世界展望
法王の発言に関する枢機卿の説明
ニューヨークのオコナー枢機卿は,進化論を「単なる仮説以上のもの」とした法王ヨハネ・パウロの声明に付け加える形で,アダムとエバは人間の男女ではなく,「別の形」をしていた可能性もあると指摘した。ニューヨーク・デーリー・ニューズ紙に載せられた報告によると,オコナーは,『カトリック教会は科学的な研究の成果を受け入れる用意が今もあり,生物学的進化も例外ではない』と述べた。聖パトリック教会で行なわれた説教で,同枢機卿は次のように述べた。「我々がアダムとエバと呼ぶ二者が創造されたとき,それが人間とは別の形をしており,神がそれに命を吹き込み,魂を吹き込んだという可能性はあるのだろうか ― これは科学的な性質の疑問である」。イタリアの保守系の新聞「イル・ジオルナーレ」は,「法王は人間が猿の子孫である可能性を示唆」という簡潔な見出しを掲げた。
法王のためのアドバイス
イタリアのカトリックのジャーナリスト,ビットリオ・メッソーリは,現代カトリック教会の聖職者たちは意見を述べすぎる,と考えている。メッソーリは彼らが自分たちの音信を『限定し,中身の濃いものにする』よう提案している。カトリック系の通信社アディスタが報じたインタビューの中で,メッソーリは次のように述べた。「簡単な計算をしてみると分かることだが,あらゆる階層の教会関係者が過去20年間に発した言葉は,過去20世紀に発した数を上回っている。人は話せば話すほど耳を傾けてもらえなくなる。私は7年間の安息期間を提案してきた。その間,教会は,助祭から法王にいたるまで沈黙を守るべきである。……ここまで演説や回勅が氾濫するとは……。私はそれらを読むが,他の何人がそうしているのか。わたしたちは,犠牲を払ってでも数十年前の法王たちの習慣に立ち返るべきである。彼らは多くても三つの回勅しか発しなかった」。
命を奪うスリリングなスポーツ
スリルを呼び物とするスポーツ,つまりバンジージャンプ,フリークライミング,スカイダイビング,ベースジャンピングなどがフランスで流行している。パリのル・モンド紙は幾人かの専門家たちに,なぜフランスでスリリングなスポーツがこれほどはやるようになったのか尋ねた。スポーツ・イノベーション研究センターの所長アラン・ロレはその理由の一つとして,規律の必要性よりも自由や楽しみに重きを置く今日の若者の価値観が,定められた規則,規律,訓練などを重んじる昔ながらのスポーツともはや相いれないことを挙げている。フランスの社会学者デービッド・ルブレトンによると,「危険性の高いスポーツの人気が高まっていることは,道徳的価値観の危機を表わす。確かに,わたしたちは本当のところ何のために生きているのか分からなくなってしまった。わたしたちの社会は人生が生きるに値するということを教えてはくれない。したがって,スリルを求める傾向は……人生に意味を持たせる手段として理解できる」。しかし,ますます多くの若者たちが命を危険にさらし,命を落としている。
古代アレクサンドリアを再訪問
考古学者たちは初め,エジプトのアレクサンドリア沖の海中で古代世界の七不思議の一つ,2,200年前のファロス灯台を発見したと発表していた。しかし,バンクーバー・サン紙によれば,いま考古学者たちは,「アレクサンドリアの古い港の東側,水深6㍍[20フィート]の所から,アレクサンドリアの古代宮廷の廃墟を」発見したと言っている。フランスの海洋考古学者フランク・ゴディオによると,この場所にはマルクス・アントニウスの家や神殿の廃墟,それにクレオパトラの宮殿の廃墟があり,ぶどう酒用のアンフォラと呼ばれる壺,花崗岩の支柱,舗装道路などの古代都市の遺物や遺跡が残っている。研究者たちは,「海中に没してはいるものの,2,000年たっても良い状態に保たれている長い突堤に守られた美しい港」を発見した,とゴディオは述べている。アレクサンドリアはアレクサンドロス大王にちなんで命名された。同大王は西暦前332年にこのすばらしい港を見て,そこに都市を造ることを決意した。この都市はアテネやローマに匹敵する文化と商業の中心地となった。有名なアレクサンドリア図書館もここにあった。しかし中世になる前に,この古代都市の大部分は地震や火事の被害を受け,海に呑み込まれて消失した。
次の千年期はいつ始まるか
1999年12月31日の真夜中,多くの人は世界中で新しい千年期の始まりを祝う。すでに,ぜいたくなパーティーの計画が立てられている。しかし,「このような端数のない年を[祝うのは]自然」ではあるものの,「正確に言うと,2,000年目の年,つまり現在の千年期の最後の年を祝うのであって,新しい千年期の始まりを祝うのではない」と,英国ケンブリッジにある王立グリニッジ天文台の発表文は述べている。この混乱は西暦前から西暦への移行の時点で生じた。それを確認したのはイエスの誕生に基づいて出来事の年代を決定しようと試みた,7世紀の歴史家であり神学者でもあったベーダである。ゼロ年が加えられなかったため,西暦前1年の最初の日から西暦1年の最初の日までの期間は1年しかなかった。その結果,最初の千年期は西暦1年の最初の日に始まり,西暦1000年の最後の日に終わった。そして,第2千年期は,1001年の1月1日に始まった。「それで,新しい千年期の始まりが2001年1月1日であることは明らかだ」と研究者たちは述べている。いずれにせよ,祝典はもっぱらグレゴリオ暦に基づいており,イエスの実際の誕生に基づいてはいない。今イエスは,信じられているよりも前に誕生したことが知られている。
望ましくない記録
ニューヨーク・タイムズ紙が伝えるところによると,「健康の専門家からなる委員会は,米国は世界のどの先進国よりも性感染症の罹病率が高いが,この疫病と戦うための効果的な国策を持ち合わせていない[と言っている]」。米国科学アカデミーの一機関である医学研究所の委員会によると,米国人がかかっている幾十もの性感染症は,防止できるはずなのに,相変わらず毎年ガンなどの深刻な健康問題や,非常に大勢の死を引き起こしている。16人で構成されるこの委員会が1年6か月に及ぶ研究を行なった結果,治療費や他の経費として43㌦(約5,160円)が費やされたのに対して,病気の予防には1㌦(約120円)しか費やされなかったことが判明した。この報告は,毎年の推定1,200万件の新たな症例の4分の1には思春期の若者たちが関係していると述べている。ヘルペス,B型肝炎,クラミジア感染症,淋病,梅毒などの病気が治療されずに放置されると,不妊,先天的欠陥,流産,ガン,死などを引き起こす場合がある。性行為によって感染するHIV,つまりエイズを引き起こすウイルスに関係した費用を別にしても,それらの病気は国に年間少なくとも100億㌦(約1兆2,000億円)の負担をかけている。
清潔な南極を探し求めて
南極大陸を訪れる人の数は,夏の気温が零下10度までしか上がらないのに,過去10年間で2倍になった。この最南の大陸と,ペンギン,あざらし,そして約1,300万平方㌔もある息を呑む氷の景観を眺めるため,1万人が約100万円もする休暇プランの予約をした。しかし,これらの恐れを知らぬ旅行者たちは,その地で働いてきた国々が置き去りにしたもの,つまり廃屋,ドラム缶,ゴミ,さらには古いコンピューターといった残骸のことをすぐに指摘する,とロンドンのインディペンデント紙は伝えている。英国ケンブリッジのスコット・ポーラー研究所で働き,南極旅行の最初のガイドブックを出版したベルナール・ストーンハウス博士は,これらの汚染者たちに関して次のように話している。「彼らは,昔はきれいにすることなど全く気にかけていなかったが,今では気にかけざるを得ない。観光者や訪問者たちはゴミ捨て場を見るために金を払ったのではないと抗議しているからである」。
教会をしのぐ宝くじ
バプテスト共同通信によると,米国人は教会に寄付するよりも多くのお金を宝くじに費やす。クリスチャン・センチュリー誌上で伝えられたように,米国勢調査局の報告に載せられている統計と,「アメリカ・カナダ教会年鑑」の統計とを比べた結果,1994年に,米国人が国営宝くじに費やした金額は266億㌦であったのに対して,教会にはわずか196億㌦しか寄付しなかったことが分かった。
蚊には効き目がない
バッグザッパー,つまり屋外に吊り下げられ,夜間に虫を引き寄せて鋭い音と共に感電死させる例の電気装置は蚊には効き目がない。「この装置は基本的には無意味である」と昆虫学の教授,ジョージ・B・クレーグ・ジュニアは言う。ほとんどの蚊はその光には引き寄せられない。また,雌の蚊 ― 刺すのは雌 ― は餌を狙っているときにアンモニア,二酸化炭素,熱など,皮膚から排出されるものを探すが,バッグザッパーはそれらを排出してはいない。排出物を見つけることのできない蚊はそこから飛び去ってしまう。それに,バッグザッパーで蚊を殺そうとするのは,「ティースプーンで海をきれいにしようとする」ようなものだ,とクレーグ博士は述べている。1匹の雌の蚊は一夏の半分だけでも6万匹以上の雌の子孫を残すことができる。3か月にわたる調査の結果,平均的な夜にバッグザッパーで殺される虫のうち,雌の蚊は3%にすぎないことが分かった。バッグザッパーは「園芸売り場ではなく家庭用娯楽器具の売り場で扱うべきだ」と,クレーグは言っている。