生き残るための秘けつ
自然の氷点下降剤
人の体を急速に冷凍し,それを将来のいつか生き返らせることができる時を,人間は幾年も前から夢に描いてきました。ところがある種のカエルにとってこれは夢ではなく,毎年行なっています。
カエルも他の動物と同じく,セントラルヒーティングや暖炉の火なしに冬を生き残るという問題に直面します。カエルの解決策は何でしょうか。カエルは「体が凍ってかちかちになるまで外でただうずくまっている」と,トロント・スター紙の一記事は述べています。そして春がめぐってくるとカエルの体はほぐれ,再び鳴き始めるのです。
体が凍ってもカエルが死なないのはなぜでしょうか。生物学者のケニス・ストーリーはこう説明しています。「カエルは,我々が予想だにしなかった氷点下降剤の分子,つまりグルコースを出すことが判明した。これを氷点下降剤として用いる方法などないと言われていたが,カエルはそれをやってのける」。どうやらこのグルコースのおかげで,カエルの体は凍りついても,体液は,膨張して細胞を破裂させる氷の結晶になるのではなく,シロップ状に変化するようです。
氷点下降阻止剤
サイエンス・ダイジェスト誌は,南極のある生物に寒冷な気候の中で動き続けるのを助ける自然の氷点下降剤が備わっていると報告しています。しかし,気温が下がり過ぎると,その生物も凍って死んでしまいます。Belgica antarcticaという名の飛べない小さなハエ ― 名前は大仰でも実物はごく小さい ― も通常の寒冷な気候の中で動き続けるため,自然の氷点下降剤を用います。しかし極度に寒冷な気候になりそうなときには,生き残るために「氷点下降阻止剤」となる化学物質を用います。気温が危険なほど下がるずっと前に,「氷点下降阻止剤」は,氷点下降剤の働きをとどめるのです。なぜでしょうか。
生物学者のジョン・バウストはこう説明しています。「氷点下降を阻止する特殊な化合物は,比較的温暖な気温で昆虫の体が凍結するよう促すことにより,ゆっくりとしたスピードで氷が形成されることを確実にする。気温が比較的低い場合,急激に凍結が進むとあまりに速く細胞から水分が取り除かれ,その結果動物は死んでしまう」。しかしBelgica antarcticaは徐々に体が凍るため,生き残り,気温が再び上昇するとすぐに体がほぐれてゆきます。
次は,利口なじゃがいも
農家の人が年中直面する問題は,モモアカアブラムシのようなアブラムシの侵入を防ぐことです。デーリー・メール紙の一記事によると,ある種のじゃがいもはこの問題を全く自力で解決したようです。
英国ハートフォードシャーの科学者たちは,Solanum berthaultiiという種類のじゃがいもが,ひん死のアブラムシが他のアブラムシに警告を与えるために分泌するのと全く同じ化学物質を出すことを発見しました。じゃがいもは,アブラムシがこの化学物質の警告を受けてあまり近寄らないので,平和な状態を保っています。