被写体に少し光を
あなたが撮影した写真の中で,友人の目が赤く光っていたり,男性が実際よりも長い髪の毛をしているように見えたりする写真はないでしょうか。また,屋外で撮影した写真に,残念ながら,目が落ち込んで暗く写っていたり,影に関係したその他の問題が見られたりしますか。さらに,大きな会場で,ステージ上の人々を会場の後ろからフラッシュを使って撮影し,だれかから笑われたことがありますか。カメラのことでがっかりさせられるこれらの経験には,一つのことが共通しています。それは,被写体にあてる光に関係した問題です。
この種の問題を経験したことがおありでしたら,それらの問題を解決するのに役立つ幾つかのヒントを得てうれしく思われるでしょう。これらのヒントは,専門家のためにではなく,フラッシュ撮影を試したいと思っている方のために書かれました。
あの赤い目
あのわずらわしい赤い目(白黒フィルムを使った場合は,白い目)は,フラッシュの明るい光が被写体の瞳に反射した結果生じます。このような現象は,フラッシュ本体の位置がカメラのレンズにたいへん近く,フラッシュとレンズの双方が被写体を向いている時に起こります。同様に,フラッシュの光が被写体やその近くにある物の,光沢のある表面に反射すると,フレアな,つまりぎらつきのある写真になることがあります。
室内で撮影する場合,ご自分のカメラでそうしたことが可能であれば,フラッシュ本体を天井に向けてみてはいかがでしょうか。(図1)普通は天井に反射させた光でも撮影は十分にできます。お手持ちのカメラがフラッシュを内蔵していない場合は,別の方法として,フラッシュ専用の接続コードを使用できます。この接続コードがあれば,フラッシュをカメラ本体から切り離し,好ましくない反射や影を軽減するどのような角度にもセットすることができます。いま述べた方法のどちらも使用できない場合は,被写体の視線をカメラのレンズから心持ちそらしてもらうようにします。
カラー写真を撮る場合には,ほかの点にも留意します。反射光は,バウンス(反射)させた物体の面と同じ色を帯びるので,反射面となる天井,壁,その他の面は必ず白または淡い色であることを確認なさってください。また,可能な場合には,レンズ・フードを使用したり,光沢のある表面を何かで覆ったりすることによっても,ぎらつきを減らすことができます。
再び影について
自分が撮影したジョンおじさんの写真を見て,おじさんの頭の後ろのほうにふさふさとした髪の毛が生えていたら,びっくりすることでしょう。本物のジョンおじさんには髪の毛がないからです。実は,フラッシュのため影が瞬間的にできてしまったのです。ジョンおじさんは背景に寄りすぎていました。次回からは,背景から離れて,少し手前に移動してもらいましょう。(図2)
さらに,フラッシュを被写体から淡い色の表面に向けることによっても,この種の問題は減らせます。光を反射させると間接光の効果が得られるので,望ましくない影は取り去ることができます。また,面白いことに,フラッシュ本体の位置を上下左右に変えれば,自分の望む場所に暗い部分を作れます。室内の影を利用して,独創性に富む写真を撮りましょう! では次に,屋外での撮影に目を向けましょう。
まぶしい日差しの中で,つば広の帽子をかぶったお姉さんを写真に撮ったとします。カメラの調整は正しくなされていましたが,お姉さんの顔がはっきり写っていません。帽子の下に影がたくさんできたためです。この次に撮るときはどうすればよいでしょうか。フラッシュを使うのです。しかし,フラッシュの光が入りすぎないように,口径の小さいレンズを使用するか,フラッシュ本体の透明なカバーを,白いハンカチで覆うようにします。(図3)また,すでに説明した通り,赤い,ないしは白い目に注意することも忘れないでください。フラッシュを用いるなら,真昼の太陽の下で撮影する場合でも,目のまわりや,鼻やあごの下にできる影を消したり,和らげたりすることができます。
光の届く範囲
自分の腕がまだ未熟であることを他の人に知らせたくないなら,被写体と離れすぎた位置からはフラッシュ撮影を行なわないことです。どんなフラッシュにも有効範囲というものがありますから,その範囲外のものにフラッシュを利用することには意味がありません。実際のところ,フラッシュの有効範囲内の,被写体の前景だけを照らすなら,被写体はかえって不鮮明になる恐れがあります。それで,フラッシュの使用は,近距離にある被写体にとどめてください。また,どんな所であれ暗い観客席でフラッシュを使用するのは,他の観客に対してたいへん思いやりの欠けた行為と言えます。
最後に,被写体に届く光の強さや明るさは被写体との距離が増すにしたがって著しく減少するので,人のグループを撮影する時には,被写体との距離が決してあきすぎないようにしてください。また,グループは1列か,多くても2列にしてください。グループの中で衣服や肌の色が比較的黒い人を前列に配置すれば,光量の不足はある程度補えます。
では,フラッシュ撮影は難しいものですか。実際にそのようなことはありません。むしろ,被写体に少しの光を投ずるすぐれた方法を用いるなら,フラッシュ撮影はいっそう楽しいものとなるでしょう。
[25ページの図/図版]
(正式に組んだものについては出版物を参照)
図1
図2
図3