研究記事 34
23番の歌 エホバはわたしたちの力
エホバから許されていることを信じてください
「あなたは過ちと罪を許してくださった」。詩編 32:5
ポイント
エホバから許されていると信じることが大切なのはどうしてでしょうか。エホバがどれほど許したいと思っているかが伝わってくる聖書の言葉に注目します。
1-2. エホバから許してもらうと,どんな気持ちになりますか。(挿絵も参照。)
ダビデ王は罪悪感に苦しみました。(詩 40:12; 51:3,表題)大きな間違いを犯してしまったからです。でも深く後悔し,心を入れ替えたので,エホバから許されました。(サム二 12:13)それで晴れやかな気持ちになり,安心できました。(詩 32:1)
2 私たちもダビデのように,エホバから許してもらうと安心でき,穏やかな気持ちになります。罪を心から悔いて告白し,同じ過ちを繰り返さないようにするなら,エホバは許してくれます。たとえ重大な罪であってもです。(格 28:13。使徒 26:20。ヨハ一 1:9)まるで罪などなかったかのように,すっかり許してくれます。そう考えると,本当にほっとします。(エゼ 33:16)
ダビデはエホバの許しをテーマにした詩を幾つも作った。(1-2節を参照。)
3-4. ある姉妹はバプテスマを受けた後もどんな気持ちになりましたか。この記事ではどんなことを考えますか。
3 でも,エホバから許されているとなかなか思えないこともあるかもしれません。ジェニファーがそうでした。エホバの証人の家庭で育ちましたが,10代の時に親に隠れて悪いことをするようになりました。それから何年もたって生き方を改め,バプテスマを受けました。こう言っています。「以前の私はお金や物に夢中で,不道徳なことをしたり,飲み過ぎたり,怒りをぶちまけたりしていました。もう悔い改めていたのでイエスの贖いによって許してもらえる,と頭では分かっていました。でも,自分は許してなんかもらえない,という心の声が聞こえてくることもありました」。
4 あなたも,エホバから許されていないのではないか,と感じてしまうことがありますか。エホバはあなたにも,ダビデと同じように自分が許されていることを信じ,安心してほしいと願っています。では,エホバから許されていると信じることが大切なのはどうしてでしょうか。そう信じるために何ができますか。この記事ではそのことを考えます。
エホバから許されていると信じるのが大切なのはどうしてか
5. サタンは私たちにどんなことを信じ込ませようとしてきますか。
5 サタンにだまされずに済む。サタンは,私たちがエホバに仕えるのをやめさせるためにどんなことでもします。サタンが使う手口の1つは,自分の罪は許されない,と思い込ませることです。コリント会衆で起きたことを考えてみましょう。ある男性が性的不道徳を犯したために,会衆から除かれました。(コリ一 5:1,5,13)その男性は悔い改めました。でもサタンは,会衆の兄弟姉妹がその人を許さず,温かく迎え入れないことを望んでいました。また,悔い改めたその人自身にも,自分は許されていないと思い込ませようとしていました。「あまりの悲しみに打ちのめされて」エホバに仕えるのをやめさせたい,と思っていたからです。サタンの魂胆ややり方は今も変わっていません。そして,「私たちはサタンの手口を知らないわけではありません」。(コリ二 2:5-11)
6. どうすれば自分を責め続けなくて済みますか。
6 自分を責め続けなくて済む。悪いことをすると,罪悪感を感じるものです。(詩 51:17)良心が痛むのは良いことです。間違いを正そう,という気持ちになるからです。(コリ二 7:10,11)でも,いつまでも自分を責めていると,エホバに仕える力が奪われてしまうかもしれません。一方,エホバに許されていることを心から信じるなら,罪悪感という重荷を肩から下ろせます。そして,前を向いて晴れやかな気持ちでエホバに仕えていけます。それこそ,エホバが願っていることです。(コロ 1:10,11。テモ二 1:3)では,どうすればエホバから許されていると信じることができますか。
エホバから許されていると信じるためにできること
7-8. エホバはモーセに自分について何と言いましたか。その言葉からすると,どんなことは確かですか。(出エジプト記 34:6,7)
7 エホバが自分の性格について言ったことをよく考える。エホバがシナイ山でモーセに言ったことに注目してください。a (出エジプト記 34:6,7を読む。)この場面でエホバは自分の性格ややり方について,どんなことでもモーセに話すことができました。でも,あえてまず自分が「憐れみ深く,思いやりがある神」だと言いました。そういう優しい神が罪を深く悔いている人を許さないことなどあるでしょうか。罪を許さずいつまでもそれを持ち出す,というのは冷たくて心が狭い人がすることです。エホバは決してそうではありません。
8 エホバはいつも本当のことを言うので,モーセに語った言葉も確かに信じられます。(詩 31:5)以前にしたことのせいで後ろめたさを拭えないでいるなら,こう問い掛けてみましょう。「私は,エホバが憐れみ深い方で罪を悔い改める人全てを許す,と信じているんじゃないだろうか。であれば,自分のことも許してくれていると信じられるんじゃないか」。
9. エホバが私たちの罪を許す,とはどういう意味ですか。(詩編 32:5)
9 エホバの許し方について聖書に書かれていることをよく考える。ダビデが書いた聖書の言葉に注目してみましょう。(詩編 32:5を読む。)ダビデは,「あなたは過ちと罪を許してくださった」と書きました。ここで「許す」と訳されているヘブライ語には,「持ち上げる」や「運び去る」という意味もあります。ダビデを許したエホバは,ダビデの罪を持ち上げて運び去ったということです。ダビデは,抱えていた罪悪感という重い荷物がなくなって,どんなにほっとしたことでしょう。(詩 32:2-4)私たちも罪を心から悔い改めるなら,エホバはその罪を運び去ってくれます。重い荷物を自分で抱え込む必要はありません。そう思うと,気持ちが楽になります。
10-11. 「快く許してくださいます」という言葉から,エホバについてどんなことが分かりますか。(詩編 86:5)
10 詩編 86:5を読む。ダビデはエホバが「快く許してくださいます」と書いています。この表現について,ある参考文献はこう説明しています。「神は『許す方』であり,それが神の『本質』である」。どういう意味でしょうか。聖句の続きにはこうあります。「あなたに呼び掛ける人全てに,揺るぎない愛を豊かに示してくださいます」。前の記事で考えたように,エホバは揺るぎない愛にあふれていて,何があっても変わらない深い愛情を私たちに注いでくれます。その揺るぎない愛に動かされて,悔い改める人全てを「惜しみなく許してくださ」います。(イザ 55:7,脚注)エホバから許されているとはなかなか思えないなら,こう考えてください。「私は,悔い改めてエホバに呼び掛ける人全てを,エホバが快く許してくださると信じているんじゃないだろうか。そう信じているなら,許してくださいと必死で祈る自分のことも,必ず許してくれると信じられるんじゃないだろうか」。
11 エホバは,私たちが弱くて何度も失敗してしまうことを知っています。(詩 139:1,2)ダビデが書いた別の詩編を読むとそのことがよく分かります。また,エホバの許したいという気持ちも伝わってきます。
エホバは覚えている
12-13. 詩編 103編14節によると,エホバはどんなことを覚えていますか。覚えているので何をしますか。
12 詩編 103:14を読む。ダビデはエホバが,「私たちが土でできているにすぎないことを覚えている」と書いています。エホバは,私たちが罪を受け継いでいて,よく失敗してしまうことを覚えています。そういう弱さのある人間をぜひ許したいと思っています。ダビデの言葉を詳しく調べてみましょう。
13 ダビデは,「神は私たちの造りをよく知っている」とも言いました。エホバはアダムを「地面の土で」造りました。(創 2:7)完全な人間にも限界があることをよく知っていました。人間は,食事や睡眠を取り,呼吸をしなければ生きていけません。でもアダムとエバが罪を犯した後,人間が土でできているということは別の意味を持つようにもなりました。生まれつき罪を負っていて,悪いことをしてしまいがちだということです。エホバはその事実をただ知っているだけでなく,「覚えて」います。ここで「覚えている」と訳されているヘブライ語には,行動を起こすという意味合いがあります。ダビデはつまり,こう言っていました。「エホバは人間がよく失敗してしまうことを知っている。それで,心から悔いた人を見るとかわいそうに思い,許さずにはいられない」。(詩 78:38,39)
14. (ア)ダビデは,エホバが罪をどのように許すと書きましたか。(詩編 103:12)(イ)エホバはダビデをどのように許しましたか。そこから何が学べますか。(「エホバはどのように許し,忘れるか」という囲みを参照。)
14 エホバがどのように許してくれるかについて,詩編 103編からほかにも学べることがあります。(詩編 103:12を読む。)ダビデによると,エホバが許す時,「日の出[東]は日の入り[西]から遠く離れている」のと同じように,私たちの罪を遠くに離してくれます。東と西は全く逆の方角で,この2つが重なり合うことはありません。この表現からどんなことが分かるでしょうか。ある文献は次のように説明しています。「罪がそれほど遠くに運び去られると,そのにおいも痕跡も記憶さえも完全に消えてなくなる」。香りは記憶を呼び覚ますことがあります。でもエホバが許す時,罪のかすかなにおいさえ残らないので,罪を思い出して私たちを責めたりすることは決してありません。(エゼ 18:21,22。使徒 3:19)
15. 罪悪感がなかなか消えないとき,何ができますか。
15 エホバから許されているとなかなか思えないとき,詩編 103編のダビデの言葉はどのように役立ちますか。罪悪感が消えないなら,こう考えてください。「エホバは,私が罪を受け継いでいることを覚えていて,心から悔いるなら許してくれる。私はそのことを忘れてしまっていないだろうか。エホバが忘れてもう二度と持ち出さないことにした罪を,私の方がいつまでも覚えていて,引きずっていないだろうか」。エホバは,あなたの過去の間違いに注目し続けたりはしません。そうであれば,私たちも自分を責め続けなくていいのです。(詩 130:3)エホバから許されていることを信じてください。自分を許し,前に進んでいくためです。
16. 過去ではなく,前に目を向けるのが大切なのはどうしてですか。(挿絵も参照。)
16 例えで考えてみましょう。過去の間違いについて考え続けることは,バックミラーばかり見ながら車を運転するようなものです。もちろん,時々バックミラーを見れば,後ろの危険に気付くことができます。でも,安全に前に進むには,しっかり前方を見ていなければいけません。同じように,過去の間違いについて時々思い出すのは悪いことではありません。失敗を繰り返さないようにしよう,と思えるからです。でも,過去をいつまでも引きずっていると,罪悪感のせいでエホバへの奉仕に打ち込めなくなってしまうかもしれません。それで,前にある道に目を向け続けましょう。過去のつらい記憶が「思い出されることも……ない」,新しい世界に続く道です。(イザ 65:17。格 4:25)
運転中,バックミラーではなく前方に注意を向ける。過去の過ちにではなく,明るい未来に目を向けることが大切。(16節を参照。)
何度も自分に言い聞かせる
17. エホバから愛され,許されていることを自分に何度も言い聞かせる必要があるのはどうしてですか。
17 エホバから愛され,許されていることを,自分に何度も言い聞かせるようにしましょう。(ヨハ一 3:19,脚注)どうしてでしょうか。サタンはいつも私たちの隙を狙っていて,自分は愛されていないとか,許してなんかもらえないと思い込ませようとしてくるからです。狙いは,エホバに仕えるのをやめさせることです。自分に残された時が少ないことを知っているので,ますます攻撃を強めてきます。(啓 12:12)サタンのうそにだまされないでください。
18. エホバから愛され,許されていることを信じるために何ができますか。
18 エホバから愛されていることを確信するために,前の記事に出てきたアドバイスの通りにしてみましょう。エホバから許されていると信じるために,エホバが自分の性格について言ったことをじっくり考えてください。また,エホバの許し方について聖書に書かれていることもよく考えましょう。忘れないでください。エホバは私たちが何度も間違いをすることをよく知っていて,思いやり深く接してくれます。許す時,徹底的に許します。エホバは許したいと心から思っています。ダビデのように,そのことを確信してください。そうすればきっとこう言えるでしょう。「エホバ,私の『過ちと罪』を許してくださって本当にありがとうございます!」(詩 32:5)
1番の歌 エホバの属性