世界展望
依然として続く軍備競走
◆ 先ごろ,アメリカとソ連は軍備管理の条約に調印した。しかし,両国とも,地下実験など協定に含まれていない分野での開発を押し進めており,核軍備競走は弱まっていない。同時に,フランスは太平洋上での水爆実験を続けており,中共と同様,大気圏での核爆発の中止を拒否している。また小さな国の中にも,核兵器開発のまぢかな国が24か国ちかくある。
東西貿易の拡大
◆ アメリカと,ソ連ほか東ヨーロッパ共産国との貿易が拡大している。P・G・ピーターソン米商務長官は,ソ連のばく大な資源を開発するという,実現可能な共同事業には,「有望な見通し」があるとしている。一方ソ連は,予想されるアメリカからの大量輸入をそうした資源開発によって一部埋め合わせるものと考えている。西側との貿易が拡大している一つの理由は,ソ連および他の鉄のカーテン諸国で消費者の需要が大きくなっていることであるという。
裁判所,輸血拒否の立場を支持
◆ アメリカのメリーランド州ヒューズビルに住む34歳のチャールズ・オズボン氏は事故に会い,「輸血をしなければ生きられる見込みは25%しかない」と言われた。しかし,入院に際して彼はカフリッツ記念病院の医師たちに輸血をしないでほしいと話した。病院の職員数人は,オズボン氏に輸血を強制しようとして,シルビア・ベイコン上級裁判所判事の自宅に行った。オズボン氏の家族は彼の立場を支持し,病院当局者に同行した。ベイコン判事はその要請を拒絶したため,病院側は,先に一女性に対して強制的な輸血を命じたJ・S・ライト判事のいる首都ワシントンの上告裁判所に申し立てをした。(日本語の「目ざめよ!」1964年7月8日号参照)ベイコン判事は,決定を再考するよう求められたため病院へ出向いてオズボン氏と個人的に面接した。しかし,病院側の申し立てはふたたび拒絶された。上告裁判所は,最終裁判でベイコン判事の判決をくつがえすことを拒否した。ワシントン・ポスト紙はこう述べている。「オズボン氏の主治医,アルバート・ロール博士は,オズボン氏のような状態にある患者の大半は死亡したことであろうが,『われわれはどんな事になるかを必ずしも予想できるわけではない。結果は患者によって違う』と語った」。オズボン氏が1週間して退院したので医師たちは驚いている。
フィリピンで洪水
◆ 今年のフィリピンの7月は1919年の8月以来もっとも雨量の多い月だった。マニラでは,数回の台風によってもたらされたモンスーンの雨が1,600㍉ちかくも降った。750平方㌔の農地を含むルソン島中部全域は大洪水に見舞われた。マニラ北部では河川がはんらんし,堤防が決壊したため,中央の平野は大きな湖となった。また,マニラの南側にある沿岸の町々は浸水した。この洪水で数百名が死亡し,家屋を失った何千人もの人々は食量不足と病気に見舞われている。
切断された手足の縫合手術に成功
◆ アメリカで最近,腕を切断された6人の患者がマサチューセッツ総合病院で手術を受け,腕を元どおりにつないでもらうことができた。つい最近では,魚釣りのさいの事故で腕を切断された人が11時間後にそれを元どおりにつないでもらったという例がある。10年前に12歳の一少年が肩の下から右腕を切断された。しかし現在,彼はその手を使い,自動車の機械工として働いている。また,2年前に手首から先が切断されて縫合手術を受けた人が,手術後1年もたたないうちに,その手を使って火の燃えるビルから子どもを救助したという例もある。しかし,同病院の医師たちは,縫合手術に成功しなかった3件の例も上げている。
カトリック教会の最近の動き
◆ カトリック教会で変化しているのは教義だけではない。アメリカのニューオリンズにある聖フランシス・デ・サール教会で日曜日の午前9時半から行なわれるミサでは,デキシーランド・ジャズ,ジャズ形式の黒人霊歌,ロック,「なつかしのバプテスト賛歌」が演奏され,司祭は法衣に長いダシキを着る。信徒たちは手拍手を取り,からだをゆすったりくねらせたり叫んだりする。最近,信徒たちは「われらは克服する」という賛美歌をうたいながらこぶしを振り上げてブラックパワーの敬礼をした。一方,シカゴ地区では20のカトリック教会や学校が1年に一晩だけちょっとしたナイトクラブに変わる。中には4万3,000㌦(約1,300万円)にも及ぶ収益を上げるところもあるという。使徒聖ユダ・カトリック学校の「ポート・オー・コール」という行事では,21歳以下の人は入場を許されない。道化芝居の出演者のひとりは,冗談の中に「やや下品な」ものがあったことを認めている。しかし彼女は,「ひどく狭量な人でない限り,それを健全なおとなの娯楽として受け入れたはずだ」と語った。
盗みを思いとどまらせる方法
◆ 家を長く留守にする場合,お宅はどろぼうにはいられる危険があるだろうか。二,三の予防手段を講じておけば,物を取られずにすむ場合がある。たとえば,カーテンやブラインドを少し開けておく。できれば電燈を自動的に点滅させるよう,タイムスイッチを入れておく。簡単に持ち運びできる物はしまう。郵便物をも含めて,配達物を断わっておく。また,芝生の手入れや留守のあいだ定期的に家の中を点検してもらうよう知人に依頼しておくなどのことが必要である。
アメリカで廃刊になる新聞が増加
◆ アメリカでは去る6月にボストン・ヘラルド・トラブラー紙が,続いて7月中旬に(首都)ワシントン・デーリー・ニューズ紙が廃刊になった。デーリー・ニューズ紙は5年間赤字だったという。アメリカで現在,一般向けの日刊新聞が2社以上ある都市はニューヨークだけである。
『社会に組み込まれている犯罪』
◆ 去る6月,アメリカのニューヨーク市警察部長P・マーフィは次のように語った。「アメリカのめざましい進歩には,悲劇的で底知れぬほど深い失敗の驚くべき記録が伴ってきた。犯罪は長年にわたって増加してきたが,今後も引き続き増加していくことはまちがいない。犯罪者は悔い改めず,犯罪活動は減少しないだろう。犯罪はわれわれの社会組織の中に組み込まれているのである」。同警察部長の正しいことを裏づけるかのように,8月21日にはニューヨーク市で1日に14件という記録的に多くの殺人事件があった。翌日,ふたりの強盗がブルックリンの銀行で人質を捕えた際,3,000人のやじ馬は自分たちの『ひいきの側』を声援した。
作物の品種の均一性は危険
◆ アメリカのとうもろこし生産量の15%を全滅させた1970年の胴枯れ病は,作物の品種の均一性に原因があるとされている。アメリカ国立科学アカデミーは,現在同国の14の主要な作物が同様の危機に直面する可能性があると述べている。消費者がこうした事態に影響を与えているのは興味深い。消費者から均一で安い品物の需要があるため,農家は,一定の大きさの種子を能率的に処理する機械を購入してまで,高収量の品種を2種類か3種類に限って作付けすることを続けている。これでは,外来の寄生虫がいったん現われたら作物全体が危険にさらされるのは言うまでもない。作物の品種が均一でなければその危険は最小限にくい止められる。
宣教師の収入
◆ 有名な宣教師は経済的にどれほど恵まれているであろうか。最近のニューヨーク・タイムズ紙に載ったある記事によると,ビリー・グラハムの6年前の年収は1万9,500㌦(約600万円)であった。彼はそれが「アメリカ政府に雇われている貧しい労働者や労働組合の指導者たちの収入よりはるかに少ない」と述べたという。現在,キャスリン・クールマンの年間所得は2万5,000㌦である。オハイオ州アクロンに住む,カシードラル・オブ・トマロウという大聖堂のレツクス・ハンバード氏はブルックリン・ガードル工場を所有し,ターボプロップエンジンの自家用飛行機に乗って仕事をしている。ひどいアルコール中毒のため1970年に死亡したA・A・アレンは,生前,通常の寄付金から数百万㌦を受け取っていた。またタイムズ紙によると,彼は「自分が使った伝道集会用の古テントの小切れで作った『繁栄の布』を100㌦から1,000㌦の寄付で売り込んだ」。これは,「枕する所なし」と言われたイエスとなんと対照的なのであろう。―マタイ 8:20。