「私たちの神の家をなおざりにしない」
― エホバの証人の1966年年鑑から ―
香港
人口: 3,700,000
伝道者最高数: 245
比率: 15,102人に1人
香港の人々の多くは,物質的な資産に人生の価値を求め,経済的な発展を第一に考えています。その人々の考えるのはただ現在のことであり,前途のことではありません。それゆえ,神の国とやがて到来する新秩序に関するたよりに耳を傾ける人はあまり多くいません。それでも昨奉仕年度の間,エホバの証人は中国人の間で熱心に働き,設立された神の国の福音を宣べ伝えて,聞く耳を持つ人々を見いだしています。400万人近くの人がいる中で,家庭聖書研究をしているのはわずかに398人です。しかし神の民は人を弟子とする仕事を続けるべきことを知っており,これによって気を落とすことはありません。香港の支部は香港と中国とマカオからの興味深いニュースを送って来ました。
8月は学校の夏休みの季節です。エホバの証人はこの機会を利用して,良いたよりを広く伝えています。昨奉仕年度の8月には全部で29人が休暇開拓奉仕をしました。そのひとりは真理にいない夫をもつ,6人の子供の母親ですが,実際的な計画によって家事を能率的に果たし,同時に休暇開拓奉仕のできることを知りました。この母親は子供たちがそれぞれに手伝えるように家事を計画し,野外奉仕に多くの時間をささげるようにしたのです。月末に時間の目標を達成できた時の姉妹の喜びはどんなに大きかったことでしょう。そしてこの1ヵ月の集中的な活動によって奉仕者としての彼女の能力は大いに進歩しました。
接する人のすべてに真理を伝えることの大切さは次の経験によく示されています。数年前,年配の中国婦人はエホバの証人の家庭で家事の手伝いをすることになりました。彼女は初めから集会に行きましたが,それは父親や母親が演壇でプログラムに参加する間子供の世話をするためでした。しかし後にこの婦人との研究が始まりました。十分な教育を受けていないため進歩はむしろ緩慢でしたが,勤勉に学んだためやがて定期的に伝道するまでになりました。月10時間の目標にも達し,12冊の雑誌も配布しました。しかし最大の喜びは,彼女が最近の巡回大会で創造者への献身のしるしとして浸礼を受けたことです。エホバの証人の家族はこの手伝いの婦人に真理を伝えたことを非常に喜んでいます。
中国
昨奉仕年度中,中国の兄弟たちと連絡を取るため多くの試みがなされましたが,中国から届いた手紙はまだ一通もありません。間接的に得られた情報によると,中国の兄弟たちは厳重な監視下におかれ,福音の伝道という面ではあまり活動できません。
マカオ
人口: 375,000
伝道者最高数: 7
比率: 53,571人に1人
昨奉仕年度中,ふたりの特別開拓者がこのポルトガル植民地でよく働きました。仕事は大いに進展しましたが,伝道活動はカトリック教会の注目を集めるようになりました。カトリックの週刊紙はエホバの証人のことばに耳を傾けないようにという記事を再三掲載しています。しかし活動は成長を続け,毎週の「ものみの塔」研究に14名が集まるほどになりました。しかしポルトガルの警察当局は集会の場所を知り,ある日曜の午後,集会のさ中にそこにはいって来ました。警察は聖書と文書のすべてを押収し,ふたりの特別開拓者を国外に追放しました。この打撃にもかかわらず,マカオの伝道者たちは活動を続けることを決意しているようです。
フィリピン
人口: 30,000,000
伝道者最高数: 36,130
比率: 830人に1人
フィリピン群島のエホバの証人は御国の福音を国全体にくまなく伝えています。昨奉仕年度中には未割当ての区域で伝道するために特別の努力が払われました。フィリピンの支部が未割当ての小さな町や村に特別開拓者を派遣したのは昨年が初めてです。特別開拓者たちは数々のすばらしい経験をし,また,ひとたび真理からそれた人々を再び活発にならせています。フィリピン支部のしもべから送られたいろいろな経験をここに紹介しましょう。
昨奉仕年度中の大きなできごとは12月のノア兄弟の訪問でした。ノア兄弟はこの地域一帯の支部事務所の視察旅行の一部としてフィリピンを訪れました。この時わたしたちが受けた数々の助言はきわめて有益であり,野外で働く兄弟たちのためにより効果的に奉仕するため,これを役立たせています。訪問中,水曜日の晩にマニラ競馬場大スタンドでの特別の集まりを計画し,マニラ市近隣の90の会衆の兄弟たちを招きました。4000人程度の出席を見込んでいましたから,出席者7463人との発表があった時のわたしたちの喜びを想像して下さい。その中にははるばるミンダナオ島から飛行機で来た人もいました。ノア兄弟の話に励まされて聴衆は非常に喜びました。
学童でありながら信仰のために試練に会うことがあるなら,ミンダナオ島アグサン州の8歳の少女の経験から励みを得て下さい。この小さな姉妹は同じクラスにいるエホバの証人数人と共に学校側から国歌を歌い,国旗に敬礼することを何度も求められていました。しかしこの子供たちは自分の信仰を妥協させませんでした。ある日いつものように式が行なわれましたが,式の終わる前に,この年若いエホバの証人たちはマイクロフォンのところで国歌を歌うことを命じられました。昔の3人のヘブル人の若者と同じように,この子供たちは良心の許すところまでこの命令に応じ,マイクロフォンのある所にまで行きました。しかし子供たちは国歌のかわりに賛美歌の80番を歌ったのです。それは「神のものを神に返せ」という歌でした。
翌日の午後,この8歳の少女はリベリアでの国旗敬礼問題を扱った「目ざめよ!」誌を持って行き,受け持ちの先生に渡しました。その雑誌の記事を読んだ先生はエホバの証人に対する態度を全く改め,それ以後クリスチャン良心をおかすような行事を強要することは決してありません。今,先生はこの少女の兄と聖書を勉強しています。このすべては幼い伝道者たちが圧倒的な反対者にも負けず,強固な信仰を守ったことの結果です。たしかに神は幼な子,乳のみ子の口にさんびを備えられました。―マタイ 21:16。
あなたは会衆の集会の大切さをどれほど認めておられますか。ルソン島北部の山岳地方に68歳の兄弟が住んでいます。ここからいちばん近い御国会館までは40キロあります。老人の家から市街まで行くしっかりした道路はなく,老人はこれだけの道のりを歩いて集会に行かねばなりません。この兄弟は老齢であるだけではなく,最近の骨折によって左足が弱っており,早く歩くことができません。そのため集会に時間どおりに行くためには前日に家を出ることが必要です。しかし巡回のしもべの報告によるとこの老人が集会をかかすことはなく,また遅刻することもありません。老人はこれまで4年間正規開拓奉仕をしており,いつも時間の目標を達成しています。老人はこう語っています。「わたしはとても幸福です。若い日に造り主を覚えることはできませんでしたが,年寄りであるとは言え今造り主を知っているからです」。
インドネシア
人口: 103,000,000
伝道者最高数: 1,277
比率: 80,658人に1人
インドネシアのエホバの証人は多くの場所で反対を受けますが,それでも昨奉仕年度に21パーセントの増加を見ました。開拓者や特別開拓者,また会衆の伝道者は野外奉仕に目ざましいほどの時間を費やして熱心に働いており,また聖書研究活動をよく行なっています。ここの証人たちの熱意と誠実さは神に献身した人すべての喜びとなるでしょう。インドネシアは任命された奉仕者が特に必要な所です。この国の異常な,しかし現実の経験を幾つかここにのせましょう。以下はインドネシア支部のしもべからの報告です。
昨奉仕年度には年の聖句が特に適切でした。宗教上の敵対者たちはエホバの証人の活動を妨げようと懸命な努力をしています。支部事務所には兄弟たちに対する暴徒の襲撃事件に関する報告が国の各地から幾つも寄せられています。伝道中になぐられた特別開拓者も少なくありません。西イリアンの小さな町バイアクはその種の事件のあった所です。ここではふたりの特別開拓者の働きがよい進歩を見せていました。しかしこれは実質的にこの島を独占していたプロテスタントの牧師を刺激しました。聖書に関心をもつ人の家で初めて「ものみの塔」研究が開かれた時,町の牧師4人および幾つかの教会の長老約60人がその家を囲みました。特別開拓者と家の主人が騒ぎの理由を尋ねるため外に出ると,暴徒は家のへいを倒し,外に出た3人の兄弟に襲いかかりました。3人共けがをし,特別開拓者のひとりはリーダー格の牧師に意識を失うほどになぐられ,そののち荒々しくけられました。この日の「ものみの塔」研究には関心のある人24人が出席していましたが,この暴力事件を見てもたじろぐことなく,むしろ自分たちの以前の牧師が大いなるバビロンに所属する者であることをいっそう強く知りました。
この暴徒事件を扇動した牧師は後に別の島を訪れました。その島にはエホバの証人の家族二つが移住して家を建てていました。牧師は兄弟たちを攻撃する,きわめて扇動的な説教をし,そののち教会員を率いてふたりの兄弟の家を訪れ,その家をこわしました。これによって全部で12人が住む所をなくしました。兄弟たちはこうした苦境にあっても忠実を守り,暴徒に殺害されるおそれにもまけず伝道を続けています。
カリマンタン(ボルネオ)島からは,大会の帰路に証言した人の興味深い経験が寄せらています。ふたりの特別開拓者は川船を利用して任命地に帰る途中,船の乗りかえのため川ぞいの村に一晩泊まりました。ふたりはそこで,数年前に「神を真とすべし」を読んだ結果エホバの証人に反対するようになったというプロテスタントの伝道者に会いました。彼が特に異論を唱えたのは三位一体に関する章についてです。3人は三位一体説について話し合いましたが,プロテスタントの伝道者は自分の信じていることを裏づけるのにしどろもどろになりました。同じ日の晩,彼は論議をさらに続けるため開拓者の泊まっている家を訪れ翌朝の3時までかかってたくさんの聖句を調べました。それから1年ほどたち,開拓者はこの時のことをほとんど忘れていました。ところが驚いたことに,このプロテスタントの伝道者が川船に乗って一昼夜の旅をし,ふたりに会いに来たのです。彼は1年前の話し合いをどうしても忘れることができないと言いました。話によると,彼は「神を真とすべし」を何度も読み返えし,三位一体説の根拠と納得のゆく答えとを求めて多くの人の所に行きました。まず自分の教会の牧師に尋ねましたが,満足のゆく答えが得られないのを知って,教会の監督会に説明を求めました。監督会は「神を真とすべし」に反ばくするものを何も提供し得ませんでした。彼はこうことばを続けました,「それでわたしはエホバの証人になりたいのです。どうしたらよいのですか」。彼は自分が教会の監督会にあてた手紙の写しを見せました。それは教会の伝道者をやめ,教会を脱退するために書いたものであり,「わたしはもはや真実でない教理を信じたり,教えたりすることはできませんとしるしてありました。数日間徹底的に勉強したのち,彼は自分の村に帰りました。それは真理を伝道するためです。この以前の説教師は村々をまわり,自分が偽りを教えていたことを家ごとにあやまり,自分が学んだ真理の喜びを伝えました。彼は次の大会で浸礼を受ける用意をしています。
ジャワ島のある会衆のしもべは高等学校の校長であり,この立場を宣教に利用しています。彼は聖書研究を望む生徒を集めて特別の教室を開いたのです。生徒はすべて回教徒ですが,いつも多数の生徒が集まりました。子供が聖書の知識に進歩するのを見た親は驚き,この講義を聞くことを禁じました。校長はこうした親のひとりひとりを尋ね,エホバの証人が行なう特別の教育活動について話しました。結果として親の多くは子供が聖書の勉強を続けることを許しました。生徒の進歩に応じて,特別の「ものみの塔」研究と神権宣教学校も設けられました。2年のうちに19人の学生が伝道者になり,9人が浸礼を受け,5人が休暇開拓奉仕をしました。この会衆の過去半年の増加率は59パーセントです。
雑誌を使って伝道する機会はいろいろあります。ある姉妹は一地方の支配者の妻ですが,公用で自分の夫を尋ねる人々に雑誌を見せ,1日に20冊配布することもあります。初め夫はその地方におけるエホバの証人の地位を見て,妻の活動に強く反対しましたが,今では妻が家から家に伝道し,自分の家に尋ねて来る人に文書を配布することを許しています。
ベトナム
人口: 14,200,000
伝道者最高数: 19人
比率: 747,368人に1人
1月に,サイゴンのある家族がサイゴンの北約320キロメートルの都市に引っ越しました。母親と上のニ人の子供は,伝道者です。私たちはカトリック教徒と仏教徒が烈しく憎みあっているその都市で,彼らがどのように単独で伝道していくかを心配していました。けれどもエホバの聖霊は,たしかにこの姉妹と子供たちに働き,幸いにも,私たちの心配は無用のものとなりました。姉妹は奉仕の計画をきちんとつくって,週に3回奉仕に出かけ,1回は二人の子供とそれぞれ出かけ,1回は一人で出かけます。彼女は主人と6人の子供の世話をしなければなりません。しかし,奉仕に出ると3時間かそれ以上の時間伝道をつづけます。良い計画によって彼女は自分の責任を良く果たします。新しい都市での最初の週に彼女は仏教徒の男の人と研究を始めました。今,この人は創造主エホバの存在を確信しています。そして,自分自身のベトナム語聖書を持っています。この姉妹が理解できるのはベトナム語だけです。ベトナム語の印刷物は,3冊の冊子と3冊のパンフレットだけですが,この姉妹は真理について聞くすべてのことを吸収し,又聖書に印をつけています。そしてエホバとエホバのことばに対して非常に強い愛を抱いているので,説明されるダニエルや黙示録の事柄を全部すみやかに吸収してしまいます。彼女の関心は,非常に強く,また専門家のように聖書と人々を扱います。サイゴン会衆は,週毎に,ものみの塔研究の質問と答えを,彼女に送ります。そして彼女は子供だちと共にそれを学びます。
3年前,雑誌活動の時に出合った,セブンスディアドベンティストの婦人と研究が始められました。今彼女は良く真理を悟り,3人の子供も野外奉仕に参加しています。昨年彼らは,アドベンティストの有名な伝道者である主人つまり子供たちの父親と,安息日の問題を討議しました。しかし主人は聖書から答えることができず,聖書を用いて自分の説を裏づけることができませんでした。アドベンティスト教会は,家族が「悪い見本」であるという理由で,彼をサイゴンに任命するのを拒絶しました。それで彼は,奥地で奉仕しなければなりません。アドベンティスト教会員たちは,なんとかして,彼女を取りもどそうとしましたが,彼女はエホバに奉仕することを,固く決心しています。彼女は真理を学ぶまで決して聖書に関心を持たなかったことや,アドベンティスト教会では聖書の意味が少しもわからなかったということを,彼らに話しました。ベトナムのアドベンティスト教会の最高位の牧師も彼女を訪問しました。彼はキリストを愛することについて,聖書の一節を読みました。彼女はキリストを愛していますと答え,自分の聖書をとりに行きました。しかし彼は聖書を閉じて,行かなければなりませんと言いました。食料品を無料で得るために教会へ行きませんかと,他の人から,すすめられた時にも,彼女はお金や物質のために,真の神エホバの崇拝をやめることは出来ませんと答えました。