使徒たちの活動
1 テオフィロ様+,わたしは最初の記述を,イエスが行ないかつ教え始められた+すべての事柄についてまとめ,2 そのお選びになった使徒たち+に聖霊を通して命令を与えたあと[天に]上げられた+日まで[のことを書きました]。3 これらの者たちにはまた,ご自分が苦しみを経たのちに生きていることを多くの確かな証拠によって示し+,四十日にわたって彼らに現われ,また神の王国に関する事柄を話されました+。4 そして,彼らと会合しておられた時に,この指示をお与えになりました。「エルサレムを離れないで+,父が約束され+,またわたしから聞いたものを待っていなさい。5 ヨハネは確かに水でバプテスマを施しましたが,あなた方はこれから幾日もたたないうちに聖霊をもってバプテスマを施される+からです」。
6 さて,集合したときに,彼らは[イエス]に尋ねはじめた,「主よ,あなたは今この時に,イスラエルに王国を回復されるのですか+」。7 [イエス]は彼らに言われた,「父がご自分の権限*内に置いておられる+時また時期*+について知ることは,あなた方のあずかるところではありません。8 しかし,聖霊があなた方の上に到来するときにあなた方は力を受け+,エルサレム+でも,ユダヤとサマリア+の全土でも,また地の最も遠い所*にまで+,わたしの証人*+となるでしょう」。9 そして,これらのことを言われたあと,彼らが見守る中で,[イエス]は挙げられ+,雲に取り上げられて彼らから見えなくなった+。10 そして,[イエス]が進んで行く+間,彼らが空を見つめていると,さらに,見よ,白い*衣を着た+二人の人が彼らのそばに立って,11 こう言った。「ガリラヤの人たちよ,なぜ空を眺めて立っているのですか。あなた方のもとから空へ迎え上げられたこのイエスは,こうして,空*に入って行くのをあなた方が見たのと同じ様で+来られるでしょう」。
12 そこで彼らは,オリーブ山と呼ばれる山からエルサレムに帰った+。そこはエルサレムにほど近く,安息日の道のり*+である。13 こうして,中に入ると,彼らは階上の間+に上って行った。彼らはそこに滞在していたのである。すなわち,ペテロ,それにヨハネとヤコブとアンデレ,フィリポとトマス,バルトロマイとマタイ,アルパヨの[子]ヤコブと熱心な者*シモン,そしてヤコブの[子]ユダであった+。14 これらの者たちはみな思いを一つにしてひたすら祈りを続けていたが+,幾人かの女たち+と,イエスの母マリア,それに彼の兄弟たち+も一緒にいた。
15 さて,そうした日のこと,ペテロは兄弟たちの真ん中に立って,こう言った(その群れの人々は*全部で百二十名ほどであった)。16 「皆さん,兄弟たち,聖句の成就することが必要でした+。それは,聖霊+がダビデの口によりユダ+についてあらかじめ語ったものですが,この人はイエスを捕縛した者たちの手引きとなりました+。17 彼はわたしたちのひとりに数えられて+,この奉仕の務めに参与したのです+。18 (それで,実にこの人は,不義に対する報酬+で畑を買い取ったが+,まっさかさまに落ちて*+,その身は真ん中から音を立てて張り裂け,その腸はみな注ぎ出されたのである。19 そのことはまたエルサレムの全住民に知られるようになり,結果としてその畑は彼らの言語でアケルダマ,すなわち“血の畑”と呼ばれた。)20 詩編の書の中に,『彼の宿る所は荒廃するように。その中には住む者がいなくなるように+』,また,『その監督の職*はほかの者が取るように+』と書いてあるのです。21 それゆえ,主イエスがわたしたちの間を出入りされた*全期間を通じ+,22 つまり,ヨハネによるそのバプテスマ+から始まってわたしたちのもとから迎え上げられた+日に至るまで,わたしたちと一緒に集まっていた人々のうち,その人々のうちの一人が,わたしたちと共に[主]の復活+の証人となることが必要です」。
23 そこで彼らは二人の者,つまりバルサバと呼ばれ,またの名をユストというヨセフとマッテヤとを立てた。24 そして彼らは祈って言った,「すべての者の心を知っておられるエホバ*よ+,これら二人のうちどちらの者を選んで,25 この奉仕の務めと使徒職+の地位をお取らせになるのか明らかにお示しください。自らの所へ行こうとしてユダはそれから外れたのです」。26 こうして彼らについてくじを引くと+,くじはマッテヤに当たった。そして彼は十一人+の使徒と共に数えられた。
2 さて,ペンテコステ+の[祭りの]日が進行していた時,彼らは皆一緒に同じ場所にいた。2 すると突然,激しい風の吹きつけるような物音が天から起こり,彼らの座っている家全体を満たした+。3 そして,さながら火のような舌+が彼らに見えるようになってあちらこちらに配られ,彼ら各々の上に一つずつとどまり,4 彼らはみな聖霊に満たされ+,霊が語らせるままに異なった国語+で話し始めたのである。
5 ところで,エルサレムには,天下のあらゆる国から来たユダヤ人+で,敬虔な人々+が住んでいた。6 そして,この音が起こった時,大勢の人が共にやって来て,あっけに取られてしまった。彼らが自分の言語で話しているのをめいめいが聞いたからである。7 実際,彼らは非常に驚き,不思議がって言いだした,「まあ,見なさい,話しているこの人たちは皆ガリラヤ人+ではないか。8 それなのに,わたしたちがそれぞれ自分の生まれた[国の]言語を聞くとはどうしてなのか。9 パルチア人,メディア人+,エラム人+,そして,メソポタミア,またユダヤ+とカパドキア+,ポントス+とアジア[地区+],10 それにフリギア+とパンフリア+,エジプト,そしてキレネのほうにあるリビア各地の住民,またローマから来てとう留している者で,ユダヤ人も改宗者*+もおり,11 [また]クレタ人+やアラビア人+なのに,そのわたしたちが,神の壮大な事柄について彼らがわたしたちの国語で話すのを聞いているのだ」。12 確かに,彼らはみな非常に驚き,また当惑して,「これはどういうことなのか」と互いに言い合った。13 しかし,ほかの者たちは彼らをあざけって,「甘いぶどう酒に満たされているのだ+」と言いだした。
14 しかしペテロは十一人の者+と一緒に立ち上がり,声を上げて彼らにこう発言した。「ユダヤの皆さん,そしてエルサレムの住民のすべての方たち+,このことを知ってください。わたしの言うことに耳を向けてください。15 実際に,この[人たち]は,あなた方が思うように酔っているのではありません+。今は昼間の第三時*なのです。16 それどころか,これは預言者ヨエルを通して言われた事柄です。17 『神は言われる,「そして終わりの日に,わたしは自分の霊*の幾らかをあらゆるたぐいの肉なる者の上に*注ぎ出し+,あなた方の息子や娘たちは預言し,あなた方の若者たちは幻を見,老人たち*は夢を見るであろう+。18 そして,わたしの男奴隷の上にも,女奴隷の上にも,わたしはその日に自分の霊を注ぎ出し,彼らは預言するであろう+。19 またわたしは,上は天に異兆を,下は地にしるしを,血と火と煙の霧とを与える+。20 エホバ*の大いなる輝かしい日が到来する前に+,太陽+は闇に,月は血に変わるであろう。21 そして,エホバ*の名を呼び求める者はみな救われるであろう+」』。
22 「イスラエルの皆さん,この言葉を聞いてください。ナザレ人イエス+,それは,あなた方も知っているとおり,神がその人を通してあなた方のただ中で行なわれた+強力な業+と異兆としるしにより,神によってあなた方に公に示された人ですが,23 あなた方はこの[人],すなわち神の定まったみ旨と予知とによって引き渡された方+を,不法な人々の手により杭に打ち付けて除き去りました+。24 しかし神は,死の苦しみを解いて+この方を復活させました+。この方がそれに堅く閉ざされたままでいることはできなかったからです+。25 ダビデもこの方についてこう言っています。『わたしはエホバ*を絶えず自分の目の前に見た。わたしが揺り動かされることがないようわたしの右にいてくださるからである+。26 このゆえにわたしの心は楽しくなり,わたしの舌は大いに歓んだ。その上,わたしの肉体までが希望のうちに住まうであろう+。27 あなたはわたしの魂をハデス*に捨て置かれず,あなたの忠節な者が腐れを見ることもお許しにならないからである+。28 あなたは命の道をわたしに知らせてくださった。あなたはみ顔をもってわたしを楽しさで満たしてくださるであろう+』。
29 「皆さん,兄弟たち,家長ダビデについては,彼が死に+,かつ葬られ,その墓が今日までわたしたちの中にあることを,あなた方にはばからずに言うことができます。30 したがって,彼は預言者であり,その腰の実の一人を*彼の王座に着かせると,神*が誓言をもって誓ってくださったことを知っていたので+,31 キリストの復活を先見し,それについて,彼がハデスに見捨てられず,その肉体が腐れを見ることもないと語ったのです+。32 このイエスを神は復活させたのであり,わたしたちは皆その事の証人です+。33 それで,この方は神の右に*高められ+,約束の聖霊を父から受けたので+,この,あなた方の見聞きするものを注ぎ出されたのです。34 実際ダビデは天に上りませんでしたが+,自らこう言っています。『エホバ*はわたしの主に言われた,「わたしの右に座っていなさい+。35 わたしがあなたの敵をあなたの足台として据えるまでは+」』。36 ですから,イスラエルの全家は,神がこの方を,あなた方が杭につけた*+このイエスを,主+とも,キリストともされたことをはっきりと知ってください」。
37 さて,これを聞くと,彼らは心を刺され+,ペテロやほかの使徒たちに言った,「皆さん,兄弟たち,わたしたちはどうしたらよいのですか+」。38 ペテロは彼らに[言った],「悔い改めなさい+。そしてあなた方ひとりひとりは,罪の許し+のためにイエス・キリストの名+においてバプテスマを受けなさい+。そうすれば,無償の賜物+として聖霊を受けるでしょう。39 この約束+はあなた方とあなた方の子供たち,また遠く離れたすべての人+,わたしたちの神エホバ*がそのもとに召される人+すべてに対するものなのです」。40 そして彼は他の多くの言葉で徹底的な証しをし,しきりに説き勧めて彼らに言った,「この曲がった世代+から救われなさい」。41 そのため,彼の言葉を心から受け入れた者たちはバプテスマを受け+,その日におよそ三千人の魂が加えられた+。42 そして,彼らは使徒たちの教えと,[互いに]分かち合うこと*+,食事を取ること*+と祈り+とにその後も専念した。
43 実に,恐れがすべての魂に臨むようになり,多くの異兆やしるしが使徒たちを通して起こりはじめたのである+。44 信者となった者たちは皆ともにすべての物を共有し+,45 また,自分たちの所有物や財産を売っては+,それぞれの必要に応じて,その[収益]をすべての者に分配するのであった+。46 そして,思いを一つにして日々絶えず神殿におり+,また個人の家々で*食事をし,大いなる歓びと誠実な心とをもって食物を共にし+,47 神を賛美し,民のすべてから好意を受けた+。同時にエホバ*は,救われてゆく者たちを+日ごとに彼らに加えてゆかれた+。
3 さて,ペテロとヨハネは第九時*+の祈りの時間のために神殿に上って行った。2 すると,母の胎[を出た時]から+足のなえているある人が運ばれて行くところであった。人々は,“美し+”と呼ばれる,神殿の戸口の近くに彼を日ごとに置いてやり,神殿に入る人たちから彼が憐れみの施しを求められるようにするのであった+。3 ペテロとヨハネがちょうど神殿に入ろうとするのを見て,彼は憐れみの施し+をもらいたいと頼みはじめた。4 しかし,ペテロはヨハネと共に彼を見つめて+言った,「わたしたちを見なさい」。5 そこで彼は,何かもらえるものと期待してふたりにじっと注意を向けた。6 しかしペテロは言った,「銀や金はわたしにありませんが,わたしにあるもの,それをあなたに与えます+。ナザレ人イエス・キリスト+の名において,歩きなさい+!」7 そうして[ペテロ]は,彼の右手+をつかんで起き上がらせた。たちどころに,彼の足の裏とくるぶしの骨とは強固になったのである+。8 そして彼は躍り上がって+立ち,歩きはじめた。そうして,歩いたり,躍ったり,神を賛美したりしながら,彼らと共に神殿の中に入った+。9 それで,民+はみな,彼が歩いて神を賛美しているのを見た。10 さらに,彼のこと,つまりこれが,憐れみの施しを求めて神殿の“美しの門”のところにいつも座っていた人+であることに気づくようになり,彼に起きたことを知って非常な驚きと狂喜に満たされた+。
11 そこで,その人がペテロとヨハネに取りすがっていると,民のすべてがひどく驚いて,ソロモンの柱廊+と呼ばれる所にいた彼らのもとに走り寄って来た。12 これを見て,ペテロは民に言った,「イスラエルの皆さん,なぜこのことで不思議がっているのですか。またなぜ,わたしたちが個人の力や敬虔な専心によってこの人を歩かせたのでもあるかのように+,わたしたちを見つめているのですか。13 アブラハムとイサクとヤコブの神+,わたしたちの父祖の神は,ご自分の僕+イエスに栄光をお与えになりました+が,あなた方としてはこの方を引き渡し+,ピラトが釈放しようと決めていたのに,その面前でこの方を否認しました+。14 そうです,あなた方はその聖にして義なる方+を否認し,殺人をした男+が赦免されることを求め,15 一方では,命の主要な代理者+を殺しました。しかし神はこの方を死人の中からよみがえらせたのであり,わたしたちはその事の証人です+。16 その結果,この方の名が,その名に対する[わたしたちの]信仰によって,あなた方が見ており,また知ってもいるこの人を強くし,その方を通しての信仰が,あなた方すべての見るところで,この全くの健やかさをこの人に与えたのです。17 さて,兄弟たち,わたしはあなた方が,あなた方の支配者たち+もそうであったように,無知によって行動したこと+を知っています。18 しかし,このようにして神は,すべての預言者の口を通してあらかじめ発表された事柄,すなわち,ご自分のキリストが苦しみを受けるということを成就されたのです+。
19 「ですから,あなた方の罪を塗り消していただくために+,悔い改めて+身を転じなさい+。さわやかにする+時期*がエホバ*のみもとから*到来し,20 あなた方のために任命されたキリスト,イエスを遣わしていただけるようにするためです。21 まさに,天はこの方を,神が昔のご自分の聖なる預言者たち+の口を通して語られたすべての事柄の回復の時まで+,その内にとどめておかなければ*なりません+。22 実際,モーセは言いました,『エホバ*神は,あなた方のために,あなた方の兄弟たちの中から,わたしのような預言者を起こされるであろう+。あなた方は,その語るすべての事柄に応じて彼に聴き従わねばならない+。23 まさに,その預言者に聴き従わない魂は*民の中から完全に滅ぼされるであろう+』。24 そして,実際,サムエル以来のすべての預言者,およびそれに続いた人々,およそ語った者は皆,やはりこの時代のことをはっきり告げ知らせました+。25 あなた方は預言者たちの子,また,神がアブラハムに,『そして,あなたの胤*によって地のすべての家族は祝福を受けるであろう+』と言って,あなた方の父祖と結ばれた契約の[子+]です。26 神は,ご自分の僕を起こされたのち,邪悪な行為から各々を転じさせてあなた方を祝福するため,まずあなた方のところに+その方を遣わされたのです」。
4 さて,[二人]が*民に話している間に,祭司長たち,そして神殿の指揮官+やサドカイ人たち+がそのもとにやって来たが,2 彼らが民を教え,イエスに起きた死人の中からの復活についてはっきり告げ知らせているので,いらだっていた+。3 そして,彼らに手をかけて捕らえ,次の日まで拘留した+。すでに夕方になっていたからである。4 しかし,話されたことを聴いた人々のうち大勢の者が信じ+,男の数はおよそ五千人になった+。
5 次の日,エルサレムでは,人々の支配者,年長者*,書士たちが集められた+。6 (祭司長アンナス+,それにカヤファ+とヨハネとアレクサンデル,また祭司長の身内の者たち全員も[集まった]。)7 この人たちは彼らを自分たちの真ん中に立たせて,尋ねはじめた,「どんな権限で,まただれの名において,あなた方はこのことを行なったのか+」。8 その時ペテロは,聖霊に満たされて+彼らにこう言った。
「民の支配者と年長者の方々,9 もしわたしたちが今日,病気の人に対する善行+のために,だれによってこの人がよくなったか*について調べを受けているのでしたら,10 あなた方のすべてとイスラエルの民のすべては知ってください。ナザレ人イエス・キリスト+,つまりあなた方が杭につけた*方+,しかし神が死人の中からよみがえらせた方+の名において,この方によって*,この人がここ,あなた方の前に健やかな姿で立っているのだということを。11 この方こそ,『あなた方建築者たちにより取るに足りないものとして扱われたのに隅の頭となった石+』です。12 さらに,ほかのだれにも救いはありません。人々の間に与えられ,わたしたちがそれによって救いを得るべき名+は,天の下にほかにないからです+」。
13 さて,ペテロとヨハネのおくすることのない話し方を見,またそれが無学な普通の人+であることを知った時,彼らは不思議に思うのであった。そして,その[二人]について,彼らがいつもイエスと一緒にいたことに気づくようになった+。14 また,治してもらった男がその[二人]と一緒に立っているのを見ていては+,反ばくしようにも言うべきことがなかった+。15 そこで,サンヘドリン広間の外に出るよう彼らに命令し,それから,互いに相談を始めて,16 こう言った。「この人たちをどうしたらよいのか+。実際のところ,人目を引くしるしが彼らを通してなされ,それはエルサレムの住民すべてに明らかなのだ+。我々としてもそれを否定するわけにはゆかない。17 しかしそうではあるが,民の間にこれ以上広まることがないよう,もうこの名によってだれにもいっさい語らぬよう,脅しを加えて命じておこう+」。
18 そうして彼らを呼び,どこにおいてもイエスの名によって何か口にしたり教えたりすることはないように,と言い渡した。19 しかし,それに答えてペテロとヨハネは彼らに言った,「神よりもあなた方に聴き従うほうが,神から見て義にかなったことなのかどうか,あなた方自身で判断してください。20 しかし,わたしたちとしては,自分の見聞きした事柄について話すのをやめるわけにはいきません+」。21 そこで,さらに脅したのちに,彼らを釈放した。彼らを罰する理由が何も見あたらなかったからであり,また民のため+でもあった。起きた事柄について,みんなが神の栄光をたたえていたからである。22 このいやしのしるしが起きた人は四十歳を過ぎていたのである。
23 釈放されたのち,彼らは自分たちの仲間のところに行き+,祭司長や年長者たちが言った事柄すべてを伝えた。24 それを聞くと,彼らは思いを一つにし,神に向かい声を上げて+こう言った。
「主権者+なる主*よ,あなたは,天と地と海とその中のすべてのものを造られた方であり+,25 また,聖霊を通じ,あなたの僕,わたしたちの父祖ダビデの口によって言われました+,『なぜ諸国民は騒ぎ立ち,もろもろの民はむなしい事柄を思い巡らしたのか+。26 地の王たちは立ち構え,支配者たちは一団となってエホバ*に逆らい,その油そそがれた者*に逆らった+』と。27 まさしく,ヘロデとポンテオ・ピラトの両人+は,諸国の人々と共に,またイスラエルの諸民と共に,あなたの聖なる+僕イエス,あなたが油そそいだ*方+に逆らってこの都市に実際に集まりました。28 あなたのみ手とみ旨によって,起こることがあらかじめ定められた事柄を行なうためでした+。29 それで今,エホバ*よ,彼らの脅しに注意を向け+,あなたの奴隷たちがあらんかぎりの大胆さをもってみ言葉を語りつづけることができるようにしてください+。30 そして,いやしのためにみ手を伸ばしてくださり,あなたの聖なる僕+イエスの名+によってしるしや異兆+が起きますように」。
31 こうして祈願を終えると,彼らの集まっていた場所は揺り動いた+。そして彼らはひとり残らず聖霊に満たされ+,神の言葉を大胆に語るのであった+。
32 さらに,信じた大勢の人々は心と魂を一つにし+,だれひとり,自分の所有する物について,それが自分のものだとは言わなかった。彼らはすべての物を共有したのである+。33 また,使徒たちは大いなる力をもって主イエスの復活に関する証しを続けた+。そして,過分のご親切が彼らすべての上に豊かにあった。34 事実,彼らの中に困窮している者はひとりもいなかった+。畑や家を所有していた者はみなそれを売り,売った物の代金を携えて来て,35 使徒たちの足もとに置くのであった+。一方,各人の必要に応じて,それぞれに分配+がなされたのである。36 こうしてヨセフ,それは使徒たちからバルナバ+というまたの名を与えられた者で,それは,訳すと,“慰めの子”という意味であったが,このレビ人でキプロス生まれの人は,37 ある土地を所有していたので,それを売り,その金を持って来て使徒たちの足もとに置いた+。
5 しかしながら,アナニアという名の人は,妻サッピラと共に,所有物を売って 2 その代価を幾らかひそかに取っておき,それについては妻も知っていたのだが,ただ一部だけを持って来て使徒たちの足もとに置いた+。3 しかしペテロは言った,「アナニアよ,なぜサタン+はあなたを厚顔にならせ*て,聖霊に対して+虚偽+の振る舞いをさせ,畑の代価の幾らかをひそかに取っておくようなことをさせたのですか。4 あなたのもとにある間,それはそのままあなたのものだったのではありませんか。そして,売った後も,それは引き続きあなたの管理のもとにあったではありませんか。このような行為を心の中でもくろんだのはどうしてですか。あなたは,人にではなく,神に対して+虚偽の振る舞いをしたのです+」。5 この言葉を聞くと,アナニアは倒れて息絶えた+。そして,そのことを聞くすべての者に大いなる恐れ+が生じた。6 しかし,若手の人々が立って彼を布に包み+,運び出して葬った。
7 さて,三時間ほどたってから,彼の妻が起きた事を知らずに入って来た。8 ペテロは彼女に言った,「わたしに言ってください。あなた方[二人]は畑をこれだけの値で売ったのですか」。彼女は言った,「はい,これだけです」。9 そこでペテロは彼女に[言った],「あなた方[二人]が示し合わせてエホバ*の霊を試す+とはどうしたことですか。見よ,あなたの夫を葬った者たちの足が戸口にありますが,彼らはあなたを運び出すでしょう」。10 彼女はたちどころに[ペテロ]の足もとに倒れて息絶えた+。若者たちが入って来てみると,彼女は死んでいた。そこで彼女を運び出し,夫のわきに葬った。11 その結果,会衆*全体,およびこの事について聞くすべての者に大いなる恐れが生じた。
12 そのうえ,使徒たちの手を通してその後も多くのしるしや異兆が民の間に起こった+。そして彼らは皆そろってソロモンの柱廊+にいた。13 ほかの者たちはだれも彼らに加わる勇気を持ってはいなかったが+,それでも民は彼らをほめたてるのであった+。14 そればかりか,主を信じる者が,男も女も大ぜい加えられていった+。15 そのため,人々は病人を大通りにまで連れ出して来て,そこで小さな寝床や寝台に横たえ,ペテロがそばを通る際,せめてその影でも[病人]のだれかにかかるようにした+。16 また,エルサレム周辺の都市の大勢の人が,病気の人や汚れた霊に悩まされる者たちを連れて集まって来た。そして,彼らはひとり残らず治されるのであった。
17 しかし,大祭司およびそれと共にいたすべての者,すなわちそのころ存在していたサドカイ派の人々は,立ち上がってねたみ+に満たされ,18 使徒たちに手をかけて捕らえ,彼らを公の拘留場に入れた+。19 しかし,夜中にエホバ*のみ使い+が獄の戸を開き+,彼らを連れ出して,こう言った。20 「行って,神殿の中に立ち,この命について言われたすべてのこと+を民に語りつづけなさい」。21 これを聞いてから,彼らは夜明けに神殿の中に入って教えはじめた。
さて,大祭司およびそれと共にいる者たちが到着して,サンヘドリン,またイスラエルの子らの年長者会*の全員を召集し+,彼らを連れて来させるために人を牢屋に遣わした。22 しかし,下役たちがそこに着いてみると,獄の中に彼らはいなかった。それで戻って来て,報告して 23 こう言った。「わたしどもが見ましたところ,牢屋には全く厳重に錠がかけてあり,戸のところには番人たちが立っていましたが,開けてみると,中にはだれもおりませんでした」。24 そこで,神殿の指揮官も祭司長たちもこの言葉を聞き,これはいったいどういうことになるのかと,これらの事ですっかり途方に暮れてしまった+。25 しかし,ある人がやって来て,彼らにこう報告した。「ご覧なさい,あなた方が獄に入れた者たちは神殿におり,立って民を教えています+」。26 そこで指揮官は自分の下役たちと一緒に出かけて行き,そうして彼らを連れて来たが,手荒なことはしなかった。民に石打ちにされるのを恐れていたからである+。
27 こうして彼らを連れて来て,サンヘドリン広間に立たせた。そして,大祭司が彼らに質問して 28 言った,「この名によってもう教えてはならないときっぱり命じておいたのに+,見よ,あなた方はエルサレムをあなた方の教えで満たしてしまい+,しかも,この人の血+をわたしたちにもたらそうと決めている」。29 それに答えてペテロと[ほかの]使徒たちは言った,「わたしたちは,[自分たちの]支配者として人間より神に従わねばなりません+。30 わたしたちの父祖の神はイエスを,あなた方が杭*に掛けて殺した+その方をよみがえらせました+。31 神はこの方を主要な代理者+また救い主+としてご自分の右に高めました+。それは,イスラエルに悔い改め+を,また罪の許し+を与えるためです。32 そして,わたしたちはこれらの事の証人であり+,聖霊もまたそうです+。神はそれを,支配者としてのご自分に従う者たちにお与えになりました」。
33 これを聞くと,彼らはいたく身を切られるように感じ,この者たちを除き去ってしまいたいと思うのであった+。34 しかし,ある人がサンヘドリンの中で立ち上がった。それはガマリエル+という名のパリサイ人で,民のすべてから重んじられる律法教師であったが,彼は,この人々をしばらくのあいだ外に出すようにと命令した+。35 それから,彼らにこう言った。「イスラエルの皆さん+,この人たちをどうするかについては,自分のしようとすることに注意してください。36 例えば,先ごろチウダが立ち上がって自らひとかどの者と称し+,かなりの数の男たち,およそ四百人がその一味に加わりました+。しかし,彼は除き去られ,従っていた者たちもみな追い散らされて跡形もなくなりました。37 彼のあとに,ガリラヤ人ユダが登録のころ+に立ち上がり,民を引き込んで自分に付かせました。ですが,その者は滅び,従っていた者もみな散り散りになりました。38 ですから,今の状況下であなた方に言いますが,この人たちに手出しせず,彼らをほっておきなさい。(この企て,またこの業が人間から出たものであれば,それは覆されるからです+。39 しかし,それが神からのもの+であるとしたら,あなた方は彼らを覆すことはできません+。)さもないと,あなた方は,実際には神に対して戦う者となってしまうかもしれません+」。40 そこでみんなは彼[のことば]に注意を向け,使徒たちを呼び出してむち打ち+,イエスの名によって語るのをやめるようにと命じてから+,彼らを去らせた。
41 そのため,これらの者は,彼の名のために辱められる+に足る者とされたことを歓びつつ+,サンヘドリンの前から出て行った。42 そして彼らは毎日神殿で,また家から家へ+と*たゆみなく教え+,キリスト,イエスについての良いたよりを宣明し*続けた+。
6 さて,そのころ,弟子が増えていた時であるが,ヘブライ語を話すユダヤ人*に対してギリシャ語を話す+ユダヤ人*がつぶやくということが起こった。そのやもめたちが日ごとの分配の面で*見過ごされていたからである+。2 そこで十二人の者は,大勢いた弟子を自分たちのもとに呼んで,こう言った。「食卓に[食物を]分配すること*のためにわたしたちが神の言葉を差し置くのは喜ばしいことではありません+。3 それで,兄弟たち,あなた方の中から,霊と知恵に満ちた+確かな男子七人を自分たちで捜し出しなさい+。わたしたちがその人たちを任命してこの必要な仕事に当たらせるためです。4 しかしわたしたちのほうは,祈りとみ言葉の奉仕とに専念することにします+」。5 こうして話されたことは大勢の者全員の喜ぶところとなった。それで彼らは,信仰と聖霊に満ちた人+ステファノ,およびフィリポ+,プロコロ,ニカノル,テモン,パルメナ,またアンティオキアの改宗者ニコラオを選び出した。6 そして彼らを使徒たちの前に立たせると,[使徒たち]は祈ってから彼らの上に手を置いた+。
7 その結果,神の言葉は盛んになり+,弟子の数はエルサレムにおいて大いに殖えつづけた+。そして,非常に大勢の祭司たち+がこの信仰に対して従順な態度+を取るようになった。
8 さて,慈しみと力に満ちたステファノは,民の間で大いなる異兆としるし+を行なっていた。9 しかし,いわゆる“自由民*の会堂”の者たち,およびキレネ人やアレクサンドリア人+,またキリキア+やアジアから来た者たちのうちのある人々が,ステファノと論じ合うために立ち上がった。10 だが,彼が語るさいのその知恵+と霊には対抗できなかった+。11 そこで彼らはひそかに人々を唆し+,「わたしたちは,彼がモーセと神に対して冒とく+のことばを語るのを聞いた」と言わせた。12 そして,民と年長者*と書士たちをあおり立て,また不意に襲いかかって力ずくで彼を捕らえ,サンヘドリンに引いて行った+。13 そして,偽りの証人たち+を立てたが,その者たちはこう言った。「この男は,この聖なる場所と律法に逆らう事柄を語ってやめません+。14 例えば,わたしたちは彼が,このナザレ人イエスはこの場所を壊し,モーセがわたしたちに伝えたいろいろな習慣を変えるであろう,と言うのを聞きました」。
15 それで,サンヘドリンに座している者がみな彼を見つめていると+,彼の顔はみ使いの顔のように見えた+。
7 しかし大祭司は言った,「これらのことはそのとおりなのか」。2 彼は言った,「皆さん,兄弟たちと父たち,お聞きください。わたしたちの父祖アブラハムがハランに居を定める前+,メソポタミアにいる間に,栄光の神+は彼に現われ,3 『あなたの土地から,そしてあなたの親族のもとから出て,わたしがあなたに示す土地に来なさい+』と言われました。4 そこで彼はカルデア人の土地を出てハランに居を定めました。そして,その父が死んだ後+,[神]*は彼を,そこからあなた方が今住むこの土地に移住させました+。5 でもそこにおいて,相続物となる所有地を少しも彼にお与えになりませんでした。そうです,足の幅ほどもです+。ただ,そこを所有地として彼に,そして彼の後その胤*+に与えることを約束されたのですが+,それはまだ彼にひとりも子供のいない時でした+。6 さらに,神はこのように話されました。彼の胤は異国の土地+で外人居留者+となり,[そこの民]は彼らを奴隷にして四百年のあいだ苦しめるであろう+,と。7 『そして,彼らが奴隷として仕えるその国民をわたしは裁くであろう+』,『またこの後,彼らは出て来て,この場所でわたしに神聖な奉仕をささげるであろう*+』と,神は言われました。
8 「[神]はまた彼に割礼の契約をお与えになりました+。こうして彼はイサクの父となって+八日目に彼に割礼を施し+,そしてイサクはヤコブの,ヤコブは十二人の家長の[父となりました+]。9 やがて家長たちはヨセフをねたむようになり+,彼をエジプトへ売りました+。しかし神は彼と共におられて+,10 そのすべての患難から彼を救い出し,エジプトの王ファラオの前にあって彼に慈しみと知恵をお与えになりました。それで[王]は,エジプトと[王]の家全体を治めるように彼を任命したのです+。11 しかし飢きんがエジプトとカナンの全土を襲い,まさに大患難となりました。そしてわたしたちの父祖は食糧を何も見いだせませんでした+。12 しかしヤコブはエジプトに食料があることを聞き+,わたしたちの父祖を最初に遣わしました+。13 そして二度目の時に,ヨセフのことがその兄弟たちに知らされ+,またヨセフ一族のことがファラオに明らかになりました+。14 そこでヨセフは人を遣わして,自分の父ヤコブと親族のすべて,総勢七十五人の魂*+をその場所から呼んだのです+。15 ヤコブはエジプトへ*下りました+。そして彼は死に+,父祖たちも[死に]ました+。16 そして彼らはシェケム*に移され+,アブラハムが銀子を払ってシェケムのハモル*の子らから買った+墓に横たえられました+。
17 「神がアブラハムに言明された約束[の成就]の時がちょうど近づいていたころ,民はエジプトで大きくなって殖えてゆき+,18 やがて別の王がエジプトの上に立ちましたが,その者はヨセフのことを知りませんでした+。19 この者はわたしたちの民族*に対して政略を巡らし+,非道にも父親に強制して幼児たちを捨てさせ,彼らが生き長らえないようにしました+。20 ちょうどその時にモーセが生まれましたが+,それはこうごうしいまでに美しい*[子]でした+。そして彼は三月のあいだ[自分の]父の家ではぐくまれました。21 しかし,捨てられた時に,ファラオの娘がこれを拾い,自分の子として育てました+。22 その結果,モーセはエジプト人の知恵+をことごとく教授されたのです。事実,彼は言葉にも行ないにも強力な者+でした。
23 「さて,彼の第四十年目が満ちようとしていた時,自分の兄弟であるイスラエルの子らを見て回ろうとの[気持ち]が彼の心に起こりました+。24 そして,ある者が不当な扱いを受けているのを見た時,彼はその者をかばい,そのエジプト人を打ち倒して,虐待されていた者のためにあだを返しました+。25 彼は,自分の手によって神が兄弟たちに救いを施そうとしておられること+を皆が悟るものと思っていたのですが,彼らは[それを]悟りませんでした。26 そして次の日,[モーセ]は彼らが争い合っているところへ現われ,仲直りさせようとして+,『きみたち,あなたたちは兄弟なのです。どうして互いに対して不当な扱いをするのですか』と言いました+。27 しかし,自分の隣人を不当に扱っていた者が彼を押しやり,『だれがあなたを我々の上に支配者また裁き人として任命したのか+。28 昨日エジプト人を除き去ったのと同じようにしてわたしを除き去ってしまおうというのではないだろうな』と言いました+。29 このことばを聞いてモーセは逃げ去り,ミディアンの地で外人居留者となって+,そこで二人の息子の父となりました+。
30 「それから四十年が満ちた時,シナイ山の荒野で,いばらの茂みの燃える炎の中にあって,ひとりのみ使い*が彼に現われました+。31 さて,それを見た時,モーセはその光景を不思議に思いました+。しかし,調べようとして近づいて行くと,エホバ*の声がしました。32 『わたしはあなたの父祖の神,アブラハムとイサクとヤコブの神である+』。モーセは恐れおののいて,それ以上調べようとはしませんでした。33 エホバ*は彼に言われました,『あなたの足からサンダルを外しなさい。あなたが立っている場所は聖なる地だからである+。34 わたしは,エジプトにいるわたしの民に対する非道な扱いを確かに見+,そのうめきを聞いて+,彼らを救い出すために下って来た+。そして今,さあ,わたしはあなたをエジプトに遣わす+』。35 このモーセを,『だれがあなたを支配者また裁き人として任命したのか+』と言って彼らが否認したこの人を,神は,いばらの茂みの中で彼に現われたみ使いの手により,支配者として,また救出者*として遣わされたのです+。36 この人が,エジプトで,紅海で+,そして荒野で四十年にわたって+異兆としるしを行なった後に+,彼らを導き出しました+。
37 「この人が,イスラエルの子らに,『神*はあなた方のために,あなた方の兄弟たちの中から,わたしのような預言者を起こされるであろう+』と言ったモーセです。38 この人が,シナイ山で彼に話したみ使い+やわたしたちの父祖と共に,荒野で会衆+の中にいるようになった人であり+,彼はあなた方に与えるために生ける神聖な宣言+を受けたのです。39 わたしたちの父祖は彼に対して従順になろうとせず,彼を押しのけ+,その心の中ではエジプトに引き返し+,40 アロンに向かって,『わたしたちに先立って進む神々を作ってください。わたしたちをエジプトの地から導き上ったこのモーセですが,彼がどうなったのか分からないからです』と言いました+。41 こうして彼らはそれらの日に子牛を作り+,その偶像に犠牲を携えて行き,自分たちの手の業をもって興じはじめたのです+。42 それで神は彼らを渡し,天の軍勢に神聖な奉仕をささげるように引き渡されました+。預言者たちの書にこう記されているとおりです+。『イスラエルの家よ,あなた方が荒野で四十年の間いけにえと犠牲をささげたのはわたしに対してではなかったではないか+。43 あなた方が取り上げたのはモロク+の天幕や神レファンの星+,それらを崇拝するためにあなた方が作った形であった。それゆえ,わたしはあなた方をバビロン*のかなたに強制移住させる+』。
44 「荒野においてわたしたちの父祖には証しの天幕*がありました。[神]がモーセに話した際,その見たひな型*にしたがってそれを造れとお命じになったとおりです+。45 そして,それを引き継いだわたしたちの父祖も,ヨシュア*+と共に,諸国民の所有していた土地+にそれを携え入れました。神はそれら[諸国民]をわたしたちの父祖の前から追いやられたのです+。それはここにダビデの日までとどまりました。46 彼は神のみ前に恵みを得+,ヤコブの神のために住まい+を備える*[特権]を請い求めました。47 しかし,ソロモンが[神]のために家を建てました+。48 ですが,至高者は手で造られた家*などに住まれるのではありません+。預言者も述べているとおりです,49 『天はわたしの王座+,地はわたしの足台+である。あなた方はわたしのためにどんな家を建てるのか。エホバ*は言われる。また,わたしの休む場所とは何か+。50 わたしの手がこれらのすべての物を造ったのではなかったか+』。
51 「かたくなで*,心+と耳に割礼のない人たち,あなた方はいつも聖霊に抵抗しています。あなた方は,父祖が行なったとおりに行なうのです+。52 どの預言者をあなた方の父祖は迫害しなかったでしょうか+。そうです,彼らは,義なる方+の到来について前もって発表した人たちを殺し+,あなた方は今,その方を裏切る者,また殺害する者となりました+。53 み使いたちによって伝えられたものである律法*を受けながら+,それを守らなかったあなた方が」。
54 さて,これらのことを聞いて,彼らは心臓まで切られるように感じ+,[ステファノ]に向かって歯ぎしりしはじめた*+。55 しかし彼は聖霊に満ち,天を見つめて,神の栄光およびイエスが神の右に立っておられるのを目にし+,56 こう言った。「ご覧なさい,天が開けて+,人の子+が神の右に立っている+のが見えます」。57 これに対し,彼らは声かぎりに叫んで手を耳に当て+,彼に向かっていっせいに突進した。58 そして,市の外に追い出したのち+,彼に石を投げつけはじめた+。そして,証人たち+は自分の外衣をサウロ+という若者の足もとに置いた。59 そして,訴えながら*,「主イエスよ,わたしの霊をお受けください+」と言うステファノに向かって,彼らは石を投げつづけた。60 それから彼はひざをかがめ,強い声で,「エホバ*よ,この罪を彼らに負わせないでください」と叫んだ+。そして,そう言ってから,[死の]眠りについた。
その日,エルサレムにあった会衆に対して激しい迫害+が起こった。使徒たちのほかは皆,ユダヤ,サマリア地方全域に散らされた+。2 しかし,敬虔な人々はステファノを埋葬所に運び+,彼のことで大いに嘆き悲しんだ+。3 だが,サウロは会衆に対して粗暴な振る舞いをするようになった。次々と家に侵入しては男も女も引きずり出し,これを獄に引き渡すのであった+。
4 しかし,散らされた人々は,み言葉の良いたよりを宣明しながら全土を回った+。5 そのひとりフィリポは,サマリア市+に下り,人々にキリストを宣べ伝えはじめた。6 群衆は聴き,また彼が行なうしるしを見ながら,フィリポの語る事柄にこぞって注意を払っていた。7 汚れた霊+につかれた者が大勢おり,それらが大声で叫んでは出て来たからである。また,まひした+足なえの人も大勢が治された。8 こうしてその都市には非常な喜びが生じた+。
9 さて,その都市にはシモンという名の人がおり,それまで魔術+を行なってサマリア国民を驚嘆させ,自分は何か偉い者であると称していた+。10 そして,最も小さな者から最も大きな者に至るまで,すべての者が彼に注目し,「この人は神の力であり,“偉大”とも呼ぶべきものだ」などと言った。11 それで,かなりの間その魔術によって人々を驚嘆させてきたために,人々は彼に注目するのであった。12 しかし,神の王国とイエス・キリストの名についての良いたよりを宣明していた+フィリポ[のことば]を信じた時,彼らはついで,男も女もバプテスマを受けた+。13 シモン自身も信者となり,バプテスマを受けてからは,絶えずフィリポ+に付き添っていた。そして,しるしや,大きくて強力な業がなされるのを見て驚嘆した。
14 サマリアが神の言葉を受け入れたことを聞くと+,エルサレムにいる使徒たちはペテロとヨハネを彼らのもとに派遣した。15 それでふたりは下って行き,彼らが聖霊を受けるようにと祈った+。16 それは彼らのうちのだれにもまだ下っておらず,彼らはただ主イエスの名においてバプテスマを受けていただけだったからである+。17 それからふたりが彼らの上に手を置いてゆくと+,彼らは聖霊を受けるようになった。
18 さて,使徒たちが手を置くことによって霊が与えられるのを見た時,シモンは彼らに金を差し出して+,19 こう言った。「わたしにもその権威を与えて,だれでもわたしが手を置く人が聖霊を受けられるようにしてください」。20 しかしペテロは彼に言った,「あなたの銀はあなたと共に滅びてしまうように。あなたは神の無償の賜物+を金銭によって手に入れようと考えたからです。21 この事においてあなたにはあずかる分も受け分もありません。あなたの心は神から見てまっすぐではないからです+。22 それゆえ,あなたのこの悪を悔い改め,できることならあなたの心のたくらみが許されるようにとエホバ*に祈願しなさい+。23 わたしは,あなたが有毒な胆汁+,また不義のほだし+である*ことが分かるのです」。24 それに答えてシモンは言った,「あなた方の言ったことが何もわたしの身に起こらないよう,皆さん,わたしのためにエホバ*に祈願をしてください+」。
25 こうして,徹底的に証しをしてエホバの*言葉を語ってから,彼らはエルサレムに引き返したが,サマリア人の多くの村に良いたよりを宣明していった+。
26 しかし,エホバ*のみ使い+がフィリポに語って言った,「立って,南へ,エルサレムからガザへ下る道に行きなさい」。(これは砂漠の道である。)27 そこで彼が立って出かけて行くと,見よ,エチオピア+の宦官+が[やって来た]。エチオピア人の女王カンダケのもとで権力のある人であり,その財宝すべてをつかさどる人であった。彼は崇拝のためにエルサレムに行ってきたのであるが+,28 その帰りに,兵車の中に座って預言者イザヤ[の書]を声を出して読んでいるところであった+。29 そこで霊がフィリポに言った+,「近づいて,この兵車と一緒になりなさい」。30 フィリポは並んで走り,彼が預言者イザヤ[の書]を声を出して読んでいるのを聞いて,こう言った。「あなたは自分の読んでいる事柄がほんとうに分かりますか」。31 彼は言った,「だれかが手引きしてくれなければ,いったいどうして[分かる]でしょうか」。そして,乗って,一緒に座るようにとフィリポに懇願した。32 さて,彼が声を出して読んでいた聖書の句はこうであった。「羊のように,彼はほふられるために連れて来られた。そして,毛を刈る者の前で声を出さない子羊のように,彼は口を開かない+。33 辱めを受けている間,裁きは彼から取り去られた+。だれが彼の世代*について詳細を語るだろうか。彼の命は地から取り去られるからである+」。
34 宦官は答えてフィリポに言った,「お願いします,預言者はだれについてこう言っているのでしょうか。自分自身についてですか,それともだれかほかの人についてですか」。35 フィリポは口を開き+,聖書のこのところから始めて+,イエスについての良いたよりを彼に告げ知らせた。36 さて,彼らが道を進んで行くと,水のあるところに来た。すると宦官は言った,「ご覧なさい,水があります。わたしがバプテスマを受けることに何の妨げがあるでしょうか+」。37* ―― 38 そうして彼は,兵車に,止まるように命令し,ふたりは共に,フィリポも宦官も水の中に下りて行った。そして[フィリポ]は彼にバプテスマを施した。39 彼らが水から上がって来ると,エホバ*の霊がフィリポを急いで連れ去り+,宦官はもう彼を見なかったが,歓びながら自分の道を進んで行った。40 しかしフィリポはアシュドド*に来ていた。そして,その地域一帯を回り,カエサレア+に着くまで,すべての都市に良いたよりを宣明していった+。
9 しかしサウロは,主の弟子たちに対する+脅しと殺害の息をなおもはずませながら+大祭司のもとに行き,2 ダマスカスの諸会堂への手紙を求めた。だれでもこの道*に属する者+を見つけたら,男でも女でも縛ってエルサレムに連れて来るためであった。
3 さて,彼が旅行をしてダマスカスに近づいたその時,突然天からの光が彼のまわりにぱっと光り+,4 彼は地面に倒れ,「サウロ,サウロ,なぜあなたはわたしを迫害しているのか」と自分に言う声を聞いた+。5 [サウロ]は言った,「主よ,あなたはどなたですか」。彼は言った,「わたしはイエス,あなたが迫害している者です+。6 しかし,起きて+,市内に入りなさい。そうすれば,あなたのすべきことは告げられるでしょう」。7 ところで,一緒に旅をしていた人たち+はものも言えずに立っていた+。確かに声の響き+は聞こえたが,だれも見えなかったのである。8 しかし,サウロは地面から起き上がった。すると,目は開いているのだが,何も見えなかった+。それで人々はその手を取って彼を導き,ダマスカスの中へと案内した。9 そして,三日のあいだ彼は何も見えず+,また食べも飲みもしなかった。
10 ダマスカスにはアナニア+という名の弟子がいたが,主は幻の中で,「アナニアよ!」と彼に言われた。彼は言った,「主よ,わたしはここにおります」。11 主は彼に言われた,「立って,“まっすぐ”という通りに行き,ユダの家で,サウロという名の,タルソス+の人を捜しなさい。見よ,彼は祈っており,12 幻の中で*,アナニアという名の者が入って来て,視力を取り戻せるように手を自分の上に置いてくれるのを見たのです+」。13 しかしアナニアは答えた,「主よ,わたしは多くの人からこの男について聞いております。エルサレムにいるあなたの聖なる者たち*に対し,害となる事をどれほど多く行なったかということを。14 そしてここでは,あなたのみ名を呼び求める者+を皆なわめにかけようとして,祭司長たちから権限を受けているのです」。15 しかし主は彼に言われた,「行きなさい。わたしにとってこの者は,わたしの名を諸国民に+,また王たち+やイスラエルの子らに携えて行くための選びの器+だからです。16 彼がわたしの名のためにいかに多くの苦しみを受けねばならないか+を,わたしは彼にはっきり示すのです」。
17 そこでアナニアは出かけて行ってその家の中に入り,彼の上に手を置いてこう言った。「サウロ,兄弟よ,来る道であなたに現われた主,イエスが,わたしを遣わして,あなたが視力を取り戻し,聖霊で満たされるようにされました+」。18 するとすぐに,その両目からうろこのような物が落ち,彼は視力を取り戻した。そして,起き上がってバプテスマを受け,19 食事をして元気づいた+。
彼は幾日かの間ダマスカスの弟子たちのもとにいることになったが+,20 すぐに諸会堂でイエスのことを,すなわちこの方こそ神の子であると宣べ伝えはじめた+。21 しかし,彼[のことば]を聞く者はみな非常に驚き,「これは,エルサレムでこの名を呼び求める者たちを痛めつけた+人であり,そうした者たちを縛って祭司長のもとに引いて行くという目的のためにここに来たのではなかったか+」と言うのであった。22 しかしサウロはますます力を得,これがキリストであることを論証して+,ダマスカスに住むユダヤ人たちをろうばいさせるのであった。
23 さて,かなりの日数になろうとしていたころ,ユダヤ人たちは彼を除き去ってしまおうとして相談した+。24 しかしながら,彼らのたくらみはサウロの知るところとなった。それでも彼らは,[サウロ]を除き去ってしまおうとして,日夜城門をもじっと見張っているのであった+。25 そこで,その弟子たちは彼を連れて行き,城壁のはざまからかごでつり下げて,夜の間に彼を降ろした+。
26 エルサレムに到着すると+,彼は弟子たちと一緒になろうとして努力した。しかし[弟子]たちはみな彼を恐れていた。彼が弟子であることを信じなかったからである。27 そこでバルナバが助けに来て+,彼を使徒たちのところに連れて行き,彼が道の途中でどのように主を見たか+,そして[主]が彼に語りかけたこと+,またダマスカスで+イエスの名においてどれほど大胆に語ったかを詳しく話した。28 こうして[サウロ]はずっと彼らと共におり,エルサレム内を行き来し*て,主の名において大胆に語った+。29 そして,ギリシャ語を話すユダヤ人たち*と話したり論じ合ったりしていた。ところがこれらの者たちが,彼を除き去ってしまおうと企てた+。30 兄弟たちはこれを見破って,彼をカエサレアに連れ下り,タルソス+に送り出した。
31 こうして,会衆+はまさに,ユダヤ,ガリラヤ,サマリアの全域にわたって平和な時期に入り,[しだいに]築き上げられていった。そして,エホバ*への恐れ+と聖霊+の慰めのうちに歩みつつ,[人数を]増していった。
32 さてペテロは,すべて[の地方]を回っていた際,ルダに住む聖なる者たち*のところにも下って来た+。33 その所で彼はアイネアという名の人を見つけたが,その人は八年のあいだ寝台に横たわったままであった。[体]がまひしていたのである。34 そこでペテロは彼に言った+,「アイネア,イエス・キリストがあなたをいやされます+。起きて,自分の寝床を整えなさい」。すると,彼はすぐに起き上がった。35 そして,ルダおよびシャロン*+[の平野]に住む人々はみな彼を見,その者たちは主に転じた+。
36 さて,ヨッパ+にタビタという名の弟子がいた。この[名]は,訳すと,ドルカス*という意味である。彼女は善行+とその行なう憐れみの施しとに富んでいた。37 しかしちょうどそのころ,彼女は病気になって死んだ。それで人々は彼女を洗い,階上の間に横たえた。38 ところで,ルダはヨッパに近かったので+,弟子たちはペテロがその都市にいることを聞くと,二人の人を彼のところにやって,「どうか,ためらわずに*わたしたちのところまで来てください」と懇願させた。39 そこでペテロは立って彼らと一緒に行った。こうして彼が到着すると,人々は彼を階上の間に連れて入った。すると,やもめたちがみな泣きながら出て来て,ドルカスが共にいた間に平素こしらえたたくさんの内衣や外衣+を並べて見せるのであった+。40 しかしペテロはみんなを外に出し+,ひざをかがめて祈り,その体のほうに向いて,「タビタ*,起きなさい!」と言った。彼女は目を開け,ペテロを見ると,起き直った+。41 [ペテロ]は手を貸して彼女を立たせ+,聖なる者たちとやもめたちを呼んで,生きている彼女を引き合わせたのである+。42 このことはヨッパじゅうに知られるようになり,多くの人が主を信じて頼る者となった+。43 彼はかなりの日数ヨッパにとどまって+,皮なめし工のシモンという人のところにいたからである+。
10 さて,カエサレアにコルネリオという名の人がいた。イタリア隊+と呼ばれる[部隊]の士官*+であったが,2 篤信の人+であり,自分の家の者たちすべてと共に神を恐れ+,民に憐れみの施しを多く行ない+,絶えず神に祈願をささげていた+。3 その日のちょうど第九時ごろ*+,彼は幻の中で+,神のみ使い+が自分のところに入って来て,「コルネリオ!」と言うのをはっきり見た。4 この人は彼を見つめ,恐れ驚いて,「主よ,何でしょうか」と言った。[み使い]は彼に言った,「あなたの祈り+と憐れみの施しとは記念として神のみ前に上りました+。5 それで今,人をヨッパに遣わして,ペテロとも呼ばれるシモンという人を呼びなさい。6 この人は皮なめし工のシモンという人のところに客となっており,その人の家は海辺にあります+」。7 自分に話したみ使いが去るとすぐ,彼は家僕ふたりと,自分にいつも付き添っている者の中から篤信の兵士ひとりを呼び+,8 いっさいのことを話して,彼らをヨッパに派遣した+。
9 次の日,彼らが旅を続けてその都市に近づいて来たころ,ペテロは祈りをするため+第六時ごろ*に屋上+に上った。10 しかし非常に空腹を覚え,[何か]食べたくなった。人々が準備している間に,彼はこうこつとした状態になり+,11 天が開けて+,何か器のようなものが,ちょうど一枚の大きな亜麻布がその四隅を持って地上に降ろされるかのように下って来るのを見た。12 そしてその中には,地のあらゆる四つ足の生き物,はうもの,また天の鳥がいた+。13 そして,「立ちなさい,ペテロ,ほふって*食べなさい!」という声がした+。14 しかしペテロは言った,「いえ,それはできません,主よ。わたしはいまだかつて汚れたものや清くないものを何も食べたことがないからです+」。15 すると,その声が再び,二度目に彼に[言った],「あなたは,神が清めたものを汚れていると呼んではならない+」。16 こうしたことが三度起こり,それからすぐ器は天に上げられた+。
17 さて,自分の見た幻は何を意味するのだろうかとペテロが内心ひどく思い惑っているうちに,見よ,コルネリオから派遣された人たちがシモンの家を尋ねて来て,そこの門のところに立った+。18 そして彼らは呼ばわって,またの名をペテロというシモンがここに客となっているかどうかと尋ねた。19 ペテロが幻について思い巡らしていると,霊+が言った,「見よ,三人*の人があなたを探しています。20 それでも,立って,階下に降り,何も疑わないで彼らと一緒に行きなさい。わたしが彼らを遣わしたのですから+」。21 そこでペテロは階下のその人たちのところに降りて行って,こう言った。「さあ,わたしがあなた方の探している者です。どういうわけであなた方はここに来ておられるのですか」。22 彼らは言った,「義にかなった人で,神を恐れ+,ユダヤ国民全体からも良く言われる+士官コルネリオは,聖なるみ使いにより,あなたをお呼びして自分の家に来ていただき,あなたの言われることを聞くようにとの神の指示を受けました*」。23 それで彼は,その人たちを招き入れてもてなした。
次の日,[ペテロ]は立って彼らと一緒に出かけた。そして,ヨッパの兄弟たちも幾人か一緒に行った。24 その翌日,彼はカエサレアに入った。もとより,コルネリオは彼らを待ち受けており,自分の親族や親しい友人たちを呼び集めていた。25 ペテロが入ると,コルネリオは彼を出迎え,その足もとにひれ伏して敬意をささげた。26 しかし,ペテロは彼の身を起こして言った,「立ちなさい。私も人間です+」。27 そして,彼と語り合いながら中に入り,大勢の人が集まっているのを見て,28 こう言った。「ユダヤ人にとって,別の人種の人と一緒になったり近づきになったりするのがいかに許されないことか,あなた方もよく知っておられます+。ですが神は,何人をも,汚れているとか清くないとか呼ぶべきでないことをわたしにお示しになりました+。29 そのようなわけで,わたしを呼びに来られた時,わたしは何の異存もなくやって来ました。それで,あなた方がわたしを呼んだ理由をお尋ねします」。
30 それに対してコルネリオは言った,「この時刻から数えて四日前,わたしは第九時*に家で祈りをしておりました+。すると,ご覧ください,輝く衣を着た人+がわたしの前に立って,31 こう言いました。『コルネリオよ,あなたの祈りは聞き入れられ,あなたの憐れみの施しは神のみ前で覚えられました+。32 それゆえ,ヨッパに人をやって,またの名をペテロというシモンを呼びなさい+。この人は海辺にある,皮なめし工シモンの家に客となっています+』。33 そこでわたしはすぐあなたのもとに人をやったのですが,あなたはよくここに来てくださいました。それで今,わたしたちは皆,あなたが話すようにとエホバ*から命じられているすべての事柄+を聞こうとして,神のみ前にいるのです」。
34 そこでペテロは口を開いてこう言った。「わたしは,神が不公平な方ではなく+,35 どの国民でも,[神]を恐れ,義を行なう人は[神]に受け入れられるのだということ+がはっきり分かります。36 [神]はイスラエルの子らにみ言葉を送って+,イエス・キリストによる平和の良いたより+を宣明されました。この[イエス・キリスト]は[ほかの]すべての者の主+なのです。37 あなた方は,ヨハネの宣べ伝えたバプテスマの後にガリラヤから始まり,ユダヤ全体にわたって話題となった事柄を知っています+。38 すなわち,ナザレから来たイエスのことで,神がどのように聖霊と力をもってこの方に油そそがれたか+ということです。この方は善いことを行ないながら,また悪魔に虐げられている者すべてをいやしながら+,国じゅうを回りました。神が共におられたからです+。39 そしてわたしたちは,[イエス]がユダヤ人の土地で,またエルサレムで行なったすべての事柄の証人です。しかし彼らはまた,杭*に掛けてこの方を除き去ったのです+。40 神は三日目にこの方をよみがえらせ,さらに,彼が[人々に]明らかになることをお許しになりました+。41 民のすべてに対してではなく,あらかじめ神に任命された証人たちに+,このわたしたちに対してです。わたしたちは,その死人の中からのよみがえりの後,この方と飲食を共にしたのです+。42 またこの方は,民に宣べ伝えるように+,そして,これが生きている者と死んでいる者との審判者として神に定められた者であること+を徹底的に証しするようにと,わたしたちにお命じになりました。43 この方についてはすべての預言者が証しをし+,彼に信仰を持つ者は皆,その名によって罪の許しを得る+と[述べて]います」。
44 ペテロがまだこれらのことについて話しているうちに,聖霊がみ言葉を聞いているすべての人の上に下った+。45 そして,割礼を受けた人々で,ペテロと一緒に来ていた忠実な者たちは驚嘆した。無償の賜物である聖霊が諸国の人々の上にも注ぎ出されていたからである+。46 彼らが[いろいろな]国語で話し,神をあがめているのを聞いたのである+。これに答え応じてペテロは[言った],47 「わたしたちと同じように聖霊を受けたこの人々に,だれか水を禁じてバプテスマを受けさせないでいることができるでしょうか+」。48 そうして,イエス・キリストの名においてバプテスマを受けるようにと彼らに命じた+。それから彼らは,幾日かとどまるようにと彼に頼んだ。
11 さて,ユダヤにいる使徒と兄弟たちは,諸国の人々+も神の言葉を受け入れたことを聞いた。2 それで,ペテロがエルサレムに上って来ると,割礼を[支持する人々+]は彼に対して言い争いを始め,3 彼が割礼を受けていない者たちの家に入って一緒に食事をしたと言った。4 そこでペテロは[答え]始め,彼らに委細を説明してこう言った。
5 「わたしはヨッパ市にいて祈りをしていたのですが,こうこつとした状態のうちに一つの幻を見ました。何か器のようなものが,ちょうど一枚の大きな亜麻布がその四隅を持って天から降ろされるかのように下って,わたしのところまで来たのです。6 それをのぞき込んで観察したところ,地の四つ足の生き物,野獣,はうもの,天の鳥などが見えました+。7 また,『立ちなさい,ペテロ,ほふって食べなさい!』と言う声が聞こえました+。8 しかしわたしは,『いえ,それはできません,主よ。汚れたり清くなかったりする物はいまだかつてわたしの口に入れたことがないからです+』と言いました。9 天からの声が二度目に答え[て言い]ました,『あなたは,神が清めたものを汚れていると呼んではならない+』。10 こうしたことが三度起き,それからすべての物は再び天に引き上げられました+。11 また,見てください,ちょうどその時です,三人の人が,わたしたちのいた家のところに立っていました。カエサレアからわたしのところに派遣されてきたのです+。12 すると,霊+が,何も疑わないで彼らと一緒に行くようにとわたしに告げました。しかし,これら六人の兄弟たちも一緒に行き,わたしたちはその人の家の中に入りました+。
13 「彼は,み使いが自分の家の中に立って話すのを見たその様子をわたしたちに伝えてくれました。[み使いはこう言ったのです。]『人をヨッパに派遣して,またの名をペテロというシモンを呼びなさい+。14 そうすれば,彼はあなたとあなたの家の者たちすべてが救われる[に必要な]事柄を話してくれるでしょう+』。15 ところが,わたしが話し始めると,聖霊が彼らの上に下りました。初めにわたしたちの上にも[下った]のと同じようにです+。16 そこでわたしは,主の言われたこと,つまり,『ヨハネは水でバプテスマを施したが+,あなた方は聖霊をもってバプテスマを受けるであろう+』といつも言っておられたのを思い出しました。17 それで,神が,主イエス・キリストを信じて頼ったわたしたちに[与えてくださった]と同じ無償の賜物を彼らにもお与えになった以上+,どうしてわたしなどが神を妨げ得たでしょうか+」。
18 さて,これらのことを聞くと,彼らは黙って同意し+,それから神の栄光をたたえて+こう言った。「それでは,神は命のための悔い改めを諸国の人々にもお授けになったのだ+」。
19 このようにして,ステファノのことで起こった患難のために散らされた+者たちは,フェニキア+,キプロス+,アンティオキアにまで進んで行ったが,ユダヤ人のほかにはだれにもみ言葉を話さなかった+。20 しかしながら,その中には,キプロスやキレネの者でアンティオキアに来た人たちが幾人かおり,ギリシャ語を話す人々*+にも語りはじめて,主イエスの良いたよりを宣明した+。21 さらにまた,エホバ*のみ手+が彼らと共にあり,信者となった大勢の人が主に転じた+。
22 彼らに関する話はエルサレムにある会衆の耳に達し,彼らはバルナバ+をアンティオキアにまで遣わした。23 到着して神の過分のご親切+を見た時,彼は歓び+,また,心からの決意を抱いて引き続き主のうちにとどまるようにとみんなを励ますのであった+。24 彼は善良な人であり,聖霊と信仰とに満ちていたのである。そして,かなり多くの人々が主に加えられた+。25 それで,彼はサウロを何とか捜そうとしてタルソス+に出かけて行った+。26 そして,見つけてから,彼をアンティオキアに連れて来た。こうして,彼らはまる一年のあいだ人々と共に会衆に集まり,相当数の人々を教えることになった。そして,弟子たちが神慮によってクリスチャン*+と呼ばれた*のは,アンティオキアが最初であった。
27 さて,そのころ,預言者たち+がエルサレムからアンティオキアに下って来た。28 その一人,アガボ+という名の者が立って,大飢きんが人の住む全地に臨もうとしていることを霊によって示した+。これは,クラウディウスの時に実際に起こった。29 それで弟子たちは,各々がそのできるところに応じて+,ユダヤに住む兄弟たちに救援+を送ることに決めた。30 そして彼らはこれを実行し,バルナバとサウロの手によってそれを年長者たち*に送り届けた+。
12 ちょうどそのころ,王ヘロデ*は会衆のある者たちを虐待する+ことに手をつけた。2 彼はヨハネ+の兄弟ヤコブを剣にかけて除き去ったのである+。3 それがユダヤ人の気に入るのを見て+,彼はさらにペテロをも捕縛した。(ところで,それは無酵母パンの時期+であった。)4 そして彼を捕まえて獄に入れ+,四人一組四交替の兵士に引き渡して監視させた。過ぎ越し+が済んでから民のために彼を引き出すつもりだったのである。5 こうしてペテロは獄に入れられていた。しかし,彼のために神への祈り+が会衆によって熱烈に続けられていた。
6 さて,ヘロデが彼を引き出そうとしていた時,その夜ペテロは二本の鎖でつながれて二人の兵士の間で眠っており,戸口の前の番兵たちは獄を守っていた。7 しかし,見よ,エホバ*のみ使いがそばに立ち+,光が獄房内を照らした。彼はペテロの脇腹をたたいて起こし+,「早く立ちなさい!」と言った。すると,鎖は彼の両手から落ちた+。8 み使い+は彼に言った,「帯を締め,サンダルを履きなさい」。彼はそのとおりにした。最後に[み使い]は彼に言った,「外衣を着けて+,わたしのあとに付いて来なさい」。9 それで彼は外に出てあとに付いて行ったが,み使いを通して起きている事が現実であるとは知らなかった。事実,幻を見ているのだと思っていた+。10 第一と第二の見張り番を通り抜けて,市内に通ずる鉄の門のところに来ると,それはひとりでに開いた+。そして,外に出たあと通りを一つ進むと,み使いはすぐに彼を離れた。11 それでペテロは我に返って言った,「今,確かに分かる。エホバ*はみ使いを遣わして+,わたしをヘロデの手から,そしてユダヤの民が待ち構えていたすべての事から救い出してくださったのだ+」。
12 そして,そう考えると,彼はまたの名をマルコ+というヨハネの母マリアの家に行った。そこにはかなり大勢の者が集まって祈っていた。13 彼が門口の戸をたたくと,ロダという名の下女が応対に出て来たが,14 それがペテロの声だと分かると,喜びのあまり門を開けずに中に駆け込み,ペテロが門口に立っていると知らせた。15 彼らは,「あなたは気が狂っているのだ」と言った。しかし彼女は,確かにそうだと強く言い張るのであった。みんなは,「それは彼のみ使い+だろう」と言いだした。16 しかしペテロはそこでずっと[戸を]たたいていた。[戸を]開けた時,彼らは[ペテロ]を見て非常に驚いた。17 しかし彼は,静かにするようにと手を振って合図をし+,エホバ*がどのように彼を獄から連れ出されたかを詳しく話し,そして,「これらのことをヤコブ+と兄弟たちに報告してください」と言った。そうして彼は出て行き,別の場所に旅立った。
18 さて,夜が明けると+,ペテロはいったいどうなったのかと,兵士の間で少なからぬ騒ぎになった。19 ヘロデ+は彼を念入りに捜したが,見つからないとなると,番兵たちを取り調べ,[処罰+のために]彼らを引いて行くようにと命令した。その後,ユダヤからカエサレアに下って行き,そこでしばらく過ごした。
20 さて,[ヘロデ]はティルスやシドンの民に対して戦闘的な気構えでいた。そのため彼らはこぞって[ヘロデ]のところにやって来て*,王の寝室の世話係であるブラストを説き付けてから,和を請いはじめた。彼らの地方は王の[国土]から食物+を得ていたからである。21 ところが,ある決められた日に,ヘロデは王衣をまとって裁きの座に座り,彼らに向かって演説を始めた。22 集まっていた民のほうは,「神の声だ,人の[声]ではない!」と大声で叫びはじめた+。23 するとたちどころにエホバ*のみ使いが彼を撃った+。彼が神に栄光を帰さなかったからである+。そして,彼は虫に食われて息絶えた。
24 しかしエホバの*言葉+は盛んになり,広まっていった+。
25 バルナバ+とサウロのほうは,エルサレムで救援+の仕事を十分に果たしてから帰途につき,ヨハネ,またの名をマルコという者を一緒に連れて来た+。
13 さて,アンティオキアには,そこの会衆に預言者+や教え手たちがいた。バルナバ,それにニゲルと呼ばれるシメオン,キレネのルキオ+,地域支配者*ヘロデと一緒に教育を受けたマナエン,そしてサウロであった。2 彼らがエホバ*に対する公の奉仕をし+,また断食をしていると,聖霊がこう言った。「すべての人のうちバルナバとサウロ+をわたしのため,わたしが彼らを召して[行なわせる]業のために取り分けなさい」。3 そこで彼らは断食をして祈り,手をその上に置いて+から[二人]を行かせた。
4 こうして,これらの人は聖霊に送り出されてセレウキアに下り,そこからキプロスに向けて出帆した。5 そしてサラミスに着くと,彼らはユダヤ人の諸会堂で神の言葉を広めはじめた。彼らは付き添いとしてヨハネ+も連れていた。
6 島じゅうを回ってパフォスまで来た時,彼らはある男に出会った。それは呪術者で,偽預言者+であり,その名をバルイエスというユダヤ人であった。7 彼は執政官代理*のセルギオ・パウロと一緒にいた。これはそう明な人であった。この人はバルナバとサウロを自分のところに呼び,神の言葉を聞くことを切に求めた。8 しかし,呪術者(事実,彼の名はそのように訳される)エルマは彼らに反対しはじめ+,執政官代理を信仰からそらせようとした。9 サウロ,つまりパウロ*は,聖霊に満たされ,彼をじっと見て,10 こう言った。「ああ,あらゆる詐欺とあらゆる罪悪に満ちた者,悪魔の子+,すべて義にかなったことの敵よ,エホバ*の正しい道をゆがめてやめないのか。11 では,見なさい,エホバ*の手があなたの上にある。あなたは盲目になり,しばらくは日の光を見ないであろう」。たちまち,濃い霧と闇が彼の上に下り,彼は手を取って導いてくれる者+を探しまわるのであった。12 この時,執政官代理+は起きた事柄を見て信者となった。エホバ*の教えにすっかり驚いたからである。
13 次いで人々はパウロと共にパフォスから船出して,パンフリアのペルガに着いた+。しかし,ヨハネ+は彼らから離れてエルサレムに帰った+。14 それでも彼らは,ペルガからさらに進んでピシデアのアンティオキアに来た。そして,安息日に会堂+に入って席に着いた。15 律法+と預言者たちの公の朗読の後,会堂の主宰役員たち+が彼らのところに人をよこしてこう言った。「皆さん,兄弟たち,民に対して何か励ましの言葉があれば,話してください」。16 そこでパウロは立ち上がり,手を動かしながら+こう言った。
「皆さん,イスラエルの方と,神を恐れる[ほかの]方々,聞いてください+。17 この民イスラエルの神は,わたしたちの父祖を選び,エジプトの地におけるその外国居留の間この民を高め,掲げたみ腕をもって彼らをそこから連れ出されました+。18 その後およそ四十年の間+,[神]は荒野で彼らの行動を忍ばれました。19 [そして]カナンの地の七つの国民を滅ぼした後,彼らの土地をくじで分配されました+。20 このすべてはおよそ四百五十年間のことです。
「そして,こうした事の後*,預言者サムエルの時に至るまで彼らに裁き人をお与えになりました+。21 しかしそれ以後,彼らは王を要求し+,神は,ベニヤミン部族の人+,キシュの子サウルを四十年のあいだ彼らにお与えになりました。22 ついで,彼を退けた後+,ダビデを王として彼らのために起こし+,彼について証しをしてこう言われました。『わたしは自分の心にかなう人+,エッサイ+の子ダビデを見いだした。彼はわたしの望むことをみな行なうであろう+』。23 神はご自分の約束どおり,この[人]の子孫+からイスラエルに救い主+,イエスをもたらされました。24 それは,ヨハネ+が,その方+の登場に先立ち,悔い改めの[象徴としての]バプテスマをイスラエルの民のすべてに公に宣べ伝えた後のことでした。25 しかし,自分の行程を全うしつつあった時,ヨハネはこう言ったものです。『あなた方はわたしをだれだと思いますか。わたしはその者ではありません*。しかし,見よ,わたしの後に来る方がおられ,わたしはその足のサンダルをほどいてさしあげるにも値しません+』。
26 「皆さん,兄弟たち,アブラハム一族の子である方たち,そして神を恐れる[ほかの]方々,この救いの言葉はわたしたちに送られているのです+。27 というのは,エルサレムの住民とその支配者たちはこの方を知らず+,裁く者として行動した際,預言者たちが言い表わした事柄を成就したからです+。それらのことは安息日ごとに朗読されているのです。28 そして,何ら死[に定める]理由を見いだせなかったにもかかわらず+,彼らはこの方の処刑をピラトに要求しました+。29 こうして,この方について書かれている事柄をすべてなし終えてから+,この方を杭*から下ろして+記念の墓の中に横たえました+。30 しかし,神はこの方を死人の中からよみがえらせました+。31 そしてこの方は何日もの間,自分と共にガリラヤからエルサレムに上って来ていた人たちに姿を見せ,その人たちは今,民に対する彼の証人となっています+。
32 「それでわたしたちは,父祖になされた約束+に関する良いたよりをあなた方に宣明しているのです。33 すなわち,イエスを復活させたことにより,神は彼らの子供であるわたしたちに*,その[約束]を完全に成就されたということです+。詩編の第二編に,『あなたはわたしの子。わたしはこの日にあなたの父となった』と書いてあるとおりです+。34 そして,彼をもはや腐れに帰することのない[者として]死人の中から復活させたことについて,[神]はこのように述べておられます。『わたしは,ダビデに対する忠実な愛ある親切をあなた方に与える+』。35 ゆえに,別の詩の中で,『あなたはご自分の忠節な者が腐れを見ることをお許しにならない+』とも言っておられます。36 というのは,一方でダビデ+は,自分の世代において明示された神のご意志に仕え,[死の]眠りについて父祖たちと共に横たえられ,確かに腐れを見たからです+。37 他方,神がよみがえらせた方は腐れを見なかったのです+。
38 「ですから,兄弟たち,このことを知ってください。すなわち,この方を通して罪の許しがあなた方に広められており+,39 モーセの律法+のもとであなた方が無罪と宣せられなかったすべてのことについても,信じる者は皆,この方によって無罪と宣せられるということです+。40 ですから,預言者たちの中で言われている次のことがあなた方に臨まないようにしてください。41 『あざける者たちよ,それに目を留めよ。驚き怪しめ。そして消え去れ。わたしはあなた方の日に一つの業をするからである。それは,だれかが詳しく話したとしても,あなた方が決して信じることのない業である+』」。
42 さて,彼らが出て行く際,人々は,こうしたことを次の安息日にも+話してほしいと懇願するのであった。43 そして,会堂の集会が解散した後,ユダヤ人および[神を]崇拝する*改宗者の多くがパウロとバルナバのあとに付いて来たが+,ふたりはその人たちに話して,神の過分のご親切+のうちにずっととどまるようにとしきりに勧めるのであった+。
44 次の安息日には,ほとんど全市[の人々]がエホバの*言葉+を聞きに集まった。45 ユダヤ人たちはこの群衆を見てねたみ+に満たされ,パウロの語る事柄を冒とくしてそれに言い逆らうようになった+。46 それで,パウロとバルナバは大胆に語って言った,「神の言葉はまずあなた方に対して語られることが必要でした+。あなた方がそれを押しのけて+,自らを永遠の命に値しない者と裁くのですから,ご覧なさい,わたしたちは諸国民のほうに向かいます+。47 事実,エホバ*は次のような言葉でわたしたちに命令を課しておられます。『わたしはあなたを任命して諸国民の光+とした。地の果て*にまであなたが救いとなるためである+』」。
48 諸国の人たちはこれを聞いて歓び,エホバの*言葉に栄光を帰するようになった+。そして,永遠の命のために正しく整えられた者はみな信者となった+。49 さらに,エホバ*の言葉はその地方全域に伝えられていった+。50 しかしユダヤ人たち+は,[神]を崇拝する*評判の良い婦人たちや市の主立った人々をあおり立て,パウロとバルナバに対して迫害を起こし+,彼らを自分たちの境界の外に追い出した。51 彼らはそうした人々に向かって足の塵を振り払い+,それからイコニオムに行った。52 そして,弟子たちは引き続き喜び+と聖霊とに満たされていた。
14 さて,イコニオム+で,彼らは共にユダヤ人の会堂+の中に入って話をしたが,その[力強い話し]方のために,ユダヤ人もギリシャ人+も非常に大勢の人が信者となった。2 しかし,信じないユダヤ人たちは諸国の人たちの魂をあおり立て+,[これに]けしかけて兄弟たちに敵対させた+。3 それゆえ,彼らはかなりの時を過ごしてエホバ*の権威のもとに大胆に語り,[神]は彼らの手を通してしるしや異兆を起こさせて+,その過分のご親切に関する言葉に証しをされた。4 しかしながら,市の人々は二つに分かれ,ある者はユダヤ人たちの側に,ある者は使徒たちの側に付いた。5 さて,諸国の人たちとユダヤ人,それにその支配者たちも加わって,彼らを横柄にあしらって石撃ちにしようという暴挙が企てられた時+,6 そのことについて知った彼らは,ルカオニアの都市ルステラとデルベ,およびその周辺の地方に逃げた+。7 そして,そこで良いたよりを宣明しつづけた+。
8 さて,ルステラに,母の胎[を出た時]から足がなえていて+,両足の利かない人が座っていた。彼はそれまで一度も歩いたことがなかった。9 この人はパウロが話すのを聴いていたが,[パウロ]は彼をじっと見て,いやしを受ける*だけの信仰があるのを見ると+,10 大きな声で言った,「自分の足でまっすぐに立ちなさい」。すると,彼は躍り上がって歩きはじめたのである+。11 そこで群衆はパウロが行なった事を見て声を上げ,ルカオニア語で,「神々+が人間のようになってわたしたちのもとに下って来たのだ!」と言った。12 そして,バルナバをゼウス*,またパウロのほうを,彼が先に立って話していたので,ヘルメス*と呼びはじめた。13 また,市の前に[神殿]がある*ゼウスの祭司は,数頭の雄牛と花輪を門のところに携えて来て,群衆と一緒に犠牲をささげようとするのであった+。
14 しかし,そのことを聞くと,使徒のバルナバとパウロは,自分の外衣を引き裂いて群衆の中に飛び出し,叫んで 15 こう言った。「皆さん,なぜこうした事をするのですか。わたしたちも,あなた方と同じ弱さ+を持つ人間です+。そして,あなた方に良いたよりを宣明しているのも,あなた方がこうした無駄な+事柄から生ける神+に,天+と地と海とその中のすべての物を造られた方に転ずるためなのです。16 過去の世代において,[神]は諸国民すべてが自分の道を進むのを許されました+。17 とはいえ,ご自分は善いことを行なって,あなた方に天からの雨+と実りの季節を与え,食物と楽しさとをもってあなた方の心を存分に満たされたのですから+,決してご自身を証しのないままにしておかれたわけではありません+」。18 それでも,このように言って,彼らはやっとのことで,群衆が自分たちに犠牲をささげるのをとどめたのである。
19 ところが,ユダヤ人たちがアンティオキアやイコニオムからやって来て群衆を説き付けた+。それで,彼らはパウロを石打ちにし,彼が死んだものと思って市の外に引きずり出した+。20 しかし,弟子たちが取り囲んでいると,彼は起き上がり,市の中に入って行った。それから次の日,彼はバルナバと共にデルベ+に向かった。21 そして,その都市に良いたよりを宣明してかなり大勢の弟子+を作った後,彼らはルステラ,イコニオム,さらにアンティオキアに帰り,22 弟子たちの魂を強め+,信仰にとどまるように励まして,「わたしたちは多くの患難を経て+神の王国に入らなければならない」と[言った]。23 さらにまた,彼らのために会衆ごとに年長者たちを任命し*+,断食をして祈りをささげ+,彼らをその信ずるエホバ*にゆだねた+。
24 それから彼らはピシデアを通ってパンフリア+に入り,25 ペルガでみ言葉*を語った後,アタリアに下った。26 そして,そこから出帆してアンティオキア+に向かった。彼らはその地で,[今や]十分に成し遂げた業のため,神の過分のご親切に託されたのである+。
27 そこに到着して会衆を集めると,彼らは次いで,神が自分たちを通して行なわれた多くの事柄,また,[神]が信仰への*戸口を諸国民に開かれたこと+を話しはじめた+。28 こうして彼らは弟子たちと共にかなりの時を過ごした。
15 さて,ある人たちがユダヤから下って来て+,「モーセの慣例どおり+割礼を受けないかぎり+,あなた方は救われない」と兄弟たちに教えはじめた。2 しかし彼らを相手に,パウロとバルナバによって少なからぬ争論と議論が起きた時,人々は,パウロとバルナバおよび自分たちのうちのほかの幾人かが,この論争のことでエルサレムにいる使徒や年長者たち*+のもとに上ることを取り決めた。
3 こうして,これらの人たちは途中まで会衆に見送られた後+,ずっと進んでフェニキアやサマリアを通り,諸国の人たちの転向*のことを詳しく話しては+,すべての兄弟たちを大いに喜ばせるのであった+。4 エルサレムに着くと,彼らは会衆および使徒や年長者たちに親切に迎えられ+,神が自分たちを通して行なわれた多くの事柄について細かに話した+。5 しかし,信者となっていたパリサイ派の人たち幾人かが席から立ち,「彼らに割礼を施し+,モーセの律法を守り行なうように言い渡すことが必要だ+」と言った。
6 そこで使徒や年長者たちは,この件について調べるために集まった+。7 さて,多くの議論+が出てから,ペテロが立って彼らにこう言った。「皆さん,兄弟たち,あなた方がよく知っているとおり,神は早いころからあなた方の間で選びを行ない,わたしの口を通して諸国の人たちが良いたよりの言葉を聞いて信じるようにされました+。8 そして,[人の]心を知っておられる神+は,わたしたちに行なわれたと同じように,彼らにも聖霊を与えて+証しをされました。9 また,わたしたちと彼らとの間に何の差別も設けず+,彼らの心を信仰によって浄められたのです+。10 それですから,どうして今,父祖もわたしたちも負うことのできなかった+くびき+を弟子たちの首に課して,神を試したりするのですか。11 それどころか,わたしたちも,その人たちと同じように+,主イエスの過分のご親切+によって救われることを頼みとしているのです」。
12 すると,一同は沈黙してしまった。そして,バルナバとパウロが,自分たちを通して神が諸国民の間で行なわれた多くのしるしや異兆について話すのを聴くのであった+。13 彼らが話し終えてから,ヤコブが答えて言った,「皆さん,兄弟たち,聞いてください+。14 シメオン*+は,神が初めて諸国民に注意を向け,その中からご自分のみ名のための民+を取り出された次第を十分に話してくれました。15 そして,預言者たちの言葉はこのことと一致しています。こう書いてあります。16 『これらの事の後,わたしは戻って,倒れたダビデの仮小屋*を建て直すであろう。その荒れ跡を建て直してそれを再び立てるであろう+。17 残っている人たちが,すべての国の民,わたしの名によって呼ばれる*民と共に,切にエホバ*を求めるためであると,18 昔から知られた+これらの事を行なっておられる*エホバ*が言われる+』。19 ですから,わたしの決定は,諸国民から神に転じて来る人々を煩わさず+,20 ただ,偶像によって汚された物+と淫行*+と絞め殺されたもの*+と血*+を避ける*よう彼らに書き送ることです。21 モーセは安息日ごとに諸会堂で朗読されており+,彼を宣べ伝える者が古来*どの都市にもいるからです」。
22 そこで,使徒や年長者たち*,また全会衆は,自分たちの中から選んだ人々を,パウロおよびバルナバと共にアンティオキアに遣わすことがよいと考えた。すなわち,バルサバ+と呼ばれるユダとシラスで,兄弟たちの中で指導的な人たちであった。23 そして,彼らの手によってこう書き送った。
「使徒や年長者の兄弟たちから,アンティオキア+,またシリア,キリキア+にいる,諸国民からの兄弟たちへ: あいさつを送ります。24 わたしたちの中から行ったある人たちが,わたしたちが何の指示も与えなかったにもかかわらず,いろいろなことを言って+あなた方を煩わせ,あなた方の魂をかく乱しようとしている+ことを聞きましたので,25 わたしたちは全員一致*のもとに+,人を選んで,わたしたちの愛するバルナバおよびパウロ+,26 わたしたちの主イエス・キリストの名のために自分の魂*を引き渡した人たち+と共に,あなた方のもとに遣わすことがよいと考えました。27 このようなわけで,わたしたちはユダとシラス+を派遣しますが,それはまた彼らが同じことを言葉で伝えるためでもあります+。28 というのは,聖霊+とわたしたちとは,次の必要な事柄のほかは,あなた方にそのうえ何の重荷+も加えないことがよいと考えたからです。29 すなわち,偶像+に犠牲としてささげられた物と血+と絞め殺されたもの*+と淫行*+を避けていることです。これらのものから注意深く身を守っていれば+,あなた方は栄えるでしょう。健やかにお過ごしください*」。
30 こうして,これらの人たちは送り出されてアンティオキアに下り,皆を集めて手紙を渡した+。31 それを読んで,人々はその励ましに歓んだ+。32 そしてユダとシラスは,自ら預言者+でもあったので,何度も講話をして兄弟たちを励まし,また強めた+。33 こうしてしばらく過ごしてから,彼らは兄弟たちに送られ,自分たちを遣わした人々のもとへと平安のうちに+戻って行った。34* ―― 35 しかしながら,パウロとバルナバは引き続きアンティオキア+で時を過ごし,ほかの多くの人と共に,エホバの*言葉の良いたよりを教えたり宣明したりした+。
36 さて,何日かの後,パウロはバルナバに言った,「何よりも,わたしたちは戻って行って,エホバの*言葉を広めたすべての都市にいる兄弟たちを訪ね,みんながどうしているか見てこようではないか+」。37 バルナバとしては,マルコ+と呼ばれるヨハネも連れて行くことに決めていた。38 しかしパウロは,彼がパンフリアから先は自分たちを離れて業に同行しなかったことがあるので+,彼をずっと連れて行くことを適当とは思わなかった。39 そこで怒りが激しくぶつかって,彼らは互いに別れることになった。そして,バルナバ+はマルコを連れてキプロス+に向けて出帆した。40 パウロはシラス+を選び出し,兄弟たちによりエホバの*過分のご親切に託されて出かけて行った+。41 彼のほうはシリアとキリキアを通って諸会衆を強めた+。
16 こうして彼はデルベ,そしてまたルステラ+に着いた。すると,見よ,そこにテモテ+という名の弟子がいた。信者であるユダヤ婦人の息子で,父はギリシャ人であったが,2 ルステラとイコニオムの兄弟たちから良い評判を得ていた。3 パウロは,この人が自分と同行するようにとの願いを述べ,その地域のユダヤ人のために,彼を連れて来て割礼を施した+。その父がギリシャ人であることをみんなが知っていたからである。4 さて,彼らは諸都市を回って旅行を続けながら,エルサレムにいる使徒や年長者たち*の決めた定めを守り行なうようそこの人たちに伝えるのであった+。5 こうしてまさに,諸会衆は信仰において堅くされ+,日ごとに人数を増していった。
6 また,彼らはフリギアとガラテア地方+を回った。アジア[地区]でみ言葉を語ることを聖霊によって禁じられたからである*。7 さらに,ミシアに下るさい,ビチニア+に入ろうと努力したが,イエスの霊はそれを許さなかった。8 そこで彼らはミシアのそばを通ってトロアス+に下った。9 そして,パウロは夜中に幻+を見た。あるマケドニアの人が立って彼に懇願し,「マケドニアへ渡って来て,わたしたちを助けてください」と言うのであった。10 そこで,[パウロ]がその幻を見てからすぐ,わたしたちは,彼らに良いたよりを宣明する*ため神がわたしたちを呼び寄せてくださったのだと結論して,マケドニア+へ行こうと努めた。
11 こうして,わたしたちはトロアスから船出してサモトラケに直行し,翌日ネアポリスに,12 そしてそこからフィリピ+に[着いた]。そこは植民地で,マケドニア地区の主要都市+である。わたしたちはこの都市にとどまって幾日か過ごした。13 そして安息日に,わたしたちは門の外の川のそばに出かけて行った。そこに祈りの場所があると思ったのである。そしてわたしたちは腰を下ろし,集まっていた女たちに話しはじめた。14 ところで,紫布を売る,テアテラ市+の人で,神の崇拝者でもあるルデアという名の女が聴いていたが,エホバ*は彼女の心を大きく開いて+,パウロの話す事柄に注意を払わせた。15 さて,彼女とその家の者たちがバプテスマを受けた時+,彼女は懇願して言った,「もし皆さんが,わたしをエホバに*忠実な者と見てくださったのでしたら,わたしの家に入って泊まっていらしてください+」。そして彼女はわたしたちを強いて連れて行ったのである+。
16 また,わたしたちがその祈りの場所に行く時であったが,霊,つまり占いの悪霊+につかれた*ある下女+がわたしたちと出会った。彼女は予言を業として,自分の主人たちに多くの利益を得させていた+。17 この[女]がパウロとわたしたちのあとにずっと付いて来て,「この人たちは至高の神の奴隷で,あなた方に救いの道を広めているのです」と叫びつづけるのであった+。18 彼女はこれを何日も続けた。ついにパウロはそれにうんざりし+,振り向いてその霊に言った,「彼女から出るよう,イエス・キリストの名においてあなたに命じる+」。すると,その時すぐそれは出て行った+。
19 ところが,彼女の主人たちは自分たちの利得の望みがなくなったのを見て+,パウロとシラスを捕まえ,市の立つ広場*の中へ,支配者たちのもとへと引きずって行った+。20 そして,彼らを行政官たちのところに引き立てて,こう言った。「これらの男はわたしたちの都市をひどくかき乱しております+。ユダヤ人でして,21 我々ローマ人であれば,採用することも実施することも許されない習慣+を広めています」。22 そして,群衆は彼らに敵して共に立ち上がった。そこで,行政官たちは彼らの外衣をはぎ取ったのち,棒むちで打ちたたくようにと命令した+。23 何度も殴打+を加えたのち,[行政官たち]は彼らを獄に入れ,厳重に留置しておくようにと牢番に命じた+。24 そのような命令を受けたので,[牢番]は彼らを奥の獄+に入れ,足かせ台につないで+彼らの足を動かないようにした。
25 しかし,真夜中ごろ+,パウロとシラスは祈ったり,歌で神を賛美したりしていた+。そして,囚人たちもそれを聞いていた。26 ところが,突然大きな地震が起こり,牢屋の土台が揺れ動いた。そのうえ,戸がみな直ちに開き,すべての者のかせが解けた+。27 牢番は眠りから覚めて獄の戸が開いているのを見ると,囚人たちが逃げてしまったものと思って+,剣を抜いて自害しようとした+。28 しかしパウロは大声で叫んで言った,「自分を傷つけてはいけない+。わたしたちは皆ここにいる!」29 それで彼は明かりを求めてから中に駆け込み,おののきながらパウロとシラスの前にひれ伏した+。30 そして,彼らを外に連れ出してからこう言った。「皆様,救われるためにわたしは何をしなければなりませんか+」。31 彼らは言った,「主イエスを信じて頼りなさい。そうすれば救われます+。あなたも,あなたの家の者たちも+」。32 そして,ふたりはエホバの*言葉を彼に,またその家にいるすべての者+に語った。33 そののち彼は,夜のその時刻にふたりを連れて行ってそのむち跡を洗った。そして,彼もその[家の者]もひとり残らずすぐにバプテスマを受けた+。34 それから彼はふたりを自分の家の中に連れて来て,その前に食卓を据え,自分が神を信じるようになったことを家の者たちすべてと共に大いに歓んだ。
35 夜が明けた時,行政官たち+は幾人かの警吏を派遣して,「あの人たちを釈放するように」と言った。36 それで牢番は彼らの言葉をパウロにこう伝えた。「行政官たちは,あなた方[二人]を釈放するようにと人をよこしました。ですから,さあ,出て来て,平安のうちにお出かけください」。37 しかしパウロは彼らに言った,「彼らはローマ人+であるわたしたちを,有罪の宣告もせずに公にむち打ち,しかも獄に入れました。それを今,ひそかに出そうというのですか。それはなりません! 彼らが自分で出向いて来て,わたしたちを連れ出すべきです」。38 そこで警吏はこのことばを行政官たちに伝えた。彼らは,この人たちがローマ人だと聞いて怖くなった+。39 そのため,やって来てふたりに懇願し,彼らを連れ出したのち,その都市から去ってくれるようにと頼んだ。40 しかし,彼らは獄を出てからルデアの家に行き,兄弟たちに会って励まし+,それから去って行った。
17 さて,彼らはアンフィポリスとアポロニアを旅してテサロニケに来た+。そこにはユダヤ人の会堂があった。2 それで,パウロは自分の習慣どおり+彼らのところに入り,三つの安息日にわたって彼らと聖書から論じ+,3 キリストが苦しみを受け+,そして死人の中からよみがえる+ことが必要であったことを説明したり,関連した事柄を挙げて証明したりして,「わたしがあなた方に広めているこのイエス,この方がキリストです+」と[言った]。4 その結果,彼らのうち幾人かが信者となって+パウロとシラス+に加わり,さらに,[神]を崇拝する非常に大勢のギリシャ人,そして主立った婦人たちのうちのかなりの者もそうなった。
5 しかしユダヤ人たちはねたみを抱き+,市の立つ広場をぶらつく者のうちから邪悪な男を幾人か仲間に引き入れて暴徒を組織し,市に騒動を起こしはじめた+。そして,ヤソン+の家を襲撃し,[パウロの一行]を衆民の前に引き出そうとした。6 しかし見つからないので,ヤソンと幾人かの兄弟たちを市の支配者たち*のところに引きずって行き,こう叫んだ。「人の住む地を覆した+これらの者たちがここにまで来ていますが,7 ヤソンはこれを手厚く迎え入れました。しかも,これらの者たちはみんなカエサルの*布告に逆らって+行動し,イエスという別の王+がいると言っています」。8 彼らはそれを聞く群衆や市の支配者たちをまさにかき立てた。9 そして,ヤソンとほかの者たちから十分の保証*を取った後に,やっと彼らを去らせた。
10 すぐさま,兄弟たちは夜のうちに+パウロとシラスを共にベレアに送り出した。彼らは到着すると,ユダヤ人の会堂に入った。11 さて,[ここの人たち]はテサロニケの人たちより気持ちがおおらかであった。きわめて意欲的な態度でみ言葉を受け入れ,それがそのとおりかどうかと+日ごとに聖書+を注意深く調べたのである+。12 そのため,彼らのうちの多くの者が信者となり,また,評判の良い+ギリシャ婦人や男子のうちのかなりの者がそうなった。13 しかし,テサロニケのユダヤ人たちは,神の言葉がパウロによってベレアでも広められていることを知ると,民衆を駆り立てて+騒がせようとして+そこにもやって来た。14 そこで,兄弟たちはすぐにパウロを送り出して海まで行かせた+。しかしシラスとテモテとはそこに居残った。15 しかしながら,パウロを案内した人たちは彼をアテネまで連れて来た。そして,シラスとテモテ+ができるだけ早く彼のところに来るように,との命令を受けてから去って行った。
16 さて,アテネで彼らを待っている時であったが,その都市に偶像が満ちているのを見て,パウロの内なる霊はいら立つようになった+。17 それで彼は,会堂でユダヤ人と+,また[神を]崇拝するほかの人たちと,さらには毎日,市の立つ広場+でそこに居合わせる人々と論ずるようになった。18 しかし,エピクロス派およびストア派の哲学者+のある人々が彼と言い合うようになり,ある者は,「このおしゃべり*は何を言おうとしているのか+」,またほかの者は,「これは異国の神々*を広める者らしい」などと言うのであった。彼がイエスおよび復活+の良いたよりを宣明していたからである。19 それで彼らは[パウロ]をつかまえてアレオパゴス*に連れて行き,こう言った。「あなたの話しているこの新しい教え+がどういうことなのか,わたしたちに分からせてもらえるだろうか。20 わたしたちには耳慣れない事柄をあなたが持ち込んでいるからだ。ついては,それがどういう意味なのか知りたいのだ+」。21 事実,すべてのアテネ人とそこにとう留している異国人は,暇な時間といえば何か新しい事柄を語ったり聴いたりして過ごしているのであった。22 さて,パウロはアレオパゴス+の真ん中に立って,こう言った。
「アテネの皆さん,わたしは,あなた方がすべての事において,他の人たち以上に神々+への恐れの念を厚く抱いて*おられる様子を見ました。23 例えば,歩きながら,あなた方の崇敬の対象となっているものを注意深く見ているうちに,わたしは,『知られていない神に』と刻み込まれた祭壇も見つけました。それで,あなた方が知らないで敬虔な専心を示しているもの,それをわたしはあなた方に広めているのです。24 世界とその中のすべてのものを造られた神,この方は実に天地の主+であり,手で作った神殿*などには住まず+,25 また,何かが必要でもあるかのように+,人間の手によって世話を受けるわけでもありません。ご自身がすべて[の人]に命+と息+とすべての物を与えておられるからです。26 そして,一人の[人+]からすべての国の人+を造って地の全面に住まわせ+,また,定められた時+と[人々]の居住のための一定の限界+とをお定めになりました。27 人々が神を求めるためであり+,それは,彼らが[神]を模索してほんとうに見いだすならばのことですが+,実際のところ[神]は,わたしたちひとりひとりから遠く離れておられるわけではありません。28 わたしたちは[神]によって*命を持ち,動き,存在しているからであり+,あなた方の詩人のある者たち*+も,『そはわれらはまたその子孫なり』と言っているとおりです。
29 「したがって,わたしたちは神+の子孫なのですから,神たる者*+を金や銀や石,人間の技巧や考案によって彫刻されたもののように思うべきではありません+。30 確かに,神はそうした無知の時代を見過ごしてこられはしましたが+,今では,どこにおいてもすべての者が悔い改めるべきことを人類に告げておられます+。31 なぜなら,ご自分が任命したひとりの人によって人の住む地*を義をもって裁くために+日を定め,彼を死人の中から復活させて+すべての人に保証*をお与えになったからです」。
32 さて,死人の復活について聞くと,ある者たちはあざけるようになったが+,ほかの者たちは,「これについてはあなた[の言うこと]をまた別の時に聞こう」と言った。33 こうしてパウロは彼らの中から出たが,34 幾人かの者は彼に加わって信者となった。その中には,アレオパゴス裁判所+の裁判官デオヌシオ*,ダマリスという名の女,またそのほかの者たちもいた。
18 こうした事の後,彼はアテネを去ってコリントに来た。2 そして,ポントス生まれの人で,クラウディウス+がユダヤ人すべてにローマ退去を命じたために最近イタリア+から来た,アクラ+という名のユダヤ人と,その妻プリスキラに会った。それで彼はそのふたりのもとに行き,3 職が同じだったのでその家に滞在し,こうして彼らは[共に]働いた+。天幕作りをその職としていたのである。4 しかしながら,彼は安息日ごとに会堂+で話をして,ユダヤ人とギリシャ人*を説得するのであった。
5 さて,シラス+とテモテ+が共にマケドニアから下って来ると,パウロはひたすらみ言葉のことに携わるようになり,イエスがキリストであることを証明するためにユダヤ人たちに証しをした+。6 しかし,彼らが反対してあしざまに言いつづけた時+,彼は自分の衣を振り払って+,こう言った。「あなた方の血+はあなた方自身の頭に帰するように。わたしは潔白です+。今からは諸国の人たちのところに行きます+」。7 こうして,彼はそこから移って,神の崇拝者であるテテオ・ユストという人の家に入った。その家は会堂に隣接していた。8 しかし,会堂の主宰役員クリスポ+が主の信者となり,その家の者たちも皆そうなった。そして,[み言葉を]聞くコリント人の多くが信じてバプテスマを受けるようになった。9 そのうえ,夜中に主が幻によってパウロにこう言われた+。「恐れないで,語りつづけなさい。黙っていてはいけない。10 わたしはあなたと共におり+,だれもあなたを襲って危害を加えたりはしないからである。この都市にはわたしの民が大勢いるのである」。11 こうして彼はそこに一年六か月腰をすえて滞在し,彼らの間で神の言葉を教えた。
12 さて,ガリオがアカイア*の執政官代理*+だった時であるが,ユダヤ人たちはパウロに敵していっせいに立ち上がり,彼を裁きの座+に引いて行って,13 「この者は法に逆らい,神を崇拝する点で人々を別の宗旨に導いている+」と言った。14 しかし,パウロが口を開こうとした時,ガリオがユダヤ人たちに言った,「実際,それが何らかの不正もしくは罪悪となる邪悪な行為であれば,ユダヤ人たちよ,わたしは当然辛抱してあなた方を忍びもしよう。15 だが,それがことばや名前+やあなた方の間の律法をめぐる論争+であれば,あなた方が自分で処置しなさい。わたしはそうした事柄の審判者にはなりたくない」。16 そうして彼らを裁きの座から追い返した。17 すると彼らはこぞって会堂の主宰役員ソステネ+を捕らえ,裁きの座の前で打ちたたいた。しかしガリオはこうした事にいっさいかかり合おうとしなかった。
18 それでも,パウロはなおかなりの日数滞在し,その後,兄弟たちに別れを告げてシリアに向けて出帆した。プリスキラとアクラも彼と一緒であった。彼がケンクレア*+で髪の毛を短く刈っていたからであり+,彼には誓約があったのである。19 こうして一行はエフェソスに着いたが,[パウロ]は彼らをそこに残し,自分は会堂+の中に入ってユダヤ人たちと論じた。20 彼らはもっと長くとどまるようにとしきりに頼んだが,[パウロ]はそれに応じないで 21 別れを告げ+,「エホバ*が望まれるなら+,またあなた方のところに戻って来ます」と言った。こうして,彼はエフェソスから船出して 22 カエサレアに下った。そして,上って行って*会衆にあいさつし,それからアンティオキアに下った。
23 そして,そこでしばらく過ごしてから,彼は出発し,ガラテア+とフリギア+地方の各所を回ってすべての弟子たちを強めた+。
24 さて,アポロ+という名のユダヤ人で,アレクサンドリア生まれの雄弁な人がエフェソスに着いた。彼は聖書によく通じていた+。25 この[人]はエホバ*の道を口伝えに教えられており,霊に燃えていたので+,イエスに関する事柄を正しく話したり教えたりするようになったが,ヨハネのバプテスマ+について知っているのみであった。26 そしてこの[人]は会堂で大胆に話し始めた。プリスキラとアクラ+は彼[の話]を聞き,彼を自分たちのところに連れて来て,神の道をより正しく説き明かした。27 さらに,彼がアカイアに渡って行くことを望んでいたので,兄弟たちは弟子たちに書き送って,彼を親切に迎えるように勧めた。こうして彼はそこに着くと,[神の]*過分のご親切のゆえに信者となっていた者たち+を大いに助けた+。28 彼は,ユダヤ人の誤りを熱烈な態度で公にまた徹底的に証明し,いっぽうでは,イエスがキリストであること+を聖書から論証したのである+。
19 そうしているうちに,アポロ+がコリントにいる時であったが,パウロは内陸部を回ってエフェソスに下り+,幾人かの弟子を見つけた。2 そして彼らにこう言った。「信者となった時,あなた方は聖霊を受けましたか+」。彼らは言った,「いや,わたしたちは聖霊があるかどうかも聞いたことがありません+」。3 そこで彼は言った,「では,何のバプテスマを受けたのですか」。彼らは言った,「ヨハネのバプテスマ+です」。4 パウロは言った,「ヨハネは,悔い改めの[象徴としての]バプテスマを施して+,自分の後に来る方+,つまりイエスを信じるよう民に告げました」。5 これを聞くと,彼らは主イエスの名においてバプテスマを受けた+。6 そして,パウロが彼らの上に手を置くと+,聖霊が彼らに臨み,彼らは[いろいろな]国語で話したり預言したりするようになった+。7 全部で十二人ほどの男子がいたのである。
8 彼は会堂の中に入って+三か月のあいだ大胆に語り,神の王国について+話をし,また説得に努めた。9 しかし,ある者たちがかたくなになって信じようとせず+,大勢の人たちの前でこの道+について悪く言った時,[パウロ]は彼らから離れて+弟子たちを彼らから別にし+,ツラノの学校[の講堂]で*毎日話をした。10 これは二年にわたって行なわれ+,その結果,ユダヤ人もギリシャ人も,アジア[地区+]に住むすべての者が主の言葉を聞いた。
11 そして神はパウロの手を通して異常なまでの力ある業を行ないつづけられた+。12 そのため,ただ布切れや前掛けを彼の体から取って患っている人のところに持って行くだけで+,疾患は去り,邪悪な霊たちは出るのであった+。13 ところが,悪霊払いをする+放浪のユダヤ人のある者たちも,邪悪な霊につかれた人たちに対して主イエスの名をとなえることを手がけ+,「パウロの宣べ伝えるイエスによってお前たちに厳粛に言い渡す+」と言うようになった。14 ところで,ユダヤ人の祭司長でスケワという人の七人の息子がおり,これを行なっていた。15 しかし,邪悪な霊は答えて彼らに言った,「わたしはイエスを知っているし+,パウロとも面識がある+。だが,お前たちはだれなのだ」。16 そうして,邪悪な霊のいる男が彼らに躍りかかり+,彼らを次々に*抑えつけて打ち負かしたので,彼らは傷ついたまま裸でその家から逃げて行った。17 このことは,エフェソスに住むユダヤ人にもギリシャ人にも,みんなに知れ渡った。そして,恐れ+が彼らすべてに臨み,主イエスの名は大いなるものとされていった+。18 また,信者となった者の多くがやって来ては告白をし+,自分の行なってきたことをあらわに告げるのであった。19 実際,魔術を行なっていた+かなり大勢の者が自分たちの本を持ち寄って,みんなの前で燃やした。そして,それらの値を計算してみると,合わせて銀五万枚になることが分かった。20 このようにして,エホバの*言葉は力強く伸張し,また行き渡っていった+。
21 さて,こうした事が終わった時,パウロは自分の霊の中で,マケドニア+とアカイアを回ってからエルサレムに旅をしようと+思い立ち,「そこに着いたのち,わたしはローマも見なければならない+」と言った。22 そして,自分に仕えていた者のうちから,テモテ+とエラスト+の二人をマケドニアに派遣したが,自分はアジア[地区]でしばらく手間どっていた。
23 ちょうどその時,この道*+に関して少なからぬ騒乱が起こった+。24 銀細工人でデメテリオという名の者がおり,アルテミス*の銀製の宮*を作って職人たちに少なからぬ利得を得させていたが+,25 この者がその[職人]やそうした事+に携わる者たちを集めて,こう言ったのである。「諸君,あなた方がよく知るとおり,我々はこの商売のおかげで繁栄を得ている+。26 そしてまた,このパウロという者が,エフェソス+だけでなくアジア[地区]のほとんど全域で,かなり多くの人々を説き付けて違った意見を抱かせ,手で作ったもの+は神ではないなどと言っていることも,あなた方の見聞きするところだ。27 そのうえ,この我々の職業が不評を被るだけでなく,偉大な女神アルテミス+の神殿が取るに足りないもののようにみなされ,全アジア[地区]また人の住む[全]地が崇拝する[女神]の荘厳さまでが無に帰せしめられてしまうという危険が存在するのだ」。28 人々はこれを聞いて怒りに満ち,「偉大なのはエフェソス人のアルテミス!」と叫びだした。
29 そのため市は混乱に満たされ,人々は,パウロの旅仲間であるマケドニア人のガイオとアリスタルコ+をむりやり引き連れ,劇場の中にいっせいになだれ込んだ。30 パウロとしては,中に入って民衆のところに行きたいと思ったが,弟子たちがそれを許さなかった。31 祝祭や競技会の委員*で彼と親しい者たちさえ,彼のところに人をよこして,劇場で身の危険を冒すようなことをしないようにと嘆願するのであった。32 実のところ,ある者はこのことを,他の者は別のことを叫んでいた+。集会は混乱状態で,大部分の者は自分がなぜ集まったのかも知らなかったのである。33 こうして彼らは一緒になって群衆の中からアレクサンデルを引き出し,ユダヤ人たちは彼を前に押しやった。アレクサンデルは手を振って合図をし,民に対して弁明しようとした。34 ところが,彼がユダヤ人であることが分かると,みんなからいっせいに叫び声が起こり,彼らは約二時間もの間,「偉大+なのはエフェソス人のアルテミス!」と叫びたてた。
35 最後に,市の記録官が,群衆を静めて+からこう言った。「エフェソスの皆さん,エフェソス人の都市が,偉大なアルテミスと天から降ってきた*像との神殿を守護する者であることを知らない人がいったいいるだろうか。36 それゆえ,これらは論じるまでもないことなのだから,あなた方は平静を保って性急に行動しないのがよい+。37 というのは,あなた方は,神殿強盗でもなければ我々の女神を冒とくするわけでもないこれらの者たちを連れて来たからだ。38 したがって,デメテリオ+とその仲間の職人たちがだれかに対して訴え事があるというのであれば,開廷+日もあり,執政官代理たち+もいることだ。互いに告発するがよかろう。39 だが,何かそれ以外のことを求めているのであれば,それは正規の集会で決めるべきだ*。40 我々は今日の事件について,暴動のかどで告発されるおそれがあるほどだし,我々にとってこの無秩序な寄り合いの釈明となるものは一つもないのだ」。41 そして,こう言ってから+,彼は集会+を解散させた。
20 さて,騒動が収まったのち,パウロは弟子たちを呼びにやった。そして彼らを励まし,また別れを告げてから+,マケドニアへ旅立った+。2 そこの各地を通ってその地の者たちを多くの言葉で励ました+のち,彼はギリシャに入った。3 そして,そこで三か月過ごしたが,シリアに向けて出帆しようとしていたやさき,彼に対するユダヤ人たちの陰謀+が巡らされたので,彼はマケドニアを通って帰ることに決めた。4 ベレアのプロの子ソパテロ+,テサロニケ人のアリスタルコ+とセクンド,デルベのガイオ,テモテ+,アジア[地区]からはテキコ+とトロフィモ+が彼に同行していた。5 これらの者は進んで行ってトロアス+でわたしたちを待っていたが,6 わたしたちは無酵母パンの期間+のあとフィリピから船出し,五日以内にトロアス+にいる彼らのところに来た。そして,ここで七日過ごした。
7 週の最初の日+,わたしたちが食事をする*ために集まっていた時,パウロは,次の日には出発することになっていたので,彼らに対して講話を始めた。そして話は長くなって真夜中にまで及んだ。8 そのため,わたしたちの集まっていた階上の間+にはかなりの数のともしびがついていた。9 ユテコという名の若者は窓のところに座っていたが,パウロがずっと話している間に深く眠ってしまい,眠ったまま転げて三階から落ち,抱き起こしてみると死んでいた。10 しかしパウロは階下に降り,彼の上に伏して+抱きかかえ,「騒ぎ立てるのはやめなさい。彼の魂*は彼の内にある+」と言った。11 それから彼は階上に行き,食事を始めて*食べ,かなりのあいだ語り合って夜明けに及び,こうしてようやく出発した。12 そこで,彼らは生き[返っ]た少年を連れて行き,一方ならぬ慰めを得た。
13 さて,わたしたちは先に船に行き,アソスに向けて船出した。わたしたちはそこでパウロを乗せることにしていた。彼はそういう指示を与えて,自分は徒歩で行こうとしていたからである。14 こうして彼がアソスでわたしたちに追いついた時,わたしたちは彼を乗せてミテレネに行った。15 そして,翌日そこから出帆してキオスの向かい側に着いたが,次の日にはサモスに立ち寄り,その明くる日ミレトスに着いた。16 パウロは,エフェソス+に寄らずに帆走しようと決めていたのである。それは,アジア[地区]では少しも時間を費やさないようにするためであった。できるならばペンテコステ[の祭り]の日にエルサレムに着けるようにと+急いでいたのである。
17 しかしながら,彼はミレトスから人をエフェソスに送って会衆の年長者たち*+を呼んだ。18 彼らが自分のところに着いた時,[パウロ]はこう言った。「アジア[地区+]に足を踏み入れた最初の日からわたしがどのようにあなた方と終始一緒にいたか+,あなた方はよく知っています。19 へりくだった思いを尽くし+,涙とユダヤ人たちの陰謀+によってわたしに降り懸かる試練の中で,主のために奴隷として仕え+ました。20 同時にわたしは,何でも益になることをあなた方に話し,また公にも家から家にも*+あなた方を教えることを差し控えたりはしませんでした+。21 むしろ,神に対する悔い改め+とわたしたちの主イエスへの信仰について,ユダヤ人にもギリシャ人にも徹底的に証しをしたのです+。22 そして今,ご覧なさい,霊+に縛られてわたしはエルサレムに旅をしていますが,そこで自分に起きる事柄を知りません。23 ただ,どの都市においても,聖霊+が繰り返しわたしに証しをし,なわめと患難とが待っていることを述べるのです+。24 でもやはり,自分の行程+と,主イエスから受けた+奉仕の務め+,すなわち神の過分のご親切+に関する良いたよりについて徹底的に証しすることとを全うできさえすれば,わたしは自分の魂*を少しも惜しいとは思いません+。
25 「そして今,ご覧なさい,わたしが王国*を宣べ伝えて*まわったあなた方すべてが,もうわたしの顔を見ないことを,わたしは知っています。26 ですから,今日この日に,わたしがすべての人の血について潔白であること+に関して,あなた方に証人となってもらいます。27 わたしは何一つ差し控えることなく,神のみ旨をことごとく+あなた方に伝えたからです。28 あなた方自身+と群れのすべて+に注意を払いなさい+。[神]がご自身の[み子]の血*+をもって買い取られた神*の会衆を牧させるため+,聖霊があなた方をその[群れの]中に監督*+として任命したのです。29 わたしが去った後に,圧制的なおおかみ+があなた方の中に入って群れを優しく扱わないことを,わたしは知っています。30 そして,あなた方自身の中からも,弟子たちを引き離して自分につかせようとして+曲がった事柄を言う者たちが起こるでしょう+。
31 「ですから,目ざめていなさい。そして,三年の間+,わたしが夜も昼も,涙をもってひとりひとりを訓戒しつづけたこと+を覚えていなさい。32 そして今,わたしはあなた方を神*とその過分のご親切の言葉にゆだねます+。その[ことば]はあなた方を築き上げ+,神聖にされた者たちすべての間の相続財産をあなた方に与えうるのです+。33 わたしはだれの銀も金も着衣も貪ったことはありません+。34 この手が,わたしの,そしてわたしと共にいる者たちの必要のために働いたこと+を,あなた方自身が知っています。35 わたしは,このように労苦して+弱い者たちを援助しなければならないこと+,また,主イエスご自身の言われた,『受けるより与える+ほうが幸福である』との言葉を覚えておかなければならないことを,すべての点であなた方に示したのです」。
36 そして,こう言ってから,[パウロ]はみんなと共にひざまずいて+祈った。37 実際,すべての者は少なからず泣き,パウロの首を抱いて+優しく口づけした+。38 自分の顔+をもう見ないであろうと語った[パウロ]の言葉に,彼らはひときわ[胸を]痛めたのである。そうしてみんなは[パウロ]を船まで送って行った+。
21 さて,わたしたちは彼らを振り切るようにして船出したのち,コスに直行し,次の[日]にはロードスに,そしてそこからパタラに[着いた]。2 ついで,フェニキアに渡る船を見つけ,それに乗って出帆した。3 キプロス[島+]が見えてくると,それを左にして通り過ぎ,シリアに向かって+帆走を続け,ティルスに上陸した。船はそこで積み荷+を降ろすことになっていたのである。4 わたしたちは弟子たちを捜し当て,ここに七日とどまった。しかし彼らは霊によって+,エルサレムに足を踏み入れないようにと繰り返しパウロに告げるのであった。5 こうして日数が満ちると,わたしたちはそこから旅立ったが,彼らは女子供ともどもに,みんなでわたしたちを市の外まで見送ってくれた。そして,浜辺にひざまずいて+祈り,6 互いに別れを告げてから+,わたしたちは船に乗り,彼らは自分の家に帰った。
7 次いでわたしたちはティルスからの船旅を終えてプトレマイスに着き,兄弟たちにあいさつをしてそのもとに一日泊まった。8 次の日,そこを出てカエサレア+に着き,あの七人の一人である福音宣明者*フィリポ+の家に入って,そのもとに泊まった。9 この人には四人の娘がいたが,処女であり,預言をしていた+。10 しかし,わたしたちが幾日もとどまっている間に,アガボ+という名の預言者がユダヤから下って来た。11 そして,わたしたちのところにやって来て,パウロの腰帯を取り,自分の両手足を縛って,こう言った。「聖霊がこのように言います。『この腰帯の属する人を,ユダヤ人はエルサレムでこのように縛り+,諸国の人々の手に引き渡すであろう+』」。12 さて,これを聞いて,わたしたちもその場所の人たちも,エルサレムに上らないようにと彼に懇願しはじめた+。13 するとパウロはこう答えた。「あなた方は泣いたり+わたしの心を弱めたりして+,何をしているのですか。わたしは,縛られることばかりか,主イエスの名のためにエルサレムで死ぬ覚悟さえできているのです+」。14 彼がどうしても思いとどまらないので,わたしたちは,「エホバ*のご意志+がなされるように」と言って黙諾した。
15 さて,こうした日が過ぎてから,わたしたちは旅の支度をして,エルサレムに上ることになった+。16 しかし,カエサレアの弟子たち+も幾人か一緒に行ったが,それは,わたしたちが接待されることになっていた人,初期の弟子で,キプロス出のムナソンという人の家へわたしたちを連れて行くためであった。17 わたしたちがエルサレムに入ると+,兄弟たちは喜んで迎えてくれた+。18 しかしその明くる[日],パウロはわたしたちと一緒にヤコブ+のところに行った。すると,年長者たち*が皆そこに来ていた*。19 そこで[パウロ]は彼らにあいさつを述べ,神が自分の奉仕を通して+諸国民の間で行なわれた事柄について詳しく話しはじめた+。
20 それを聞くと,彼らは神の栄光をたたえはじめ,それから[パウロ]にこう言った。「兄弟,あなたが見るとおり,ユダヤ人の中には幾万もの信者がいます。そして彼らはみな律法に対して熱心です+。21 しかし,彼らはあなたについて,あなたが諸国民の中にいるすべてのユダヤ人に対してモーセからの背教*+を説き,子供に割礼+を施すことも,[厳粛な]習慣にしたがって歩むこともしないように告げている,とのうわさを聞いています。22 それで,この点をどうすべきでしょうか。いずれにしても彼らは,あなたが到着したことを聞くでしょう。23 ですから,わたしたちが告げるこのことをしてください。わたしたちのところには誓約を立てた四人の人がいます。24 この人たちを連れて行って+一緒に儀式上の清めをし,その費用の世話を見て+,彼らが頭をそってもらえるようにしてやりなさい+。こうすればだれもが,あなたについて聞かされているうわさには何の[根拠]もなく,あなたが秩序正しく歩んで自らも律法を守っていることを知るでしょう+。25 諸国民の信者たちについては,偶像に犠牲としてささげられた物+,ならびに血+と絞め殺されたもの*+,また淫行+から身を守っているべきであるとの決定を下して,使いの者を送って*あるのです」。
26 そこでパウロは,次の日にその人たちを連れて行って一緒に儀式上の清めをし+,それから神殿に入った。彼らひとりひとりのために+捧げ物+をささげるべき[日]までに満たすべき+,儀式上の清めの期間を通知するためであった。
27 さて,その七日+が完了しようとしていた時,アジアから来たユダヤ人たちは,彼が神殿にいるのを見て,全群衆を混乱させようとし+,彼に手をかけて 28 こう叫んだ。「イスラエルの人たち,手伝ってくれ! これは,いたるところで,すべての者に,この民+と律法とこの場所に逆らったことを教える男だ。そのうえ,ギリシャ人を神殿に連れ込んで,この聖なる場所を汚すことさえしたのだ+」。29 これは,先にエフェソス人のトロフィモ+が彼と一緒に市内にいるのを人々が見たからで,パウロが彼を神殿に連れ込んだものと思ったのである。30 そのため,市全体が騒動になり+,民は駆け寄って来た。そして彼らはパウロを捕まえて神殿の外に引きずり出した+。それからすぐに戸が閉じられた。31 こうして彼らが[パウロ]を殺そうとしている間に,エルサレムじゅうが混乱している+との知らせが部隊の司令官*のところに届いた。32 それで彼は直ちに兵士と士官*たちを連れ,彼らのところに駆け下りた+。軍司令官+と兵士たちを見かけると,彼らはパウロを打ちたたくのをやめた。
33 軍司令官はすぐに近づいて彼を捕まえ,二本の鎖で縛るように命令した+。そして,彼がどういう者なのか,また何をしたのかを尋ねた。34 しかし,群衆のある者はこのことを,ほかの者は別のことを叫び立てるのであった+。それで,騒がしさのために自分では確かなことが何も分からないので,彼は[パウロ]を兵営に連れて行くように命令した+。35 しかし,彼が階段に差しかかると,群衆の暴行のため,兵士たちに担がれて行かねばならないほどになった。36 大勢の民が,「彼を除いてしまえ*+!」と叫びながら,あとに付いて来たからである。
37 さて,兵営内に引き入れられようとした時,パウロは軍司令官に言った,「少しお話ししてもよいでしょうか」。彼は言った,「お前はギリシャ語を話せるのか。38 まさかお前は,先ごろ暴動を起こし+,短剣[を持った*]四千人の男を荒野に連れ出したあのエジプト人ではないだろうな」。39 そこでパウロは言った,「わたしは実際にユダヤ人+で,キリキアのタルソスの者+,れっきとした都市の市民です。ですから,お願いします,民に話すことを許可してください」。40 彼が許可を与えると,パウロは階段の上に立ち,民に向かって手を振って合図をした+。すっかり静かになった時,彼はヘブライ語で+話しかけてこう言った。
22 「皆さん,兄弟たち+と父たち,今,あなた方に対するわたしの弁明+を聞いてください」。2 (さて,彼がヘブライ語で話しかけてくるのを聞いて+,人々はいよいよ静かになった。そこで彼は言った,)3 「わたしはユダヤ人+で,キリキアのタルソスで生まれましたが+,この都市においてガマリエル+の足下で教育され,先祖の律法の厳格さ+に応じた教えを受けており,今日のあなた方すべてと同じように神に対して熱心な者です+。4 そして,この道[の者]を死に至らせるまでも迫害し+,男も女も縛って獄に引き渡しました+。5 この点は,大祭司も年長者会*の全員+もわたしのことを証しできます。わたしはこの人たちからダマスカスにいる兄弟たちへの手紙も手に入れ+,そこにいる者たちも罰するため,縛ってエルサレムに連れて来ようと道を進んでいました。
6 「ところが,わたしが旅をしてダマスカスのすぐ近くに来た時,真昼ごろでしたが,突然天から強烈な光がわたしのまわり一帯にぱっと光り+,7 わたしは地面に倒れて,『サウロ,サウロ,なぜあなたはわたしを迫害しているのか』と自分に言う声を聞きました+。8 わたしは,『主よ,あなたはどなたですか』と答えました。すると彼は,『わたしはナザレ人のイエス,あなたが迫害している者です+』と言われました。9 ところで,わたしと一緒にいた人たち+は,光は確かに見たのですが,わたしに話している方の声は聞き取りませんでした*+。10 そこでわたしは,『主よ,わたしはどうしたらよい*のでしょうか+』と言いました。主はわたしにこう言われました。『起きて,ダマスカスに入りなさい。そうすれば,あなたが行なうように定められている事柄はみな告げられるでしょう+』。11 しかしわたしはその光の輝きのために何も見ることができなかったので,一緒にいた者たちの手に引かれてダマスカスに着きました+。
12 「さて,律法にかなった敬虔な人で,そこに住むすべてのユダヤ人からも良い評判のある+アナニアという人が,13 わたしのところにやって来てそばに立ち,『サウロ,兄弟よ,再び視力を得なさい*+!』と言いました。まさにその時,わたしは目を上げて彼を見たのです。14 彼はこう言いました。『わたしたちの父祖の神+は,そのご意志を知り,義なる方+を見+,その口の声を聞くようにと+あなたをお選びになりました+。15 あなたは,自分の見聞きした事柄につき,すべての人に対してその方の証人となるからです+。16 それで今,なぜためらうのですか。立って,バプテスマを受け+,その名を呼び求めて+あなたの罪を洗い去りなさい*+』。
17 「ところが,エルサレムに帰って+神殿で祈りをしていると,わたしはこうこつとした状態になり*+,18 その方がわたしに,『急いで,早くエルサレムから出なさい。彼らは,わたしについてのあなたの証しに同意しない+からです』と言っておられるのを見ました。19 それでわたしはこう言いました。『主よ,わたしが次から次へと会堂をまわり,あなたを信じて頼っている者たちを投獄したり+むち打ったりしたこと+を,彼ら自身がよく知っています。20 しかも,あなたの証人ステファノの血が流された時+には,私もそばに立ってそれを是認し+,彼を除き去ろうとしている者たちの外衣の番をしていたのです』。21 でもその方は,『行きなさい。わたしは,あなたを遠く諸国民に遣わすからです+』と言われました」。
22 さて,彼らはこの言葉のところまでずっと彼[の話]を聴いていたが,ここで声を張り上げて言った,「こんな[男]は地上から除いてしまえ。生きている値うちなどなかったのだ+!」23 そして,彼らが叫んだり,外衣を振り回したり,塵を空中にほうり上げたりするので+,24 軍司令官*は,彼を兵営の中に連れて行くように命じ,またむち打って取り調べるようにと言った。どんな理由で人々が彼に向かってこのように叫びたてるのか+を十分に知ろうとしてであった。25 しかし,むち打ちのために[兵士]たちが彼[の手足]を伸ばした*時,パウロはそこに立っている士官*に言った,「ローマ人+で有罪の宣告を受けてもいない者を,あなた方はむち打ってもよいのですか」。26 すると,士官はこれを聞いて軍司令官のところに行き,「どうされますか。この人はローマ人なのです」と報告した。27 そこで,軍司令官は近づいて来て,彼に言った,「わたしに言いなさい。あなたはローマ人なのか+」。彼は,「そうです」と言った。28 それに対して軍司令官は言った,「わたしは市民としてのこの権利を*多額[の金]を出して買い取ったのだ」。パウロは言った,「わたしは生まれながらに[それを]持っています+」。
29 そのため,拷問にかけて彼を取り調べようとしていた人たちは,すぐに彼から離れた。そして軍司令官は,彼がローマ人であること+,また自分が彼を縛ったことをはっきり知って,恐れを抱いた。
30 そこで,次の日,いったいなぜ彼がユダヤ人たちから訴えられているのか,確かなことを知りたかったので,[軍司令官]は彼を解き,祭司長たちと全サンヘドリンに集合を命じた。そしてパウロを連れて行って,彼らの中に立たせた+。
23 パウロはサンヘドリンをじっと見ながら言った,「皆さん,兄弟たち,わたしはこの日に至るまで,神のみ前で全く汚れない良心を抱いて+行動してきました」。2 これに対して大祭司アナニアは,彼の口を打つようにと+彼のそばに立っている者たちに命じた。3 そこでパウロは彼に言った,「神があなたを打たれるでしょう,白く塗った+壁よ。あなたは律法にしたがってわたしを裁くために座していながら+,しかもなお律法を踏み越えて+わたしを打つように命令するのですか」。4 そばに立っている者たちが言った,「お前は神の大祭司のことをののしるのか」。5 するとパウロは言った,「兄弟たち,わたしは彼が大祭司であるとは知りませんでした。『あなたは,あなたの民の支配者を悪く言ってはならない+』と書いてあるからです」。
6 さて,一部がサドカイ人+で,他がパリサイ人であることに気づくと,パウロはサンヘドリンの中でさらにこう叫んだ。「皆さん,兄弟たち,わたしはパリサイ人であり+,パリサイ人の子です。死人の復活+の希望に関してわたしは裁かれているのです+」。7 彼がこう言ったので,パリサイ人とサドカイ人の間に争論+が起こり,その場の大勢の者は二つに分かれた。8 サドカイ人+は,復活もみ使いも霊もないと言う+のに対し,パリサイ人はそれらすべて*について公に宣明するからである。9 そのために声高な叫び合いとなり+,パリサイ派の書士幾人かが立ち上がって激しい主張を始め,「わたしたちはこの人に何の悪も見いださない+。もし霊か,み使いが彼に話したのであれば+,―」と言った。10 さて,争論が大きくなった時,軍司令官はパウロが彼らに引き裂かれることを恐れ,兵隊+に,下りて行って彼らの中から[パウロ]を奪い出し,兵営の中に連れて来るよう命令した+。
11 しかし次の夜,主は彼のそばに立って+こう言われた。「勇気を出しなさい+! あなたは,わたしに関する事柄についてエルサレムで徹底的な証しをしてきたが+,それと同じようにローマでも証しをしなければならない+」。
12 さて,夜が明けると,ユダヤ人たちは共謀して+自らにのろいをかけ+,パウロを殺してしまうまでは食べることも飲むこともしないと言った+。13 誓い合ってこの共謀に加わった者は四十人以上いた。14 そして彼らは祭司長+と年長者たち*のところに行ってこう言った。「わたしたちは,パウロを殺してしまうまでは一口の食物も取らないと,自らに厳粛なのろいをかけました。15 ですから今,あなた方はサンヘドリンと共に,彼にかかわる件をもっと正確に決定しようとしているかのようにして,彼をあなた方のもとに連れて来るべきことを軍司令官に対して明らかにしてください+。しかし,彼が近くに来る前に,わたしたちは彼を除き去る手はずを整えておきます+」。
16 しかしながら,パウロの姉妹の息子が彼らの待ち伏せ+のことを聞き,やって来て兵営の中に入り,そのことをパウロに伝えた。17 それでパウロは士官の一人を自分のところに呼んで,「この若者を軍司令官のところに引いて行ってください。何かお伝えすることがあるのです」と言った。18 そこでこの人は彼を連れて行って軍司令官のところに案内し,「囚人のパウロがわたしを呼んで,何かあなたにお話しすることがあるので,この若者をあなたのところに引いて行くようにとわたしに頼みました」と言った。19 軍司令官は彼+の手を取って引き下がり,人のいないところで尋ねはじめた,「あなたがわたしに伝えることとは何か」。20 彼は言った,「ユダヤ人たちは,パウロについて何かもっと正確に知ろうとするかのようにして,彼を明日サンヘドリンに連れて来るようあなたに頼むことで合意しました+。21 ともかく,彼らに説得されることがないようにしてください。彼らのうち四十人以上が待ち伏せていて+,[パウロ]を除き去ってしまうまでは食べることも飲むこともしないと,自らにのろいをかけているからです+。そして,彼らはもう手はずを整えて,あなたからの約束を待っています」。22 そこで軍司令官は,「これをわたしに明かしたことはだれにもしゃべるな」と命じてから,その若者を行かせた。
23 それから彼は士官のうち二人の者を呼び寄せて,こう言った。「ずっとカエサレアまで行軍するよう兵士二百人,また騎手七十人と槍兵二百人を夜の第三時*に用意せよ。24 また,パウロを乗せて総督フェリクスのもとに安全に送り届けるための駄獣も調えよ」。25 そして彼は次の様式で手紙を書いた。
26 「クラウディウス・ルシアスから,総督フェリクス閣下+へ: ごあいさつ申し上げます。27 この男はユダヤ人に捕らえられ,彼らによって除き去られるところでしたが,わたしはこの者がローマ人であることを知りましたので+,一隊の兵士を連れて急行し,彼を救出しました+。28 そして,彼らがこの者を訴える理由を確かめたいと思い,彼らのサンヘドリンにこの者を連れて行きました*+。29 わたしは,この者が彼らの律法上の問題で訴えられているのであって+,何ら死やなわめに価する事柄で告発されているのでないことを知りました+。30 しかし,この男に対する陰謀+が明らかにされましたので,わたしは直ちに彼をあなたのもとにお送りし,告訴人たちには,あなたの前で申し述べるようにと命令する次第です+」。
31 そこで兵士たち+は,命令どおりにパウロを引き取り,夜の間に彼をアンテパトリスに連れて来た。32 次の日,そこからは騎手たちに同行させることにして,彼らは兵営に帰った。33 [騎手たち]はカエサレア+に入って手紙を総督に渡し,またパウロを彼に引き合わせた。34 そこで彼は[手紙]を読み,[パウロ]がどの州の者かを問いただして,キリキアの者+であることを確かめた+。35 「あなたの告訴人たちも到着したら,あなた[の言い分]をよくよく聞くことにしよう」と彼は言った+。そして,彼を官邸であるヘロデ宮殿内で監視しておくように命令した。
24 五日後,大祭司アナニア+は,数人の年長者*およびテルトロという弁士を伴って下って来た。そして彼らは総督+に対し,パウロを攻める申し立てを行なった+。2 彼が呼ばれると,テルトロは彼を訴え始めてこう言った。
「あなたのおかげでわたしどもが大いに平和を楽しみ+,またあなたのご配慮によってこの国に[数々の]改革がなされておりますので,3 フェリクス閣下+,わたしどもは常に,またいずれの場所におきましても,この上ない感謝の気持ちでそれを享受いたしております。4 しかし,これ以上お邪魔をしないために,あなたのご厚意により,わたしども[の申し上げますこと]を少しの間お聞きくださるようお願いいたします。5 と申しますのは,わたしどもが見ましたところ,この男は疫病のような人物で+,人の住む地のほうぼうにいるユダヤ人すべての間に暴動+を引き起こし,ナザレ人一派*+の先鋒*で,6 神殿を汚そうとまでした者ですが+,それをわたしどもが捕らえました。7* ―― 8 お取り調べになれば,わたしどもがこの者を訴えるこうした事柄すべてについて,ご自身で知っていただけるはずでございます」。
9 それと共にユダヤ人たちも攻撃に加わり,これはそのとおりだと主張した。10 それでパウロは,話すようにと総督が自分にうなずいて合図をした時に,こう答えた。
「この国民が多年にわたりあなたを審判者として頂いてきたことをよく知っておりますので,わたしは,弁明+のため自分に関する事柄をよろこんでお話しいたします。11 あなたにお調べいただけることですが,わたしが崇拝のために+エルサレムへ上ってから十二日しかたっておりません。12 そして彼らは,わたしが神殿で+だれかと議論したり,会堂や市のどこかで暴徒を駆り立てたり+しているのを見たわけではありません。13 また彼らは,ただ今わたしについて訴えている事柄を,あなたに証明できるわけでもありません+。14 しかしわたしは,このことはあなたの前で認めます。彼らが『派』と呼ぶ道にしたがい,そのやり方にそって,自分の父祖たちの神に神聖な奉仕をささげている*+,ということです。それは,律法の中で述べられていること+,預言者たちの中に書かれていることをすべて信じているからです。15 そしてわたしは神に対して希望+を持っておりますが,その希望はこれらの[人たち]自身もやはり抱いているものであり,義者+と不義者+との復活*+があるということです。16 まさにこの点で,わたしは,神にも人にもとがを犯していないとの自覚+を持てるよう,絶えず励んでいるのです。17 こうして,わたしは,憐れみの施しを自分の国民に,そして捧げ物を持って来るために+,何年かぶりで到着しました。18 わたしがそうした事柄に携わっている間に,彼らは,わたしが儀式上の清めをして神殿にいるのを見つけました+。ですがわたしは群衆と一緒にいたわけでも,騒ぎを起こしていたわけでもありません。ところが,アジア[地区]から来た幾人かのユダヤ人がいました。19 その者たちは,何かわたしを責めることがあるならば,あなたの前に出て訴えるべきです+。20 あるいは,わたしがサンヘドリンの前に立った時にどんな悪事を見いだしたのか,ここにいる[人たち]に自分で述べていただきたいと思います。21 わたしが彼らの中に立っていた際に叫んだこの一言,『死人の復活に関して,わたしは今日あなた方の前で裁かれているのです+!』という発言に関することだけなのです」。
22 しかしながら,フェリクス+はこの道+に関する事柄をかなり正確に知っていたので,彼らを待たせることにし,「軍司令官*ルシアス+が下って来たときに,あなた方に関する本件を裁決することにしよう」と言った。23 そして,士官*に,当人を留置し,[拘禁の度を]いくぶん緩めるように,また,その仲間の者が彼の世話をすることを禁じないようにと命じた+。
24 幾日か後,フェリクス+はユダヤ人の女+である妻ドルシラを伴ってやって来た。そしてパウロを呼びにやり,キリスト・イエスに対する信念+について彼[の話]を聴いた。25 しかし,彼が,義+と自制+と来たるべき裁き+について話すにつれ,フェリクスは怖れを感じ,「今のところはもう下がってよい。よい時があったらまた呼ぶだろう」と答えた。26 だが,同時に彼はパウロから金+をもらうことを望んでいたのである。そのため彼はいよいよひんぱんに[パウロ]を呼びにやっては,彼と語り合うのであった+。27 しかし,二年が経過した時,ポルキオ・フェストがフェリクスの跡を継いだ。だがフェリクスはユダヤ人の歓心を買おうとしていたので+,パウロをつないだままにしておいた。
25 こうしてフェストは,州*[の政務]に就いて+三日後に,カエサレアからエルサレムに上った+。2 すると,祭司長,およびユダヤ人の中の主立った人々が,パウロを攻める申し立てを行なった+。そうして彼に懇願しはじめ,3 [パウロ]の件で,自分たちへの好意[の処置]として,彼を呼びにやってエルサレムに来させてくれるように求めた。道の途中で彼を除き去るため伏兵を置こうとしていたのである+。4 しかしフェストは,パウロはカエサレアに留置しておくべきだし,自分はまもなくそこへ出発するところだと答えた。5 「だから,その男に何か道ならぬところがあるなら,あなた方のうちの有力な人たちがわたしと一緒に下って来て,彼を訴えるがよい+」と彼は言った。
6 こうして,彼らの間でせいぜい八日ないし十日過ごしただけで,[フェスト]はカエサレアに下り,次の日には裁きの座に着いて+,パウロを連れて来るように命令した。7 彼が到着すると,エルサレムから下って来たユダヤ人たちはそのまわりに立って多くの重大な罪状を述べ立てたが+,その証拠を示すことはできなかった。
8 一方,パウロは弁明してこう言った。「ユダヤ人の律法に対しても,神殿に対しても+,カエサル*に対しても,わたしは何の罪も犯していません+」。9 フェストはユダヤ人の歓心を買おうとしていたので+,パウロに答えて言った,「あなたはエルサレムに上り,そこでこれらの事に関し,わたしの前で裁きを受けることを願うか+」。10 しかしパウロは言った,「わたしはカエサルの裁きの座の前に立っており+,そこで裁かれるべきです。わたしはユダヤ人に対して何も悪いことをしていません+。それはあなたもじゅうぶん知っておられるとおりです。11 もしわたしがほんとうに悪を行なう者で+,何か死に価するようなことを犯したのであれば+,わたしは言い訳をして死を免れようなどとはしません。他方,これらの[人たち]がわたしを訴える事柄がどれも事実でないのであれば,好意[の処置]としてわたしを彼らに引き渡すようなことはだれもできません。わたしはカエサルに上訴します+!」12 そこでフェストは評議員会と話し合ってから,「あなたはカエサルに上訴した。カエサルのもとにあなたを行かせよう」と答えた。
13 さて,幾日か過ぎてから,王アグリッパ*とベルニケ*が,フェストへの儀礼訪問のためカエサレアに到着した。14 そうして彼らがそこで何日も過ごしていたので,フェストはパウロのことを王に持ち出して,こう言った。
「フェリクスが囚人として残していったひとりの男がいますが,15 わたしがエルサレムにいた際,祭司長やユダヤ人の年長者たち*は彼について申し立てをし+,彼に対する有罪の判決を求めました。16 しかしわたしは,訴えられた人が自分を訴えた者たち+と対面し,その告訴に関して自分の弁明の機会を与えられないうちに,好意[の処置]としてその人を引き渡してしまうのはローマ人のやり方ではない,と彼らに答えておきました。17 そのようなわけで,彼らがここに集まった時,わたしは少しも猶予することなく,次の日には裁きの座に着いて,その男を連れて来るように命令しました。18 訴える者たちは立ち上がりましたが,わたしが彼に関して想像していたような悪事の罪状+は何も挙げませんでした。19 彼らはただ,神に対する自分たちの崇拝*に関し+,また,死んだ者なのに,生きているとパウロが主張しつづけるイエスという人物に関して+,ある種の論争が彼との間にあるだけでした。20 それで,こうした事柄をめぐる論争に困惑したわたしは,エルサレムに行って,そこでこれらの事柄について裁きを受けてはどうかと彼に尋ねてみました+。21 しかしパウロが上訴して+,尊厳者*による判決を受けるために自分を留置してほしいと[申し出た]ので,わたしは,カエサルのもとに送るまで彼を留置しておくように命令しました」。
22 ここでアグリッパはフェストに[言った],「わたしもその男[の言うこと]を聞いてみたいものです+」。[フェスト]は,「明日,彼[の話]をお聞かせしましょう」と言った。23 こうして,次の日,アグリッパとベルニケは大そうもったいぶった+素振りでやって来て,軍司令官*たち,また市の著名人たちと共に謁見の間に入った。そして,フェストが命令を出すと,パウロが連れて来られた。24 そこでフェストは言った,「アグリッパ王,ならびにご同席のすべての方々,あなた方がご覧になっているこの男は,ユダヤ人の大勢の者がこぞって,エルサレムでも当地でも,これ以上生かしてはおけないと叫んで+,わたしのところに訴えて来たその者であります。25 しかしわたしは,彼が死に価するようなことは何も犯していないことを見て取りました+。それで,当人が尊厳者に上訴した時+,わたしは彼を送ることに決めました。26 ところがわたしには,彼について[わたしの]主に書き送ろうにも,これといったことが何もありません。そのためわたしは,彼をあなた方の前,わけても,アグリッパ王よ,あなたの前に連れ出しました。司法上の調査がなされたのち+,わたしの書き送るべきことが何か得られるようにと思ってです。27 というのは,囚人を送りながら,その者の罪状を示さないのは,道理に合わないことに思えるからです」。
26 アグリッパ+はパウロに言った,「あなたは自分のために話すことを許されているのだ」。そこでパウロは手を差し伸べ+,自分の弁明を始めた+。
2 「わたしがユダヤ人たちに訴えられているすべての事柄に関し+,アグリッパ王よ,あなたの前でこの日に自分の弁明ができますことを幸いに存じます。3 とりわけ,あなたはユダヤ人の間のあらゆる習慣や論争に精通した方だからです+。ですから,わたし[の申し上げること]を辛抱してお聞きくださるようお願いいたします。
4 「まさに,わたしが自分の国民の間で,またエルサレムにおいて初めからしてきた,若いころからの生き方+については,5 最初からわたしと面識のあるユダヤ人がみな知っており,彼らが証しをする気さえあればよいことなのですが,わたしは,わたしたちの崇拝方式のうちで最も厳格な派*+にしたがい,パリサイ人+として生活しておりました。6 それなのにわたしは今,神によってわたしたちの父祖になされた約束+に対する希望+のために,立って裁きに付されているのです。7 一方わたしたちの十二部族は,神聖な奉仕を夜昼熱烈にささげて*+この約束の成就に達することを希望しています。この希望に関して,王よ,わたしはユダヤ人たちから訴えられているのです+。
8 「なぜあなた方の間では,神が死人をよみがえらせる+ということが,信じられないこととされるのでしょうか。9 私としては,ナザレ人イエスの名に敵対する行為を大いに行なうべきだと,自らの内でほんとうに考えました。10 現にわたしはエルサレムでそれを行ない,祭司長たちから権限を与えられていましたので+,聖なる者たちを数多く獄に閉じ込めました+。そして彼らが処刑される際には,彼らに敵対の票*を投じました。11 また,すべての会堂で+彼らを幾度も罰して変節を迫り,彼らに対して甚だしく怒り狂っていましたので,外部の諸都市においてさえ彼らを迫害するほどでした。
12 「こうした努力のさなか,祭司長たちから権限と委任を受けてダマスカスに旅をしていた時+,13 わたしは,真昼に路上で,王よ,太陽の輝きより強い光が,天からわたしのまわり,また共に旅をしていた者たちのまわりにぱっと光るのを見ました+。14 そして,わたしたちがみな地面に倒れてしまった時,わたしは,ヘブライ語で,『サウロ,サウロ,なぜあなたはわたしを迫害しているのか。突き棒をけりつづけるのは,あなたにとってつらいことになる』と言う声を聞きました+。15 しかしわたしは,『主よ,あなたはどなたですか』と言いました。すると主は言われました,『わたしはイエス,あなたが迫害している者です+。16 しかし,起きて,自分の足で立ちなさい+。あなたが見た事柄,そしてわたしが自分に関してあなたに見させる事柄のために仕える者またその証人としてあなたを選ぶため+,このためにわたしは自分をあなたに示したからです。17 わたしはあなたを[この]民から,また諸国民から救い出しますが,同時に彼らのもとにあなたを遣わして+,18 彼らの目を開けさせ+,彼らを闇+から光+に,サタンの権威+から神に転じさせます。それは,彼らが罪の許し+と,わたしに対する信仰によって神聖にされた者たち+の間にある相続財産+とを受けるためです』。
19 「そのために,アグリッパ王よ,わたしは天からのこの光景に背かず+,20 まずダマスカスの者たちに+,またエルサレムの者たちにも+,さらにはユダヤ地方全域に,そして諸国民にも+,悔い改め,かつ悔い改め*にふさわしい業をして+神に転ずるようにとの音信を伝えてまわりました。21 こうした事のために,ユダヤ人たちはわたしを神殿で捕らえ,そして殺そうと企てました+。22 しかしながら,わたしは神からの助け+を得てきましたので,この日に至るまで,小なる者にも大なる者にも証しを続けています。しかし,預言者たち+,そしてまたモーセ+が,起こるであろうと述べた事柄以外には,何も語っておりません。23 すなわち,キリストが苦しみを受け+,また死人の中から復活させられる+最初の者*として,この民にも諸国民+にも光+を広めるであろうということです」。
24 さて,彼がこれらのことを自分の弁明のために語っていると,フェストが大声で言った,「パウロ,あなたは気が狂っている+! 博学があなたを狂気させているのだ!」25 しかしパウロは言った,「わたしは気が狂っているのではありません,フェスト閣下,真実の,そして正気のことばを述べているのです。26 実際,わたしがはばかりのないことばでお話し申し上げております王が,これらの事についてよく知っておられます。これらは一つとして[王]の注目を逃れ得ないと,わたしは確信しているからです。これは片隅で行なわれてきたことではないからです+。27 アグリッパ王,預言者たちを信じておられますか。信じておられることを知っております+」。28 しかしアグリッパはパウロに言った,「あなたはわずかの間に,わたしを説得してクリスチャン*にならせようとしている」。29 それに対してパウロは言った,「わずかの間であろうと長くかかろうと,わたしは,あなただけでなく,今日わたし[のことば]を聞いておられるすべての方が,こうしたなわめは別として,わたしのような者になってくださればと神に願いたいほどなのです」。
30 それから,王は立ち上がり,総督とベルニケ,またそれと一緒に座っていた人々も[立ち上がった]。31 しかし引き上げて行く際,彼らは互いに語り合い,「この人は,死やなわめに価するようなことは何もしていない+」と言うのであった。32 また,アグリッパはフェストに,「カエサル*に上訴していなければ+,この人は釈放されただろうに」と言った。
27 さて,わたしたちがイタリアに向けて出帆することに決まると+,彼らは次に,パウロとほかの幾人かの囚人を,ユリウスという名の,アウグスツスの部隊の士官*に引き渡した。2 わたしたちは,アドラミティオンから来て,アジア[地区]の沿岸ぞいに各地を航行する予定の船に乗って出帆したが,テサロニケのマケドニア人アリスタルコ+もわたしたちと一緒であった。3 そして次の日,わたしたちはシドンに上陸したが,ユリウスはパウロを人間味のある親切さをもって*扱い+,自分の友人たちのところに行って世話を受けることを彼に許可した+。
4 次いでそこから船出したが,向かい風だったので,キプロス[の島陰]を帆走した。5 それから,キリキアとパンフリアに沿って大海を航海し,ルキアのミラに入港した。6 しかし,そこで士官は,イタリアに向けて航行中のアレクサンドリアの船*+を見つけ,わたしたちをそれに乗せた。7 それから,何日もの間ゆっくりと帆走を続け,やっとのことでクニドスに着いたが,風のためにそれ以上進めなかったので,わたしたちはサルモネのところでクレタ[の島陰]を帆走し,8 やっとのことでその沿岸を進んで,“良い港”と呼ばれる所に着いた。その近くにラセア市があった。
9 かなりの時が経過していたし,すでに[贖罪+の日の]断食も*過ぎて,もう航海することが危険になっていたので,パウロは勧告して 10 こう言った。「皆さん,わたしは,今からの航海が,積み荷や船だけでなく,わたしたちの魂*にとっても危害や大きな損失を伴うものと見ています+」。11 しかしながら,士官は,パウロの述べることより,水先人や船主[のことば]に従うのであった。12 ところで,その港は冬を過ごすのに不便でもあったので,大多数の者は,そこから出帆し,北東と南東に面した*クレタの港フォイニクスにまで進み,そこで冬を過ごせるかどうか,何とかやってみるようにと忠告した。
13 そのうえ,南風が穏やかに吹いてきたので,彼らは目的を達したも同然と考え,錨を上げてクレタの海岸沿いに進みはじめた。14 ところが,それほどたたないうちに,ユーラクロン*と呼ばれる大暴風+が激しい勢いでそこに吹き下ろしてきた。15 船は激しくあおられて船首を風に向けておくことができなくなり,わたしたちは逆らうのをやめて流れるに任せた。16 やがてカウダという小さな島[の陰]を通ったが,それでも船尾に小舟+をつなぎ留めるのがやっとであった。17 しかし,それを船上に揚げたのち,彼らは補助用具を使って船[体]を縛りはじめた。それから,スルテス*[の砂州]に乗り上げるのを恐れて索具類を降ろし,こうしてただ吹き流されるままとなった。18 それでもなお,わたしたちは大あらしに激しくもまれていたので,明くる[日],彼らは船[荷]を軽くしはじめた+。19 そして三[日]目には,手ずから船の装具を投げ捨てた。
20 さて,幾日ものあいだ太陽も星も現われず,容易ならぬあらし+がずっと吹き荒れていたので,わたしたちが救われる望みはついにことごとく断たれるようになった。21 そして,食物を取らないことが長く続いたあと,パウロは彼らの真ん中に立って+,こう言った。「皆さん,ほんとうにあなた方は,わたしの忠告をいれてクレタから船出せず,こうした危害や損失を被らないようにするべきでした+。22 でも,わたしは今,元気を出すようあなた方に勧めます。あなた方のうちひとつの魂*も失われず,ただ船が[失われる]だけだからです。23 というのは,この夜,わたしが属し,わたしが神聖な奉仕をささげている*神+のみ使い+がわたしの近くに立ち,24 『パウロよ,恐れることはない。あなたはカエサルの前に立たねばならない+。そして,見よ,神は,あなたと共に航行している者を皆あなたに賜わった』と言いました。25 ですから,皆さん,元気を出してください。まさに自分に告げられたとおりになると,わたしは神を信じているのです+。26 それでも,わたしたちはどこかの島+に打ち上げられることになるでしょう」。
27 さて,十四日目の夜になり,わたしたちがアドリア[の海*]をあちらこちらともまれていると,その真夜中に水夫たちは,どこかの陸地に近づいていると感づくようになった。28 そこで彼らが深さを測ってみると,二十ひろ*であった。それから少し進んでもう一度測ったところ,そこは十五ひろであった。29 それで,どこか岩場に乗り上げてしまうことを恐れて,船尾から四つの錨を投じ,夜が明けるのを待ち望んだ。30 ところが,水夫たちが船から逃げ出そうとし,へさきから錨を下ろすかのように見せかけて小舟を海に降ろした時,31 パウロは士官と兵士たちに言った,「あの人たちが船にとどまっていなければ,あなた方は助かりません+」。32 そこで兵士たちは綱を断ち切って小舟+をそのまま下に落とした。
33 さて,明けがた近くになった時,パウロはみんなに何か食べることを勧めてこう言った。「あなた方はずっと待ち構えて今日で十四日目ですが,その間食事もせず,自分のために何も食べていません。34 ですからわたしは,何か食べるように勧めます。これはあなた方の安全のためです。あなた方はだれも,その髪の毛一本さえ+滅びることはないのです」。35 こう言ってから,彼はパンを取り,みんなの前で神に感謝をささげ+,それを割いて食べ始めた。36 それでみんなは元気づき,自分たちも食べだした。37 ところで,わたしたち船の中にいた魂*は,全部で二百七十六*人であった。38 食べて満ち足りると,彼らは次に,小麦を海に投げ込んで船を軽くした+。
39 ようやく夜が明けた時,彼らはその陸がどこであるかは分からなかったが,浜辺のある湾を認め,できればその浜辺に船を乗り入れることにした+。40 それで,彼らは錨を断ち切って海中に落とし,同時に[二丁の]舵ろの留め綱を解き,風に前帆を揚げてから,その浜辺を目ざして進んだ。41 どの側も海に洗われる浅瀬に行き当たった時,彼らは船をそこに乗り上げてしまい,へさきはめり込んで動かなくなり,船尾は激しい勢いで崩れはじめた+。42 そこで兵士たちは,囚人を殺して,だれも泳いで逃げることがないようにしようと決意した。43 しかし士官は,パウロを何とか無事に切り抜けさせたいと思い,その考えを思いとどまらせた。そして,泳げる者には,海に飛び込んで先に陸に向かうように,44 また残りの者にも,厚板や船の何かにつかまって[陸に向かう]ようにと命令した。こうして,全員が無事に陸にたどり着いたのである+。
28 そして,無事に渡り着いてから,わたしたちは,それがマルタ*という島+であることを知った。2 そして,外国語を話す人たち*が,人間味のある親切*を一方ならず示してくれた+。というのは,雨が降っていたし,また寒くもあったので+,彼らは火をたいてわたしたちみんなを迎え,何かと助けてくれたからである。3 しかし,パウロがひとかかえのそだを集めて火の上に置いたところ,熱気のために一匹のまむしが出て来て,彼の手に取りついた。4 その毒獣が彼の手からぶら下がっているのを見て,外国語を話す人々は互いに言いだした,「きっとこの男は人殺しだ。海からは無事に助かったものの,正義の懲罰が彼をそのまま生かしてはおかなかったのだ」。5 ところが,彼はその毒獣を火の中に振り払い,何の害も受けなかった+。6 しかし人々は,彼が炎症を起こして膨れ上がるか,あるいは急に倒れて死ぬだろうと思って待っていた。長いあいだ待っても何の害も生じないのを見て,彼らは考えを変え,この人は神だと言いだした+。
7 さて,その場所の近くに,島の主立った人で,ポプリオという名の者が土地を持っていた。そして彼はわたしたちを手厚く迎え,三日にわたってねんごろにもてなしてくれた。8 しかし,たまたまポプリオの父が,熱と赤痢に苦しんで寝ていた。そこでパウロは彼のもとに行って祈り,手をその上に置いて+彼をいやした+。9 この事があってから,島のほかの人々で[いろいろな]病気を持つ者が[パウロ]のところに来て治してもらうようになった+。10 また彼らはたくさんの贈り物でわたしたちに敬意を表わし,わたしたちが出帆する際には,必要な物をいろいろと持たせてくれた。
11 三か月後,わたしたちは,この島で冬を過ごしていた,「ゼウスの子ら*」の船首像のついたアレクサンドリアの船+で出帆した。12 そして,シラクサに入港して三日とどまった後,13 そこからずっと回ってレギウムに着いた。そして一日後に南風が出たので,二日目にはうまくポテオリ*に入った。14 ここでわたしたちは兄弟たちに会ったが,彼らはそのもとに七日とどまるようにと懇願するのであった。こうして,わたしたちはローマに向かって進んだ。15 するとそこから,兄弟たちがわたしたちについての知らせを聞いて,“アピウスの市場*”および“三軒宿*”までわたしたちを出迎えに来てくれた。パウロは彼らを見て神に感謝し,また勇気づけられた+。16 わたしたちがついにローマに入った時,パウロは兵士の監視のもとに独りで滞在することを許可された+。
17 しかし三日後,彼はユダヤ人の主立った人々を呼び集めた。彼らが集まってから,[パウロ]はこう言った。「皆さん,兄弟たち,わたしは,民や,わたしたちの父祖の習慣に反するようなことは何も行なわなかったにもかかわらず+,囚人としてエルサレムからローマ人の手に引き渡されました+。18 そして彼らは,取り調べをしたのち+,わたしを釈放しようと望んでいました+。わたしには何ら死に値することがなかったからです+。19 ところが,ユダヤ人たちがそれに反対しつづけるので,わたしはカエサル*に上訴せざるをえませんでした+。しかし,何か自分の国民を訴えることがあるというのではありません。20 実にこのようなわけで,わたしは,皆さんに会ってお話しすることを切にお願いしたのです。イスラエルの希望+のゆえに,わたしはこうして鎖を帯びているからです+」。21 彼らは[パウロ]に言った,「わたしたちはあなたについてユダヤから手紙を受け取ってもいませんし,[ここに]着いた兄弟たちのだれかが,あなたについて何かひどく悪いことを報告したり話したりしているわけでもありません。22 しかしわたしたちは,あなたの考えがどういうものか,あなたから聞くのがよいと思います。実際この派+について,いたるところで反対が唱えられている+ことは,わたしたちの知るところだからです」。
23 そこで彼らは[パウロ]と日を取り決め,さらに大勢で彼の宿所にやって来た。それで彼は,神の王国について徹底的な証しをしたり+,モーセ+の律法と預言者たち+の両面からイエスについて彼らを説得したりして,朝から晩まで事実を説明した。24 すると,ある者は話されたことを信じるようになったが+,ある者は信じようとしなかった+。25 そのため,彼らは互いに意見が合わないので立ち去りはじめ,一方パウロは一言こう述べた。
「聖霊は預言者イザヤを通してあなた方の父祖たちに適切に語ったものです。26 こう述べました。『この民のところに行って言いなさい,「あなた方は聞くには聞くが,決して理解せず,見るには見るが,決して見えないであろう+。27 この民の心は受け入れる力がなくなり*,彼らは耳で聞いたが反応がなく,その目を閉じてしまったからである。これは,彼らが自分の目で見,自分の耳で聞き,自分の心で理解して立ち返り,わたしが彼らをいやす,ということが決してないためである+」』。28 ですから,次のことを知っておいてください。この,神の救いの手だて*は諸国民のもとに送り出されたのです+。彼らはきっとそれに聴き従います+」。29* ――
30 こうして彼は,自分の借りた家にまる二年とどまり+,そのもとに来る人をみな親切に迎え,31 妨げられることなく,全くはばかりのないことばで+人々に神の王国を宣べ伝え*,また主イエス・キリストに関することを教えるのであった。
字義,「権威」。ギ語,エクスーシアーイ。
「時期」。または,「定められた時」。ギ語,カイルース。
「証人」(複)。ギ語,マルテュレス; ラ語,テステース。
または,「輝く」。
字義,「天」。ギ語,ウーラノン; ラ語,カエルム; エ17(ヘ語),ハッシャーマーエマー,「天の方へ」。
ヨシュ 3:4に基づくラビの資料によると,これは約2,000キュビト(890㍍)であった。
「熱心な者」。ルカ 6:15の脚注参照。
または,「その人々の数は」。
「まっさかさまに落ちて」。または,「膨れ上がって」。
「監督の職」。ギ語,エピスコペーン; エ17,18(ヘ語),ウーフェクッダートー(パーカドの変化形)。王二 11:18の脚注参照。
または,「わたしたちの間でご自分の活動を行なわれた」。
付録1ニ参照。
または,「転向者」。
すなわち,午前9時ごろ。日の出から数える。
または,「活動する力」。ギ語,プネウマトス; ラ語,スピーリトゥー; エ17,18,22(ヘ語),ルーヒー,「わたしの霊」。創 1:2,「力」の脚注参照。
または,「すべての肉なる者の上に」。ギ語,エピ パーサン サルカ; ラ語,カルネム; エ17,18,22(ヘ語),バーサール。
または,「長老たち」。ギ語,プレスビュテロイ。
付録1ニ参照。
付録1ニ参照。
付録1ニ参照。
「ハデス」,シナ写,アレ写,バチ写; エ7,8,11-18,22,「シェオル」。付録4ロ参照。
「その腰の実の一人」。または,「その子孫の一人を」。
「神」,シナ写,アレ写,バチ写; エ7,8,10,「エホバ」。
または,「右手によって」。
付録1ニ参照。
または,「杭(柱)に留めた」。付録5ハ参照。
付録1ニ参照。
または,「教えと,共に交わること」。
字義,「パンを割くこと」。
「個人の家々で」。または,「家から家で」。ギ語,カト オイコン。5:42,「家へと」の脚注参照。
付録1ニ参照。
すなわち,午後3時ごろ。日の出から数える。
「時期」。または,「定められた時」。ギ語,カイロイ。
付録1ニ参照。
「みもとから」。字義,「顔から」。
または,「時まで,受け止めなければ」。
または,「聴き従わないすべての魂は」。
または,「子孫」。
字義,「さて,彼らが」。
または,「長老たち」。ギ語,トゥース プレスビュテルース。
または,「救われたか」。
または,「杭(柱)に留めた」。付録5ハ参照。
または,「この名において」。
「主権者なる主」。ギ語,デスポタ; ラ語,ドミネ; エ17,18(ヘ語),アドーナーイ。付録1ホ参照。
付録1ニ参照。
または,「そのキリスト」。
または,「あなたがキリストとされた」。ギ語,エクリサス。
付録1ニ参照。
付録1ニ参照。
字義,「エクレシア」。ギ語,エックレーシアン; ラ語,エックレーシアー; エ17,18(ヘ語),ハッカーハール,「会衆」。
付録1ニ参照。
「年長者会」。または,「元老院」。
または,「木」。ギ語,クシュルー; エ22(ヘ語),エーツ。2:36の脚注参照。
字義,「家ごとに」。ギ語,カト オイコン。ここで「カタ」は対格単数形を伴い,配分的な意味で用いられている。R・C・H・レンスキは自著,「使徒行伝の注釈」(米国,ミネアポリス,1961年)の中で,使徒 5:42に関して次の注解を加えている;「使徒たちは一瞬といえ,その祝福された業をやめることはなかった。彼らは『毎日』それを行ない,しかもそれを,サンヘドリンや神殿警察が見聞きできる『神殿で』公然と,そして言うまでもなく,κατ’ οἴκον[カト オイコン]にも行なった。これは配分的な,『家から家へ』の意味であって,単に副詞的な,『家で』の意味ではない」。
または,「福音(良いおとずれ)を宣明し」。ギ語,エウアンゲリゾメノイ; ラ語,エーウァンゲリーザーンテース,「福音を宣明し」。
「ヘブライ語を話すユダヤ人」。字義,「ヘブライ人たち」。ギ語,トゥース エブライウース; ラ語,ヘブラエオース。
「ギリシャ語を話すユダヤ人」。字義,「ヘレニストたち」。ギ語,トーン ヘッレーニストーン; ラ語,グラエコールム。
「分配の面で」。または,「奉仕の面で」。ギ語,エン テーイ ディアコニアーイ; ラ語,イン ミニステリオー。
「分配すること」。または,「奉仕していること」。ギ語,ディアコネイン; ラ語,ミニストラーレ。
字義,「解放奴隷<リベルテン>たち」。アル訳,「リビア人たち」。
「年長者」。または,「長老」。ギ語,プレスビュテルース(複)。
字義,「彼」。2節の「栄光の神」を指す。
または,「子孫; 後裔」。
「神聖な奉仕をささげるであろう」。ギ語,ラトレウスーシン; エ17,18,22(ヘ語),ウェヤアヴドゥーニー,「そして彼らは……わたしに仕える(を崇拝する)であろう」。出 3:12の脚注参照。
「エジプトへ」。バチ写は省いている。
「シェケム」,シリ訳ヘ,エ17,18,22; シナ写,アレ写,バチ写,「シュケム」。
字義,「ヘモル」。
「民族」。ギ語,ゲノス; マタ 24:34などの「世代」を意味するゲネアとは異なる。
「こうごうしいまでに美しい」。または,「極めて美しい」。字義,「神に美しい」。ギ語,アステイオス トーイ テオーイ。ヨナ 3:3,「大きな」の脚注と比較。
「み使い」,パピ写74,シナ写,アレ写,バチ写,エフ写,ウル訳; ベザ写,シリ訳ペ,「主のみ使い」,エ7,8,10-17,「エホバのみ使い」。
付録1ニ参照。
付録1ニ参照。
または,「また請け戻す者」。ギ語,カイ リュトローテーン; ラ語,エト レデンプトーレム; エ17(ヘ語),ウェゴーエール。
「神」,シナ写,アレ写,バチ写,ウル訳; エフ写,シリ訳ペ,「主なる神」; エ7,8,10-17,「あなた方の神エホバ」。
ギ語,バビュローノス; エ17,18,22(ヘ語),レヴァーヴェル,「バベルのかなたに」。
または,「証の幕屋」。
「ひな型」。または,「型」。ギ語,テュポン。
「エホシュア」,エ17,18,22; シナ写,アレ写,バチ写,「イエス」。
または,「見いだす」。
または,「造られた物; 造られた所」。
付録1ニ参照。
または,「うなじのこわい」。
字義,「み使いたちの伝達物としての律法」。エ17,「使者なるみ使いたちの手による律法」; ラ語,レーゲム イン ディスポシティオーネム アンゲロールム,「み使いたちの配列による律法」。代二 23:18でウル訳は「の手による」を訳すのにディスポシティオーネムを用いている。
または,「歯がみしはじめた; 歯を食いしばりはじめた」。
または,「そして,呼びかけ(祈り)ながら」。
付録1ニ参照。
「エホバ」,エ18,22,23; ギ語,トゥー キュリウー; ウル訳,シリ訳ペ,「神」。付録1ニ参照。
「ほだしの中にある」,ベザ写*,ウル訳。
「エホバ」,エ7,8,10,13,15-18,22,23; シナ写,アレ写,バチ写(ギ語),トン キュリオン; ベザ写,ウル訳諸写,シリ訳ヘ,ペ,「神」。付録1ニ参照。
「エホバの」,エ7,8,10,17,18; シナ写,バチ写,エフ写,ベザ写(ギ語),トゥー キュリウー; パピ写74,アレ写,シリ訳ペ,「神の」。付録1ニ参照。
付録1ニ参照。
または,「彼の生き方」。
パピ写45,74,シナ写,アレ写,バチ写,エフ写,ウル訳,シリ訳ペは37節を省いている; 古ラ訳,ウル訳ク,アル訳,「フィリポは彼に言った,『あなたが心をこめて信じているなら,それは許されます』。それに答えて彼は言った,『わたしは,イエス・キリストが神の子であることを信じています』」。
付録1ニ参照。
「アシュドド」,エ17,18,22; シナ写,アレ写,バチ写,「アゾト」。
「この道」。ギ語,テース ホドゥー。
「幻の中で」,バチ写,エフ写,シリ訳ヘ,ペ,アル訳; パピ写74,シナ写,アレ写,ウル訳は省いている。
または,「あなたの聖徒たち」。
または,「エルサレムで日常の生活を続け」。
「ギリシャ語を話すユダヤ人たち」。字義,「ヘレニストたち」。エ17,「ギリシャ化したユダヤ人たち」。
付録1ニ参照。
または,「ルダに住む聖徒たち」。
「シャロン」,エ17,18,22; シナ写,アレ写,バチ写,「サロン」。
「ドルカス」(ギ語)は「タビタ」(ア語)に相当する; どちらも「ガゼル」を意味する。
または,「遅れずに」。
36節の脚注参照。
「士官」。または,「百人隊長」。100人の兵士を指揮した。
すなわち,午後3時ごろ。日の出から数える。
すなわち,昼の12時ごろ。日の出から数える。
または,「犠牲にして」。
「三人」,パピ写74,シナ写,アレ写,エフ写,ウル訳,シリ訳ペ; バチ写,「二人」。
「神の指示を受けました」,シナ写,アレ写,バチ写; エ18,「エホバの命令を受けました」。
3節の脚注参照。
「エホバ」,エ17,18,23; パピ写45,シナ写,アレ写,バチ写,エフ写(ギ語),トゥー キュリウー; パピ写74,ベザ写,シリ訳ペ,「神」。付録1ニ参照。
または,「木」。付録5ハ参照。
「ギリシャ語を話す人々」。字義,「ヘレニストたち」。アレ写,ベザ写*,「ギリシャ人たち」。
付録1ニ参照。
「クリスチャン」(複)。ギ語,クリスティアヌース; ラ語,クリスティアーニー; エ17,18,22(ヘ語),メシーヒーイーム,「メシア信奉者たち」。
または,「名づけられた」。
または,「長老たち」。ギ語,プレスビュテルース。
すなわち,ヘロデ・アグリッパ一世。
付録1ニ参照。
付録1ニ参照。
付録1ニ参照。
または,「のところに現われ出て来て」。字義,「の傍らにいて」。
付録1ニ参照。
「エホバの」,エ7,8,10,23; バチ写(ギ語),トゥー キュリウー; パピ写74,シナ写,アレ写,ベザ写,シリ訳ペ,「神の」。付録1ニ参照。
字義,「四分領太守」,皇帝の代理をする地域君主。
付録1ニ参照。
ローマ元老院の代理である属州総督。
「小さい」という意味であろう。ギ語,パウロス。
付録1ニ参照。
付録1ニ参照。
付録1ニ参照。
「およそ四百五十年間のことです。そして,こうした事の後」,パピ写74,シナ写,アレ写,バチ写,エフ写,ウル訳。
「あなた方はわたしを……その者ではありません」。または,「あなた方がわたしについて想像しているもの,わたしはそれではありません」。
または,「木」。付録5ハ参照。
「彼らの子供であるわたしたちに」,シリ訳ペ; パピ写74,シナ写,アレ写,バチ写,エフ写*,ベザ写,ウル訳,「わたしたちの子供たちに」。
「神を崇拝する(恐れる)」,シリ訳ペ; エ18,「エホバを恐れる」。
「エホバの」,エ17,22; パピ写74,シナ写,アレ写,バチ写c(ギ語),トゥー キュリウー; バチ写*,エフ写,シリ訳ヘ,ペ,「神の」。付録1ニ参照。
付録1ニ参照。
「果て」。または,「最も遠い所」。ギ語,エスカトゥー。1:8,「所」の脚注参照。
「エホバの」,エ7,8,10,13,15-17,22,23; パピ写45,74,シナ写,アレ写,エフ写(ギ語),トゥー キュリウー; バチ写,ベザ写,「神の」。付録1ニ参照。
付録1ニ参照。
「神を崇拝する(恐れる)」,シリ訳ペ; エ7,8,10,18,「エホバを恐れる」。
付録1ニ参照。
または,「救われる」。
または,「ジュピター」。ギ語,ディア; ラ語,イオウェム。
または,「マーキュリー」。ギ語,ヘルメーン; ラ語,メルクリウム。
字義,「市の前にいる者である」。
字義,「年長者たちを[差し伸べた手によって]任命しており」。
付録1ニ参照。
「み言葉」,バチ写,ベザ写; シナ写,アレ写,エフ写,ウル訳,シリ訳ペ,「主の言葉」; パピ写74,「神の言葉」; エ17,「エホバの言葉」。
または,「信仰の」。
または,「長老たち」。ギ語,プレスビュテルース; エ17,18,22(ヘ語),ウェハッゼケーニーム,「そして年長者たち」。民 11:25,「年長者」の脚注参照。
字義,「向き直り」。ギ語,エピストロフェーン; ラ語,コンウェルシオーネム。
シモン(ペテロ)という名のヘブライ語形。マタ 10:2の脚注参照。
または,「ダビデの天幕」。
または,「わたしの名が唱えられてきた」。
付録1ニ参照。
または,「昔からこれらの事を知らせてこられた」。
付録1ニ参照。
「淫行」。ギ語,ポルネイアス; ラ語,フォルニカーティオーネ。付録5イ参照。
または,「血を流し出させずに殺したもの」。
「血」。ギ語,ハイマトス; ラ語,サングウィネ; エ17,18,22(ヘ語),ウーミン・ハッダーム,「そして血から」。
字義,「避けている」。ギ語,アペケスタイ; ラ語,アブスティネアント。
字義,「元のもろもろの世代から」。
2節の脚注参照。
字義,「同じ思いに」。ギ語,ホモテュマドン; ラ語,イン ウーヌム,「一致して」。
または,「命」。ギ語,プシュカス; ラ語,アニマース; エ17,18,22(ヘ語),ナフシャーム,「自分の(彼らの)魂」。
20節,「絞め殺されたもの」の脚注参照。
付録5イ参照。
または,「ごきげんよう」。エ22(ヘ語),シャーローム ラーケム,「あなた方に平安がありますように」。
パピ写74,シナ写,アレ写,バチ写は34節を省いている; エフ写,ベザ写,ウル訳クは,多少の差異はあるが,次のような文を付け加えている。「しかし,シラスにとっては,そこにさらにとどまるのが良いと思えた。一方ユダは一人でエルサレムに出発した」。
「エホバの」,エ17,18,22,23; ギ語,トゥー キュリウー; シリ訳ペ,「神の」。付録1ニ参照。
「エホバの」,エ7,8,10,17,18,22,23; ギ語,トゥー キュリウー; シリ訳ペ,「神の」。付録1ニ参照。
「エホバの」,エ17,18,22; ギ語,トゥー キュリウー; ウル訳ク,シ,シリ訳ペ,「神の」。付録1ニ参照。
または,「長老たち」。15:2の脚注参照。
または,「そしてアジア[地区]で……禁じられた」。
「良いたよりを宣明する」。ギ語,エウアンゲリサスタイ; ラ語,エーウァンゲリザーレ。
付録1ニ参照。
「エホバに」,エ7,8,10; シナ写,アレ写,バチ写(ギ語),トーイ キュリオーイ; ベザ写,「神に」。付録1ニ参照。
「霊,つまり占いの悪霊につかれた」。字義,「ピュトンの霊につかれた」。ギ語,エクーサン プネウマ ピュトーナ。
「市の立つ広場」。または,「大広場」。ギ語,アゴラン; ラ語,フォルム。人々が公に集まる場所。
「エホバの」,エ7,8,10,17,18,22,23; パピ写45,74,シナ写c,アレ写,エフ写(ギ語),トゥー キュリウー; シナ写*,バチ写,「神の」。付録1ニ参照。
「市の支配者たち」。字義,「都市支配者たち」。ギ語,ポリタルカス。市民の統治者たち。
または,「皇帝の」。ギ語,カイサロス。
または,「十分な保釈金」。ラ語,サティス,「十分な」。
「おしゃべり」。字義,「種をついばむ者」。
「神々」。字義,「悪霊たち」。ギ語,ダイモニオーン。
または,「アレスの丘; マルスの丘」。ギ語,アレイオン パゴン; ラ語,アリーオパグム。
「以上に神々への恐れの念を厚く抱いて」。字義,「いっそう悪霊を怖れて」。ギ語,デイシダイモネステルース; ラ語,スペルスティティオーシオーレース。ギリシャ人はディーモン(悪霊)を神々とみなし,その中には善い神と悪い神がいると考えた。25:19の脚注と比較。
または,「神の住まい(住居)」。ギ語,ナオイス; エ17,22(ヘ語),ベヘーカーロート,「宮殿(神殿)(複)に」。
または,「にあって」。
「ある者たち」,すなわち,アラトスとクレアンテス。パウロの引用はアラトスの「ファイノメナ」,およびクレアンテスの「ゼウス賛歌」から。
「神たる者」。ギ語,テイオン,「神」を意味するテオスと関連のある語; ラ語,ディーウィーヌム。
「人の住む地」。字義,「住まれている(ところ)」。ギ語,オイクーメネーン,女性単数形。地を指す; ラ語,オルベム,「円」,すなわち,地の。イザ 13:11,「地」の脚注参照。
または,「信仰」。
または,「アレオパゴスの一員であるデオヌシオ」。
「ギリシャ人」。ギ語,ヘッレーナス。
ギリシャ南部のローマ属州で,その首府はコリント。
ローマ元老院の代理である属州総督。
東の各地へのコリントの海港。
付録1ニ参照。
エルサレムへ行ったことを指すと思われる。
付録1ニ参照。
字義,「その」(冠詞)。
ベザ写と古ラ訳諸写は「第五時から第十時まで」を付け加えている。すなわち,午前11時ごろから午後4時ごろまで。
字義,「[彼らを]どちらも」。
「エホバの」,エ7,8,10,13,15-18,23; ギ語,トゥー キュリウー; ウル訳,シリ訳ペ,「神の」。付録1ニ参照。
「この道」,シナ写,アレ写,バチ写; ウル訳ク,「主の道」; シリ訳ペ,「神の道」; エ17,18,「エホバの道」。
または,「ディアナ」。ギ語,アルテミドス; ラ語,ディアーナエ。
「宮」。または,「神の住まい(住居)」。ギ語,ナウース; エ17(ヘ語),ヘーケロート,「宮殿; 神殿」(複)。
「祝祭や競技会の委員」。字義,「アジア[州]の長たち」。
「天から降ってきた」。字義,「ゼウス(ジュピター)から降った」。
または,「決められるであろう」。
字義,「パンを割く」。
または,「命」。付録4イ参照。
字義,「パンを割いてから」。
「年長者たち」。または,「長老たち」。ギ語,プレスビュテルース。
「家から家にも」。または,「個人の家々でも」。字義,「また家ごとに」。ギ語,カト オイクース。ここで「カタ」は対格複数形を伴い,配分的な意味で用いられている。5:42,「家へと」の脚注と比較。
または,「命」。
「王国」,シナ写,アレ写,バチ写; ウル訳,シリ訳ペ,「神の王国」; エ17,「エホバの王国」。
「宣べ伝えて」。または,「布告して」。ギ語,ケーリュッソーン; ラ語,プラエディカーンス。ダニ 5:29,「布告した」の脚注と比較。
「ご自身の[み子]の血」については,付録6ハ参照。
「神」,シナ写,バチ写,ウル訳; アレ写,ベザ写,「主」。
「監督」。ギ語,エピスコプース(複); エ17(ヘ語),リフキーディーム,「監督たちとして」。ネヘ 11:9の脚注参照。
「神」,シナ写,アレ写,ベザ写,ウル訳,シリ訳ペ,エ8,17,18,22; バチ写,「主」。
「福音宣明者」。または,「宣教者」。ギ語,エウアンゲリストゥー; ラ語,エーウァンゲリスタエ。
付録1ニ参照。
または,「長老たち」。
または,「そこに来た」。
「背教」。ギ語,アポスタシアン(「離れて立つ」という動詞アフィステーミから派生)。この名詞には遺棄,放棄,もしくは反逆という意味がある。ヨシュ 22:22; 代二 29:19; テサ二 2:3参照。
「絞め殺されたもの」。または,「血を流し出させずに殺したもの」。
「使いの者を送って」,バチ写,ベザ写; パピ写74,シナ写,アレ写,ウル訳,「書き送って」。
「司令官」。字義,「千人隊長」。1,000人の兵士の指揮官。
字義,「百人隊長」。100人の兵士を指揮する士官。
または,「彼を殺してしまえ」。
「短剣[を持った]」。字義,「刺客[の]; 暗殺者[の]」。ギ語,シカリオーン。
または,「長老会; 長老団」。ギ語,プレスビュテリオン。
または,「聞き分けませんでした」,7節のパウロのようには。
または,「どうしなければならない」。
または,「兄弟よ,見上げなさい」。
または,「バプテスマを受け,あなたの罪を洗い去り,その名を呼び求めなさい」。
「わたしはこうこつとした状態になり」,シナ写,アレ写,バチ写; エ13,14,17,22,「エホバのみ手がわたしの上に臨み」; エ18,「エホバの霊が衣のようにわたしを包み」。
字義,「千人隊長」。1,000人の兵士の指揮官。
または,「しかし,革ひもで[兵士]たちが彼[の手足]を伸ばした」。
字義,「百人隊長」。100人の兵士の指揮官。
または,「わたしはこの市民権を」。
字義,「それら両方」。
または,「長老たち」。ギ語,プレスビュテロイス。
すなわち,午後9時ごろ。日没から数える。
「彼らのサンヘドリンにこの者を連れて行きました」,パピ写74,シナ写,アレ写,ウル訳,シリ訳ペ; バチ写*は省いている。
または,「長老」。
「一派」。ギ語,ハイレセオース; ラ語,セクタエ。
または,「主な指導者」。
パピ写74,シナ写,アレ写,バチ写,ウル訳は6-8節から以下の部分を省いているが,それは,ウル訳ク,シリ訳ヘ,ペ,アル訳によると次のとおり:「そして,わたしどもの律法にしたがって裁こうといたしました。(7)しかし,軍司令官ルシアスが上って来て,大いなる力で彼をわたしどもの手から奪い,(8)彼を訴える者たちはあなたのもとに来るように,と命じました」。
「わたしは……神聖な奉仕をささげている」。ギ語,ラトレウオー; エ17,18(ヘ語),アニー オーヴェード,「わたしは……仕えて(崇拝して)いる」。出 3:12の脚注参照。
「復活」。ギ語,アナスタシン,「起き上がらせること; 立ち上がること」(「上へ」を意味するアナと「立つこと」を意味するスタシスから); ラ語,レスッレクティオーネム。
字義,「千人隊長」。1,000人の兵士の指揮官。
字義,「百人隊長」。100人の兵士の指揮官。
すなわち,ユダヤ州。カエサレアが総督の居住地となっていた。
または,「皇帝」。
すなわち,ヘロデ・アグリッパ二世。
ヘロデ・アグリッパ二世の姉妹。しかし彼と共に住んでおり,近親相姦の関係にあった。
または,「長老たち」。ギ語,プレスビュテロイ。
「神に対する……崇拝」。字義,「悪霊たちへの怖れ」。ギ語,デイシダイモニアス; ラ語,スペルスティティオーネ; エ17,18,「自分たちの神に対する奉仕」。17:22の脚注参照。
または,「アウグスツス; 皇帝」。ギ語,セバストゥー; ラ語,アウグスティー。最初にこの称号を保持したオクタウィアヌスから四代目に当たるネロ・カエサルの称号。
字義,「千人隊長」。
または,「わたしたちの宗教のうちの……派」。ラ語,セクタム ノストラエ レリギオーニス。
字義,「神聖な奉仕を……ささげて」。エ13-17,「エホバに仕えて(を崇拝して)」。
「票」。字義,「[投票用の]小石」。ギ語,プセーフォン。啓 2:17,「小石」の脚注参照。
字義,「思いの変化」。ギ語,メタノイアス。
「復活させられる最初の者」。字義,「復活からの最初」。
「クリスチャン」。ギ語,クリスティアノン; ラ語,クリスティアーヌム。
または,「皇帝」。
「士官」。または,「百人隊長」。100人の兵士の司令官。
字義,「人間的な愛情をもって」。ギ語,フィラントローポース。
穀物船。
または,「すでに[秋の]断食も」。
または,「命」。
「北東と南東に面した」。または,「南西の風,および北西の風にそって見る」。
「ユーラクロン」。ギ語,エウラキュローン; ラ語,エウロアクウィロ; 北東の風。
北アフリカ,リビア沿岸にある移動性の砂洲に満ちた,二つの広くて浅い湾。
または,「命」。
「わたしが神聖な奉仕をささげている」。ギ語,ラトレウオー; エ17(ヘ語),アニー オーヴェード,「わたしが仕える(崇拝する)」。出 3:12の脚注参照。
当時は,今日のアドリア海,イオニア海,そして,地中海のシチリア島とクレタ島の間の部分を含んでいた。
「ひろ」。ギ語,オルギュイアス。一ひろは一般に4キュビト(約1.8㍍)とみなされている。
または,「人」。
「二百七十六」,シナ写,古ラ訳諸写,ウル訳,シリ訳ヘ,ペ; アレ写,「二百七十五」; バチ写,「約七十六」。WHの中でギリシャ語ὡς(ホース,「約」)には上側に半かっこの記号が付けられ,欄外には「二百」を意味するギリシャ語ディアコシアイが記されている。明らかにバチ写の写字生は誤って,その前のギリシャ語πλοίῳ(プロイオーイ)の語尾のオーメガῳ(オーイ)と,200を表わす後続の文字シーグマςとを結び付けて,ギリシャ語ὡς(ホース,「約」)としてしまったものと思われる。したがって,実際の数は76ではなく,276となる。
「メリタ」,シナ写,アレ写,バチ写。
「外国語を話す人たち」。または,「バルバロイ」。
「人間味のある親切」。字義,「人間への愛情」。ギ語,フィラントローピアン。テト 3:4の脚注と比較。
「ゼウスの子ら」。または,「ディオスクロイ」。双子の兄弟,カストルとポリュクス。
今日ではポッツオリと呼ばれている。
または,「アピウスの広場」。ラ語,アッピイー フォルム。
または,「トレス・タベルネ」。ウル訳ク(ラ語),トレース タベルナース。
または,「皇帝」。
「受け入れる力がなくなり」。字義,「厚くされ(肥え太らされ)」。
「この,神の救いの手だて」。または,「神のこの救い」。
シナ写,アレ写,バチ写は29節を省いている; 古ラ訳諸写,ウル訳ク,「そして,彼がこれを言うと,ユダヤ人たちは,互いの間で大いに論議しながら去って行った」。
または,「布告し」。ギ語,ケーリュッソーン; ラ語,プラエディカーンス。ダニ 5:29,「布告した」の脚注と比較。