオロギーの宣伝とみなしているため,競技は政治的な目的への一つの手段に過ぎなくなっている。また各国は,その手段についても,それほど良心的ではない」。
同意しない教会員
◆ 米国で行なわれた調査の明らかにしたところによると,ローマ・カトリック教徒のほとんどが,性に関する教会の教えに同意していない。最近では,英国における研究も,同様の点を明らかにしている。サリー大学の学者の行なった調査では,英国のカトリック教徒のうち,産児調節に関する教会の教えを受け入れているのは,わずか13%にすぎないことが分かった。離婚に関する教会の教えを受け入れているのは,35%にすぎず,50%以上が婚前の性交は必ずしも悪くはないと考えている。アイルランドとカナダで行なわれた調査も,同様の結果を示している。
カトリック司祭アンドリュー・グリーリーは,こうした発表を評して新聞のコラムに次のように記した。「これらの人々は,教会の教えをものともせずに罪を犯そうと述べているのではない。むしろ,教会が罪だと述べる事柄が,実際には罪でないと言っているのだ」。
不正確な研究室での検査
◆ 米国の疾病予防センターの副所長であるジョーゼフ・バウトウェル博士は,研究室での医学的な検査7件のうち約1件は不正確であるとし,こう述べている。「わたしの計算によれば,わが国で行なわれている検査の恐らく14%は信頼性が薄い。それが1%近くになるまで,満足することはできない」。14%というのは,4件の検査につき1件が間違っていた10年前と比べると50%の改善である。どうしてそのように不正確になるのだろうか。バウトウェルは次の諸点に言及している。「研究室職員の無能力,粗悪な管理,いいかげんな監督,品質管理の欠如,悪質な試薬(他の物質を探知したり計ったりするための物質)などのせいである」。
人殺しの麻薬
◆ 米国ニューヨーク州の物質乱用対策課の課長であるジュリオ・マルティネスは,アフガニスタン,イランおよびパキスタンなどから来た並はずれて強いヘロインの洪水によって,過度の服薬による死亡が昨年度はなんと77%も上昇したと語った。同課長は次のように述べた。「街路には強力なヘロインがあり,中毒患者がハエが落ちるように死んでいっている」。また,麻薬の洪水によって,同州全体の中毒患者数が42%も増加したと述べた。
農地の縮小
◆ 国際連合の一機関によると,米国では毎年121万4,000ヘクタールの割で,住宅,道路および工業開発業者などのために農地が失われている。過去10年間で1,173万6,000ヘクタールが,そうした非農業用の目的で使われるようになった。このうち40万4,700ヘクタールは,最小限度の労力,燃料および肥料で最大限の食糧を生産できる一等農地であった。国連のスポークスマンは,よく肥えた農地40万4,700ヘクタールとは,ニューヨークからカリフォルニアに至る半マイル幅(0.8㌔)の帯状の土地に等しい,と述べた。
煙突掃除が戻って来る
◆ 小説家チャールズ・ディケンズの時代の英国では,煙突掃除は少しも珍しくない光景であった。しかし,暖房や料理に薪や石炭が用いられなくなるにつれて,煙突を掃除する人の数も減少した。現在メイン州では,薪を燃やす家庭が著しく増加したため,煙突掃除を業とする人の数も増加している。前年と比較してこの冬は薪を使う家が50%以上も増加した結果である。多くの家庭での火災の原因は汚れた煙突にあると述べる消防署当局者の言葉からも,その仕事の重要性がよく分かる。
交通事故の犠牲者が増える
◆ 米国における1979年度の交通事故による死亡者は,2年間続けて5万人を上回った。1973年のガソリン不足に続く4年間は,その数を割っていた。新たに増加したのはなぜだろうか。高速道路関係の当局者の話では,より多くの古い型の車が路上を走っており,「ますます多くの運転者が,時速55マイル(約88㌔)の制限速度を無視している」からである。責むべきもう一つの点は,小型車の使用数が増加していることである。高速道路安全専門家はこう述べた。「大型車と小型車とが衝突した場合,必然的に小型車の方が致命的である」。
テレビの視聴時間が増える
◆ 広告テレビ局によれば,アメリカの平均的な家庭におけるテレビの視聴時間は,今や,1日7時間22分に達している。これは前年度を2分間上回っている。
どれだけ働くか
◆ 最近,スイスのユニオン銀行は,1979年から1980年にかけて世界の物価と収入を調査した結果を出版した。その調査で世界各国の様々な都市の生活水準を比較する基準として用いられているのは,ある基本的な物品やサービスを得るために働かねばならない労働時間である。例えば,リオデジャネイロの一般の労働者は,シカゴの労働者が約75時間働いて得られる物品やサービスを得るのに,その3倍にあたる225時間近く働かねばならない。一方,マニラの労働者はリオデジャネイロの労働者より2倍余りの時間(548時間)働く必要がある。それはシカゴの労働者の場合の7倍を超す時間である。他の都市で同じ物品やサービスを得るのに必要な労働時間は次の通りである。チューリッヒ 84時間15分。ウィーン 104時間15分。東京 136時間30分。ロンドン 150時間15分。メキシコ・シティー 189時間15分。香港 362時間15分。