世界展望
大虐殺の記憶
◆ シルビア・ロスチャイルド著の新刊書,「大虐殺の現場からの声」には,ナチの強制収容所における生活を生き延びたユダヤ人の回想録が幾つか収められている。生存者の一人で,ナチが権力を握った時ルージで教師をしていたサリー・グラブマンは初めにアウシュビッツ,そして後にラベンスブリュックの収容所に送られた。彼女はそこでの経験を基に次のように語っている。「私はそこで,とても良くなる人と下劣の極みに落ち込む人の両者を目にしました。一番良い人たちはエホバの証人でした。あの人たちには敬服します。あの人たちこそ本当の殉教者です。他の人のためにすばらしいことを行ないました。病人を助け,パンを分け与え,そばにいるすべての人に霊的な慰めの言葉を掛けました。ドイツ人はエホバの証人をきらっていましたが,同時に彼らに敬意を抱いていました。エホバの証人には一番ひどい仕事が与えられましたが,彼らはうなだれることなく身を起こしてその仕事を行なっていました」。
「絶滅すべく選び出された人々」
◆ 米国社会保障局は,ナチの大虐殺を生き残った人が特定の社会保障の恩典にあずかれるかどうかの判断に長年採用されてきた基準の概要を記した文書を公表した。SSR81-16として分類されるその文書に記されている指針には次のようなものがある。「この方針はユダヤ人,ジプシー,エホバの証人,黒人,東洋人を含む迫害を受けた集団に適用されるが,上記の人々に限られるわけではない」。また,「当人が大虐殺の生存者であることを明らかにする証拠」について記した部分には次のような条項が見られる。「ナチによって絶滅すべく選び出された人々の集団の一員であること。つまり,ユダヤ人,ジプシー,エホバの証人……」―「プログラム政策声明に基づく裁定」,第一部B,18,19ページ。
「“大爆発”の前」
◆ 今年の3月に,英国の科学雑誌ニュー・サイエンティストは,いわゆる宇宙大爆発の直後のほんの一瞬の間に生じた出来事を概説した「初めに」と題する記事を掲載した。その科学雑誌は後に,英国の一読者からの手紙を掲載した。その人は記事の内容に「とても興味をそそられた」と述べたが,同時に次のように書いていた。「“宇宙大爆発”後の10−35秒間に生じた出来事は極めて興味深いが,“大爆発”前の10−35秒間に生じた出来事は最も重要な難問である」。この人はさらに次のようにも述べた。「全宇宙を形成するに足る初期物質が全くの無からどうして突然出現するようなことがあるのだろうか。これらの物質が基本法則に従い,その後の宇宙の形成すべてを可能にするようなことがどうしてあったのだろうか。単なる仮説でもよいので,これらの疑問の答えを是非掲載していただきたい……」。
図書館の“盗み”
◆ カナダのトロントにあるメトロ図書館では,破損されたり盗まれたりして,毎年1万2,000冊の割合で書籍が失われている。トロント・スター紙の報告によると,納税者の負担額は年間25万㌦(約4,900万円)である。図書館側はすでに何冊かの本から20ページを取り去っていた一人の人を捕まえたが,その20ページの補充をするために1,000㌦(約20万円)の費用が掛かった。逮捕されたどろぼうはしばしば,自分は補充可能なものを取ったに過ぎないとか,市は金持ちでも自分は貧乏であるとか,納税者の負担額よりも自分の“知的必要”の方が重要であるとか主張する。
騒音が血圧に影響を与える
◆ 騒音レベルが過度に高いと,人間の聴力が損なわれるということは十分に確証されて来た。マイアミ医科大学で行なわれた研究によると,騒音は高血圧を引き起こす原因となる場合がある。高血圧は,卒中や心臓発作の原因となる。サルを用いて実験し,騒音のひどい生産業に従事する人々が毎日さらされている騒音に,9か月間毎日さらすようにした。研究期間中,血圧は平均27%上昇した。もっとも血圧は上がったものの,サルがさらされた騒音のレベルがあまり高くなかったため,聴力が損なわれることはなかった。実験のあった翌月,サルの血圧は相変わらず高かったが,これは騒音が長期間的な影響を及ぼしかねないことを示唆するものであろう。
ばかにならない電話での冗談
◆ 米国の調達局の算定によると,マンハッタンにある連邦政府関係の一つのビルの様々な政府機関の職員たちが,“ダイヤル-ア-ジョーク”のような電話会社のサービス(録音された占星術,かけ事の結果などに関するサービスも同様)に電話をかけて多大の時間を費やすため,政府の電話代は,その分だけで月に3,000㌦(約66万円)上昇した。このような勝手な電話は,地方の出先機関や,民間会社でも増加している。ニューヨーク市の一当局者は,“ダイヤル-イット”への勝手な電話によって,市の電話代が少なくとも年間25万㌦(約5,500万円)は増加したと推定している。電話会社は,1980年に様々な“ダイヤル-イット”ラインで2億9,900万回の電話を受けたと述べており,これは1979年に比べて3,400万回多い数字である。
“よく売れる”車
◆ 米国では車を盗むことがよい商売になっている。毎年100万台以上の車が盗まれており,国内の価格の数倍の価格で外国へ“輸出”されるものも少なくない。海外に送り出された車は合計20万台に上るものと推定される。米国の一関税局員は,「問題は手に負えなくなる寸前まできている」と語った。法にかなった貿易で国外に送られる車の数があまりに多いので,不法な車をチェックする関税局員の数が不足している。また,ワシントン州の一上級関税局員は次のように述べている。「我々は人々に自動車強盗を働くようには勧めない。我々には,他にも優先しなければいけない仕事があるからだ」。
声なき大多数
◆ 米国連邦政府の職員の73%は,不法な,またお金を浪費する政府の活動について多くのことを知っていながら,それを報告していない。そして事態を正す方法は全くないと感じている。19%の人々は報復を恐れて沈黙を守っている。それを明るみに出した職員の約半数までが,自分たちの報告した職権乱用が是正されていないと述べている。
地下の火事
◆ 現在米国の250以上の地下鉱山で火が燃え続けている,とニューヨーク・タイムズ紙は報道している。その火事のために,一部の住民は集団で立ち退くことを迫られている。例えば,ペンシルバニア州のセントレーリア市などでは,地下炭坑の火が19年もの間燃え続けている。石炭の鉱脈の上に掘られたゴミ捨て場で燃えていたガラクタから,1962年に火が付いた。この火事による有毒ガスや落盤のために,人命に危険が及んでいる。13歳になるある少年は,中庭にぽっかりと大きな穴が開き,のみ込まれそうになったところを逃げ切ることができた。あるガソリンスタンドの所有者は,睡眠中に地下の火によって酸素の供給を奪われ,あやうく命を失いかけた。この人は意識不明のところを発見され,酸素吸入によって元気になった。炭坑局は,セントレーリア一市の問題を解決するために数百万ドルのお金をつぎ込んで来たが,鎮火させようとする努力はすべて失敗に終わった。確実な解決策としては,被害が生じている地域の109所帯を移動させ,それから消火にあたるしかないと言う専門家もいる。
死者の声
◆ 米国カリフォルニア州のある会社は,身内の人を亡くしてつらい思いをしている人たちを対象に,1万㌦(約220万円)の“電子墓石”を販売している。小さな太陽電池板を取り付けたこの墓石には,故人の生前の声をごく小さな声で録音した装置が収められている。この墓石の考案者は次のように語っている。「これを操作すると,事前に録音したとりとめもない話が墓の中から90分間聞こえてくる。太陽電池を使ったこの装置はどんな天候の時でも,たとえ雪に埋もれた場合でも,作動する」。考案者はこの装置の価値に言及し,「人気のあるロックミュージシャンは一人残らずこれを欲しがるでしょう。これは正に自己満足にひたる行為です」とも語った。
「気懸かりな」宗教の将来
◆ 世論調査の専門家ジョージ・ギャラップは,最近行なわれた調査を通して,米国の宗教事情に関するある結論に達し,それを「気懸かりな発見」と呼んだ。ペンシルバニア州のドゥーケーン大学で講演を行なったギャラップは,「国民の間の聖書の知識は惨たんたるもので,キリスト教の信仰の基礎知識が驚くほど欠如している」現在の一般的傾向は実に暗い将来を暗示するものであると語った。ギャラップによると,ティーンエージャー全体の6割が四福音書の名称を一つも答えることができず,教会に通っている若者でさえその4割が答えられなかったという。ティーンエージャーの3分の1は使徒の数が12人であることを知らず,教会に通っている若者の5分の1もこの問いに正しく答えられなかった。ギャラップは次のように語った。「大抵のアメリカ人は祈りはするが,その祈りは筋の通らない上べだけのものになっている。……祈りも,感謝をささげたり,とりなしや許しを得たりするためのものではなく,[何かを求める]祈願がほとんどである。一部の者にとって神とは“サンタクロースの神”なのである」。
職務に忠実
◆ 1926年に中国の厦門<アモイ>にある米国領事館の雑役夫として雇われた趙<ツァオ>氏は,55年後にもそこで職務を行なっていた。1980年に,国交回復後初めて,米国の政府職員がここを訪れたところ,その人は使われていない建物の掃除や清掃,修理を行なっていた。「朝鮮戦争や文化大革命のさ中にここを黙々と掃除していたその姿を思うと胸を打たれる思いがする」と米国国務省の一当局者は語った。趙氏は現在75歳で,米国政府の年金制度の下では退職して年金の支給を受けられる立場にいる。趙氏の月給はこれまでの全期間を通じてわずか53㌦(約1万1,660円)に過ぎなかったが,「公務員退職制度により月額122㌦(約2万6,840円)の最低額の年金を受け取る資格が与えられるであろう」と政府の一当局者は語った。中国における国民の平均収入は月額約20㌦(約4,400円)である。
英国では馬が活躍
◆ 英国ではガソリン税とガソリンの価格が大幅に上がっているため,トラクターから馬に切り換える農場経営者が増える一方である。1960年代には英国全体で使役馬が5,000頭いたが,その数は次第に増えて,現在では1万5,000頭を上回る。750万円もすることのあるトラクターを買う代わりに,訓練された荷役馬を75万円以下の値段で買うことができる。トラクターのタイヤは1本約9万円もするので,一組み5,000円ほどですむ蹄鉄には到底太刀打ちできない。
空気で満腹
◆ カナダ,オンタリオ州ウィンザーのある女性は特異な方法で体重を37㌔減量させることに成功したと伝えられている。医師の管理の下に,ふくらませた風船をその胃の中に6か月間入れておいたのである。「軽い食事をほんの少しとるだけで,その女性はすぐにおなかが一杯になった」とロイター通信は伝えている。