世界展望
気分をかえるために謙遜になる
◆ 英国で最近,科学者の持つ知識を称賛する代わりに,彼らの知らない事柄を集めた百科事典が発行された。解答を寄せた58人の著名な科学者のうち「名が通っていればいるほど,知らないことのためわたしたちに頼ろうとした」と編集長は語っている。450ページの「知らないことに関する事典」は,宇宙の起源,人間の眠る理由,意識とは何か,脳が記憶を蓄える方法を始め,答えが得られなかった質問を数多く提出している。ノーベル賞を受賞した分子生物学者のジェームス・クリックはこのように書いている。「最大の分子が,肉眼に見えないほど微小であっても,我々は有機体がどのように分子を形成するかを理解できる。しかしはっきり目に見える花や手や目を,分子がどのように形成してゆくかは理解していない」。編集長はこう明言した。「持っている知識が池の大きさなら,我々の知らないことは相変わらず大西洋のように広大である」。
インドの外科医術の進歩
◆ インディアン・エクスプレス紙の伝えるところによると,「ボンベイ,KEM病院のシュラッド・パンジー博士はインドにおける心臓切開手術の分野で,新しい方法を切り開いている。同博士は自分が[インドにおける]“輸血をしない心臓切開手術”の技術を初めて完成させたと主張している」。このインドの外科医はこう述べている。「インド人は外国人と比べると栄養不良なので,この手術を試みることにはわたしなりの心配があった。しかしわたしが教えを受けたカナダの著名な外科医ハイミーカー博士は,普通の健康状態の人ならだれでも受けられると語り,心配を和らげてくれた」。パンジー博士は輸血なしの心臓切開手術を30回ほど執刀したが,併発症はなかったと述べている。
司教のたまご
◆ イタリアの時事雑誌オギは最近アドルフ・ヒトラーの少年時代を研究するため,オーストリアに住む近親者にインタビューを行なった。いとこであるというアントン・シュミットは当時を回顧し,このように語っている。「彼が(七歳当時)シュピタールの我が家を訪れた時,祭壇と長椅子を作ってはミサを取り行なうまねをした」。その親族の話によると,司教を志していたアドルフ少年は,そのとき典型的な僧職者のぎょうぎょうしい身振りをまねたという。「彼は遊び友だちが一人残らず自分の手に口づけするよう要求した」と同氏は述べた。
非耽溺性麻薬 ― 脳をおかすか
◆ 脳の研究で有名なロバート・ヒースは,マリファナを吸ったアカゲザルの脳解剖を行ない,ごく微小ではあるが永久的な変化が生じていたと報じている。それらのサルは一日に一本のマリファナを週に五日間,六か月にわたって吸った。ニューヨーク・タイムズ紙によると,その変化の中には「一つの神経細胞から隣の神経細胞へ信号を送る“シナプシスの溝”が広くなるとか,脳細胞中の他の部分の変化などが含まれる」。以前同様の変化が観察されたのはマリファナの服用量がもっと多い場合だった。
長生きするロシア人
◆ 週一回発行されるソ連作家協会のリチュラトルナヤ・カジェク紙は,ソ連のグルジア共和国に住む長寿者に関する報告を最近発表した。生活習慣に関する質問を受けた人の半数以上は96歳から115歳までの老人で,116歳から132歳までの6老人は8%だった。どの長寿者も,長生きをしたいなら肉体的な活動をすべきだと述べている。108歳になるソーナ・アリギエブナ・ケリモワは,「まくらと仲の良い人は長生きしない」と述べている。132歳の女性は過去にかかった病気について尋ねられ,こう答えた。「病気にかかるひまなどありませんでした。子供や孫やひ孫を育てるのに生涯を費やしました。全部で70人以上います」。
これら長生きしているロシア人は何を食べているのだろうか。リチュラトルナヤ・カジェク紙によると,22%の人は食物,特に肉を制限していたが,他の人々は,「タマネギ,ニンニク,トマト,キュウリ,ナス,豆,クルミ,脱脂乳,マツォニ,はちみつ,肉,そしてもちろん泉の水」など,様々な食物を自由に食べていた。「しかし,だれもが食べ過ぎは危険だと言っている」。彼らは大抵,たばこを吸わない。
大司教がテロ行為を賞賛する
◆ 最近,メルキ典礼のカトリックの大司教ヒラリオン・カプッチがイスラエルの刑務所から釈放された。彼はヨルダンからイスラエルのアラブ反対者のもとへ火器,手投げ弾,爆薬を運んだために投獄されていた。カプッチが12年の拘禁刑に3年足らず服役した後,教皇パウロ六世は彼のためにイスラエルの大統領に取りなしを求めたと伝えられている。同大司教は暴力を支持する態度を改めただろうか。ナショナル・カトリック・レポーター誌によると,そうではないようだ。「伝えられるところによると,[カプッチは]自分の釈放を求めてテロ行為に出たパレスチナ解放軍に感謝を述べた」と,ハリー・ジェームズ・カーガス記者は語っている。「カプッチは,他人の暴力に反対しながら,政治的意見を共にする者の間では暴力を奨励する,迷惑な理論家の中に数えられている」。メルキ典礼のカトリックは,教皇を最上位の総大司教として認めている。
怒りを爆発させる
◆ 最近,日本の岡崎市に住む一主婦は怒りを爆発させた結果,悲惨な目に遭った。彼女は花火製造会社の下請けとして,花火を作って箱に詰める仕事を家で行なっていた。今では,その家も家族もなくなってしまった。病院のベッドで彼女はこう語っていた。「夫とけんかを始めたとき,私は台所の奥の部屋でパートタイムの花火作りの仕事をしていました。夫に向けて投げた台所用のマッチの大箱が偶然発火し,出来上がった花火を入れてあったリンゴ箱の中に落ちたのです」その結果,大爆発が起こり,夫と5歳になる息子は彼女の目の前で炎に包まれた。彼女が怒りを爆発させたために,8歳から13歳までの3人の娘も犠牲者となった。聖書は実に賢明で真実な助言を与えている。「怒りをやめ,憤りを捨てよ。心を悩ますな,これはただ悪を行うに至るのみだ」― 詩 37:8,口。
予期せぬ返事
◆ 米国西バージニア州のビッグ・サンディ川に架かる古い橋が崩れたとき,バルカンの住民は,政府に橋の復旧作業を行なわせようとした。タイム誌によると,人口わずか200人のこの町の名誉町長は,「役人を恥じ入らせて行動させる」ため,「ソ連に対外援助を要請した」。ソ連の慈善委員会からその要請を考慮するとの返事があったとき,町長は非常に驚いた。しかし,バージニア州ハイウェイ委員会が必要な資金を早急に集めた。
手入れを受けたユダヤ教の礼拝堂
◆ “ラスベガス・ナイト”を開いていた,ニューヨーク・ブルックリンのあるユダヤ教の礼拝堂が最近,警察の手入れを受け,37人が逮捕され,4,500㌦(約112万5,000円)が押収された。ブラックジャック用テーブル12台,ポーカー用テーブル12台,サイコロばくち用テーブル3台で,約300人の人がばくちをしていた。レジ係は,律法学者養成学校と関係を持つユダヤ教の教師を自認している。その後,礼拝堂の教師は,とばく師たちとの関係を否定しながらも,とばくの経営団体にそうした施設を賃貸していたことを認めた。ブルックリン南部風紀取締り班のギボンズ警官は,「とばくには必ず組織犯罪とのつながり」がある,と述べている。
少なくなる珍味
◆ ボルネオのコロカリア・ベスティダ・アマツバメの唾液,つまり「巣を固めるもの」から作る鳥の巣のスープは,だんだん縁遠いものになっている。「ニアの大きな石灰石の洞くつからアマツバメの巣を取る許可を,サラワク博物館から与えられているのは専門の採集者五人を数えるのみである」と,ベルギーのトゥー・ザ・ポイント・インターナショナル誌は伝えている。同誌によると,この五人の人たちは年を取っているが,「洞くつの屋根から巣をはがすため,折れやすい竹ざおを120mもよじ登れる若者はほとんどいない」。「それは非常に困難な仕事で,長年の間に数人の犠牲者が出ている」。ここに次いで良質の巣が取れる,ラハド・ダト近くのマダイの洞くつでも,鳥の巣の採集量は減少している。その上,殺虫剤が原因で,卵のからが薄くなり割れやすくなり,貴重なだ液も汚染されていると言われている。
良いニュースではなかった
◆ 1977年度中,米国の航空会社による航空機事故件数は,史上最低だった。その次に少ない1976年の28件に比べ,公式に知られた事故はわずか26件だった。しかし,1976年には航空機事故による死者が記録的に少なかった(45人)のに対し,1977年にはカナリア諸島における悲惨なジャンボ・ジェット機衝突事故のために,死亡者数(654人)は最高記録となった。
爆発物を使った犯罪の増加
◆ アルコール・たばこ・小火器管理局によると,米国における爆発物を使った犯罪は,1977年中1,339件という新最高数を記録した。1976年と比べると,12%の増加が見られる。しかし,資産の被害額は1976年の1,210万㌦(約30億2,500万円)から,1977年には720万㌦(約18億円)に減少している。「これは,物を破壊することよりも,人に向けて爆発物を使用する犯罪が増加したことを示している」と,同管理局の局長は述べている。
人間が移動し,動物がとどまる
◆ インドのとらの数は1973年にはわずか1,900頭ほどに減少していたが,最近再び増加しつつある。減少をくいとめるため,政府はその年に「とら計画」を開始した。とらの捕獲や,とら皮の輸出を制限する禁令に加えて,人間がとらとなわ張り争いをしないように,中には300年もの歴史を持つような村々をそっくり移し変えることも始まった。村人たちの多くは新農場発足のための経済援助もさることながら,政府が提供する改良された住まい,学校,医療から益を得られるとあって喜んで移動した。
二重の基準
◆ 最近日本の映画ディレクターと出版社がわいせつ罪で裁判を受けた。一本の映画が本になったが,その中に刑法上,“いかがわしい”とされるものが含まれているとして告発された。しかし翌日「国外でさばくためにポルノ写真を所持していた,との理由で起訴された」別の男に関して,最高裁判所は無罪を言い渡した,と英文読売紙は伝えている。この裁判からすると,日本国内に限って良俗を乱すものを広めるのは刑法にふれることであっても,海外に売るのは違法ではないことになる。
“むち打ち”― 間違っているか
◆ 英国領マン島に伝わる,非行少年を“白樺の枝でむち打つ”習慣が“侮辱的な罰”だとして攻撃されている。欧州人権委員会はこの問題をフランス,ストラスプールにある欧州人権裁判所に告発した。しかし島の法律制定者は,むち打ちは「我々を蛮行から守るために支払われる保険料である」と述べている。15歳から20歳までの非行少年だけが,前述の白樺の枝で6回までむち打たれる。その島の六万の住民の中で生じた蛮行の数は,1948年にむち打ちを禁止した英国よりも幾分少なめであった。