世界展望
放射性たばこ?
● 米国マサチューセッツ大学の医師たちは,たばこの煙の粒子には放射性物質が「多量に含まれている」と述べている。その放射性物質とは,ポロニウム210(たばこ栽培に用いられたリン酸塩の肥料に由来する)と鉛210である。「ニュー・イングランド・医学ジャーナル」誌に掲載されたその医師たちの報告には,1日一箱半のたばこを吸う人は,1年で,胸部X線撮影300回分の放射線を浴びることになる,と記されている。
本当はだれの利益を考えているのか
● 「たばこに関する政府見解を医師が批判」という見出しのもとに,エスタド・デ・サンパウロ紙はブラジルのポルトアレグレから,リオグランデ・ド・スル大学のマリオ・リガット教授が喫煙に対する政府の態度を痛烈に批判したことを報じている。リガット教授によると,政府当局は「たばこの生産と販売から得られる税金は,国民の相当数が被っているこうした製品による病気や死を補って余りあると今なお考えている」。リガット教授は,ドイツ連邦共和国がたばこの販売から得た税金では医療・入院加療・欠勤・寡婦年金・たばこに関係した火事とその結果などの費用の半分しかまかなえなかったことを明らかにしたドイツ政府当局者の言葉を引き合いに出している。
「国家」の権力が強くなるスウェーデン教会
● 最近開かれたスウェーデン国家教会協議会の席上で一つの政府提案が可決され,議会は教会法の制定の少なくとも一端にあずかる権利を得ることになった。結果として教会は今まで以上に国家に縛られることになるという意見がある。スベンスカ・ダグブラデット紙の社説はこう論評した。「スウェーデン教会は国家の組織として,たとえ議会が教会の教えや儀式を律する法を制定するにしても,それにただ従わなければならない」。
「十字砲火」に遭う
● スイスのシャテル・セ・デニ付近の高速道路際に,この新しい道路が開通する直前,高さ8㍍の一つの十字架が立てられた。スイスの出版物トゥアリングによると,「教会と高速道路の分離を促進する委員会」により幾百人もの署名が集められたという。その陳情は,高速道路際の教会のサインをすべて直ちに取り除くことを要求していた。その十字架はドライバーの気を散らし,運転を危険なものにするというわけである。加えて,高速道路際には他のどんな広告も認められない,と彼らは指摘している。
独り言を言うだけのことではない?
● エモリー大学の心理学助教授シェリル・グッドマンは最近,ジグソーパズルをしているときの3歳から5歳までの子供38人について研究を行なった。子供たちの大半は,「これはできない」とか,「ここにくるのか」といった表現を用いて独り言を言った。このような独り言は子供たちに益を与えただろうか。確かに益を与える,とこの心理学者は述べている。独り言を言って自分自身に指示を与えた子供たちはパズルを早く解いた。ファミリー・ウィークリー誌はこう報じている。「自己に対する言語表現は,子供たちがすでに持っていながら十分に形成されていない思考を強化する助けになる,とグッドマンは考えており,もっと年上の子供や大人もこの技術から益を受けられると付け加えている。グッドマン女史は次の点に注目している。『声を出して考えるということは,5歳までに,社会生活に適合させるという名目で締め出されてしまう。子供が学校へ行き始めると,静かにするように言われるからである』」。
小さなネズミがジャンボジェット機を着陸させる
● 最近,クウェート航空のジャンボジェット機がマドリードに向けて飛行中,クウェートに戻ることを余儀なくされた。パイロットが,飛行機のエンジンの一つに「異常」を認めたからである。「アルライ・アルアム」紙は,整備士たちは故障の正確な原因が突き止められなかったため,一人の専門家が3万5,000㌦(約875万円)で雇われたと述べている。そのニュース記事は次のように説明を加えた。「その専門家は報告の中で,事故の原因は,まんまとエンジンルームに侵入した1匹のネズミで,ジャンボジェットはこの密航者を追放した後,再度業務に就くことができた,と語った」。
動物園の経費が急騰
● 「全国の動物園が,経済的な苦境に直面している」と,サンディエゴ動物園に勤務する動物学者ジョーン・エンベリーが述べている。特に食費が急騰した。サンディエゴ動物園の年間の食費は現在43万㌦(約1億750万円)で,1978年と比べると約1.5倍になっている。干草もこの10年間に著しく値上がりしたため,シカゴのリンカーン公園動物園では,大人の象1頭の1年分の干草に2,700㌦(約67万5,000円)を注ぎ込んでいる。同動物園の維持費はここ10年間で2倍になった。どの動物園にとっても,最大の出費の一つは動物を入手するための費用である。ゴリラ1頭で5万㌦(約1,250万円)から10万㌦(約2,500万円)もするが,それは10年前の10倍である。他の経費も上がっている。サンディエゴ動物園の話では,外部の顧問歯科医は,1頭のライオンの歯根管の手術を1日行なって,500㌦(約12万5,000円)を請求することがあるという。
『生涯最大の挑戦』
● 茫漠としたアマゾン川流域は,科学者たちにその神秘をなかなか明かさない広大な地域の一つとなっている。この地域に対する科学的な踏査の前に数多くの問題が立ちはだかっているためである。熱帯的暑熱,虫,うっそうと茂る雨林,毒蛇,肉食性のピラニアなど問題は切りがない。このすべてにもかかわらず,著名な生態学者で映画製作者のジャック・イーブ・クストーは,『生涯最大の挑戦』と考えられるもの,つまりアマゾン川流域の探検のため,最近ブラジルのベレムを出発した。10か月をかけて水生生物と森林との関係を研究し,それをフィルムに収め,117か国のテレビ番組向けのドキュメンタリー映画を作ることになっていると伝えられている。この探検隊が最初に直面した問題の一つは,うっそうとした森林からこぼれるアマゾンの薄明かりの中で,撮影用のレンズを選ぶことだった。
夜のドライブ
● 米国安全協議会は,12ページからなる「日没後の運転の仕方」と題するパンフレットを発行した。その説明によれば,自動車事故に遭って命を落とす危険は,日中よりも夜の方が3倍も高いとされている。
だれも気付かなかった
● 1907年生まれの老齢年金受給者が,死後7年たってから一部屋しかないミュンヘンのアパートから死体で発見されたというニュース報道に接して,少なからぬドイツ人が衝撃を受けた。一人の警察官は,この老齢年金受給者の死がかくも長期間発見されなかったという事実に明らかな衝撃を受け,「この老人が生活していた地域の人々の社会的行動は不可解である」という意見を述べた。ミュンヘンの南ドイツ新聞はこう論評した。「このような見出しが出なければ衝撃を受けないという事態が続く限り,我々の恐怖感は,実際的な結論や変化のための推進力を何らもたらすことがないさもしい反応に過ぎないことになる。我々は思い違いをしてはならない。この新聞紙上で次週もまた同様の出来事が報じられるかもしれない。この可能性が存在する限り,我々は人間疎外というこの問題に取り組むべきである。7年間も発見されずにいた死人がいたのなら,同じように発見されないで終わることになる,我々の周囲の生きた大勢の人々に注意を払おうではないか!」
耳の聞こえない人を助ける犬
● サンフランシスコ動物虐待防止協会は耳の聞こえない人を助ける犬の調教のプログラムを設けた。それは,聾導犬計画と呼ばれている。犬は,電話のベルの音,赤ん坊の泣き声,機会をねらう強盗の出す音などを主人に告げるよう調教される。すでに,100匹以上の聾導犬が,求めに応じてあてがわれている。
下水処理に植物のガマ
● カナダのオンタリオ州の環境問題に関する刊行物「レガシー」は,効果的な下水処理に,湿地帯に生えるガマを用いてある程度の成功を収めたと伝えている。5,000人から成る地域社会を対象にした実験的なプログラムでは,「ガマには,下水の廃物の特定な方面の処理において,在来の下水処理工場と同じ程効果があり,経費ははるかに安い」と評価された。実用的な湿地帯下水処理システムの費用を算定するにはより多くの研究が必要だが,「これまでの様々な研究結果から,湿地による方法は……機械的な処理方法や他の処理方法よりも実用化しやすく,費用が安いようだ」と受けとめられている。周囲の世界に存在する物事は,その造りにおいて人間を益するものとなり,同じ目的で人間が発明したものより多くの場合効果的であることを,人間は絶えず学んでゆく。
スウェーデンにおける犯罪
● スウェーデン中央統計局は,同国における1980年の犯罪発生率が,1,000人につき111件になることを発表した。これは,1950年当時と比べると4倍の増加になる。
ギリシャ人が石油を掘削
● ギリシャは,イオニア海やエーゲ海に浮かぶ島々の地域で石油を掘り当てる仕事に拍車をかけている。掘削は特に北エーゲ海のタソス島の地域で行なわれている。この地域の掘削に関しアテネのニューズ紙はこう述べた。「北ギリシャ石油会社の発表によると,試験の結果,新たな掘削から得られた石油は,優れた品質のものであることが明らかになった。……今後見極めなければならないのは,石油の埋蔵量だけである」。ギリシャが産油国の列に加わるかどうかは,時がたてば分かる。
急増する麻薬の売買
● 「麻薬の乱用という災いは,とどまるところを知らない」。これは,ウィーン国連事務局の局長C・E・ブルゴニエールが,国連麻薬委員会のためウィーンに集まった30か国の代表に語った言葉である。「麻薬はますます入手しやすくなっており,売買も……増加しているが,そのことは公衆衛生にも危険な影響を与えており,社会・経済学的な安定性をも脅かしている」。
この委員会により次のような事実が明るみに出た。それは,押収されたコカインの量は,1978年から1980年の間に2倍以上になり,1980年には約12㌧に達したこと,年間6,000㌧のマリファナと1,050㌧以上のマリファナの樹脂が押収されていること,1980年には2.5㌧以上の鎮静剤が押収されたこと,1982年には南アジア産のアヘン600㌧ ― 1980年の3倍に相当 ― が闇取引きされるはずであることなどである。そして,以前には不法なアヘン剤の売買などがなかった国々も今では影響を受けている。テロリストのグループや国際的犯罪組織が不法な麻薬売買から利益を得て,それを彼らの卑劣な活動の資金源にしているのではないかという懸念が強まっていると,同委員会の報告の中で何度も述べられている。
ニュースで取り上げられる薬草
● 中国本土から,天津<テンチン>病院の医師団が昔から伝わる薬草である黄ぶどうの根を用いて関節リューマチの治療に成功したというニュースが伝えられている。指導に当たった医師は,この薬草の「治療効果に勝るのは,ステロイドしかない」と述べている。この医師は95人の関節リューマチ患者に,毎日この根と制酸剤とビタミンBの錠剤を投与した。メディカル・トリビューン誌はこう述べた。「2か月ないし2年にわたる治療によって,程度の差こそあれ,98%の人々の関節の痛みが和らいだ。……この調合剤は極めて毒性が高く,皮膚の水ぶくれ,軽度の脱毛,消化器系の障害,生理不順,化膿性疾患などの副作用がある」。しかし指導にあたった医師は,これらの副作用は,他の多くの抗リューマチ剤の副作用と比べると,それほどひどいものではないと主張している。